




次期アンプの計画を練っているところですが、まだどういう球を使うか悩んでいますが、箪笥の奥に虎の子が眠っているのを思い出し、ちょっと見てみることにしました。
虎の子の球とは、オーディオマニア垂涎の的Western Electricの球です。282Aというちょっと古めのスタイルを持つ送信管になります。
折角なのでアップの写真も。
以前、MJ誌だかラジオ技術だかで著名な方の記事を見たことがあり、そういえば持っていると思い、一度使ってみたいと思いつつも恐れ多く、今度使おうとしまっていたらあること自体忘れていた代物です。かなり前ですがEbayでの落札かディーラから直接購入かしたものになります。
この球は300Bと違いあまり見ない球で有名ではないためか、あるいは4極管でスクリーングリッドの最大電圧が250Vと低く、使い難いこともあるためか、それほど価格は上がっていない印象ですが、グラスの形といい、銀色に輝くプレートといい見た目はかなりいい球だと思います。
特性表を見ても一般の受信管のようにグリッドがマイナスの領域で使える球のようで、使いやすそうではありますが、注意書きもあります。
こんな注意書きです。
全部も記載しませんが、冒頭で過負荷について記載されています。過負荷については、一時的には耐性はあるもののプレート電流が150mAを超える場合は電流を制限するなどの対応が必要というようなことが記載されています。
プレートロスは70Wあるものの、高電圧でそんなに電流を流さない使い方なので、ロードラインも10kΩ以上と高めとなるのでしょうか。
一応、OPTは5kΩのものを使おうとしているのですが、5kΩだと出力が出ない可能性もありそうです。
いっそのこと三極管接続ではどうなるのか。
さて、お得意の実測だ!と思いましたが、いつものスクリーングリッドの耐圧を無視したやり方で壊れたらどうしようと思うと2の足を踏みます。水平偏向管のような安物の球なら躊躇せずやるのですが、なんせこの球はWEときたもんで、こんなやり方で万一壊れたらと思うと、後悔至極です。
やはりこの球はもう少し寝かしておいた方がいいのでしょうか。巷であまり作例を見ないのはこの辺が原因なのかもしれません。一応次期アンプの候補にしつつ、対応を検討したいと思います。
最近、ポジティブグリッド管にトランジスタをダーリントン接続する回路をいくつか測定したり、アンプにしたりしていましたが、逆の接続にしたらどうなるんだろうと疑問と好奇心がわいてきました。逆とは、トランジスタの入力側に真空管をダーリントン接続する回路になります。
そこでちょっとネットで検索していたのですが、既にやっている方たちがいて、”球リントン”という名で呼ばれているようです。
早速、球リントンではどんな測定結果になるのか確認してみました。
確認した回路は下記になります。
この回路で球はとりあえず、6DJ8を使用してみました。
いつものようにエア配線になります。
測定結果ですが、下記のようになりました。
ですが、どうもうまく測定できません。なぜかわからないのですが、立ち上がりのところできれいな線が出ません。電源装置もなぜかおかしく、電圧がきちんと出なかったり、電流の表示が正しく出なかったりといつもの測定とは異なります。
ただ、特徴としては、入力側につないだ3極管の特性を引き継いだ形になっているようで、これはこれで面白い結果です。
今度は、トランジスタをFETに変更してみました。
写真は撮り忘れましたが、トランジスタをそのままFETに置き換えた形です。その結果は下記のようになりました。
傾向的には、同じく3極管の特性に近似していますが、これも測定がうまくいかずです。
恐らく、発振でもしているのかな?というような感じですので、もう少し根詰めて測定してみたいと思います。
今日の測定でトランジスタを2個破損させてしまいました。
また挑戦したいと思います。
表題のCZ-504Dという、通信用高信頼管について以前調べたことがありますので、それを載せたいと思います。
上記写真は、CZ-504Dの外観(左手側;TEN(神戸工業)製、右手側:NEC製 です。
CZシリーズの球については、「電子管の歴史」(オーム社)および「ラジオ技術4月号別冊」(ラジオ技術社)に掲載されていますので、これらを以下に抜粋します。
CZ型五極管でヒータは5.5V-1Aの傍熱型出力管。「原型はMB-655-Aである。これは、イギリスのSTC(Standerd Telephone and Cable)社が開発した7A2を参考にしたものである。後に仕様が整備されCZ、CYの名称で呼ばれるようになった。表1にCZ型5極管の用途と特性の要点を示す。
表1 CZ型5極管
原型 | 用途 | Vp=250V | ||||||
Ih[A] | Vh[V] | Vsg[V] | Vg[V] | Ip[mA] | gm[mS] | |||
CZ-501-D | MC-656-C 改造品 |
電圧増幅 | 1 | 3.5 | 130 | -2.5 | 6.5 | 3.5 |
CZ-502-D | MC-657-A | 可変増幅 | 1 | 3.5 | 130 | -2.5 -10 |
6.5 | 3.5 0.35 |
CZ-503-D | MC-655-C | 抑制格子変調 | 1 | 5.5 | 200 | -13.5 | 35 | 3.5 |
CZ-504-D | MB-655-A | 出力増幅 | 1 | 5.5 | 200 | -13.5 | 35 | 3.5 |
CY-501-F | MC-656-B | 簡易増幅 | 0.5 | 4.5 | 100 | -1.5 | 5 | 2.0 |
1946年初めから、通信の復興のさきがけとして通信管の生産が始まったが、設備、技術、資材などの荒廃のため品質が悪く、品質改善に全力を注ぐこととなった。1948年頃には平均寿命が10,000時間以上になり、戦前の水準に回復した。さらに1952年にはCZ-501-Dの実用寿命試験で13万時間という驚異的な値が得られるようになった。
終戦前後に作られた真空管の品質は悪く寿命も極端に短いものが多かった。そこで、電気通信省施設局調査課、同電気通信研究所電子管課と製造会社が協力して、事故原因の究明と対策をとることとなった。対象品種としてCZ-501-D、CZ-504-Dが取り上げられた。調査の結果、主な不良原因は真空不良とステム・クラックであることがわかった。とりあえず前者の対策として、陽極の代用材料の鉄がNiに戻され、ゲッタのバリウム・マグネシウム合金が、バリウムに置き換えられた。1946~47年の実用寿命試験の結果、CZ-501-Dの平均寿命は11,000時間と推定され著しく改善された。さらに後者のステム・クラック対策として、鉛ガラスをカリガラスに置き換えると同時に、ステムの温度を下げるための熱遮蔽板その他の改良が加えられた。この試作品についての加速寿命試験では、CZ-501-Dの推定平均寿命12,000時間が得られえた。
その後、前期通研電子課と各製造会社が協力し、CZ-501-D、CZ-504-Dの一層の長寿命化を図ることとなり、次の3つの対策が取られた。
(イ)陰極基体金属とゲッタの性能を改善して、陰極の熱電子放出をよくする。
(ロ)制御格子と他電極間のリーク電流をなくし、制御格子の温度を下げ、材料を選ぶことにより格子よりの電子放出をなくし、制御格子電流を少なくする。
(ハ)ベースセメントの材料と処理法の改善をして、ベースに関連する事故を無くする。
対策の結果は極めて良好で、日本電気製CZ-501-Dを例にとれば、1951~52年に行った鴻巣中継所での寿命試験では推定平均寿命が13万時間という驚異的な値になった。
一般的に陰極温度を適当に低くすれば活性物質の蒸発が減るという点では寿命が長くなるはずで、許せる範囲で陰極温度を下げて使うべきだという認識が高まってきた。正規のヒータ電流よりも低い電流で使用される装置も出現した。
1954年には、CZ-501-D、CZ-504-Dのヒータ電力をそれぞれ3V(1A)、5V(1A)と、従来より小さくしたCZ-501-H、CZ-504-Hが試作された。CZ-501-H、CZ-504-Hの陰極過熱寿命試験では、それぞれ40万、22万時間の平均寿命が推定された。」(以上までの参考:「電子管の歴史」 日本電子機械工業会 電子管史研究会編 オーム社)
次に、ラジオ技術4月号別冊「佐藤定宏 徹底してマニアライクに迫る真空管パワー・アンプ作品集」(ラジオ技術社 昭和62年4月10日発行)に製作記事があり、そこに佐藤氏が入手したCZ-501-DおよびCZ-504-Dの規格表があるので以下に記載します。また、これら球に関するエピソード等も記載します。
【通信用5極増幅管CZ-504Dを使ったAB級10Wステレオパワーアンプの製作】記事より。
「この球の定格などは名前をやっと知っていたという程度で何もわかっていないので、幸い日本電気社長の田中忠雄氏と知遇を得ている関係で、同氏にこの球のことを伺ったところ、早速自筆で詳しい資料を知らせていただくことができたという幸に恵まれました。
それによれば、CZ-504DはCZ-504Vなどと一緒のグループに所属する、日本電信電話公社向けの真空管で、すでに中止となっているものの由で、CZ-504Dがフィラメント規格5.5V,1.0A、CZ-504Vが6.3V, 0.9Aという他、球の寸法、定格、試験法共、同一のものということが判明しました。」
以下、図1に規格表を示します。
図1 CZ-501DおよびCZ-504D/Vの規格表
(ラジオ技術4月号別冊「佐藤定宏 徹底してマニアライクに迫る真空管パワー・アンプ作品集」(ラジオ技術社 昭和62年4月10日発行)より。)
以上が、CZ-504Dについて調べてみた結果です。少しでも参考になれば。
規格表を図1に記載しましたが、よく見かける(「真空管マニュアル」(ラジオ技術社)にも記載されている)Vp=250V, Vsg=200V, Vg=-13.5という動作点は試験条件で使用されている値のようです。Vsgは最大定格で285Vまで使用可能と記載があるので、必ずしもVsg=200Vでの使用がリミットではないようです。
先日製作した、800ダイナミックカップリングシングルアンプで800とトランジスタをダーリントン接続したら結構良い特性になったので、他の球ではどうなのか気になっていました。そこで、ダイナミックカップリング管の元祖ともいうべき、6AC5で特性を確認してみました。
まずは、6AC5の写真から。
手持ちには何種類か持っているのですが、引き出しの奥にしまっていて引き出しの前にものが置いてあるような仕舞い方なので、一番手前にあるZenith(ゼニス)のものしか取り出せませんでした。
御覧のように見た目ものすごく地味で、大きさは6V6GTと同じサイズ、プレートは6V6GTと同じか、それより小さいサイズです。ヒータ電力はほぼ同じですが、プレートロスは10Wと低めです。内部構造は4極管になっており、第2グリッドを内部でプレートか第1グリッド(恐らく第1グリッドでしょう)に接続している3極管のようです。A級動作で使用する場合は、76や6P5GTなどとダイナミックカップリング接続し使用する回路になっています。下記は、Tung-Solの特性表に記載の回路になります。
一度6AC5を使ったアンプを製作しようと考えたことがあったのですが、前段がST管の76でその後ろがGT管という、なんだかちぐはぐな格好がどうしても気に入らず、6P5GTを入手したら作ってみよう、と考えたのですが、この6P5GTがかなりのレア管でなかなか入手できず、未だに製作はしていません。ただ、最近6P5GTは入手したような記憶があり(上述の引き出しの奥にしまったような・・・)、さらに6AE5GTも使えそうだということがわかり、6AE5は比較的楽に入手できました。Tung-Solの規格表には6J5も記載がありますので、それでもよかったのかもしれません。6J5でよいと知ったのはたった今です。
さて、どんな回路で確認したかというと、下記のように2つの回路で確認してみました。
回路Aは、トランジスタトンのダーリントン接続、回路Bは、6AC5GTそのままの特性です。
いつものように、ディスクリート(ずぼらなエア配線)で計測してみました。
その結果が下記になります。が、デジタルオシロの測定結果をフロッピーに保存し、PCに持ってくるのですが、保存に失敗してしまい、今回はデジタルオシロの画面のみです。まるで約4000万円の振込先を間違えてカジノで摩られてしまったどこかの自治体のようなシステムです。
なお、今回は上記の計測回路に記載のように入力電流も計測してみました。結果は下記のようになります。
まずは、回路Bの6AC5のみの計測結果です。
黄色の線が、入力電流(Ig)になるのですが、結構流れています。この電流を76などのカソードから補うことになります。
そしていよいよ回路Aのトランジスタとのダーリントン接続です。使用したトランジスタは2SC2542 になります。
調子に乗ってかなりの電流を流してしまいましたが、明らかにプレートロスはオーバーしていますので、本来はこんな使い方をしてはいけません。トランジスタのベースバイアス電圧に対し流れるプレート電流は、回路Bとほとんど大差はない様ですが、特性がかなりトランジスタっぽくなっています。また、動作点のプレート電圧を50V以上とした場合は、ベース電流はわずかしか流れず、もはや76のカソード電流よりも小さな電流でドライブできそうです。6DJ8や6AQ8のカソード電流でドライブできるかも。
今回は測定のみですが、こういう接続の仕方で新たな真空管アンプの魅力が再発見できるかもわかりません。また試してみようかと思います。