【ERP】SAPジャパンと日本HPは、企業のSOA(サービス指向アーキテクチャー)導入を推進するため、エンタープライズSOA導入支援コンサルティング分野での協業を開始する。両社でエンタープライズSOA導入支援コンサルティングを行う専任コンサルタントチームを置き、共同販促活動を行う。同時に新サービス「Enterprise SOAワークショップ」を開始する。さらに日本HPの「SOAコンピテンシー・センター」内に「Enterprise SOAエクスパティーズ・センター」を開設する。 (08年9月17日発表)
【コメント】今、企業システムは嵐の前の静けさの中にあるといえる。嵐とは何かというと①SaaS②SOA③オフショワ開発の3つに代表されるシステム開発に関する“革命”の起爆材を指す。SaaSはセールスフォース・ドットコムのCRMの成功で一躍注目を集めたが、セールスフォースは最近では盛んにPaaSという言葉を使い始めている。これは開発環境をネットを介して提供しようという試みで、同社ではソフト開発環境を大きく変えると主張している。この考え方はサンなどが前から模索してきたものある。もうソフトはパッケージを買ってきて使うのではなく、ネットを介して必要なものを必要に応じて使う時代へ徐々に移行しつつある。グーグルなどは既にオフィスソフトなどを無料での提供に踏み切っている。
オフショワ開発は、日本のソフト企業にとって今後大きな壁になって立ちはだかることが予想される。このことはSOAの普及と密接なかかわりを持ってくる。従来、企業のアプリケーションは一塊の岩のような存在で、外に持ち出すなどのようなことは現実的はなかった。つまり、日本のソフト企業でなければ、企業に対する十分なサポートは不可能であった。しかし、SOAが普及すると様相はがらりと変わる。大きな岩のようなアプリケーションでも、細かな石の単位で開発すれば済む時代が近づいている。つまりソフト開発は何も日本国内でしなければならない状況ではなくなってきつつあるのである。
そして、本命のSOAの普及だ。今回日本HPとSAPジャパンがSOA事業で提携したのは、Webサービス準拠のNetWeaverの普及の延長線上にある取り組みで、SAPジャパンが本格的にSOAへの傾斜を進めようとする意思表示でもある。SAPはパッケージソフトで世界有数のソフト会社に上り詰めた。そのSAPがパッケージソフトというビジネスモデルを自ら脱ごうとしている。もうこれ以上パッケージソフトという商品にしがみついていたら負けてしまうという結論に達したのであろう。これからは、既存のソフトを組み合わせてアプリケーションを構築する時代へと向かう。この流れは企業の情報システム部門にも大きな変革を促す。ソフト開発がメーン課題ではなくなり、企業が要求する課題に対し、どのようなシステムを構築するのかがメーンの課題となってくる。正に今、企業システムは嵐の前の静けさにあるといえる。(ESN)