企業システム・レビュー・ネット

企業経営を左右する企業情報システム(経営+ITソリューション)のデータバンク作りを目指す

◇企業システム◇レッドハットがソフトバンクBBおよびダイワボウ情報システムとソフト販売契約

2008-09-26 16:15:11 | システム開発

 【システム開発】レッドハットは、ソフトバンクBBおよびダイワボウ情報システム(DIS)とソフトウエア販売契約を締結した。今回国内大手ソフトウエア販売会社と業務提携したことによって、PCサーバー市場においてLinuxの普及拡大が一層図られることになる。今回の契約に基づき、ソフトバンクBBとDISはレッドハットの企業向けLinuxOS「Red HatEnterprise Linux」とミドルウエア製品群「JBoss Enterprise Middleware」をはじめとするOSS(オープンソースソフトウエア)製品のサブスクリプション販売を08年10月から開始する。今後各社が販売したレッドハット製品に関するサポートサービスは、レッドハットがユーザーに対して直接提供する。 (08年9月25日発表)

 【コメント】レッドハットはサイオステクノロジーとの提携強化を発表した後、今回ソフトバンクBBおよびDISとの間で新たにソフトウエア販売契約の発表を行った。この結果、レッドハットのソフトウエア販売は、サイオステクノロジー、ソフトバンクBB、DISの3社体制に移行することになり、大幅な販売力強化を実現させた。サイオステクノロジーとの提携の強化は、サイオステクノロジーが今回からレッドハットのミドルウエア製品「JBoss Enterprise Middleware」の扱いを開始することと同時に、Linux製品「Red Hat Enterprise Linux」は販売に専念し、サポートサービスはレッドハット自体が行うことになった。この新体制は今回契約したソフトバンクBBおよびDISでも踏襲されている。

 今回の一連のソフトウエア販売の強化策の発表は、わが国の今後の企業システム市場の動向にも影響を及ぼしそうだ。マイクロソフトは現在、企業システム市場、中でも特に中小中堅企業市場拡大を狙いに、全国の各自治体と提携するなど、活発な活動を展開している。一方、Linux陣営の雄、レッドハットはこれまで主に大手企業市場での実績を基に市場を拡大してきた。つまり、これまでレッドハットは中小中堅企業市場での実績はあまり高いとはいえなかった。ところが今回ソフトウエア販売体制が1社から3社に拡大することによって、中小中堅企業市場への浸透が急速に進展することが可能になってきた。こうなると、個人市場から中小中堅企業市場に舵を切り替えつつあるマイクロソフトと正面衝突することになってくる。

 マイクロソフトはこれまでの長い実績により独立系ソフトウエア企業との連携は十分な実績を持っている。これに対しレッドハットは大手IT企業とのパイプは強いかもしれないが、独立系ソフトウエア企業との関係はそう多くない。仮に今回の3社がフル回転したとしても、マイクロソフトのディーラーを含めたソフトウエア関連資産には到底及びそうにもない。レッドハットが今後マイクロソフトに対抗できるほどの体制づくりを考えているなら、現在全国各地に設立されているOSS組織との連携を強め、企業ユーザーにOSS導入のメリットを訴えるのが一番の近道ではないか。また、全国の地場ソフト企業は下請け体質からの脱却を目指しているところも多く、OSSにより自立したソフト企業への道を歩むことができる。(ESN)


◇企業システム◇NECが業界で初めて信用金庫のBPOを実現

2008-09-25 17:41:21 | アウトソーシング

 【アウトソーシング】NECは、愛知県下の複数の信用金庫の協力を得て、為替集中業務システムとその運用業務を一括して請け負う「信金バックオフィスセンター」を設立し、このほど愛知信用金庫ならびに尾西信用金庫向けに「為替集中業務BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)サービス」の提供を開始した。ITベンダーによる信用金庫向け為替業務BPOサービスは業界初。同サービスは、非コア業務の運用コスト削減に大きく貢献し、金融業界の業務革新を支援するもの。 (08年9月24日発表)

 【コメント】アウトソーシング事業は拡大を見せているが、中でもBPOの伸びに期待が高まっている。アウトソーシング事業というとハードウエアのみといった意味合いがあったが、BPOはアプリケーションも含めてアウトソースするもので、IT企業にとっては新分野ということができる。BPOの考え方のルーツは業種別ERPにあるといってもよいであろう。業種別ERPというのはある業種の有力企業同士が、各社の業務で共通化できる部分を共同でシステムを作成して使用する。この際、これらの業務はその業界のメイン業務でないことが条件となる。これにより参加企業は自社で開発するより、安くしかも早くシステムの導入が可能となる。

 今回、NECは信用金庫市場においてBPOを実現させることに成功した。やはりこの背景には金融機関の厳しい生き残り戦略があるのだろう。もし、信用金庫が一致団結しなければ、他の金融機関との厳しい戦いを強いられる。各信金で共通の業務の中で共通化できるものを共同で開発することによって、信金業界全体の経営基盤の強化を図ることができる。こう考えていくとBPO化が必要な業界はまだいろいろあるはずである。大手ITベンダーは昔からユーザー一社一社ごとのシステムを構築することに慣れすぎて、共通化という概念が希薄だ。一方、ユーザーもシステムの共通化のメリットについては理解しても、いざ、一歩踏み出すとなると社内外に抵抗勢力が大勢いることに気づき、そう簡単には実現できない。

 今後のシステム構築は、OSS(オープンソースソフトウエア)やSOA(サービス指向アーキテクチャー)、SaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)などを取り入れることによって大きくその姿を変えようとしている。つまり、共同開発や再利用、共同利用の概念が今後のシステム構築の主流になろうとしているのである。これまでは、OSSのような共同開発やSOAのような再利用をベースにした開発手法は夢だと思われてきた。ところが、最近、企業システムにOSSやSOAを取り入れて構築しようとする機運が急速に盛り上がってきている。BPOについてもほぼ同じことがいえると思う。システムを自社で一つ一つはじめからつくりあげる時代は、そろそろ終わろうとしているのではないか。(ESN) 


◇企業システム◇システム障害事故の多発で「事業継続」が空念仏の危機

2008-09-24 16:02:59 | 視点

 【視点】システム障害事故が後を絶たない。東京証券取引所は08年7月22日にシステム障害が発生したため、東証株価指数(TOPIX)先物や国債先物取引などの派生商品の午前の取引を停止した。また、全日空は9月14日に国内線予約システムにトラブルが発生、全国50の空港カウンターでコンピューター端末を使った搭乗手続きができなくなった。さらに、大和證券は8月20日、9月12日、9月18日と3回にわたりシステム障害事故が発生し、取引ができなくなるなどのトラブルが発生した。これらのシステム障害事故は、いずれも初歩的なミスが原因と見られており、今後も同様なシステム障害事故はなくなりそうもない。原因としてソフト開発者の数の不足を挙げる向きもあるが、今回の3社の事例を見ると“数”の問題ではなさそうだ。今、「事業継続」が大きな課題として各企業に突きつけられているが、これらの事故の続発で「事業継続」は空念仏に終わりかねない。

 東証の事故は、新ソフト導入時、システムのメモリー処理能力を1280バイトとすべきところを4バイトと間違えてプログラムを設定したことによる。全日空の事故は、外部から購入した端末認証管理サーバーの暗証管理の機能の期限が1年で切れることを見逃したことによるもの。大和證券の9月12日の事故は、株式注文システムのプログラム変更作業時の設定ミスが原因。いずれもうっかりとしたミスであり、今後同様なトラブルがなくなる保証はまったくない。ないどころか、今後同様な事故は必ず起きると見たほうが正しいようである。よく、国内には約50万人のソフト開発者がいるが、あと15万人が必要などのようなことがいわれるが、今回の3社の事例を見る限りではいくらソフト開発者数を増やしても、システム障害事故はなくならないと見た方がいい。

 ソフト開発者の数を増やしてもシステム障害事故がなくならないとすれば、どうすればよいのであろうか。システム障害事故をなくす前提条件として、原因をIT(情報技術)に求めないことが肝要だ。ともすると、システム構築の仕様書の細目の再検討だとか、定義の問題なので解決を図ろうとするが、これをいくらやってもまた別の原因でシステム障害事故は必ず発生する。つまり、いたちごっこに陥るのが関の山だ。システム障害事故の原因は人間の注意力の限界を突いて起こるのであるから、この対策を打たなければならない。人間の注意力には限界があるのだから、事故が起きるのが当たり前のことと割り切って対処することが肝心だ。

 有効な対策の一つはチェックを一人でやっていたなら複数でチェックをする体制に移行させることだ。これでも期限切れの見逃しは起きることは避けられそうにもない。なぜなら一人が見落とすということは、二人でも、三人でも見落とす可能性が高いからだ。次に打たねばならない手は、過去日本および世界で起きたシステム障害事故の事例集を作成し、システム構築終了後に、これを基に徹底的にチェックをすること。これによって、少なくとも二度同じ過ちをすることだけは避けられる。そして、システムダウンは起きないではなく、「起きる」と考えを変え、起きたときいかに最短時間で立ち上げるかを、あらかじめ想定しておくことだ。いずれにしてもシステム障害事故はITの問題なんだという固定概念を払拭しなければ、今後も同じ事故は必ず起きることだけは確かなことだ。(ESN)


◇企業システム◇米マイクロソフトと米ノベル、共同開発した仮想化ソリューションの提供開始

2008-09-22 15:46:51 | 仮想化

 【仮想化】米マイクロソフトと米ノベルは、ミクストソース環境を運用するユーザー向けに最適化された、両社の共同開発による、Windows環境とLinux環境の連携用機能を持つ仮想化ソリューションの提供を開始した。同ソリューションには、マイクロソフトの仮想化ソフト「Hyper-V」の仮想化機能を備えたマイクロソフトのサーバーOS「Windows Server 2008」上で稼働するゲストOSとして構成され、ノベルのSUSE Linux Enterprise Serverが含まれる。両社が設立した「インターオペラビリティラボ」において、両社のチャネルパートナーが同ソリューションのテストや検証を実施し、かつ全面的なサポートを提供する。 (08年9月17日発表)

 【コメント】06年11月にマイクロソフトとノベルは電撃的な提携を行い、業界に大きな衝撃を与えた。それは、ちょうどマイクロソフトとLinux陣営とが激しく対立していたときことで、この提携によりWindowsとLinuxの対立の構図というものが、一瞬のうちに消滅したかのような印象を与えてしまうことになった。リナックス陣営の盟主はなんといってもレッドハットで、マイクロソフトも真の敵はレッドハットと認識している。マイクロソフトとしてはレッドハットと正面衝突したのではマイナス面が多すぎる。そこで“敵の敵は味方”の論理に従い、ノベルを取り込むことことによって、マイクロソフトは正面ではなく側面あるいは背面からレッドハットと対決しようとした。

 マイクロソフトはノベルと提携したことにより、労せずにLinuxのノウハウを手に入れられるばかりでなく、LinuxユーザーにWindows関連ソフトを広められる可能性が出てきた。一方、ノベルはこのままいけばLinuxでレッドハットに完全に牛耳られ、将来日の目を見ることはなくなる。そこで、マイクロソフトと手を結ぶことによって、劣勢を一挙に逆転する戦術に出た。つまり「WindowsとLinuxの混在環境のソリューションはノベルが一番」とアピールすることができるからだ。マイクロソフトとノベルは、06年11月に「仮想化」「システム管理の標準化」「識別情報の統合」「文書フォーマットの互換性確保」の4つのテーマで提携し、その後両社は「Moonlightマルチメディアフレームワーク」「アクセシビリティ技術」「Microsoft System Center向けのSUSE Linux Enterprise Server管理パックの新規提供」の3つのテーマを追加している。

 今回両社が仮想化ソリューションを発表した意義は大きいものがある。つまり、今後の100%Windows、あるいは100%Linuxという企業ユーザーは少なくなり、混在環境のユーザーが多数を占めると思われるからだ。この際、Windows環境とLinux環境の統合機能を持つ仮想化ソリューションは大いに威力を発揮するものと思われるからだ。これに対してレッドハットがどのような対抗策を打ち出すのかも興味深い。さらに、既にマイクロソフトが打ち出している「Server Virtualization Validation Program」がどのように拡大していくのかもLinux陣営とのシェア争い上から興味深い。(ESN)


◇企業システム◇サンがコンテナ型仮想化データーセンター08年10月から出荷開始

2008-09-19 16:15:10 | システム運用管理

 【システム運用管理】サン・マイクロシステムズは、コンテナ型仮想化データセンター「Sun Modular Datacenter(Sun MD)」の国内販売を、08年10月から開始する。「Sun MD」はデーターセンターそのものをモジュール化(ユニット化)することで、データセンターを建造物から切り離し、データーセンターそのものを仮想化することで可搬性を実現し、より早く、低コストでデーターセンターを提供することができる。本体の国内販売標準価格は9865万8000円からで、受注から納期は標準で約10週間ほど。 (08年9月17日発表)

 【コメント】現在のデーターセンターは1台のサーバーごとに1つのアプリケーションが搭載され、平均サーバー利用率は5-15%といわれる。また、ストレージやPCはシステムごとに分断され、この結果サーバー/ストレージ管理が複雑になっている。これに対し、データセンター自体が仮想化されると①新アプリケーションの追加が容易②消費電力当たり性能に優れたサーバーの導入③統合化されたストレージ資源の最適化④デバイスに依存しない環境の提供⑤ビジネス変化に対応できる資源の追加―などが実現可能となる。この結果、システム資源の最適化が図られ、消費電力を考慮したデータセンターの実現が可能となる。「Sun MD」の仮想化は、サーバーの仮想化、ストレージの仮想化、デスクトップの仮想化の3つからなっている。

 「Sun MD」S20は、高密度、高エネルギー効率のデーターセンターを機能拡張した20フィート輸送用コンテナに組み込み迅速で容易な展開を可能にしたモジュラー化データセンター。スレッドレベルでの並列化によりCPUリソースをフルに使い切ることができる。従来のデーターセンターと比べ1/8のスペースで4倍の高密度を実現している。8ラックを標準搭載し、最大60A/200V2系統/ラックの電力供給で、独自の閉ループの水冷システムにより消費電力は0.38W(通常は0.67-0.65W)で済む。フェーズ1では①サーバー数約半分、能力450%以上向上②ストレージ機器数約1/3、容量は240%以上増加③60%以上のエネルギーコスト削減④データーセンター面積を88%削減⑤年間3227トンの炭酸ガス放出量を削減―できる。またフェーズ2では①年間光熱費をさらに30%削減②炭酸ガスをさらに年間876トン削減―することにしている。

 地球温暖化対策が叫ばれる中、データーセンターの省エネルギー化が今後強く求められることになろう。既にベンダー各社は省エネ型サーバー類を開発し、販売を強化し始めている。勿論サーバー単体でも省エネは実現で得きるが、サンの発想はサーバー単体だけではなく、仮想化技術を駆使することによりデーターセンター全体を省エネ化するという、これまでの発想とはまったく違うところがポイントだ。地球温暖化対策と事業継続の2つのニーズにより、データーセンター自体のあり方が、根本的に変わろうとしている。(ESN)


◇企業システム◇日立情報システムズが中国に続きベトナムにオフショワ開発センター開設

2008-09-18 15:33:47 | システム開発

 【システム開発】日立情報システムズは、ベトナムのホーチーミン市にオフショア開発センタを開設した。同センタは現地ソフト企業のFTPコーポレーションのホーチミン支社内に開設し、技術者教育を主体にセンタの生産性向上と品質管理強化を推進する。これは今年7月に中国済南のオフショワ開発センタに続くもの。同社では海外リソースの有効活用と原価低減のため、中国・インドなども含めたオフショア開発を強化する。これにより、オフショワ開発要員を2010年までに2000人体制とする方針。 (08年9月18日発表)

 【コメント】日本の大手IT企業のオフショワ開発(海外でのソフト開発)が急ピッチで拡大している。これまでは進出先は中国が多かったが、日立情報システムズのように、最近ではベトナムへの進出の事例も多くなってきている。今後はさらにインドなどへの進出が多くなることが予想される。同社ではオフショワ開発要員を2010年までに2000人体制を目指すという。オフショワ開発は当初中国への進出が多かった。これは同じ漢字文化ということが根底にあったからだろう。しかし、インド企業などは、現地人に日本語教育をしてまでも日本のソフト受託を狙っている。この理由は、米国一辺倒であると、今回のサブプライムローン問題のように、米国の経済不況の波をもろにかぶりかねない。そこで、インド企業は日本市場に熱い視線を向けているのである。

 日立情報システムズは日本のITサービスの現状を「高品質で低コストのITサービスの提供やSE不足への対応が課題になっている。こうした厳しい環境下でビジネスを継続・成長させていくためには、オフショワ開発の推進が不可欠」と指摘している。これまで日本のソフト産業は日本語という城壁に守られて、平穏な日々を過ごしてきた。これはあたかも刀を抜かずに済んだ江戸時代の武士のようなものである。ところがこれからは黒船が日本のソフト市場を狙って次々に上陸してくる。この背景には日本の大手IT企業のバックアップ=オフショワが黒子として活動するわけなので、日本国内にいるとさほどに感じないかもしれない。しかし、日本の中小ソフト企業の仕事は、徐々に海外に持っていかれてしまうことだけは確かだろう。

 そこで、日本の中小ソフト企業の生き残り策が問題となってくる。今まで通りに大手SI企業の2次請け、3次請けに甘んじていていいのであろうか。やはりここで、何らかの手を打たないと将来生き残れなくなりはしまいか。そこで、今模索されているのが地方自治体との連携の下にオープンソースソフトウエア(OSS)を武器に、中小ソフト企業が下請け体質から抜け出し、自立できるかどうかと試みである。長崎県、福岡県、島根県など地場ソフト産業の育成に熱心に取り組み始めた自治体も出てきた。農業を見ればお分かりの通り、今あらゆる産業が世界市場との軋轢にもまれて、日夜努力をしている。ようやくソフト産業も他産業並みにグローバルな荒波に立ち向かおうとしている。(ENS)


◇企業システム◇SAPジャパンと日本HP、エンタープライズSOAで協業

2008-09-17 16:22:10 | ERP

 【ERP】SAPジャパンと日本HPは、企業のSOA(サービス指向アーキテクチャー)導入を推進するため、エンタープライズSOA導入支援コンサルティング分野での協業を開始する。両社でエンタープライズSOA導入支援コンサルティングを行う専任コンサルタントチームを置き、共同販促活動を行う。同時に新サービス「Enterprise SOAワークショップ」を開始する。さらに日本HPの「SOAコンピテンシー・センター」内に「Enterprise SOAエクスパティーズ・センター」を開設する。 (08年9月17日発表)

 【コメント】今、企業システムは嵐の前の静けさの中にあるといえる。嵐とは何かというと①SaaS②SOA③オフショワ開発の3つに代表されるシステム開発に関する“革命”の起爆材を指す。SaaSはセールスフォース・ドットコムのCRMの成功で一躍注目を集めたが、セールスフォースは最近では盛んにPaaSという言葉を使い始めている。これは開発環境をネットを介して提供しようという試みで、同社ではソフト開発環境を大きく変えると主張している。この考え方はサンなどが前から模索してきたものある。もうソフトはパッケージを買ってきて使うのではなく、ネットを介して必要なものを必要に応じて使う時代へ徐々に移行しつつある。グーグルなどは既にオフィスソフトなどを無料での提供に踏み切っている。

 オフショワ開発は、日本のソフト企業にとって今後大きな壁になって立ちはだかることが予想される。このことはSOAの普及と密接なかかわりを持ってくる。従来、企業のアプリケーションは一塊の岩のような存在で、外に持ち出すなどのようなことは現実的はなかった。つまり、日本のソフト企業でなければ、企業に対する十分なサポートは不可能であった。しかし、SOAが普及すると様相はがらりと変わる。大きな岩のようなアプリケーションでも、細かな石の単位で開発すれば済む時代が近づいている。つまりソフト開発は何も日本国内でしなければならない状況ではなくなってきつつあるのである。

 そして、本命のSOAの普及だ。今回日本HPとSAPジャパンがSOA事業で提携したのは、Webサービス準拠のNetWeaverの普及の延長線上にある取り組みで、SAPジャパンが本格的にSOAへの傾斜を進めようとする意思表示でもある。SAPはパッケージソフトで世界有数のソフト会社に上り詰めた。そのSAPがパッケージソフトというビジネスモデルを自ら脱ごうとしている。もうこれ以上パッケージソフトという商品にしがみついていたら負けてしまうという結論に達したのであろう。これからは、既存のソフトを組み合わせてアプリケーションを構築する時代へと向かう。この流れは企業の情報システム部門にも大きな変革を促す。ソフト開発がメーン課題ではなくなり、企業が要求する課題に対し、どのようなシステムを構築するのかがメーンの課題となってくる。正に今、企業システムは嵐の前の静けさにあるといえる。(ESN)


◇企業システム◇ウルシステムが東邦チタニウムの生産管理システムをアジャイル開発手法などで構築

2008-09-16 16:27:54 | ユーザー

 【ユーザー】ウルシステムは、東邦チタニウムの生産管理システムを構築し、08年4月に竣工した新工場を皮切りに、順次3工場で予定通り稼働したと発表した。ウルシステムは知的資産「ULBOK」をベースとした独自のコンサルティング手法で、チタンインゴット生産管理システム構築を包括的に支援し、同プロジェクトを成功させた。これは①ユーザー部門とIT部門が協働して業務モデルを再定義して課題解決を行う手法を推進②アジャイル開発の手法を用いて、1カ月単位で細かく構築し、発生した要望を継続的に取り入れていくことで、業務とのズレのないシステムを実現―したもの。これにより、営業・購買・運輸・品質保証・製造・技術などの各部門に必要な業務情報の一元化や、リアルタイムな可視化が可能になった。 (08年9月11日発表)

 【コメント】企業システムの構築は、単にITのノウハウがあっただけでは駄目であり、また、経営ノウハウだけでも駄目なのである。この辺が分かっているようで、まだまだ分かっていない企業が多い。最近になりようやくCIO(チーフ・インフォメーション・オフィサー)への関心が高まるなど、実際に経営に役立つシステムづくりへの取り組みが強化されようとしている。何故こんな自明なことを今頃になって言わなければならないかというと、IT部門と業務部門が水と油みたいな関係にあったからである。これまでIT部門は“ITおたく”みたいな社員が多く、一方、業務部門には“アナログ社員”が多く存在していた。しかし、社会のIT化の急速な流れはこのような状況を一変しつつある。そろそろアナログ人間であると、社会生活もままならない時代に入りつつある。銀行の手続きも自宅のPCから行うことになりつつあるし、各自治体への書類の申請も自宅のPCから行うことが当たり前になってこよう。

 アナログ人間は、好むと好まざるを得ず自然淘汰で急速に減少するから問題ないが、意外に厄介なのが“ITおたく”の存在だ。つまり、関心があるのはITだけで、企業経営にはさっぱり興味がないという社員の存在である。しかし、これも状況は急変している。原因は情報システムが企業や公共機関の中枢を担い始めてきたからだ。大昔は企業の情報システム部門は“不要不急部門”といわれ、あればあったでいいが、なければなくてもいい、といった存在であった。ところが、最近の企業システムのトラブル―東証や全日空の事例―を見れば明らかなように、一旦企業システムがトラブルを起こせば社会活動がストップしてしまうまでになっている。

 今回、東邦チタニウムのシステムを構築したウルシステムは、ユーザーの要求定義について長年取り組んできた数少ないソフト企業で、IT部門と業務部門が徹底して意見を出し合い、経営に役立つシステムづくりを成功させた。これからの企業システム構築は、あくまで業務改革(BPM)が中心で、システム思考ができなければいくらITに長けていても、その存在意義はだんだん薄くなろう。また、今回アジャイル開発手法を選択したことも注目される。最初からシステム全体を厳密定義するウオーターフォール型開発でなく、徐々に開発していくことにより、最終的には最適なシステムを開発しようという試みだ。船も最初から航路ががちっと決まっているわけでなく、いろいろな条件を解析しながら最適航路を決めていく。これと同じように、企業システムもいろいろな条件を煮詰めながら、最適システムに行き着くアジャイル開発手法を、もっと取り入れてもいいのではなかろうか。(ESN)


◇企業システム◇日本CIO連絡協議会が「グリーンITについて」のアンケート結果発表

2008-09-12 17:14:36 | システム運用管理

 【システム運用管理】地球温暖化対策として二酸化炭素排出量規制の動きに注目が集まっている。06年度の二酸化炭素排出量を部門別に1990年度と比較すると、工場部門が4.6%減少したのに対し、情報システム部門を含むオフィスなど業務部門は39.6%増加という結果が出ている。つまり、IT機器が増加・高機能するに従い、エネルギー使用量や二酸化炭素排出量が増加するわけである。一方、日本政府は温暖化ガス削減目標の達成に向け、ITを活用した省エネ活動を推進するため、環境対応を優先した「グリーンIT」への取り組みを行っている。このように、IT機器は地球温暖化対策にとって密接なかかわりを持っていることが分かる。このようなことから今回、日本CIO連絡協議会では各企業の情報システム部門に対し「グリーンITについて」のアンケート調査を行い、その結果を公表した。 (08年8月19日発表)

 【コメント】地球温暖化対策=二酸化炭素削減が大きな課題として浮上してきている。テーマがあまりにも大きなものだから具体的にどう行動すればよいのかが分からない。ノーネクタイで室内温度を28度にしてどのくらいの二酸化炭素削減効果があるのか、あまり成果は聞いたことがない。悪く見れば省エネ対策はしていますよというポーズに過ぎないなどと考えてしまう。このような状況で各企業の情報システム部門にとっても二酸化炭素削減対策はそう簡単なことではない。IT機器であるサーバーやPCが多くの電力を食うことは論を待たない。今後、情報システム部門に対し電力の削減要求が高まってくることは目に見えている。

 今回、日本CIO連絡協議会が「グリーンITについて」のアンケート調査を情報システム部門に対し行ったことは、正にタイムリーであった。IBMをはじめ多くのベンダーがグリーンITに対して取り組みを強化し始めているが、本質的にベンダーはIT機器を大量に使ってほしいというのが本音である。つまり、グリーンITを本当に推進するにはユーザー、もっと具体的に言えば各企業の情報システム部門が最もふさわしい。ところがこれまでベンダー側のグリーンITについての対応は聞けても、ユーザー側はというと沈黙を守ってきた。今回のアンケート調査の結果からユーザー側の実情が多少なりとも窺えたのは意義があろう。

 「二酸化炭素削減のマネジメントは」の質問の回答が「計画なし」が49%、「実施済み」が31%であった。計画なしが約半数もあるとは驚きだ。「情報システム部門の温暖化対策は」の質問の回答が「サーバーの電力削減」「外部記憶装置の電力削減」について計画中と回答した企業が多かったのには頷ける。二酸化酸素削減はまず電力の削減が一番手っ取り早い。「PCは必要以外はスリープ状態にする」「サーバーの統合を行う」については実施中の回答が多かった。PCをスリープ状態にさせることは直ぐに効果を引き出せるし、サーバーの統合は、現在仮想化に対するニーズが高いことからも裏付けられる。「温暖化対策予算を独立で計上しているか」の質問に対し、イエスがゼロであったことは対策の本格的な取り組みはこれからということだろう。(ESN)


◇企業システム◇宅配便のヤマトグループがWeb対応リアルタイムバックアップシステム構築

2008-09-11 16:18:03 | ユーザー

 【ユーザー】宅配便のヤマトグループは、2カ所の遠隔地のデータセンター間でWeb業務システムのリアルタイムバックアップを行う災害対策システムを構築した。これはヤマト運輸の宅急便事業を支える基幹業務システムで、ヤマトシステム開発と富士通が共同で構築したもの。同システムでは、業務単位のデータベース(ロググループ)を構成しており、このロググループ単位で、業務の重要度に応じて、バックアップ先やバックアップのタイミングを設定することができる。また、ロググループ単位でのデータベース管理が可能なため、一部業務だけをサブデータセンターに切り替えることができる。さらに、データベース更新時に生成される更新差分のログファイルのみをリアルタイムに転送することができる。 (08年9月9日発表)

 【コメント】日本は地震の活動期に入っているいわれており、毎日のように地震のニュースが流れている。また、地球温暖化のせいか、各地で集中豪雨が頻発している。このような自然災害に際して、事業継続はこれからの企業活動にとって避けて通れない重要課題だ。さらに、システムが巨大化、複雑化するに従い、証券市場や大手都銀の勘定系システムがシステムダウンするケースも増えている。少し前にはシステムのトラブルで航空機の運行に支障を及ぼす事例もあった。

 このような場合、バックアップシステムがしっかりしていれば最悪の事態は避けれるが、そうでない場合はその企業の信用はたちどころに失墜してしまう。つまり、これからの企業システムにとって、いかに優れたバックアップシステムを構築し、事業継続を実現させるかが大きな課題として浮かび上がってきている。もちろん従来からディザスターリカバリー(災害復旧)システムは重要なテーマであったわけではあるが、最近はWebシステムでの迅速なバックアップシステムのニーズが出てきている。

 この意味で今回ヤマトグループが構築した、Web業務システムのリアルタイムバックアップシステムは、今正に各企業が導入しなければならない要件を満たすものとして、高く評価されうる災害対策システムとなっている。同システムのポイントは業務単位のデータベースを構成していることで、これにより業務ごとに異なるバックアップを可能とした。また更新差分だけデータを転送すればいいので効率的だ。よくバックアップシステムは構築しているのだが、実際の運用に支障があり、いざという時に役に立たないというケースも多い聞く。今後実践的なバックアップシステムをいかに構築するかが問われることになろう。(ESN)