Friends of Valves 自作真空管アンプ

自作真空管アンプを中心にいろいろ載せていきたいと思います。

VT-25(10)ダーリントン接続の実験

2024-01-06 20:33:04 | 実験

あけましておめでとうございます。今年も当ブログをよろしくお願いします。

新年初めての投稿になりますが、あまりネタがなく、新年早々に試してみたVT-25のダーリントン接続回路によるアンプを載せたいと思います。

VT-25という名称はこれはアメリカの軍用番号で、民生用では10あるいは10Yといいます。元々はUX-210という球の改良版がこの10に当たります。「クラシック・ヴァルブ」(大塚久著、誠文堂新光社 1994年6月15日 初版第1刷発行)によれば、GE/RCAのチームが1921年頃からUV-202, UV-203, UV-204などの送信用真空管を発表し、1924年になって、このUV-202の後継品種としてUV-210が開発されましたが、翌年にはベースを変更したUX-210が発表された。と記載があり、後に10、801Aなどに進化し、低周波出力用としても多用されて大変寿命の長い真空管となりました、と記載されています。

また、当方は通勤電車の中で小説の単行本を読んでいるのですが、あるとき読んだ「エトロフ発緊急電」(佐々木譲著、新潮文庫)では、ちょうど真珠湾攻撃直前の米国の諜報活動により択捉島で米国向けに打電された送信機がこのUX-210を使ったものとして記載されています。小説では、「米国RCAにUX2JOという真空管があります。こいつを2本並列で使い、百ボルトの電圧を変圧器で八百あたりまで昇圧してやれば、送信機ができる。いくつか抵抗とかコンデンサーが必要ですが、これは国産品で間に合います。・・・」と、米国の諜報員にうまく抱きこまれた日本海軍の技術士官が答えています。

ところで、このUX2JOという聞きなれない真空管ですが、これはどんな球だろうと不思議に思いネットで調べてみると、面白いことに同じ疑問を持った人が先に調べていて、著者佐々木譲氏が参考文献から真空管名を誤記しUX210をUX2JOと間違えたとのことでした(「佐々木譲 UX2JO 真空管」で検索!)。ただ、本当に800Vもの電圧をUX210にかけたのかどうかは不明です。

要するに大変歴史のある球ですが、通常オーディオアンプで使用するには、内部抵抗が高いので、プレートに高電圧をかけて、10kΩ以上のインピーダンスの出力トランスを使用しないと出力が取れない、若干使いにくい球なのです。

そこで、負荷をもっと小さくして出力を取る方法を検討しました。

手っ取り早い方法は、グリッドを正の領域で使用しプレート電流をたくさん流してやれば、低負荷で出力もたくさん採ることが出来ます。この方法で今個人的に流行っているダーリントン接続による回路でアンプにしてみました。回路図は下記になります。

上記回路図で出力管は”801”と記載していますが、間違いで”10”となります。なお、801は10の改良版で600V以上の電圧にも対応した球になります。そのための改良点として、主に熱対策と思われる改良が施されており、ステムにプレートの支柱を挟むのをやめ、ステムのクラックを防止するような対策が施されています。そのためステムの幅も狭くなっており、プレートの電極が入るスペースがないため、プレートの電極はステムのやや下あたりに独立してソケット側に向かって配線されています。

”10”でも600V以上で使用できますが、上記小説にあったように800Vで使用できるのかはわかりません。やはり無理はしないようにするのが良いと思います。

上記回路ですが、”10”にはトランジスタを挟んで807の3極管接続による3段ダーリントン回路としています。この場合、トランジスタは無くても良いかもわかりませんが、折角なので入れています。

あと、電圧調整回路1,2とありますが、1は”10”のプレート電流を調整するために必要で、2は前段のプレート電圧を調整し出力の調整を行います。

そして+B1は240V、プレート電流は、約60mAに調整しています。

この時に下記のような出力波形が出ました。まあまあ綺麗な波形です。最大で1Wくらいの出力が得られました。

グリッドを負の領域で使用する場合、プレート電圧・電流が425V・20mAぐらいだったかで1Wも取れなかったと思いますので、かなり良好な結果となっております。

早速試聴しました。

音の方ですが、”10”とは思えない音になりました。おとなしい感じはしますが、艶がありつつも少しダイナミックに感じます。

ところで、807の3極管接続をダーリントン接続しないで、プレートに独立した電源を加えた回路で試してみると、明らかに音が異なります。ダーリントン接続にした方が艶があるというか、しっとりしているというかそのあたりが異なったように思えました。

”10”の違う一面を見た感じがしました。

 

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カソード抵抗のトランジスタ化(3)

2023-08-11 22:31:22 | 実験

先日のオフ会で、音質的にイマイチの評価を受けた、カソード抵抗のトランジスタ化ですが、イマイチの原因が判明しました。

先週のオフ会の後、色々検証していたのですが、そういえばトランジスタのコレクタ~エミッタ間に電流帰還を防ぐ意味で330μFのコンデンサを入れているのですが、そもそもコレクタ~エミッタ間に入れる必要あるのか、要はコレクタ~エミッタ間の電圧が一定になれば、いらないんじゃないか、という疑問が沸き上がり、とりあえずはコンデンサを取り外した場合、音質はどうなるのかを確認してみました。

すると、驚いたことにトランジスタ化を行ったときに記載した音質の大味感がなくなり、すっきり透明感のある音質に変貌。まさに何ということでしょう!と、驚き、これは検証する必要があるなということで、今日はこの確認を行いました。

何を確認するかというと、まずコンデンサを外すことで、コレクタ~エミッタ間にどのくらい交流電圧が発生するのかを確認。そしてそれをどのように抑えるかと音質の検証です。

まずは、コレクタ~エミッタ間にコンデンサを入れないパターンです。

1W出力時、ピークで1.5V程の交流電圧が発生しています。

そこで、トランジスタのベース~コレクタ(GND)間に小容量のコンデンサを入れてみました。

入れたのは、0.15μFです。

こんな感じで入れて、計測してみると・・・

交流電圧は激減し、ピークで0.37Vに減りました。

次に47μFを入れてみます。

ピーク電圧は、0.054Vに減りました。

ということで、コレクタ~エミッタ間に大容量のコンデンサを入れる必要はなく、ベース~コレクタ(GND)間に小容量を入れればよいことが判明しましたので、このパターンで検証します。

さて音質はどうかというと、各容量のコンデンサで試してみましたが、コンデンサなしの時がなかなか良く、ただし、ほんの少しキンキンとするような感じがしましたので、結局、0.15μFを入れておきました。

そしてトランジスタも緑の2SB1098と黒の2SB566の両方が使えるようにしていますが、緑の方が若干固い音がするもののきれいな音が出ますので、今はこちらにしています。

さて、明日はまたオフ会ですので、この回路で評価に臨みたいと思います。オーディオの女神はどちらに微笑むのか。

 

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カソード抵抗のトランジスタ化(2)

2023-07-01 18:50:06 | 実験

前回からの続きですが、カソード抵抗の代わりになりそうなトランジスタの回路を真空管アンプに実装すべく、基板の作成と、実際に音の確認をしてみました。

まずは基板の製作です。

いつもの小さなユニバーサル基板に部品を実装します。

簡単な回路なのですぐにできました。

これをアンプに実装します。カソード抵抗を取り払います。

そして、基板を取り付けてトランジスタを固定し、配線します。

出力管のバイアスを調整します。元々はIpに約40mA流していたので、これぐらいの電流になるよう、基板の半固定抵抗器を調整します。

これを両チャネル実施し、いざ試聴です。

ざっと聞いてみたところ、若干、大味な感じがします。表現がわかりにくいですが、ダンピングがあまり聞いていないような感じの音です。

そこで、DFを確認してみると、交換前はDFは4程度あったにもかかわらず、交換後は半分ぐらいに減っている。理由はわかりませんが、再度調整し、NFB用の抵抗を小さくして、DFを5程度になるようにしました。カソードバイアスに抵抗を使用した状態では、DFが4程度が精いっぱいだったのですが、トランジスタ化により、DFが5までNFBがかかるようになりました。

そこでもう一度音を確認してみると、今度は透明感があり、きれいな音の印象。にもかかわらず固さはなく、抜けがよい音がしています。しかも歪感が少なく、今までCDの音楽のこの部分で音が濁っていた、というのが解消された印象です。

これは中々期待より良い感じです。しばらく聞いていましたが、トランジスタを変えるとどうなるのか確認したくなってきました。

そこで、2SB1098から2SB566Kに変更です。HFEはそれぞれ、5000程度から200程度に下がります。

早速付け替えです。

PNP型でコレクタがGNDなので、トランジスタも直にシャーシに固定できて楽です。

再度試聴しましたが、はっきり言うと交換前後でどう音が変わったかはわかりませんでした。途中で交換作業が入るので、その間に前の音がどうだったかの記憶が薄れてしまい、交換後と比較できなくなってしまいました。しかし、交換後も中々の音がしており、これは収穫があったなという感じです。抵抗の場合よりもトランジスタを使用した方がいい感じがしますので、しばらくはこのままにして次回のオフ会で皆さんに確認しようかと思います。

 

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カソード抵抗のトランジスタ化(1)

2023-06-25 19:22:18 | 実験

今日は、本当であれば明石のIさん宅でのオフ会に参加しているはずでした。しかし、例の流行病に感染したせいで、自粛し今日は一日おとなしく家にいます。

と言いたいところですが、おとなしくするのも暇ですし、今日は前々から温めていた真空管アンプのパワー管カソード抵抗のトランジスタ化について実験を行いました。

カソード抵抗のトランジスタ化でよく目にするのは、この部分を定電流回路化する、というものがありますが、私個人的には少し疑問があり、あまり採用したくありません。なぜかといいますと、定電流回路を採用すると、大きな出力でパワー管の電流が制限されるので音声出力が歪む、というのが気になっているからです。

そこで定電流化ではなく、一定のバイアスは保ちつつも、必要な時には真空管に十分電流を流せるような回路が出来ないか、といつも思っていました。

そうであれば、ツェナーダイオードが良さそうですが、十分なW数も必要であろうと思われるので、トランジスタで簡単にできないかなと。

そこで色々考えていたのですが、この回路を採用したらどうだろう、というのが見つかりましたので、実験してみることとしました。

その回路とは、最近よく使用している下記赤枠部分のような回路です。

この回路は、以前、薄型イコライザアンプを製作した時の回路ですが、赤枠部分は、トランジスタのVce間の電圧を可変できる回路になります。ベース電圧VbをB-E間の可変抵抗とC-B間の抵抗で決定する回路で、このVceをパワー管のカソードに入れてやれば、必要な電流は十分流すことは出来て、かつ必要なカソードバイアスはVceとして保てるのではないか、というのが目論見になります。

そこで、早速回路ですが、下記のような回路としました。

トランジスタは、折角なのでPNP型を使用します。PNP型だとコレクタ側をGNDに接続しますので、放熱板などに固定する際にも絶縁シートやブッシングは不要になります。

本回路では、RbeとRcbでVbの電圧を決定し、VceはVbの電圧で決定されますので、Vceをパワー管の動作点の電圧にRbeとRcbで調整してやれば、適切なバイアスになるはずです。

そこでVceは実際どんな式になるのか、簡単に解析してみました。(PNP型になると電流の向きなどがNPNと逆になり、頭が混乱して式内の正負が逆になっている可能性があります^^;)

まず、B点の電位は、GNDなので0Vとすると、下記①のようになります。

  • Vce = Vb+Vbe ーーー①

次にVb, Ibe, Ibは、それぞれ下記のようになります。

  • Vb = Rcb(Ibe+Ib) ーーー②
  • Ibe = Vbe / Rbe ーーー③
  • Ib = Ic / Hfe ーーー④

これらの式から、

Vce = Rcb(Ibe+Ib) + Vbe = Rcb(Vbe / Rbe + Ic / Hfe) + Vbe

  = Vbe(1+Rcb/Rbe) + Rcb(Ic/Hfe) ーーー⑤

とVceが算出できそうです。⑤式の左側は、定電圧特性を示しており、右側はIcによって変動する電圧になるようです。Hfeを大きく、Rcbを小さくしてやれば、Icによる電圧の変動は無視できるぐらいになりそうです。

ということで、手持ちのPNP型トランジスタに2SB1098というダーリントン型の高Hfeタイプのものがありますので、これを使用してみます。

回路定数の計算は、省略して手持ちの部品を使用し、下記のようにしました。

この回路のA-B間に電流を流し、Vceが真空管のカソードバイアスとなりえるか確認します。

回路はブレッドボードに作成し、上記回路のA点に赤色の抵抗100Ωを接続し、その100Ωの反対側とB点間に電圧をかけてみました。その結果が下記になります。

黄色のテスタの計測値は、100Ωの上からB点(GND)までの電圧、黒いテスタはVceの計測値です。Vceは約20Vに調整しています。全体で約45Vかけています。

次に実際の真空管のカソード部分にこの回路を入れてみます。

真空管は6CA7を使用しています。6CA7は3結でプレートには250V印加し、カソードに本回路を接続しています。第1グリッドは、B点に接続しています。この時、本回路でVceを適切に調整し、プレート電流Ipは60mAになりました。もちろんこの可変抵抗でIpはいかようにでも可変できます。

以上のように、真空管のカソードに本回路を入れることが出来ると分かったので、実際にアンプに入れてみますが、それはまた次回ということで。

 

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新しいアンプの実験(終章)

2021-12-26 20:57:19 | 実験

前回、スムーズに実験を行う目的でブレッドボードを買い、早速回路を組み立てて確認しました。

入出力端子や電源は、結局、部品の端子に直にはんだ付けを行い、簡単に済ませました。

上記写真のテスターの電圧(10.1V)は、トランジスタのコレクタ電圧です。これで約10Vほどの出力電圧が出るようになりました。

今回の回路は下記の写真のようにしています。

実験(4)ではガサゴソノイズがかなり大きな音でなっていましたが、恐らくこれは真空管かトランジスタでドリフト電流が発生し悪さしているのではと考え、下記のように真空管のカソードにやや大きめの抵抗を入れた回路にしました。しかし、そうすると増幅度が下がるので、抵抗を33Ωと750Ωに分割し、負帰還は33Ωの抵抗で行うように変更。しかも真空管のグリッドバイアスは、33Ωの抵抗の両端の電圧にします。

そしていざ、この回路でアンプにつなぎ音の確認です。

すると、ガサゴソノイズは収まりましたが、今度は、ジー、ジーという断続的な小さなノイズが。しかもあまり音もよろしくない。

これは何だろうと思い各所の電圧を測定しましたが、なんと真空管のプレートの20kΩの抵抗の両端に電圧がほとんど出ていなくて1V前後しかありません。

恐らく、ベース電流の影響により、真空管にほとんど電流が流れなくなっているものと思いますが、これは少し想定外。真空管にほとんど電流が流れなければノイズも出そうなものです。この後、ベース電流を減らそうとトランジスタのエミッタ抵抗を色々変えたりしましたが、20kΩの抵抗の両端電圧が少し変わるだけで、大きな効果はありませんでした。

う~ん、としばらく考えましたが、今のところこれらを解決するための良い案が浮かばず。最初の方針案にちと無理があった可能性があります。

何が無理だったかというと、主に下記のようなことです。

  • 真空管とトランジスタを直結しているため、トランジスタのベース電流Ibが、真空管の出力電流に影響する(影響が小さくなるよう、真空管にもっと電流を流すべき)。
  • フィードバックに直流も含めているので、トランジスタのコレクタ電圧が真空管のカソードにもろにかかり、真空管のカソード電位が上がってしまい、真空管に電流が流れない(上と相反する作用を及ぼす)。

ということで、この回路はちょっと無理があったかなという結論です。最初はもっとうまくいくと思ったのですが・・・残念。

そこで、一旦この回路はやめにして、また別の回路を考えたいと思います。ブレッドボードにより実験が楽になったので、ちょっといろいろ試そうかなと。

今回、ブレッドボードにしたことで、簡単にいろいろ試すことができたため、早く結論が出てしまいました。もう少し早くブレッドボードで実験できていたらと、少し悔やむものの、良いツールを得た気もしています。ところで、回路シミュレータのSPICEだともっと簡単にシミュレートでき早くわかったのでしょうかね。こちらもちょっと覗いてみるのもよさそうですね。

 

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