日々の恐怖 6月14日 鎌倉(4)
俺は色々と理由を付け断り続けた。
俺も施主も、おそらく共通した懸念があった。
“ 白骨死体でもでてくるのではないか?”
施主は供養しないと気味が悪いから、これを機会に供養したい。
冗談じゃない。
俺はリフォーム業者であり、死体は守備範囲外だ。
やるやらないの押し問答の末、竣工日の延期と、それにかかわる経費の負担、さらに200万円上乗せして払うと施主が言う。
その話を直接所長にされ、社命で俺が井戸の中にはいり、30cmほど掘る事になった。
結論からいうと、何も出てこなかった。
井戸の底は土の堆積はほとんどなく、やわらかい土を撤去すると、大きな石がごろごろしている感じだった。
死体の上から石を投げ入れた可能性など色々と考えて、石の撤去はしたくなかった。
「 全ての石を撤去するのは無理です。」
と、施主には納得してもらった。
その後、工事は何も問題が起きずに竣工日を迎え、嫌な思いはしたが、おいしい案件だったとして、笑い話でおわってしまった。
一年くらいが過ぎ、その現場の付近を車で通る機会があった。
900万もかけたリフォーム後のその家は、完全に解体撤去され更地になり、塀と、そこにある表札だけが残されていた。
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