先週、6CD6Gで水平偏向管の3極管接続を紹介しましたが、その動作点は、スクリーングリッドの許容電圧を超えたものでした。
安い水平偏向管なので、あまり躊躇なくこういう動作をしましたが、果たしてこういうことをしていいのかどうか、少し考えてみたいと思います。
ただし、確か、ナショナルか東芝の真空管ハンドブックには、「3極管接続時はスクリーンの最大定格電圧を超えないこと」、というような記載がどこかにあったのを見た気がしています。そのため、設計上はそういう使い方は本来だめなのでしょう。
因みに、BRIMAR 6CD6Gの規格表には、下記のような記述があり、最大プレート電圧は、4極管接続時の700Vに対し、3極管接続時は最大スクリーングリッド電圧に引きずられ、200Vになっています。
しかし、そんな硬い使い方をしていては、いつまでたっても水平偏向管は、猫マタギになりますし、新境地を目指すのもマニアの務めだと思っていますので、真空管ハンドブックの記載はあくまで参考ということにします。
冒頭のアンプでは、6CD6Gのダブルカソード管をプレート電圧270Vで動作させ、プレート損失は約18Wと少しオーバーしてしまいました。
早速ですが、5極管の3極管接続時のスクリーングリッドにはどんな電流が流れているのか測定した図を載せます。
(注)Isg2と表記していますが、Isgの間違いです。
この球は、かなり前に測定した別の5極管の3極管接続時のプレート電流Ipと、スクリーングリッド電流Isgを計測したものになります。
その結果、この図のようにスクリーングリッドの動作は、プレートの動作に準じた動きをしていることがわかりました。さしずめミニプレートといった感じです。
この動作によって、真空管自体あるいはスクリーングリッドに危険が及ぶとしたら、どういうことがあげられるでしょうか。
1つは、スクリーングリッドの許容損失を超えることがあげられます。同様にプレート許容損失も最大定格値を超えてはいけません。
これについては、図のようにコントロールグリッドのバイアス電圧で制御可能で、VgによるIsg電流の制限により、スクリーングリッドの許容損失内で動作させればよいことになります。つまりスクリーングリッドに大電流が流れてすぐに許容損失を上回るのであれば、Vgを大きくして流れる電流を制限すればいいわけです。
その分バイアスが深くなるで、ドライブ電圧も高くなります。
では、バイアスが深くなることで発生するインゼル効果はどうだ?
インゼル効果により、カソードからの熱電子がグリッドの負の電圧が及ばない一部分からしか出なくなるので、gmも下がり、本来の特性も変わると思われます。発生しない程度のバイアスとすればいいと思います。
その他、何が考えられるでしょうか。コントロールグリッド(g1)あるいは、サプレッサーグリッド(g3)とスクリーングリッド(g2)間の絶縁耐圧?これを考えるなら、サブミニチュア管やミニチュア管(MT管)なんてもっと狭い電極間隔内で動作していますので、よほど高電圧(kV単位で)をかけない限り大丈夫のような気がします。
他あまり思いつきません・・・
今のところの考えでは、3結時はスクリーングリッドとプレート電流はコントロールグリッドのバイアス電圧で制御可能で、スクリーングリッドとプレートそれぞれの許容損失を上回らなければ、プレート電圧を上げても大丈夫、という解釈です。
これに関し、もし何か抜けている点などありましたらご指摘いただければと思います。
ということで、我々マニアはどんどん水平偏向管を使って、いけない遊びをして、安く、良いアンプを作りましょう。
ただし、このような行いで発生した事故・損失に関し、当方はいかなる補償も負いませんので、悪しからず。
私も「Sgの損失オーバーしなければいいじゃん」派です。
最大スクリーングリッド電圧が低い物はだいたいコントロールグリッドに近いからマージンをとっているのでは?と思っています。
私たちオーディオファンが使う場合は250~350V程度なので少し高い程度なので大丈夫かなぁとは思います。
手持ちの球で普通にIsgが流れすぎて三結出来ないのはQE08/200と865という送信管です。(他はまだ測ってませんから、そういう球はもっとあるかもしれません)
たまに素の三結だとSg電流が猛烈に流れるやつがありますが、それ以外は大丈夫かなぁと私個人は考えています。
規格を大事に守る人もいれば、損失オーバーしなければいいじゃんという考えもマニアの特権ですよね。そういう方がいて心強いです。
ところで、Isgが流れすぎる真空管もあるんですね~、初めて知りました。過去に色々な種類が製造されたので、そういう真空管があっても納得です。
今後ともよろしくお願いします。