日々の恐怖 4月8日 なれなれしいヤツ
高校生の頃、学校にやたらとなれなれしい用務員のおやじがいた。
当時、まだたばこにうるさくなかったので、校舎の日陰でセブンスターのボックスを吸いながら休憩するのがよく目についた。
「 メンソールを吸うと勃たなくなる。」
がおやじの持論だった。
「 おやじがたばこ咥えながらニタニタ笑ってみてる。」
ルーズソックスがはやり、スカートの丈が短くなりだしたころ、女子どもはそんなことを言っておやじを気味悪がっていた。
「 見られたくなければスカートを伸ばせ。
もしくは化粧を止めろ、その化粧を・・・。」
我々高校生は、変におやじに同情しながら人生について語り合っていた。
異変があったのは夏休みが終わる頃、バレー部の女子の一人の着替えが無くなったのだ。
結構な騒ぎになり、全体朝礼で、
「 自分から名乗り出てきたら怒らない、心当たりがあるものは先生に言いなさい。」
と、体育の教師が言っていた。
おやじがクビになったと聞いたのは、それからしばらくのことだった。
用務員室で女子のブルマーだか、スカートだかが見つかったらしい。
おやじは最後まで罪を認めなかったそうだ。
学年が変わり、
“ そろそろ進学について考えなきゃな~。”
とか思っている頃、おやじが自殺したと噂で聞いた。
自宅で首をくくって、潔白を訴える遺書があったらしい。
“ 女の服の一つで人生が変わるんだな・・・。”
進路のことを考えていた自分は、感慨深げに友人たちと噂していた。
数学の教師が首を絞められた死体で発見されたのは、それからすぐのことだった。
部屋からは用務員室で見つかった以外の着替え、盗撮らしいビデオテープ、写真などが見つかったらしい。
それから、嫌煙者だった数学の教師の部屋にはセブンスターのボックスの吸い殻があったとのことだった。
「 おやじも、くわえたばこで化けて出ることないよな・・・。」
友人のもらした一言に俺は、
「 それはちょっと違うんじゃ・・・・。」
と思った。
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