【ユーザー】総合ロックメーカーのアルファ(横浜市)は、このほど基幹業務ソフトウエアとしてSAP ERPの採用を決定した。09年4月に国内、2010年中にはすべての海外拠点で本格稼動し、会計や生産管理などすべての業務管理をグローバルレベルで統合する予定となっている。新システム構築に当たっては、SAPのテンプレートに自社の業務管理を合わせるという手法で社内の業務改革にも取り組む。これにより、全社的に作業時間とコストの削減などを目指すことにしている。 (08年8月25日発表)
【コメント】総合ロックメーカーでグローバル企業のアルファがSAP ERPを採用し、新基幹システムを構築する背景には、現在各企業が抱えている多くの問題が隠されている。まず、グローバル対応である。これからの日本の企業は国内市場だけに頼っていては生き残れないことは、最近頻繁に起こっている食の安全の問題をみれば歴然だ。国内市場だけで安定した利益を上げるには、法令違反をしなければやっていけない状況に陥っているのである。このためこれからの企業にはグローバル化が求められるが、そのノウハウをどうするか。今回、アルファはアジア諸外国の言語や通貨、そして法規制にも対応できることから、SAP ERPを選択した。これからのシステムは処理速度やボリュームより、アプリケーション内容によって選択しないと経営上の導入効果は得られない。
次に必要なのはBPM(ビジネスプロセスマネジメント)すなわち業務改革だ。アルファではSAPのテンプレートに自社の業務管理を合わせるという手法を選択した。これも賢明な選択だと思う。業務の見直しは部分部分をつぎはぎしたのでは、経営上の効果は得られにくい。社内会議をいくら開いても各部門ごとに意見が異なり、それらをまとめても妥協案しか決まらない。そうであれば全面的にSAPのテンプレートによった方がよっぽど効果が出る。
アルファはSAP ERPを導入して次のような効果を期待しているという。①全社的な作業時間とコストの削減②予実差異分析③適正な在庫管理とリードタイム短縮④生産管理、会計のさらなる精度向上⑤予算の早期化⑥内部統制・コンプライアンスの強化。これらはすべて経営上の課題であって、ITは表面には出てこない。これこそ、これからの企業システム構築のあり方である。企業システムを構築する時に陥りがちなのはIT用語を知っている社員だけが発言し、その結果、出来上がったシステムはどんな効果を経営に与えるのか明確でない場合が多い。これからの企業システム構築は、まず経営上の課題の解決を第一義的に置き、それを支えるものとしてITを検討する、といった配慮が欠かせまい。この逆を行うと、出来上がったシステムが単なる金食い虫になってしまう。(ESN)