企業システム・レビュー・ネット

企業経営を左右する企業情報システム(経営+ITソリューション)のデータバンク作りを目指す

◇企業システム◇北海道IT推進協会がIT産業の売上高が7年連続の増加と発表

2008-12-29 12:11:53 | SI事業

 【SI企業】 (社)北海道IT推進協会は、「北海道ITレポート2008」を発行した。これによると平成19年度の北海道IT産業の売上高は、4152億円と7年連続の増加。対前年度8.6%もの大幅な伸びを示した。増加要因は「受注量の増加」「新規顧客の開拓」を挙げる事業所が多く、道外向け売上高が32.4%から37.2%へと増加している。道内4位のパルプ・紙・紙加工品製造業に次ぐ位置にある。平成20年度の売上高見込み額は4161億円で、平成19年度とほぼ同額。平成19年度のIT産業従業員数は1万9053人で、製造業第1位の食料品製造業に次ぐ位置にある。プログラマー、SEの技術者を「不足」とする事業所が半数以上に達している。 (08年12月17日発表)

 【コメント】北海道は従来からIT産業の育成に取り組んできた。“オープンソースアイランド”宣言など、斬新な取り組みを展開する中、1996年から順調に売上げを伸ばし、07年には過去最高の4157億円の売上げを上げることができたわけである。注目すべきはIT産業従業員数が1万9053人で、製造業第1位の食料品製造業に次ぐ位置にあることで、さらにプログラマー、SE不足とするソフトウエア企業が半数以上に達しており、まだまだ、従業員数の増加が見込めることだ。企業の存在意義の一つは、どれほどの雇用能力があるかということが挙げられる。今回の世界同時不況で、トヨタやキヤノンなど日本を代表する企業がいとも簡単に契約社員を解雇しているが、そんな経営なら誰でもできる。少し前まで史上最高益などど浮かれていたことを思い出してほしい。企業は利益を出しているときに、来るべき不況に備えなければならない。不況が来たときに従業員を解雇して乗り切るなどという、安易な手段しか取れない経営者などは経営者ではない。不況期でも社員の首を切らなかった松下幸之助のつめの垢でも煎じて飲まねばなるまい。

 ところで、ソフトウエア産業はもともと派遣社員を下支えとして成り立ってきた産業である。元請け、下請け、孫請け体質の改善が叫ばれてきたのにも関わらず、わが国のソフトウエア産業は長年にわたりこの形態をとり続けてきた。しかし、この体質のままで、今後伸び続けられるかというとはなはだ疑問だ。プログラマー、SEは専門職で一匹狼が多く、むしろ派遣業を好む体質にあった。そのため、派遣業の持つ脆弱性に目を瞑りがちになる。このことが、元請け、下請け、孫請け体質を温存し続けてしまう。今回の世界同時不況の波は、ともかくもこれまでは繁栄を謳歌してきたわが国のソフトウエア産業の行く末に警鐘を鳴らし始めている。このことは経済産業省が発表した10月の特定サービス産業動態統計を見ると歴然となる。わが国の情報サービス業の10月の売上高は前年同月比2%減と2カ月連続のマイナスとなった。もうはっきりと下降線が見えてきた。このまま行くと、わが国のソフトウエア産業は未曾有の不況に見舞われるかもしれない。

 どうすればいいのか。ピンチはチャンスと捉え、従来の元請け、下請け、孫請け体質から脱却するしかない。この不況をじっと耐えさえすれば、また、前と同じになるさと高を括っていると取り返しのないことになりかねない。大手IT企業はまずグループ企業の存続を第一に考える。このため独立系のソフト企業は食い扶持を失う羽目になる。対策の一つは地域密着型ソフトウエア企業を目指すこと。そして、ユーザーから直接受注することに踏み切るべきだろう。そのため、自社の営業力を高めると同時に同じ目的を持ったソフトウエア企業同士が共同し、事業展開しなければ大手の軍門に下るのは日の目を見るより明らかだ。(ESN)


◇企業システム◇イベント情報

2008-12-26 10:20:37 | イベント/セミナー情報

 

                        <イベント情報>


タイトル:Hyper-Vを用いたサーバー仮想化環境の構築<詳細>
      その時、仮想OSの保護は?

会場:マイクロソフト新宿本社セミナールーム(東京)

日時:09年1月16日(金) 午後2時30分-5時30分

定員:60人

料金:無料

主催:シマンテック

内容:ハードウエア購入費用や消費電力、設置スペースなど様々な面でITの効率化
    をもたらすテクノロジーとして「仮想化」が大きな注目を集めているが、マイク
    ロソフトからもWindows Server 2008 Hyper-Vが発売された。実際に仮想環
    境を構築・運用する上で必要な事柄を紹介する。


◇企業システム◇イベント情報

2008-12-25 15:47:04 | イベント/セミナー情報

 

                                                 <イベント情報>


タイトル:ペンシル インターネット ビジネスセミナー<詳細>
       売上げ・利益をアップさせる戦略的WEBサイトとは?

会場:デジハリ大阪校セミナールーム(大阪市北区)

日時:09年1月15日(木) 午後7時-9時30分

定員:100人

料金:無料

主催:ペンシル

内容:こんな悩みを持った方におススメです。①ホームページが全く活用できない
   ②高い広告費を出し続けている③広告費があまりない④申し込みや注文が少          ない⑤資料請求や問い合わせが少ない⑥アクセス数やページビュー数が少な
   い⑦検索エンジンで上位に表示されない⑧CPO(コスト・パー・オーダー)を下げ
       たい。


◇企業システム◇SAPジャパンとNECが協業強化へ

2008-12-24 16:23:01 | ERP

 【ERP】SAPジャパンとNECは協業を強化し、SAPが提供する中堅企業向けERP導入プログラム「SAP Business All-in-One fast-start program」のプラットフォームとして、NECのサーバー「Express5800シリーズ」を選定し、SAPジャパンおよびそのパートナー企業が販売することに合意した。「SAP Business All-in-One fast-start program」は、サービス、商社・卸、組立製造業界の中堅企業に向けた、低コストかつ短期間でERP導入を可能にするプログラムで、ユーザーが従業員数、ライセンス数を入力し、必要なソフトウエア機能を選択するだけで、導入にかかる費用の
試算を行うことができる。また、会計、販売、購買、在庫、その他の機能を統合的にサポートするSAP ERPの導入を3千万円台からという低価格(ソフトライセンス、ハード、導入サービス込み)で実現可能にする。 (08年12月24日発表)

 【コメント】SAPのERP導入プログラム「SAP Business All-in-One fast-start program」は、SAPの「オンライン・ソリューション・コンフィギュレター」機能を利用して行われ、導入時にはOS、データベース、SAP ERPなどに加え、ユーザーが選択した設定情報をハードウエアにプリインストール済みの状態でユーザーに提供するもの。
そのため特定のサーバーにプレインストールし、SAPのパートナーから販売されれば効率的であるし、サポートもしやすくなる。一方、NECのサーバー「Express5800シリーズ」は累計100万台(08年2月現在)を出荷、国内IAサーバーでトップシェアを誇っている。しかし競合も激しく、NECは市場で富士通、デル、HPなどと激しいシェア争い繰り広げている。今回SAPと提携したことによって、これらの激しいシェア争いの中で優位に展開できる一つの選択肢を得たことになる。

 現在SAPジャパンは、NECのほか富士通、日立製作所などとも提携し、ERP市場での体制を盤石なものにするための体制づくりに必死だ。08年11月5日には富士通とデータ可視化ソリューション「EIM(エンタープライズ・インフォメーション・マネジメント)」
で協業を強化した。これはBI(ビジネス・インテリジェンス)技術が背景に存在している。独SAPは08年2月にBI企業の大手・仏ビジネスオブジェクツを傘下に入れたが、ビジネスオブジェクツの得意とする一つがデータ可視化技術。これにSAPのソリューションを統合したのがデータ可視化ソリューション「EIM」である。一方、富士通は1995年からビジネスオブジェクツのデータ可視化ソリューションの日本語化および提供を行ってきた。03年からは富士通大分ソフトウェアラボラトリが日本ビジネスオブジェクツとパートナー契約を締結し、本格的に提供を行い、既に富士通グループ全体で300以上のユーザーを獲得している。今後両社では「EIMソリューションセンター」を富士通ソリューションスクウェア(東京都大田区)内に設置し、EIMソリューションの技術検証および導入支援を行うことにしている。

 日立製作所と独SAPは、両社でSAPソリューションのマーケティング、販売、システム構築に至る広範囲な協業をグローバルで推進することで合意し、「SAPグローバルサービスパートナー」のパートナー契約を08年12月2日に締結した。内容は日立のプラットフォームやミドルウェアおよびコンサルタントサービスとSAPソリューションを組み合わせ、米国をはじめとした世界各国のユーザーへ提供しようとするもの。このため日立は、SAP認定資格者を国内、海外合わせて、2011年までに2080人に増員することにしている。これまであまりマスコミには取り上げられていないが、日立は国内でSAPのパートナーとして常にトップクラスの実績を挙げてきた。今回はその実績を土台として広く世界へSAPビジネスで打って出ようとするもの。逆に言うと、もう日本国内だけで今後も成長を遂げることは難しいということであろう。昔トヨタが世界へ向けて製造・販売網を拡大していったと同じことだ。その意味では、日本のIT産業は自動車産業に比べ2-3周は遅れをとっているともいえる。

 いずれにせよSAPを中心としたビジネスは、これまでにない展開を日本の大手IT企業に与えつつあるといっていいであろう。これはSAPがドイツの企業であり、米国の企業でないところが、このきっかけをつくったと見ることもできる。米国企業であると
多かれ少なかれIBMかマイクロソフトの影響を受けており、戦略が硬直化しがちだ。これに対しSAPはIBMとマイクロソフトとはパートナー関係だけであり、自由な戦略が練れる。この意味からも日本の大手IT企業はSAPとの連携を密にとりながら世界進出の足がかりを掴むと、今後新しい展望が生まれるかもしれない。(ESN)


◇企業システム◇ネットスイートが日本市場対応のSaaS型ERPスイートを発売

2008-12-22 16:17:01 | ERP

 【ERP】SaaaS型ERPスイートを提供する米ネットスイートの日本法人であるネットスイートは、日本の会計基準および日本の財務報告と消費税制度向けなど日本市場向けにローカライズした「NetSuite-Release J」の販売を開始した。この新しいERP機能は、ネットスイートのSaaS型CRMおよびEコマースと統合されている。「NetSuite-Release J」はERP、CRMそしてEコマースを包含する単一の業務管理システムとしてゼロから構築されており、財務や倉庫管理から、マーケティング、CRM、顧客サービスまで、中堅企業が組織横断的に業務プロセスを自動化することを可能にする。 (08年12月9日発表)

 【コメント】SaaS型CRMソフトのセールス・フォース・ドットコムの影に隠れ、これまでネットスイートの存在はあまり日本市場では注目されてこなかった。しかし、セールス・フォース・ドットコムがCRMに特化した機能しか持たないのに比べ、ネットスイートはERPに加えCRMさらにEコマース機能を統合して持っているため、企業の基幹システムを一つのソフトでカバーできるという特徴を持っている。企業自体はまだ若く、1998年にエバン・ゴールドバーグとオラクルの創業者であるラリー・エリソンによって創業された。同社はSaaS型のソフトを提供する企業のリーダー役の立場にあるソフト企業ではあるが、最近の用語に従えば、クラウドコンピューティングを提供する有力企業の一社ということができよう。

 ERPは既に多くの企業で導入され、これにより導入企業では容易に全社標準化を実現でいるようになったなど、現在企業システムにとって欠かせない存在となっている。しかし、一方これまでのERPソフトには問題点も存在していた。その一つはコストがかかり過ぎること。何億円、何十億円もするERPソフトは、中堅中小企業はそう簡単に導入できない。また、ERPソフトはパッケージソフトが基本であり、個々の企業のアプリケーションに対応するには限度がある。この対策のためSOAなどを使い、個々の企業のアプリケーションに適合できるERPソフトの普及にベンダー側は今躍起になっている。

 ERPのコスト高の対策として現在注目されているのがOSS(オープンソースソフトウエア)型ERPソフトである。OSS型ERPソフトはまだまだ認知度が低いが、意外にいったん市場に根付くと、一挙にユーザーを拡大する可能性を秘めているだけに、注目製品だ。これに対しSaaS型はセールス・フォース・ドットコムがCRM分野で成功を収めたために、既に市場に定着したかの感がするが、セールス・フォース・ドットコムはあくまでCRMという単品製品での成功であり、ERP、CRM、Eコマースが統合されたERPスイート製品ではない。その意味からすると、今回の「NetSuite Release J」が企業システムにおけるSaaSの真価が問われる初のケースともいえよう。ところでERPスイートをSaaS型にするとどのようなメリットを企業にもたらすのであろうか。例えば法改正で一つ一つの企業で対応していたのでは大変な場合でも、サーバー側が一括して対応すればスムーズに対応できるというメリットが考えられよう。これらを実現するためにも、SaaSベンダーが第三者ソフト企業とパートナー契約を結び、ユーザーに魅力的なアプリケーションを提供できるかどうかに、SaaS型ERPスイートの未来がかかっているのではなかろうか。(ESN)


◇企業システム◇イベント情報

2008-12-19 11:04:56 | イベント/セミナー情報

 

                      <イベント情報>


タイトル:ソフトウエア制作業における「ソフトウエア会計+税務+プロジェクト管理会
     計」<詳細>  

会場:東京国際フォーラム

日時:09年1月15日(木) 午後2時-4時

定員:45人

料金:無料

主催:あいわ税理士法人/アドライト/エンプレックス

内容:ソフトウエア会計の概要および09年から施行される工事進行基準への、各視
    点から見た具体的な対応策を解説する。また、会計制度への対応を前向き 
    に捉え、いかに利益の創出につながる経営管理基盤を構築するかのポイント
    も紹介。 


◇企業システム◇イベント情報

2008-12-18 06:05:33 | イベント/セミナー情報

 

                         <イベント情報>


タイトル:日立オープンミドルウェアセミナーEtude TOKYO<詳細>

会場:品川イーストワンタワー(東京)

日時:09年1月13日(火) 午後2時-4時30分

定員:30人

料金:無料

主催:日立製作所

内容:①使いやすいシステムをつくる人間中心設計とは②SOA運用で差をつけよう
   ③SOA型ワークフロー導入による全社申請業務最適化の実現


◇企業システム◇SAPジャパンとインド・ウィプロがSOA導入を日本で事業化

2008-12-17 17:28:53 | システム開発

 【SI企業】SAPジャパンとインドの大手ソフト企業・ウィプロ社はサービス指向アーキテクチャー(SOA)ソリューションの導入サービス支援での協業体制を強化し、その具体的な活動の一環として日本において協同でSOA導入支援キャンペーンを展開する。これは①既存のビジネスアプリケーションの統廃合②マスターデータ管理③システム基盤統合―の3つのソリューション領域に対する製品並びにサービスを共同で提供していくもの。 (08年12月16日発表)

 【コメント】日本のソフトウエア産業は長い間、日本語および日本化の障壁に守られて発展を遂げてきた。これは他産業から見ると誠に羨ましい状況であったことは間違いないことである。多くの日本の産業は外国勢の激しい攻勢の中で、苦労をして現在の国際競争力を身に付けてきたわけである。ソフトウエア産業だけが外国勢の攻勢を受けないなどというのは単なる神話に過ぎず、そのうち不落と思われていた障壁を乗り越え、外国ソフトウエア企業が日本市場で、日本のソフトウエア企業から仕事を奪うことだってありうる、と繰り返し述べてきた。今回のSAPジャパンとインド・ウィプロ社の協業は、このことを具体的形として実現した典型的な事例の一つといえよう。いよいよ、日本のソフトウエア産業の前に“黒船”が現れたのである。

 ウィプロは、既に07年5月にアクチュエイトジャパンと日本でのBIビジネスで提携している。これは米アクチュエイトとインド・ウィプロが06年からグローバルなパートナーシップを組んだことをベースに、日本市場での展開を開始したもの。事業内容は金融機関向け市場を中心に、コンサルティングとシステム構築分野である。サービス内容がなかなか迫力がある。それらは「現状から5倍のリソーススケーラビリティ」「グローバルナレッジを融合し、新たなソリューションを創出」「バイリンガルリソースを積極的に展開」「オフショワ開発モデルを適用しコスト削減」など。何しろウィプロは従業員7万人を超えるインド3大手の一社なのである。その潜在能力は計り知れない。東芝の中堅社員研修先の一つがインドのソフト会社であることを見ても、その実力の程が分かろう。

 インドのソフト会社のレベルが高いのはソフトウエア管理が徹底して行われていることが、度々指摘されている。つまりインドのソフトウエア会社は世界で通用する技術を身に付けているから強いのである。翻って日本のソフト会社の強みを考えてみると、「日本語と日本の商習慣を熟知している」といったことが多い。これでは日本国内で通用しても、世界では通用しない。これから日本のソフトウエア産業が国際競争力を身に付けようとするなら、LinuxなどのOSS(オープン・ソース・ソフトウエア)に特化するとか、世界共通のある特定の業種に特化するなど、従来の発想を飛び超えた思い切った新戦略を打ち出すしかない。これにはまずソフト会社のトップの意識改革から始めないとならない。昔、「ヨットを持ちたいからソフト会社の社長になった」と豪語していた社長さんがいたし、現にソフト会社の社長の間ではヨット所有がステータスになっていた。これは障壁があったからこそできたことで、障壁が崩れた今、もうそんな甘いことでは、外国のソフト企業に踏み潰されてしまうであろう。(ESN)


◇企業システム◇イベント情報

2008-12-16 09:05:02 | イベント/セミナー情報

 

                     <イベント情報>


タイトル:ERPパッケージと個別システムのメリット・デメリット<詳細>

会場:Walk In Solution 関西(大阪市中央区)

日時:08年12月18日(木) 午後1時30分-5時30分

定員:30人

料金:無料

主催:NECネクサソリューションズ

内容:RFP(要求定義書)を作成する前に明確にしておかなければ事項
   の確定方法の解説とRFP作成手法についても解説する。

http://www.nec-nexs.com/news/seminar.html?id=919

 


◇企業システム◇KDDIとマイクロソフトのSaaSインフラにソフト企業がアプリケーション提供

2008-12-15 11:25:18 | システム開発

 【システム開発】KDDIとマイクロソフトが協力して提供中のパートナー支援プログラム「Business Port Support Program」を活用し、GCT研究所がSaaS型アプリケーションサービスの提供を開始した。KDDIとマイクロソフトは、マッシュアップと呼ばれるアプリケーション同士の連携や「KDDI Business  Outlook」との連携など、これまでにない新しいサービスを市場に提案していくことにしている。 (08年12月11日発表)

 【コメント】これまでもSaaSについては書いてきたが、要はユーザー側の使い方がポイントであり、SaaS自体は今後進展を見せることは間違いない。ITには昔から“アルファベットの3文字用語にご用心”という“格言”が存在するように、どうもわけの分からない用語が氾濫しがちである。SaaSやクラウドコンピューティングもこれらの一種と見られがちだが、問題はユーザー側の期待感が勝手に膨らみ、実態以上にその能力を評価するところにある。セキュリティについても、例えば口座を一つにするのではなく、10の口座を開設すれば、例え、被害にあっても10分の1に食い止めることができる。これを何が何でも1口座にして、完璧なセキュリティを構築して守ろうとすると、高額な資金とわけの分からないテクノロジーに翻弄されることになる。

 今回、KDDIとマイクロソフトがSaaSのインフラを提供し、その上でソフト企業がアプリケーションを提供するというスタイルは大変いい。大手企業は細かなアプリケーションまで包括するのは所詮無理だ。今回米国の大手自動車メーカーが苦境になったのは、大手メーカーの論理をユーザーに押し付けたところにある。大手企業は大きな金額を追うあまり、ユーザーの小さなニーズに無神経になりがちだ。ある日本の大手IT企業では、課長の仕事は何千万円以上、部長の仕事は何億円以上とノルマ果たしているが、これではユーザーの細かな要求に応えられるはずがない。

 ユーザー側にも問題がある。なにやら分けの分からない用語にユーザーはからきし弱い。SaaSとかクラウドと言われると、たちどころに冷静さを失う。SaaSにしても、ベンダー側が何を言っているのかを冷静に判断すればいい。SaaSはセキュリティとか価格についてだけ考えると、とてもすぐ飛びつくものでないことは自明のことだ。ただ、特定のアプリケーションに特化させればSaaSは威力を発揮できよう。昔から“バカとはさみは使いよう”という言葉があるが、“ITとはさみは使いよう”と考えればほとんどのITの問題は解決することができる。