特別エッセイ『憤怒』

また、暗いニュースが流れてしまいました。これから出勤しようとした、全国の日本を支えるサラリーマン諸氏もその家族も、この信じがたい惨劇を驚愕をもって暗澹たる気持ちで見つめたことでしょう。何が彼を凶行に走らせたのか？なぜ、罪のない多くの人が殺されたり傷つかなければならなかったのか？なぜ、国民の血税で禄をはむ警察官があれほど警戒していて、何一つ役に立たなかったのか？私の心は怒りで溢れています。犯人とその凶行は憎むべきですが、それよりもこの殺人鬼を生んでしまった現代日本の病理をなんとかせねば、また同じような惨劇が起こってしまうのではないのでしょうか？この事件のことはテレビ等で知っただけですが、私はこれが改革の名のもとに我が日本にもたらされた格差社会に起因するように思えてなりません。また、一人の武道を志す者として、あの場に居合わせたなら、理不尽な凶刃から、罪のない人を、愛する人を守れたのだろうかと、自問せずにはいられません。私の中で、武道とは理不尽な暴力に立ち向かってきた歴史に他ならず、このような時こそ、日頃の修練の力を発動しなければならないのです。その覚悟を持って、今後の稽古に臨みたいと決意を新たにいたしました。最後に、今回傷つかれた方々の一日も早い回復と、不幸にも志半ばで亡くなられてしまわれた方の御冥福を心よりお祈り申し上げます。そして、全国の国民の生命と財産を守る立場の方々、恥を知れ！