日々の恐怖 3月30日 村(5)
かなり小さな村のようで、狭い範囲に5~6戸程の小さい民家が斜面に並んでいる。
その殆どがツタに覆われ、壁の一部が崩れ去り、部屋の中が見えるような状態だった。
玄関に施錠はされているが、意味はなさそうだ。
集落の中央には石段が通っていた。
井戸が何箇所かあり、蓋が閉じられている。
記念に数枚写真を撮った。
そして比較的まともな一軒の玄関にもたれ、顔にタオルを巻き、虫よけスプレーをかけ寝る事にした。
地面に直に寝転ぶのを考えたら、それでもかなり有り難く思える。
もうクタクタだ。
すぐに睡魔が襲って来た。
” ・・・・・?”
何か気配を感じて目が覚めた。
俺が今居る玄関の中からの気配だ。
いや、気配ではなく音がする。
” ミシッ・・・・・・・、ミシッ・・・・・・・。”
ゆっくり何かが中を歩く音だった。
最初はただの家鳴りかと考えたが、ゆっくりとしたリズムを刻み床を踏む音が微かに聞こえて来る。
玄関の上半分はスリガラスで中の様子は見えなかった。
” まさか人が居るのか・・・・?”
この廃墟に人が住むとは考えられなかったが、確かめようと思い寄り掛かったまま玄関に耳を当てた。
” ミシッ・・・・・・・、ミシッ・・・・・・・。”
間違いない。
この家の中を歩き回ってる者がいる。
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