日々の恐怖 11月12日 同僚(3)
色は白黒ではなくカラーだったが、暗闇の為に非常に淡い。
また、透明とまでは言わないが、透過もしていた。
着ている服は白いポロシャツとベージュのスラックス。
亡くなった時の着衣ではなかった。
そして表情、これは不明。
そこまで細かい解像度ではないことと、恐くて顔を凝視することが出来なかったこと、この2つの理由により表情は分からなかった。
何回かチラ見したけど、灰色系でパーツ単位までは見えなかった。
少し落ち着いてきた私は、自分は何も悪いことをしていないこと、何か伝えたいことがあるから出て来たのではないか等を考え始め、勇気を振り絞り目を全開に開けてみた。
当然の様にまだ立ってる。
私は、
“ 何か言いたいことがあるなら聞くよ?
奥さんに伝えるよ?
どうしたの・・・?”
と繰り返し念じてみた。
しかし一向にメッセージらしいものは発せられない。
数分が過ぎた頃、突然足元からスーッと消えた。
私は慌てて部屋の電気を点けた。
誰もいない。
でも、空気中に白い煙みたいなものが充満している。
そしてこの煙も1分程で消えた。
一体何を伝えたかったのか、私にはまったくわからない。
ただ、その時の場の雰囲気、そのものの持つ雰囲気、そのものが発する雰囲気、これらが、非常に暗く、救いがなく、無念で仕方がなく、哀しみしかない、ことを表していることだけは何故か理解できた。
だからこそ、私は初めのうちは恐かったんだと思う。
この話はまだ遺族には伝えていない。
遺族に会う機会がないからなのだが、会った際に言うかどうか、迷うところだ。
故人の使用していた会社PCに保存されていた思い出の動画等、会社側に消去される前に私がデータ保存してCDに焼いてあるが、これをまだ遺族に渡せてないからなのかな?
それにしては恐いオーラ出し過ぎだ。
近いうちにCD、家族に渡すよ。
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