この方こそ、若かりし日の私が何度も何度も繰り返し読んだあの沢木耕太郎の名著『一瞬の夏』の主人公。そして格闘家なら誰もが歌っただろう(私も例外ではありません。)、あのアリスの不朽の名曲『チャンピオン』のモデル。元プロボクシング東洋ミドル級チャンピオン、カシアス内藤さんその人であります。今回私がお世話になったのは、E&Jカシアスボクシングジム(http://okepi.com/cassius/)でした。石川町からほど近いビルの2階にそのジムはありました。何度も読んだ本の主人公が目の前にいる。それだけで大緊張する私。声をこわばらせてご挨拶し、震える手で手土産の柿山の煎餅を渡すのが精一杯でした。60歳を超えてもその眼力は鋭く、全身からある種の人達特有のオーラを放っていました。いろんなものが刻まれた深みのある顔。全てに圧倒されながら隅っこの方でひっそり練習させてもらいました。そんな私にカシアス会長は気さくに話しかけてくれました。キックのことやタイのこと、そして『一瞬の夏』にも出てくる韓国の柳済斗選手のこと、たくさん話してくれました。ボクシングジムでこんなに優しく気さくな会長に出会ったのは、(遠縁の勝又会長以外では)初めてでした。会長はいつも笑顔で、小さい子供からA級ボクサーまで、スパーリングを観ながらアドバイスしていきます。私のみっともない1Rのスパーリングでも、クリンチした際のガードについてアドバイスしてくれました。それからしばらくサンドバックを打っていると、今度は私に近づいてきて、なんと超接近戦用のフックを教えてくれました。感激でいっぱいでした。梅田に連れられて、恐る恐る門を叩いてみて本当に良かったなと思います。
このジムは4回戦でもランカーでも、全く同じく平等に扱うのだそうです。そして、みんながそれぞれのスタンスでボクシングに真摯に向き合えば良いという理念。本当に素晴らしいと思いました。おそらく会長の恩師のエディ・タウンゼントさんの方針だと思いますが、真剣ながらもみんなリラックスした雰囲気の中で伸び伸び練習しているように思いました。全ては会長の人柄だと思います。
「またいつでも来てよ。ウエルカムよ。」会長は素敵な満面の笑顔でウインクしながら最後に私にこう言って下さいました。こんな笑顔は並大抵の男にはできません。これが男の格なのだと思いながら、梅田と二人、ビルの階段を降りました。また一つ素晴らしい出会いに感謝です。カシアス会長、カシアスジムの皆様、ありがとうございました!そして梅田よ、ありがとう。
(ロードワーク 4km)