Nine Feet Underground - Caravan(HD)
さてさて、カンタベリー・ロック特集5回目です。
前回はソフトマシーンの3作目が傑作という話だったのですが、今回はライバルのキャラヴァンの3作目です。イギリスでゴールドディスクを獲得した名作です。
発表は1971年。邦題は「グレイとピンクの地」。直訳やないけ!と突っ込みたくなります。
メンバーは黄金メンバー、リチャード・コフラン(D)、リチャード・シンクレア(B,V)、デイブ(デイビッド)・シンクレア(k)、パイ・ヘイスティング(g,v)。管楽器はゲスト・ミュージシャンのジミー・ヘイスティング。
ジャズ・ロックにチャレンジした名作と呼ばれていますが、1曲目から説明してしまうと、初めて聴く人は面食らいます。だから、最初に紹介するのは5曲目のこの20分を超える大作、「Nine Feet Underground」!これがすごい。20分を超える長さを感じさせない出来なのです。
当時はジャズ・ロックと呼ばれましたが、これは、後のフュージョンに当たるかと思います。オルガンをメインにしたフュージョン・ミュージックです。ジャズ的でありながら、聴きやすい流れの音楽といったところでしょうか。歌の入らない演奏だけの部分が多いのですが、その展開が凝っていて、飽きがこない。もちろん、ロックっぽいところもあります。そこも実にポップで、キャッチーで聴きやすい。不思議なことに、この曲では、リーダー格のパイ・ヘイスティングのギターとヴォーカルが少しだけしか聴けない。ギターレスバンドかと思ってしまいます。本来ならギター・ソロが流れるようなところは、全部キーボード。ゆえに、他のバンドとの差別化が図れています。
この曲を聴いていると、オルガン・フュージョンの第一人者、ニール・ラーセンを思い出しますが、彼が、「ジャングル・フィーバー」でブレイクしたのは1978年です。キャラバンというか、デイブ・シンクレアはその7年前に、この演奏をしています。進んでいたんですね。他のメンバーも演奏が上手い。絶妙なアンサンブルで、並みのバンドとはレベルが違います。
Caravan - Golf Girl (1971)
実はこの曲がこのアルバムの1曲めです。ポップでのどかで、緩い感じの曲です。リチャード・シンクレアの上手くはないけど、温かみのある声が、魅力の1曲。こういうポップな曲もキャラヴァンの魅力なんですね。
プログレ原理主義者の中には、「キャラヴァンはプログレじゃない。ポップ過ぎるんだもの。」と言う人がいますが、私は、いろんな面があって楽しいバンドだと思うのです。曲が良ければ、いいのです。ちなみに、ここ日本では、ポップであることから、ソフトマシーンより人気があると思います。
Caravan " Winter Wine"
この曲も、リチャードがヴォーカルをとってるポップな聴きやすい曲です。イギリス特有の陰影のあるメロディが魅力ですね。やはり、デイブがキーボード・ソロで弾きまくっていますね。彼は、イギリスが生んだ名キーボディストだと思うのですが、キース・エマーソンやリック・ウエイクマンほど有名ではありません。知る人ぞ知る名プレイヤーですね。
Caravan - Winter Wine
ライブ・ヴァージョンを見つけました。かなり後年のライブですが、リチャード・シンクレアが歌っています。これは貴重です。やはりいい曲ですね。
最後に、デイブ・シンクレアの現在に触れておきましょう。
彼は、現在、日本に在住です。2005年にまず、京都に移住。そして、2016年から、瀬戸内海にある上島町の弓削島に日本人の奥さんの美加さんと住んでいます。最初の奥さんとは離婚し、子供たちも成人したからのようですね。現在73才。音楽活動もしているようです。カンタベリー・ロックじゃなくて、瀬戸内海・ロックになっちゃいましたね。もしかしたら、地元の人は、デイブの功績のすごさを全然知らないかもですね。
リチャードも、オランダを経て、イタリアに定住したようですね。
親類である二人のシンクレアがカンタベリーから出てしまったというのは、何か意外です。
次回のカンタベリー・ロック特集は、ソフトマシーンの4作目を予定しています。