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◇企業システム◇日本IBMが次世代メインフレーム「システムz10」発売

2008-03-29 14:00:06 | サーバー
 日本IBMは次世代メインフレーム「IBMシステムz10」を発表した。同機は従来機の「システムz9」に比べ、同数のCPU後世では1.5倍、最大構成CPU機では1.7倍の処理能力を発揮する。また、処理能力は約1500台のx86サーバーに相当し、設置面積を最大85%、エネルギーコストを最大85%それぞれ削減できる。さらに、x86サーバーのソフトウエア・ライセンス数を最大30分の1以下に削減することができる。(08/02/26発表)

 【コメント】メインフレーム全盛時代に、コンピューター業界に向かうところ敵なしの圧倒的強さを誇示してきたIBMであるが、PC時代に入りマイクロソフトにイニシアチブを奪われ、サーバー時代ではデル、インターネット時代に入ると今度はグーグルがマイクロソフトを脅かす存在にのし上り、さらにオープンソースソフトウエア(OSS)時代に突入した現在ではレッドハットに人気が集中している。つまり、最近のIBMはほとんど他社の二番煎じに甘んじてきた。この傾向が長く続くと、何もIBMでなければならない根拠は希薄となり、規模の大きい普通のIT企業に成り下がる可能性大であった。

 ところがIBMにとって神風が突如吹き始めた。その一つが地球温暖化である。現在全世界に設置してあるサーバーが使う電力は膨大なものとなり、地球温暖化を防ぐにはサーバーが消費する電力を何とか食い止め、さらに引き下げることが喫緊の課題として浮上してきたのである。この対策として一時期厄介者として駆逐されたメーンフレームが見直され、復活しそうな形勢となってきた。こうなるとIBMがかつてのような独走態勢をとることだってありうる。

 もう一つのメインフレーム復活のきっかけとなるのが、膨大な数のサーバーを一元管理することの難しさだ。現在、各ユーザーは複数のサーバーを統合するため仮想化に躍起となっている。この仮想化が上手くいくなら問題はないのだが、そう簡単でもなさそうなのである。異機種統合は企業にコンピュータが導入されて以来の古くて新しい問題だ。結論からいうと異機種統合の実現は難しい。そのことにユーザーが気が付き始めれば自然とメーンフレームの再評価に向かう。既にその兆候は見られる。

 こんな状況下にIBMが満を持して発表したのが次世代メインフレーム「システムz10」なのである。当然IBMは昔の倉庫から古色蒼然としたメーンフレームを引っ張り出してきたわけでなく、最先端のIT技術を駆使したぴかぴかのメインフレームを登場させた。昔メインフレームといえばプロプライエタリ(独自)アーキテキチャのクローズドなマシンであったが、システムz10はオープンなマシンなのである。少し前サン・マイクロシステムズはIBMのメインフレームをサンのUNIXサーバーにリプレースするキャンペーンを張り、両社は大喧嘩した経緯があった。ところがシステムz10ではサンとOpenSolarisプロジェクトで協業していることを売りの一つにしているのである。さしずめ昨日の敵は今日の友といったところだ。これにはマイクロソフト封じという思惑があるのであろう。

 もう一つシステムz10で忘れてはならないと言おうか、このことが一番大事と言おうか、IBMの大戦略「クラウド・コンピューティング」を実現させる有力なマシンの一つであるということである。07年11月にIMBはクラウド・コンピューティングの具体的計画である「Blue Cloud計画」を発表している。同計画はメインフレームやスーパーコンピューターを中心に、ネットワークを雲のように全世界に張り巡らそうという壮大な計画だ。言ってみればIBM版のWWWといったところか。これにより、これまで奪われてきた主導権をIBMは取りもどうそうと考えているに違いない。ITの王者はIBMをおいてほかにないと。(ESN)