企業システム・レビュー・ネット

企業経営を左右する企業情報システム(経営+ITソリューション)のデータバンク作りを目指す

◇企業システム◇富士通、農業支援システムをクラウドで提供

2010-04-06 14:58:14 | クラウド・コンピューティング

 【クラウド】富士通は、JAグループ・農業生産者・農業法人・小売業など農業分野の業務を支援するクラウドサービス「F&AGRIPACKシリーズ(エフ アンド アグリパック シリーズ)」の提供を開始する。同シリーズは、農業の「経営の見える化」「生産の見える化」「顧客の見える化」を支援するもの。同社データセンターを利用したSaaSで提供することにより、利用者はインターネットに接続されたパソコンから、簡易にサービスを利用することができる。今回、その一環として、農業独自の会計や給与計算、税務申告などの業務を支援するSaaS「F&AGRIPACK 経営管理」と、農産物の生産履歴情報を管理し、食の安心安全を支援する「F&AGRIPACK 栽培管理」を、JAグループ・農業生産者・農業法人・小売業向けに提供開始する。(富士通:10年4月5日発表)

 【コメント】コンピューターシステムは、社会のあらゆる場面で使われ、もうこれ以上未開拓市場はないように感じられるが、意外にまだ開拓されていない市場はある。その代表的な市場が農業である。農業は天候に大きく左右されるため、一見するとコンピューターシステムの入り込む余地はなさそうにみえるが、実際はその逆で、センサーを含むコントロールシステムが開発されれば、大いにコンピューターシステムの活用の場面は多いことが分る。

 富士通は、今回農業にターゲットを当てたソリューション「F&AGRIPACKシリーズ」の提供を開始した。同シリーズは、農業分野向けの業務支援サービスとして、①「経営の見える化」(適正な経営分析による経営改善)②「生産の見える化」(品質の向上/生産性向上/食の安全・安心確保)③「顧客の見える化」(販路拡大/消費者ニーズの把握/付加価値販売)の3つの見える化を実現するという。見える化は、企業システムにとっての大きな課題の一つになっているが、農業おいても大きなテーマであることが、ここから読み取れる。また同シリーズは栽培管理としては①記帳運動の定着化を支援②農産物の安全性の確保③農業法人の経営安定化を支援の3つの機能も提供する。こうやって見ると、農業はコンピューターシステムの支援が欠かせない市場であることが分る。つまり、工場と変わらない側面を持ち合わせている。

 農業といえば、今話題となっているのがビルの室内での農耕栽培である。近い将来、日本でつくられる農作物の多くがビルの室内で栽培されるかもしれない。これを可能にした一つがコンピューターシステムであり、光や温度の調節を行うコントロールシステムである。もうこうなると、単なる農業の支援システムどころか、農業そのものがコンピューターシステムによってつくられることになってくる。

 今回の富士通の「F&AGRIPACK シリーズ」の最大の売りは、やはりクラウドによる提供であろう。企業システムの場合は、情報システム部門があって専門家がユーザーの立場で対応ができる。しかし、農業の場合、コンピューターシステムの専門家はいない場合に方が一般的だ。そうなるとクラウドの持つ意味合いが本当に生きてくる。さらに、富士通は全国のソフト子会社と連携して同シリーズの拡販を狙う。全国各地にあるソフト会社は、いわば地場産業である。となると地域密着の体制づくりで農業と対応可能なのだ。こう見ていくと、コンピューターシステムと農業は相性が合わないどころか、非常に近い関係になってくる。農業以外に同じような市場がまだあるのではないだろうか。(ESN)


◇企業システム◇マイクロソフト、プラットフォーム・クラウドの本格的事業開始

2010-02-24 07:12:18 | クラウド・コンピューティング

 【クラウド】マイクロソフトは、クラウド コンピューティング プラットフォーム「Microsoft Windows Azure Platform」について、日本市場向けの製品サイトの開設、技術情報の提供や開発者支援策の提供などを通して、日本市場において本格的に事業展開を開始する。現在までに、50社のパートナー企業がWindows Azure Platformの採用や対応アプリ-ションの開発について表明している。同社では今後もパートナー企業を拡大するとともに、各社と日本市場でのWindows Azure Platformの導入を推進していくことにしている。(マイクロソフト:10年2月22日発表)

 【コメント】いよいよマイクロソフトが、クラウドのプラットフォームサービス事業に本格的に乗り込んできた。これまで、グーグルやアマゾンのプラットフォームのクラウドサービスをじっと睨んで、満を持してのサービス開始だけにマイクロソフトとしても力が余計入るであろう。今回の発表にあたり、マイクロソフトは、次に挙げる4社をはじめ、多くの企業においてWindows Azure Platformの検証および早期導入が進んで入ることを明らかにした。導入ユーザー名を挙げたのは次の4ユーザーだ。①グーモ(クラウドベースの動画配信サービス) ②ソフトバンク クリエイティブ(Webメディア用途のコンテンツマネジメントシステム) ③宝印刷(企業情報開示支援サービス)④富士通システムソリューションズ(ERPパッケージのクラウドマイグレーション)。

 マイクロソフトでは、Windows Azure Platformを導入することにより、次のようなメリットを得ることができるとしている。ユーザーは、時間や場所を選ぶことなく、PCや携帯電話、テレビなど様々なデバイスからWindows Azure Platform上のアプリケーションやデータにアクセスすることが可能。開発工数の削減や柔軟なシステム構築が可能になる他、従量制の料金体系により一時的な利用が可能であるため、大企業だけでなく、中堅中小企業やベンチャー企業など、企業の規模に関わらず、Windows Azure Platformの導入を通してビジネス機会の拡大を図ることが可能となる。

Windows Azure Platformは、全世界のマイクロソフトのデータセンターをベースに、ユーザーにインターネット経由でコンピューティング リソースを提供するクラウド コンピューティング プラットフォームであり、クラウド オペレーティングシステムであるWindows Azureとクラウド データベースであるSQL Azureなどが含まれる。ユーザーは、必要に応じて必要な分だけコンピューティングリソースを利用する事が可能なだけでなく、現在利用中の自社運用(オンプレミス)環境にあるサーバーやソフトウェアとクラウドをシームレスに組み合わせて運用する事が可能ーーとマイクロソフトは謳っているが、ユーザーとしてはセキュリティ対策は大丈夫かという問題が常に付きまとう。

 その解決策の一例として同社は、今回宝印刷(本社:東京都豊島区)の導入事例を公開した。同ユーザーのシステムでは、マイクロソフトがWindows Azure Platformに関する技術情報を提供するとともに、日立システムが提供する企業内システムとクラウドコンピューティングを最適に組み合せる「ハイブリッドインテグレーション」を適用し、企業システムをWindows Azure Platform上に構築するためのノウハウを提供することで、Windows Server上で動作する.NETベースの既存アプリケーションを短期間でクラウド上に実装することができた。また、ユーザーのニーズに沿ってデータベースは国内の自社運用型システムに配置したまま、利用ピークが
限られるアプリケーション部分をクラウド上に配置するハイブリッド方式のクラウドシステムを構築している。これは、オンプレミスとサービスをシームレスに組み合わせ、ユーザーにとって最適なシステムを「ソフトウェア+サービス」の考え方に基づき具体化したシステム。

 今後、ユーザーは、既存のオンプレミスシステムと新しいクラウドシステムを如何に組合すことによって、セキュリティを確保できるかのノウハウを取得することが急務となろう。(ESN)


◇企業システム◇NEC、マイクロソフトのクラウド「BPOS」のセールスをスタート

2010-02-01 09:35:14 | クラウド・コンピューティング

 【システム開発】NECは、Microsoft Officeをプリインストールした企業向けPCの拡販推進のため、マイクロソフトと、同社の企業向けオンラインサービス「Business Productivity Online Suite(BPOS)」の小規模企業・SOHO向けの販売で協業する。同協業により、NECはBPOS導入の支援体制やサービスを整備し、企業向けPC「Mateシリーズ」「VersaProシリーズ」とBPOSを組み合わせた提案を本格化することで、小規模企業・SOHO向けのPC販売を強化する。(NEC:10年1月25日発表)

 【コメント】最近、中小・中堅企業向け市場が注目されている。しかし、それはベンダー側からの一方的願望に過ぎない場合が多い。というのは、リーマンショック以来、大手企業向けの市場の伸びにブレーキが掛かり、一部の大手ベンダーはこのピンチを何とか切り抜けようと、急に中小・中堅企業向け市場への取り組みの強化を打ち出しているからだ。しかし、長年にわたり大手企業ユーザーを相手にシステム構築を行ってきた一部の大手ベンダーが、急に方向転換して、中小・中堅企業ユーザーの開拓に力を入れても、そう簡単に市場を獲得できるものではない。中小・中堅企業ユーザーは、コンセプトがどうのこうのなどということを言っても、何の反応も見せない。要は、システム構築に要した金額だけの見返えりが明確になるかどうかだけだ。

 このような、観点からすると今後クラウドが中小・中堅企業ユーザーに与える影響は、小さくないと考えられる。マイクロソフトでは09年4月から、企業向けソフトウェアの機能をマイクロソフトの運用するデータセンターからネットワーク経由で提供する「Microsoft Online Services」の第1弾として、「Microsoft Exchange Online」「Microsoft Office SharePoint Online」 などを含む「Microsoft Business Productivity Online Suite(マイクロソフト ビジネス プロダクティビティ オンライン スイート=BPOS)」の提供を開始した。これまでは、ユーザー側にサーバーを設置するか、アウトソーシングでユーザーに提供するかの選択肢しかなかったが、今後はこれに加え、クラウドによる提供の選択肢が増えることになるが、中小・中堅ユーザーがクラウドに対し、どのような対応をするのかまだ未知数のところがある。

 今回、NECはこの未知数の分野への挑戦を行うことになる。BPOSは、マイクロソフトの企業向けオンラインサービスである「Microsoft Online Services」のうち、以下の4つのサービスをセットにしたものであり、NECは月額1,044円/1ユーザで利用できる点を強調する。(1)グループウェアサービス「Exchange Online」(2)社内情報共有サービス「SharePoint Online」(3)インスタントメッセージや在籍情報などのサービス「Office Communications Online」(4)Web会議サービス「Office Live Meeting」。

 通常、ファイル共有やテレビ会議などを実現するには専用のサーバを導入する必要があったが、BPOSは、PCにOfficeがインストールされていれば、サーバを用意することなく様々なサービスを利用できるところが、ミソである。マイクロソフトは「今後ともNECと戦略的な協業を行い、企業向けPCとBPOSの活用による中小企業の活性化への貢献に取り組んでいく」とアピールしているが、果たして、中小・中堅企業は、BPOSへどのような反応をみせるのか?こればっかりは、実際に行動に移さない限り、中小・中堅企業からの明確な回答は得られまい。(ESN)


◇企業システム◇セールスフォース・ドットコムが「OEMパートナー・プログラム」を発表

2009-12-21 09:15:18 | クラウド・コンピューティング

 【クラウド】セールスフォース・ドットコムは、クラウド型のビジネスアプリケーション開発および提供を支援する「OEMパートナー・プログラム」を発表した。同プログラムは、システムインテグレーターやISV(独立系ソフトウェアベンダー)が、ERP(統合基幹業務)や人材管理などのアプリケーションをエンタープライズ・クラウドプラットフォーム「Force.com」上で迅速かつ低コストで開発して市場全般に提供できるようにし、パートナー企業のクラウドビジネスを支援するもの。すでにNEC、日立ソフトウェアエンジニアリング、富士通、ジラッファ、日本オプロがOEMパートナーとしてアプリケーションの開発・提供開始を決定している。(セールスフォース・ドットコム:09年12月15日発表)

 【コメント】クラウドがどこまで普及に加速度をつけるのかが、企業システムの2010年の最大のテーマになりそうな情勢になってきた。09年はベンダー各社が先を争ってクラウド製品やサービスの発表を行い、“クラウド元年”の様相を深めた。つまり、これまで長年にわたって自社導入が基本となってきた企業システムは、自社にはサーバーは置かずに、外部のセンターのサーバーを使い、ソフトウエアについてもSaaS化した製品を導入するスタイルが、本当に企業システムの当たり前の姿となるのかどうかが、2010年には問われることになってくる。言ってみれば、企業ユーザーは、ベンダー各社が提案したクラウド製品を導入しますか?ということが問われているのである。

 ベンダー各社が発表しているパブリッククラウド製品やサービスには、まだまだ精査しなければならない要件がたくさんある。最大の問題はセキュリティだろう。各企業の顧客データや経営データがセンターに集中するわけで、これらのデータをどう保護するかが課題になる。世界中に散在しているセンターのいったいどこに自社のデータが置かれているのか、皆目分らない状態に置かれてしまうからだ。万一、データの漏洩が発生した場合に、センターが設置してある国の法律によって裁かれるのかどうか。さらに、クラウドの扱うデータ処理は“自動”が基本となるが、誤ってクリックするとデータが一人歩きするといった、最近起こった株売買システムのトラブルのようなことも起きかねない。

 このような中、セールスフォース・ドットコムは、Salesforce CRMのプラットフォームである「Force.com」上で開発されたアプリケーションの流通を狙いとした「OEMパートナー・プログラム」を発表した。これはかつてマイクロソフトがWindows上でのアプリケーションの流通を促進させ、世界制覇を成し遂げたスタイルとよく似ている。クラウドは標準化がうまく機能しないと、ユーザーにとってはあまり旨みはない。しかし、これまでの例だと、ISOなどでの標準化にはかなりの時間がかかり、日進月歩の技術革新には追いつけないきらいがある。こんなときにセールスフォース・ドットコムが発表したことは、「Force.com」をクラウドアプリケーションの事実上の世界標準にしてしまおうという同社の意図が垣間見える。「Force.com」を、“クラウドのWindows”にしようとしているのかもしれない。

 今回、OEMパートナーが提供するアプリケーションとして、次のようなものが発表された。NECは、企業・自治体等向けのソリューション開発の環境としてForce.comを活用し、次ののアプリケーションを提供する。「ITILをベースとした簡易サービスデスク」「ダイレクトマネジメント」「イノベーション促進のためのディスカッション」。日立コンサルティングは、グローバル人材管理データベース。日立ソフトウェアエンジニアリングは、No.1販売パートナーとしての実績をもってForce.com上でのグローバル情報共有基盤(グローバル対応グループウェア及びグローバルOA業務支援)を提供。富士通は、販売管理システム。富士通は、関係会社である米国Glovia International, Inc.において、「Force.com」上のアプリケーション「glovia.com Order Management」を米国にて既に販売し、約50社での稼働実績を持っているが、今後、国内での展開も計画しているという。現在、「Force.com」上で開発されたアプリケーションは全世界で135,000を超えているというから、今後猛威を振るうのは確実のようだ。(ESN)


◇企業システム◇米マイクロソフトが独自のクラウドサービス「ウインドウズ・アズール」発表

2009-11-30 09:28:15 | クラウド・コンピューティング

 【クラウド】米マイクロソフト は、米国時間11月17日(火)、クラウドのプラットフォームサービス(PaaS)「Windows Azure(ウインドウズ・アズール)」の商用サービスを2010年1月から全世界で開始すると発表した。マイクロソフトのチーフ ソフトウェア アーキテクトであるレイ オジー(Ray Ozzie)は、「ウインドウズ・アズール」とクラウド対応DBMS「SQL Azure(SQLアズール)」が、同社のクラウド サービス戦略の中核的な要素であることを強調。また、オジーは、「スリースクリーン&クラウド(Three Screens and a Cloud)」ビジョン、すなわちPC、携帯電話、そしてテレビといったスクリーンの違いを意識せずに利用可能であり、かつすべてがクラウド ベースのサービスを介して接続されているようなソフトウェア・エクスペリエンスの実現に向けたマイクロソフトの構想を明らかにした。(マイクロソフト:米国09年11月17日発表)

 【コメント】マイクロソフトのクラウドサービスが、いよいよ幕を切って落とされた。マイクロソフトの発表によると、クラウドのプラットフォームサービス(PaaS)について「ウインドウズ・アズール」とDBMS「SQLアズール」を、2010年1月から本格運用を全世界で開始するが、1月中は無料とし、2月から有料にするようだ。日本に市場については、イベント「Tech・Days 2010 ~Best of PDC”」(2010 年 2 月 23, 24 日)のタイミングで、日本のユーザー向け環境の提供時期など、詳細情報について紹介できるよう準備を進めているという。

 これまで、クラウドのPaaSについてはグーグルやアマゾンが先行し、マイクロソフトの動向が各方面から注目されていたが、今回ようやくその全貌を正式に明らかにした。グーグルやアマゾンのクラウドとマイクロソフトのクラウドの違いは何か?最も大きな違いは、マイクロソフトのクラウドが、オンプレミス(自社設置)との共存共栄を強く意識したものになっている点だろう。マイクロソフトは次のように説明している。つまり、ユーザーが求めているのは、アプリケーションの開発や展開における選択肢の豊富さと柔軟性である、としている。さらに、マイクロソフトは、PC、携帯電話、Webといったあらゆる利用環境からアクセス可能なクラウドサービスに力を注ぐことを強調する。

 つまり、オンライン型のサービスとオンプレミス(自社設置)型のソフトウェアを組み合わせたハイブリッドなアプローチこそが重要であり、ことをマイクロソフトのクラウド戦略の要に置いている。まあ、これはこれまでのマイクロソフトのユーザー資産を損なわずに、来るべきクラウド新時代に対応する戦略としては、至極まっとうな選択といえばいえるであろう。

 それより、注目すべきはクラウド対応DBMS「SQLアズール」の存在なのかもしれない。クラウド時代に突入すると、これまで主役の座はサーバーであったものが、徐々にストレージに主役の座が回ってくる可能性がある。つまり、DBMSへの関心が、これまで以上に高まることが予想される。この際に、オラクルの牙城を崩し、マイクロソフトがDBMSのイニシアチブを握ることができるのか?クラウド時代に突入すると、これまでにない新しい業界地図が出現するかもしれない。(ESN)


◇企業システム◇IHIグループのストレージ・クラウド構築を日本IBMが支援

2009-11-25 09:43:52 | クラウド・コンピューティング

 【クラウド】日本IBMは、IHIグループにおけるITシステムの開発・運用を担う子会社であるIHIエスキューブがIHIグループ向けに提供するストレージ・サービスのシステム環境において、ディスク・ストレージ製品「IBM XIV Storage System」を提供し、ストレージ・クラウド環境の構築を支援した。新環境は10月18日から稼働している。新たに稼働したストレージ・クラウド環境では、仮想化技術を活用することによりデータを自動配置しているため、ユーザーや管理者はデータの保存領域を意識することなく使用および管理ができる。また、提供容量や搭載アプリケーションなどに応じたストレージ構成を組む必要がなく、ユーザーからの使用要求に対して、従来よりも迅速かつ柔軟に対応することができる。さらに、一括してウイルスのチェックを行うため、一定のセキュリティー・レベルを保つこともできる。(日本IBM:09年11月19日発表)

 【コメント】これまでクラウドコンピューティングについては、サーバーおよびサービスに重点が置かれ、ベンダー各社もこれらを中心に発表を行ってきた。最近になりクライアントの仮想化についても、徐々にではあるが関心が向けられ、クラウドもより幅広いものになろうとしている。今回、日本IBMが発表したのはIHIグループにおけるストレージ・クラウドの導入事例だ。ストレージは、今後データの分析、すなわちBIやデータの検索を行う際には、重要な役割を演じることになるので、ストレージ・クラウドへの関心は徐々に高まりをみせることになろう。

 今回IHIグループが構築したストレージ・クラウドは、転送速度の速いファイバー・チャネル・ネットワークに接続したディスク・ストレージの一部に、ファイル・サーバーの機能を追加した「SAN/NAS共用システム」と、テープ・ストレージで構成されSAN/NAS共用システムでは約70テラバイト(TB)、テープ・ストレージでは、約490TB(圧縮時)の容量を備えている。同環境においては、容量拡張と運用・管理が容易で、障害からの復旧が速く、信頼性の高いストレージ製品「IBM XIV StorageSystem」が活用された。

 「IBM XIV Storage System」は、データを管理単位である1メガバイト(MB)の論理区画に自動的に分散させ、複製データとともに二重に保存する。データ保存密度を平準化することで安定した性能を提供し、また、常にすべてのデータのコピーが存在する状態を自動的に保つことで、データの信頼性を高める。また、障害が発生した際には短時間での復旧が可能で、例えば、容量1テラバイトのHDDを復旧させる際に、RAID-5などを組んだストレージ・システムでは6~25時間かかるところを「IBM XIV Storage System」では約30分で復旧でき、二次障害の発生確率を低減できる。

 ストレージは、これまで比較的脇役の座にあることが多かったが、クラウド時代ではサーバーと対等、あるいは、サーバー以上に重要な位置づけとなることが、考えられる。企業ユーザーにおいても、今後クラウド時代の新しいストレージ戦略が求められることになろう。(ESN) 


◇企業システム◇日本IBMがプライベートクラウド製品の最新版を発売

2009-11-16 11:15:38 | クラウド・コンピューティング

 【クラウド】日本IBMは、エンタープライズ・プライベート・クラウドにおいて、設置から数日でクラウド環境が利用可能となる製品の最新版「IBM CloudBurst(クラウドバースト) V1.2」の提供を11月30日より開始する。「IBM CloudBurst」は、クラウド環境構築のためのサーバー、ストレージ、ネットワーク、ソフトウェアをすべてあらかじめ組み合わせた製品に、その導入サービスをパッケージしたソリューション。新製品は、新たにメータリング機能と電力監視機能を追加したことが特長となっている。これらの機能により、従量課金のためのリソース使用量の情報収集や、IT資源や電力の監視および効率的な利用が可能になった。(日本IBM:09年11月5日発表)

 【コメント】新しいクラウドサービスが、大手IT企業から相次いで発表になっている。それもプライベートクラウドが中心になっているのが特徴である。これは、個人の利用なら、自分のデータが地球上のどのセンターで処理されようが、そう大した問題ではないが、企業ともなるとそうもいかないからだ。クラウドコンピューティングのクラウドとは文字通り雲のかなたを指すわけで、データが今どこにあるかはユーザーでは掌握できない。これでは困るというわけで大手IT企業は、一ユーザー企業内で完結するプライベートクラウドの構築を提案し、これなら安心できますよとセールスを始めたわけである。

 今回、日本IBMが発表したプライベートクラウドシステムの最新版「IBM CloudBurst(クラウドバースト) V1.2」も、この中の一つである。この「IBM CloudBurst」は、クラウド環境構築のためのサーバー、ストレージ、ネットワーク、ソフトウェアをすべてあらかじめ組み合わせた製品に、その導入サービスをパッケージしたソリューションである。今回障害時のフェイル・オーバー機能を組み込んだことにより可用性を高め、実環境でも安心して利用できるようになったという。また、新たにメータリング機能と電力監視機能を追加したことが特長で、これらの機能により、従量課金のためのリソース使用量の情報収集や、IT資源や電力の監視および効率的な利用が可能になった。特に、従量課金のためのリソース使用量の情報収集機能は、今後のクラウドサービスのカギとなる技術の一つである。

 今回の日本IBMの発表の前に、日立製作所、富士通、NECの国産大手IT企業は、プライベートクラウド構想(製品)を発表しており、今後市場で、激しいセールス合戦が繰り広げられようとしている。

 日立製作所は、高信頼で高セキュリティなクラウドコンピューティング環境を実現するソリューション「Harmonious Cloud(ハーモニアスクラウド)」において、複数の仮想化技術に対応し、ユーザー企業内にクラウド環境を構築するプライベートクラウドソリューションをメニュー化し、提供を開始した。また、同時に、ビジネスPaaSソリューションを強化。特に、クラウド環境の構築で重要となるサーバ仮想化技術については、統合サービスプラットフォーム「BladeSymphony」のサーバ仮想化機構Virtag(バタージュ)に加え、VMware、Hyper-Vもサポートし、マルチプラットフォームでユーザの要件に応じたプライベートクラウド環境の構築を可能としている。

 富士通は、ユーザー先の基幹システムを企業内クラウドとして構築するための製品、サービスを順次提供を開始した。仮想化や自動化などのクラウド技術でシステム最適化を実現するための製品強化に加え、マルチベンダー、マルチプラットフォーム環境に対応した新規製品および支援サービスの提供を開始した。また、クラウドコンピューティングに関する商談対応のための体制を強化し、クラウド利用サービスに加えて、ユーザー先での企業内クラウドの構築まで対応できる一貫した営業支援を行っていくことになった。さらに、企業内クラウドを構築するためのクラウド技術を体系化、標準化し、支援サービスとしてユーザーに提供する「クラウドインフラセンター」を新設した。

 NECは、クラウド・コンピューティングを支える次世代IT基盤の実現に向け、ITプラットフォーム製品の開発指針および製品強化計画を策定し、「REAL IT PLATFORM Generation2(リアル・アイティ・プラットフォーム・ジェネレーション・ツー)」として発表した。同社は、06年7月にITプラットフォームビジョン「REAL IT PLATFORM」を発表し、同指針に沿って、「柔軟」、「安心」、かつ「快適」なIT基盤を実現する製品群を提供してきたが、このたび発表した「REAL IT PLATFORM Generation2」は、従来ビジョンをさらに進化させ、今後、クラウド・コンピューティングによって変化する企業のビジネスニーズに的確に対応することを目的として策定したもの。NECは、同ビジョンに基づいて策定した今後3年間の製品強化計画に沿って、新製品を順次、提供していく。主なターゲットとしては、クラウド・コンピューティング時代に向けて、データセンター構築を検討している企業や官公庁、データセンター事業者などを想定している。(ESN)


◇企業システム◇シスコとEMCとヴイエムウェアの3社、仮想化/クラウドの新組織を結成

2009-11-09 09:56:38 | クラウド・コンピューティング

 【クラウド】米シスコと米EMC、ならびに米ヴイエムウェアは、情報技術(IT)業界の大手のこれら3社が協力する、まったく新しい連合組織「Virtual Computing Environment (バーチャル コンピューティング エンバイロメント:仮想コンピューティング環境)」の設立を発表した。同連合は、大規模なデータセンター仮想化とプライベートクラウド基盤への移行を実現することにより、IT基盤の柔軟性を強化し、IT、エネルギー、不動産関連のコストを削減することで、ユーザーのビジネスの俊敏性の向上を支援することを目的に設立された。 (シスコ/EMCジャパン/ヴイエムウェア:09年11月4日発表)

 【コメント】今回のシスコとEMC、ヴイエムウェアの3社の提携の発表は、満を持したものと考えられる。これは、クラウド時代の幕開けの現在こそ、これら3社がその存在感を発揮しなければ、埋没しかねないような大きな変革の時代を向かえつつあるからだ。シスコはネットワーク製品の拡大の絶好の機会と捉えているはずだ。また、EMCは、ストレージ製品を単体として販売するのでなく、これからはネットワーク、すなわちクラウドの中の一つのコンポーネントとしての位置づけを狙うであろう。また、ヴイエムウェアは、これまでは仮想化ソフト市場でトップシェアを誇ってきたが、今後マイクロソフト、シトリックス、オラクルなど、強力なライバルとの熾烈なシェア争いに巻き込まれることは避けられず、強力な援軍が必要になっていたという事情があろう。

 大規模なデータセンターの仮想化とプライベートクラウド基盤への移行を実現することにより、IT基盤の柔軟性を強化することを目指すことになるが、今回これを実現するため検証済みの「Vblockアーキテクチャ」を提供することになる。このVblockアーキテクチャは、即座の使用と拡張が可能な完全統合型の基盤パッケージとなっている。また、シスコとEMCのソリューション合弁会社として「Acadia」を設立することにしている。このAcadiaは、仮想化やプライベートクラウド コンピューティングの普及を促進しながら、同時に運用コストを削減したいと考える組織向けに、Vblock基盤の構築・運用・移管を行う。顧客活動の開始は2010年第1四半期を予定している。

 今回のVirtual Computing Environment連合の成否のカギを握っているのは、パートナー戦略が成功するかどうかであろう。同連合では既に強力なパートナー体制が確立しており、その中には、システムインテグレータ、付加価値リセラー、サービスプロバイダー、独立系ソフトウェアベンダーからなるパートナー エコシステムの代表が含まれ、発表時点において、Accenture、CapGemini、CSC、Lockheed Martin、Tata Consulting Services、Wiproの6社がパートナーとして参加 していることを明らかにしている。今後、これらのパートナーを軸に、どこまで組織を拡大できるかが課題として残ろう。

 ところで、クラウドの普及の見通しは、今のところ楽観論(夢)が先行しているが、今回の発表の中では実態と見通しが述べられているので紹介しよう。McKinsey and Companyの試算によれば、データセンター技術基盤とサービスに対する年間支出額は全世界で3,500億ドルを超え 、その内訳は資本コスト(製品)と運用コスト(サービスと労働力)が半分ずつとなっている。さらに、それらのコストの約70%もしくはそれ以上が既存の基盤に対する保守に当てられており、企業の画期的な差別化を可能にする新しいテクノロジー構想やアプリケーションの導入に回されるのは30%に満たないのが現状。また、2015年までに、市場規模の20%に当たる約850億ドルがデータセンターの仮想化やプライベートクラウド技術に充当される可能性があると試算されている。(ESN)


◇企業システム◇日本HPが業界初のクラウド専用クライアント端末発表

2009-10-21 09:11:05 | クラウド・コンピューティング

 【クラウド】日本HPは、アプリケーションをインターネット上のサービスとして利用できるクラウド・コンピューティングに最適化した専用クライアント端末「HP t5730wi Internet Appliance」を発表した。今回発売する新製品「HP t5730wi Internet Appliance」は、国内外を問わず多くの高い導入実績持つHPシンクライアントのノウハウを活用した、業界初のクラウド・コンピューティング専用端末。Sun Java6.14やAdobe Flash10などのWeb化されたアプリケーションを利用するのに必要なソフトウェアをプリインストールしているほか、ハードディスクドライブ(HDD)や光学ドライブ、冷却ファンなどの駆動部品を搭載していないため、静音性が高く壊れにくい環境を提供する。また、ユーザーごとに必要なモジュールを組み込んだ、ユーザー専用のマスタイメージをプリインストールし出荷するサービスをあわせて提供することで、ユーザーの初期設定作業の工数を低減できる。(日本HP:09年10月5日発表)

 【コメント】 “クラウドコンピューティング専用端末”と称した製品がいよいよ市場にお目見えした。その名誉ある第一号製品となったのが、今回の日本HP製のクラウド・コンピューティング専用クライアント端末「HP Internet Appliance」である。しかし、クラウドと付くと何か目新しく感じるが、よく見るとそう大げさなクライアント端末ではない。というのも、Webアプリケーションをすぐに利用できるソフトウェアをプリインストールしてある点と、同社がかねてから注力してきたシンクライアント端末機能をドッキングさせたところがポイントなっているからだ。

 日本HPでは、端末にデータを保持しないセキュアなソリューションとして、データセンター内の1台のブレードPCを1台の端末に割り当てて最大限のパフォーマンスを実現する「HP CCI (HP Consolidated Client Infrastructure)」、プロセッサーのマルチコア化によって性能向上が進んだブレードサーバーのリソースをCitrixやVMwareなどの仮想化ソフトウェアによって各端末で共有するクライアント仮想化ソリューションなどを、ソリューション「HP RCS(Remote Client Solution)」として提供しており、今回のクライアント端末「HP Internet Appliance」は、これらと組み合わせて活用することで威力を発揮する。クラウド環境は、仮想化、シンクライアント、ブレードサーバーなどの技術・製品の統合化によって初めて実現できるものであり、その意味では、クラウド時代では、真に総合力のあるベンダーだけが最後に生き残れる、過酷なサバイバルレースとなってくる。

 その意味から、クラウドサービスは、グーグルやIBMを例外として、1ベンダーだけではとても生き残れそうにもない。日本HPは、今回のクラウド・コンピューティング専用クライアント端末「HP Internet Appliance」の事業のスタートに際しては、伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)とパートナー戦略をとった。CTCは、ホスティング型オフィスツール「Google Apps Premier Edition」と今回の日本HPのクラウド・コンピューティング専用クライアント端末「HP Internet Appliance」を組み合わせ、企業のクラウド・コンピューティング実現に向けたトータルなインテグレーションサービスの提供を、日本HPの発表とあわせ09年10月5日に発表したのである。CTCでは、09年7月にGoogleと販売代理店契約を締結し、Googleが提供するホスティング型オフィスツール「Google Apps Premier Edition」の販売、サポートを開始しており、今回日本HPのクラウド専用端末「HP Internet Appliance」をラインナップに加えたもの。

 グーグルが世界的に提供するクラウドサービス「Google Apps」が、いよいよ日本での本格展開がスタートしようとしている。一部ではこれらの新しい動きに懐疑的な見方があり、現に最近米国で大量の顧客データの消滅事件が発生したばかりだ。しかし、このような“事故”を乗り越えてでもIT全体がクラウド化することは違いはない。日本で最初の本格的SaaSユーザーとなった郵便局会社もさらに拡大の意向を示しており、キリン、東急ハンズ、ローソン、ユニクロなど大手企業がこぞってクラウドサービスを導入し始めていることが、このことを証明している。(ESN)


◇企業システム◇日立システムアンドサービスが新しいクラウドサービスを開始

2009-10-05 09:27:34 | クラウド・コンピューティング

 【クラウド】日立システムアンドサービスは、クラウドコンピューティングへの企業ニーズを見据えた事業を拡大するために、SaaS事業の企画、営業、システムインテグレーション、構築、運用保守を一貫して推進する新組織、「SaaS事業推進センタ」を10月1日付けで発足、次世代クラウドコンピューティングを統合した「ハイブリッドインテグレーション(Hybrid_SI)」を提供を開始する。「ハイブリッドインテグレーション」は、①仮想化技術を使った既存設備のインターナルクラウド②日立グループ内外のデータセンタを利用したプライベートクラウド③ビジネスプロセスのアウトソ-ス対応④使用量課金によるSaaS型の提供などを取り揃えていき、これらをユーザーに最適な形に組み合せることで、従来型の資産所有型ITシステムの利点と次世代クラウドコンピューティングの資産利用型ITシステムの利点との双方を生かしたITシステムを提供していく。(日立システムアンドサービス:09年10月1日発表)

 【コメント】クラウドコンピューティングにユーザーの関心が高まる中、各SI企業ともこれに対応した部隊の新設およびサービスの提供を本格化させている。今回日立システムアンドサービスでも、クラウド事業の新しい組織とサービスを発表したもの。これまでは、クラウドサービスを開始しただけでもニュースになり、それなりの存在感を植えつけられたが、これからは、ただ単にクラウドサービス開始といっても、一時ほど注目度はなくなり、何らかの特徴付けが欠かせなくなってくる。

 その点、今回の日立システムアンドサービスの「ハイブリッドインテグレーション(Hybrid_SI)」の発表は、単にクラウドサービスを開始するという意味以上の内容があり、注目される。「ハイブリッドインテグレーション(Hybrid_SI)」とは、“Hybrid System Integration”の略で、オンプレミス開発とクラウドコンピューティングを統合するサービス名の造語である。ここでいうオンプレミス開発とは、従来型の自社の専用システムによるシステム開発を指す。つまり、自社内にサーバーを設置してアプリケーションを走らせる従来型のシステムとデータセンターを使ったクラウドサービスとを、同じ環境でユーザーが使うことができる、これまでにない新しいサービスを提供しますよという意味である。

 日本の企業は、情報システムについては、保守的な側面を有しているケースが多い。よくメインフレームの保有数は日本が世界の中でも突出していたことが引き合いに出される。メインフレームからオープン型サーバーに切り替えるのに相当時間がかかったというわけである。確かにそういうことが日本の企業ユーザーにいえるかもしれないが、私は、日本の企業ユーザーはかなり厳密にシステムにつくり込みをして、愛着を持つ。そうなると新しいシステム環境にそう簡単には乗り移れなくなる。このことが大きく影響しているように思えてならない。このことは車にも言え、海外では車は単なる移動手段としてとらえるが、日本ではぴかぴかに車を磨き上げ、車内装飾にも凝るという違いがオーバーラップして映る。

 今回、日立システムアンドサービスが提供を開始したクラウドサービスは、そんな性格を持つ日本の企業ユーザーにも容易に取り入れられるのではなかろうか。ようやく、メインフレームからオープン型のサーバーシステムに切り替えたばっかりなのに、また今度はクラウドサービスといわれても、そう簡単には切り替えられないユーザーでも、徐々にクラウドの世界を取り入れることが可能な今回の日立システムアンドサービスの「ハイブリッドインテグレーション(Hybrid_SI)」ような混合型なら抵抗は少なく済むかもしれない。一部では「クラウドでは、メインフレームの轍は踏まない」といったようなことも囁かれているようだし、いかにタイミング早く新システムに取り組むかが問われている。(ESN)