日々の恐怖 7月13日 寂れた旅館(6)
私は家に入れないでいました。
テレビ番組などでよく見る曰く付きの場所に行ったら、何かをつれてきてしまうと言うのが頭をよぎっていたのです。
恥ずかしながら当時結婚していない私は実家に住んでいたので、玄関に出て来た母に、
「 今日はやばい所に行ってきた。」
と伝えました。
すると、母がテレビで知っていたのか、一旦家の中に入り、その後、塩を持って玄関から出てきました。
そして、母は私と車に塩をまいてくれました。
「 これで、いいんじゃないかな・・・?」
そう母に言われて、私はようやく家に入りました。
続けて母は、私に言いました。
「 念のため、仏壇に手をあわせて来てね。」
私が仏壇に手を合わせ終わると、
「 数珠はちゃんと持って行ったの・・・?」
と聞いてきました。
実は私が就職したときに、危険な仕事というわけでなぜか数珠を持たせてくれたのです。
それで、私はいつも数珠を持ち歩いていました。
私は、
” 無事なのは、これのお陰かな・・・・。”
と感じました。
4ヶ月後に旅館の女将から、漏電箇所についての電話がきました。
この業務は漏電を発見すると、3~4ヶ月後に再度様子を確認しに行かなければなりません。
私はまたあの旅館に行くことになるかと思いきや、担当が外れて私は行かなくていいことになりました。
正直、嬉しかったです。
私は女将に、担当が変わったから違う者が行くとのことと、分かるように引き継ぎをしておく、とのことを伝えました。
女将は、同じ人は来ない方がいいと言っていました。
私はその意味を理解しないように、笑って流しました。
ここからは担当(ここではAさんとする)が変わったのでAさんから聞いた話ですが、Aさんが改修の様子を確認しに電気屋さんとあの部屋に行ったそうなんですが、昼間でも薄暗くてかなり気持ち悪かったそうです。
Aさんと電気屋さんも視線を感じたらしく、電気屋さんはあんな場所には二度と行きたくないと言っていたようです。
この話をAさんから聞いて、やっぱあそこには何かがいるんだと思いました。
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