【クラウド】富士通は、JAグループ・農業生産者・農業法人・小売業など農業分野の業務を支援するクラウドサービス「F&AGRIPACKシリーズ(エフ アンド アグリパック シリーズ)」の提供を開始する。同シリーズは、農業の「経営の見える化」「生産の見える化」「顧客の見える化」を支援するもの。同社データセンターを利用したSaaSで提供することにより、利用者はインターネットに接続されたパソコンから、簡易にサービスを利用することができる。今回、その一環として、農業独自の会計や給与計算、税務申告などの業務を支援するSaaS「F&AGRIPACK 経営管理」と、農産物の生産履歴情報を管理し、食の安心安全を支援する「F&AGRIPACK 栽培管理」を、JAグループ・農業生産者・農業法人・小売業向けに提供開始する。(富士通:10年4月5日発表)
【コメント】コンピューターシステムは、社会のあらゆる場面で使われ、もうこれ以上未開拓市場はないように感じられるが、意外にまだ開拓されていない市場はある。その代表的な市場が農業である。農業は天候に大きく左右されるため、一見するとコンピューターシステムの入り込む余地はなさそうにみえるが、実際はその逆で、センサーを含むコントロールシステムが開発されれば、大いにコンピューターシステムの活用の場面は多いことが分る。
富士通は、今回農業にターゲットを当てたソリューション「F&AGRIPACKシリーズ」の提供を開始した。同シリーズは、農業分野向けの業務支援サービスとして、①「経営の見える化」(適正な経営分析による経営改善)②「生産の見える化」(品質の向上/生産性向上/食の安全・安心確保)③「顧客の見える化」(販路拡大/消費者ニーズの把握/付加価値販売)の3つの見える化を実現するという。見える化は、企業システムにとっての大きな課題の一つになっているが、農業おいても大きなテーマであることが、ここから読み取れる。また同シリーズは栽培管理としては①記帳運動の定着化を支援②農産物の安全性の確保③農業法人の経営安定化を支援の3つの機能も提供する。こうやって見ると、農業はコンピューターシステムの支援が欠かせない市場であることが分る。つまり、工場と変わらない側面を持ち合わせている。
農業といえば、今話題となっているのがビルの室内での農耕栽培である。近い将来、日本でつくられる農作物の多くがビルの室内で栽培されるかもしれない。これを可能にした一つがコンピューターシステムであり、光や温度の調節を行うコントロールシステムである。もうこうなると、単なる農業の支援システムどころか、農業そのものがコンピューターシステムによってつくられることになってくる。
今回の富士通の「F&AGRIPACK シリーズ」の最大の売りは、やはりクラウドによる提供であろう。企業システムの場合は、情報システム部門があって専門家がユーザーの立場で対応ができる。しかし、農業の場合、コンピューターシステムの専門家はいない場合に方が一般的だ。そうなるとクラウドの持つ意味合いが本当に生きてくる。さらに、富士通は全国のソフト子会社と連携して同シリーズの拡販を狙う。全国各地にあるソフト会社は、いわば地場産業である。となると地域密着の体制づくりで農業と対応可能なのだ。こう見ていくと、コンピューターシステムと農業は相性が合わないどころか、非常に近い関係になってくる。農業以外に同じような市場がまだあるのではないだろうか。(ESN)