goo blog サービス終了のお知らせ 

企業システム・レビュー・ネット

企業経営を左右する企業情報システム(経営+ITソリューション)のデータバンク作りを目指す

◇企業システム◇伊藤忠テクノソリューションズ、ドキュメントなどの情報管理システム発売

2010-04-12 10:40:28 | システム開発

 【システム開発】伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)は、ユーザーインタフェースにRIA技術を採用した企業向け情報管理システム「EIMANAGER/Web(イーアイ・マネージャー/ウェブ)」Ver. 4.0の販売を、4月12日より開始した。ユーザー企業は、ドキュメントをはじめとする企業情報を直感的な操作で管理することができ、ソフトウェア開発におけるプロジェクトやナレッジの管理などの業務プロセスを効率化することが可能となる。価格は2,500万円から(税抜き、1,000ユーザー)で、カスタマイズやシステム販売・構築を含めて、10年度の販売目標は10億円。(伊藤忠テクノソリューションズ:10年4月8日発表)

 【コメント】企業システムは、突き詰めていくと事務の合理化をいかに推進するかということに行き着く。勿論、難しいITをマスターすることは欠かせないが、ITはあくまで手段であり、目的ではない。このことは、意外に忘れられがちで、難しいITの取得が目的化していることが、往々にして起こる。昔、「事務管理」というコンピューターの専門誌があったが、今にして思えば、この誌名は、企業システムにとっては、正にぴったりとしたネーミングであったと言えるのではないか。

 事務管理で忘れてはならないことは、ビジネスマンが直感的な操作でシステムを運用できることであろう。システム屋はコンピューターの操作はお手の物なので、このことをあまり意識しない。この結果、情報システム部門が張り切って開発した新しいシステムが、必ずしも事務の効率化に貢献しないということも起こりがちだ。このことは、一般の事務管理と同様、ドキュメント管理にも言える。いかに使いやすいドキュメント管理のシステムを提供できるかが、あらゆる場面で、今後求められることになろう。

 今回、CTCが提供を開始した企業向け情報管理システム「EIMANAGER/Web」は、CTCがユーザーの要望をもとに自社開発した情報管理システム開発基盤である。RIA技術を使用し、06年末のVer. 1.0のリリース以来、大手製造業を中心に開発におけるプロジェクト管理のフレームワークとして用いられている他、営業意思決定支援ツールや内部統制対応のプロセス管理/ドキュメント管理アプリケーションとして、シンクタンクや大手SIerなどでの導入実績がある。現在は、パッケージ製品としての販売に加え、ドキュメント管理機能をSaaS型のサービスとして展開し販売している。

 近年では、家電を含め多くの製品が「組込みソフトウェア」を使用しており、大手製造業においては、ソフトウェアの品質が製品全体の品質に大きく影響を及ぼしている。「組込みソフトウェア」は、用途ごとに異なる成果物が多岐にわたるため、開発において増大する成果物やドキュメントを管理することが大きな課題。「EIMANAGER/Web」Ver. 4.0を使用することにより、通常のソフトウェア開発では管理フレームワークとして開発の効率化を図ることができ、また、「組込みソフトウェア」開発においては強化されたドキュメント管理機能によって、成果物管理の効率化が実現できる。(ESN)


◇企業システム◇日本IBM が大量並列処理を可能にするソフトを提供開始

2010-03-31 09:46:27 | システム開発

 【システム開発】日本IBMは、株価や売り上げ、計測機器からなど、刻々と変化する複数の情報を並行して瞬時かつ複合的に分析することにより、最新の状況に即した的確な意思決定を支援するソフトウェア新製品「IBM InfoSphere Streams V1.2.0(インフォスフィア・ストリームス)」を提供開始した。「InfoSphere Streams」は、Eclipse 3.4 ベースでストリーム・アプリケーションを開発するための統合開発環境「InfoSphere Streams Studio」と、高度なスケーラビリティーを提供する「InfoSphere Streams Runtime」、ツールキットおよびアダプターで構成。 新製品は、最大125ノードまで柔軟にハードウェアを拡張でき、また変動するあらゆるデータのイベントを同時処理し、1秒間に160万件の情報を処理できた例もある。(日本IBM:10年3月26日発表)

 【コメント】これまでコンピューターシステムは、高速高速処理の歴史を辿ってきた。これによって膨大なデータを一括処理するという、長年の夢を現実のものとしてきた。しかし、一方では、複数の要因によって並列的にデータが刻々と変化するような処理には、これまで有効な手段が、一般的には現実化されてこなかった。

 今回、IBMは長年の懸案だったこれらの並列的大量一括処理の解決の道をつけることを可能にした「ストリーム・コンピューティング」の新しい技術の開発に成功したのである。この「InfoSphere Streams」は、ストリーム・コンピューティングを実現するミドルウェアで、約100人のIBM研究員が7年間に渡り、200を超えるIBMの特許を基に開発してきたもの。「InfoSphere Streams」を使用すると、例えば、山火事が発生する地域で、煙のパターンや天候予測データ、衛星写真などのデータを瞬時に分析することで、警察や消防機関が市民の避難通告などに関し、より的確に判断することを支援する。また、遠隔地の患者の心拍数、血圧、不整脈などの変動するあらゆるデータを瞬時に分析し、患者の状態に応じて、適切な処置を指示することが可能になる。

 IBMは、地球がより賢く進化していくことを示す「Smarter Planet」というビジョンの下、新しい情報活用の考え方である「New Intelligence(ニュー・インテリジェンス)」を提唱している。「New Intelligence」は、「状況を察知して対応する」から「起こるであろうことを予測して意思決定を行う」という新しい情報活用で、次に何がくるかを予測することで、ユーザーは先を見通し、より賢明な意思決定を行うことができるようになる。この新製品は、ユーザーが「New Intelligence」を実現する上で、重要な製品のひとつとなるもの。

 「InfoSphere Streams」がカバーする領域は、どちらかというと、これまでベテランの勘に頼ってきたような分野だ。これらの分野をコンピューターシステムに置き換えが可能となるということは、新しい役割を企業システムに盛り込ませることが可能となってくる。山火事の煙の予測や医療データの大量・高速伝送が可能ということは、消費者の購買予測や新商品開発の際のシュミレーション開発にも十分適応可能という感じを抱かせる。企業システムは、これまでのように業務システムのルーチンワークの処理が中心であった時代から、今後はビジネス戦略のツールとしてコンピューターシステムを駆使する時代へと、その役割が変わりつつあるようだ。(ESN)


◇企業システム◇NTTデータなど6社、「非機能グレード」ガイドラインを完成

2010-03-03 08:36:34 | システム開発

 【システム開発】NTTデータ、富士通、NEC、日立製作所、三菱電機インフォメーションシステムズ、OKIの国内SI(システム構築)事業者6社が08年4月から活動を開始した「システム基盤の発注者要求を見える化する非機能要求グレード検討会(略称:非機能要求グレード検討会)」は、各社の知見とノウハウに、発注者企業7社の意見を反映した「非機能要求グレード」をまとめあげた上で、外部からの有効性評価を得て、完成した非機能要求グレードを公式Webサイトで公開した。(NTTデータ/富士通/NEC/日立製作所/三菱電機インフォメーションシステムズ/OKI:10年2月25日発表)

 【コメント】SI構築を行う際に、発注側と受注側の考え方の相違から、システム構築に大きな障害やコストのトラブルがなくならない。特に大規模システムを構築する場合は、単なるシステムのやり直しではすまないケースも少なくない。例えば、用語の解釈の相違が後になって判明し、手直しをする場合、構築期間の延長から来るトラブルが発生するし、コストの上積みも生じ、ベンダー、ユーザー双方に多大な被害が発生することになる。これらのシステム構築上のネックを解消するため、NTTデータ、富士通、NEC、日立製作所、三菱電機インフォメーションシステムズ、OKIの6社のベンダーは、発注者企業7社と共同して、標準化システムに乗り出しており、既に、ユーザーのアプリケーションソフトに関わる「機能要求」を完成し、今回、システム
そのものの品質を定義する「非機能要求」を完成させた。

 「非機能要求」とは、①システム応答時間②障害時の復旧時間③拡張性―などが対象となる。今回完成した「非機能要求グレード」は、09年5月に公開した第1版を基に募集したパブリックコメントを反映するとともに、東京海上日動火災保険と東京ガスが保有するシステムを用いた適用評価の結果を通じて改訂を重ねたもの。また、非機能要求グレードを自由にカスタマイズするための「スプレッドシート」を新たに公開。検討会参加6社は、「非機能要求グレード」のIT業界での本格的な普及を目指すため、情報処理推進機構 ソフトウェア・エンジニアリング・センター(IPA SEC)へ「非機能要求グレード」の著作権を無償で譲渡。今後、6社は経済産業省が取り組む情報システムの信頼性向上のための施策の1つとして、IPA SECにより10年度に開始される予定の「非機能要求グレード」の普及と利用促進に向けた活動に協力していくことにしている。

 今回の取り組みは、国家レベルの取り組みであり、大いに評価されるものであることは、論を待たない。しかしである。これまでの国家レベルの取り組みの多くが、理屈としては十分といえるが、いざ実際の普及となると、一歩も前に進まないケースがあまりにも多いことが気にかかる。例えば、業界内でのソフトの流通を目指し、多くのソフト企業が参画し、標準案を作成したことがあったが、その後は立ち消えてしまったことがある。この原因は、会議に参加する人は各ソフト企業の役員クラスで、日常は現場の業務にタッチしてない人たちだ。つまり、いくら理想論を出しても明日の業務をいかにこなし、如何に売上げを上げるかという至上命令を受けている現場からすと、これらの理想論は単なる机上の空論に過ぎないのだ。

 今回の「非要求機能グレード」ガイドラインは、ユーザーも参加しているので、これまでのような国家レベルの標準化案のような机上の空論とは趣を異にするとは思うが、油断をしていると、やはり机上の空論になる危険性をはらんでいる。それは、SI事業における受注合戦の激しさだ。互いに受注競争に巻き込まれると、「受注後のことは、後で考える」となり、無理にシステム構築を引き受ける。この結果、せっかく標準化案をつくってみたものの・・・、という結果に終わることも考えられる。これを回避するには、企業ユーザー側のチェック機能が働くかどうかにかかっている。(ESN)


◇企業システム◇米IBM、200以上のユーザーが、他社システムからIBMシステムに移行したと発表

2010-02-10 09:31:59 | システム開発

 【SI事業】米IBMは、09年第4四半期に200以上のユーザーが、サン・マイクロシステムズやHPのシステムからIBMのシステムおよびストレージに重要なビジネス業務を移行させたと発表した。またIBMは、ユーザーの移行プロジェクトを促進および自動化する新しいソフトウェアも発表した。IBMシステムへユーザーの移行を支援するため、4年前に「Migration Factory」プログラムを開始して以来、約2,200の企業がサン・マイクロシステムズやHPから、IBMのサーバーおよびストレージへと移行した。09年は800以上のユーザーがIBM Power Systems、System x、System zのサーバーおよびストレージ・ソリューションに移行したが、その内訳は約550社がサンから、約250社がHPからとなっている。(日本IBM:10年2月3日発表)

 【コメント】ITを駆使したコンピューターシステムは、大きく分類して①企業システム②社会システム③工業システムーの3つに分類できる。企業システムは、一般企業や官公庁などのビジネスシステムを指す。この分野は、従来、メインフレームが主導権を握ってきたが、最近では、オープンシステムのサーバーにWebシステムを載せた形態が主流となりつつある。社会システムは、医療システムとか最近では電力のスマートグリッドなど、社会全体を対象としたシステムを指す。そして、工業システムは、組み込み型システムやCAD/CAMシステムなどである。これらの中で、社会システムは、今後大きな伸びが期待されている分野だ。また、工業システムも、車載システムのニーズの拡大にみられるように、今後大きな伸びが期待できる。

 これらに対して、企業システムは、クラウドなど新しい分野の開拓はあるものの、基本的にはもう市場は飽和したといってもいいであろう。後残るのは、大手ベンダーによる他社ユーザーを如何に自社ユーザーにひっくり返すかという、仁義なき戦いが残っているだけである。IBMは、スマートグリッドなどこれから広がる社会システム市場へ積極的に参入を図ると同時に、飽和した企業システムでは、他社ユーザーを自社ユーザーへと導入する新戦略を打ち出している。特に、オラクルに買収されたサン・マイクロシステムズのユーザーにターゲットを絞った戦略が目に付く。

 競合他社からIBMへ移行した何百件もの事例をもとに、IBMの開発者は、手作業プロセスの多くを自動化することでサンからの移行を促進する新しいソフトウェア・ツールを開発した。このソフトウェアはサンの資産を自動的に発見および識別して移行先のIBM環境への配置計画を行い、業務移行を合理化してハードウェア、ソフトウェア、プロセスすべてにわたって最適化するもの。 このソフトウェアにより、Sun SolarisからLinuxまたはIBMのUNIXオペレーティング・システムであるAIXへと移行するプロセス、そしてアプリケーションおよびミドルウェアをIBMシステムに移行するプロセスを加速できる、としている。この業務中心の手法により、ユーザーによっては移行先への配置計画のステップが週単位から日単位にまで短縮された例も見られる、という。
IBMも随分露骨な表現でサンユーザーの獲得戦略を繰り広げるものだと、関心してしまう。

 ただ、こんな感想も日本国内にいるからできるのも事実。大手国産IT企業は、互いに刺激は避け、まあまあの関係になるケースが多い。しかし、これからは、国産IT企業ともいえども、世界のIT企業と真正面から対決しなければならない局面に立たされることが予想される。その際、他社ユーザーまで手は出さないでは、生き残ることは不可能だ。キリンとサントリーの合併は失敗したが、そうしなければ世界市場で生き残れないところまで来ていることを再認識すべきだと思う。(ESN)


◇企業システム◇米HPと米MS、システムの簡素化に向け、2億5000万ドルの投資を行うことで合意

2010-01-18 09:30:27 | システム開発

 【SI事業】米HPと米マイクロソフトは、あらゆる規模の企業におけるテクノロジ環境の大幅な簡素化に向け、今後3年間に2億5000万ドルの投資を行うことに合意した。両社は、次のの特徴を備えた新たなソリューションを共同で提供する予定。①システム基盤からアプリケーションまでを統合する次世代モデルをベースに構築 ②アプリケーション展開の迅速化によるクラウドコンピューティングの推進 ③既存のシステムの複雑さを解消し、マニュアル作業を自動化することでIT全体のコスト削減 。発表された両社の合意は、システム基盤からアプリケーションまでを網羅する、現在の業界で最も包括的なテクノロジの統合を目的としており、両社は同合意に基づき、ITシステムの開発や展開、管理におけるカスタマーエクスペリエンスを大幅に改善することを目指すことにしている。(米HPと米マイクロソフト:10年1月13日発表)

 【コメント】コンピューターシステムを巡る課題は、年を経るたびに高度化され、この結果として企業ユーザーは、より高度なニーズに対応できるソリューションが得られるはずである。しかし、現実はというと、なかなかそうは言えそうもない状況が生まれている。その原因の一つは、システムが高度化され、この結果システム自体が複雑なものとなり、サポート体制を確立する自体が大変な状況に追い込まれつつあることが挙げられる。それに加え、ベンダー間の仕様の相違が、新たなシステム構築の障害となりつつある。

 今回の米HPと米マイクロソフトの両社の提携の発表は、そんな企業ユーザー置かれている立場からすると、大いに歓迎すべきことといえそうだ。また、この背景の一つには、クラウドコンピューティング時代への対応という面が顔を覗かせている。クラウドニーズに対応するには一ベンダーだけの力では、到底及ばない側面がある。既にオラクルは、サン・マイクロシステムズを買収し、企業ユーザーの高度なニーズに対応しようとしている。オラクルーサンそして今回のHP-マイクロソフトの提携の背後にあるものは、グーグルの存在が深く影を落としている。来るべきクラウド時代にグーグルの独走を許さないという、決意が読み取れる。

 2社は、今回の提携により企業ユーザーに次のようなメリットを提供できるとしている。①高度に自動化されかつ自己管理された環境において、サーバー、ストレージ、ネットワークおよびアプリケーションなどのリソースをシームレスに統一することにより、ビジネス ニーズの変化への柔軟な対応が可能となり、結果としてビジネス効率の向上をはかることができる②Microsoft Exchange ServerやMicrosoft SQL Serverなど業界で利用されている、有力な企業向けアプリケーションのパフォーマンス、信頼性、そして可用性を向上させることができる③テクノロジ環境の自動展開や自動管理、および連続的な自己調整を可能にする、テクノロジ環境を可能にする統合された相互運用可能な仮想化および管理ツールにより、運用環境の強化をはかることができる④投資の保護や、TCO(総所有コスト)の削減が可能となるため、ユーザーは安心してステムを展開することができる。

 オラクルーサンそして今回のHP-マイクロソフトの連携が完成すると、IBMはどう対応するのかが、次の関心事となろう。今後、IT業界は、オラクルーサン、HP-マイクロソフト、グーグル、それにIBMの4強時代へと移り変わって行く可能性が強い。そのとき富士通、NEC、日立の大手国産IT企業は、果たしてどう対応するのであろうか。(ESN)


◇企業システム◇富士通、クラウド基盤を活用した「ワークプレイス-LCMサービス」提供

2010-01-04 10:53:49 | システム開発

 【クラウド】富士通は、同社のデータセンターのクラウド基盤を最大限活用し、パソコン、プリンタ、複合機、オフィスに設置された部門サーバなどのICT機器のライフサイクル(企画・設計、導入、運用から撤去・廃棄まで)をトータルに支援する「ワークプレイス-LCMサービス」の販売を開始する。同サービスは、企業内において多様化・マルチベンダー化するICT機器の調達、導入、日常運用や最新環境への移行など、さまざまな作業を、全て月額料金で提供するアウトソーシングサービス。従来、パソコンのみを対象としていたサービスにプリンタ、複合機、サーバなどICT機器全般に対象を拡げ、また、モバイルアクセスやセキュリティ対策など、エンドユーザー環境に求められる幅広い業務に対応する。さらに、各種業務ソフトウェアをインターネット経由でパソコンに提供するサービス DaaSをサービスメニューに追加することで、ハードウェアからソフトウェアまでワンストップで利用できる環境を提供する。(富士通:09年12月28日発表)

 【コメント】各ベンダーとも現在、クラウドサービスの拡大に努めている。09年がクラウドの”啓蒙”の年だとすると、2010年は、さしずめ各ベンダーがしのぎを削ってユーザーニーズに如何にフィットしたサービスメニューを企業ユーザーに提示することができるか、クラウドの“具現化の年”とみてよいであろう。逆にいうと先進的な企業ユーザーを除き、大多数の企業ユーザーは、まだ本格的にクラウドサービスを導入しているわけではなく、その有効性の検証を始めているといところである。この際、より具体的なクラウドサービスを企業ユーザーに提示できるベンダーだけが、他ベンダーの一歩先にいくことが可能とするわけで、この意味から2010年は、各ベンダーのクラウドサービスが、企業ユーザーから選別されるスタートの年となりそうだ。

 富士通は、このほどクラウドサービスの一つのメニューとして、クラウド基盤を活用し、エンドユーザーのICT機器を支援する「ワークプレイス-LCMサービス」を販売開始した。同社は、04年より約400社のユーザーに提供してきたパソコン向けの支援サービス「PC-LCMサービス」を大幅に強化し、「ワークプレイス-LCMサービス」として、ICT機器の対象を広げ、ユーザーの運用コスト・管理負荷を抑えながら、柔軟性を確保したエンドユーザー環境の実現させたもの。つまり、クラウドサービスというと、サーバー側のサービスと考えられがちであるが、同社は、発想の転換を図り、クライアント側からのクラウドサービスを提供した。

 これはいいアイデアである。クライアントの管理には多くの企業ユーザーが頭を悩ましており、ベンダー側からの新しい提案を待ち望んでいる状況にある。つまり、今回の「ワークプレイス-LCMサービス」のミソとなるのが、仮想デスクトップサービス(DaaS)である。これは、 クライアント仮想化環境を短期間で導入し、クラウド基盤から各種ソフトウェアをご提供するサービス。同社によるとこのDaaSは、価格の高価なシンクライアントに対抗できるサービスとしている。つまり、シンクライアントは、初期導入コストが高額になりやすい点が導入の障壁となっているが、同社では、この課題を解決するため、最新技術を搭載した同社のトラステッドなクラウド基盤上に、クライアント仮想化管理システムを標準で実装し、DaaSとして提供することで、ソフトウェアの初期導入コストを軽減できたという。また、ソフトウェア移行・運用のテンプレート(雛形)を用意し、導入期間を大幅に短縮したとする。

 今回の富士通以外にも、最近各ベンダーからクラウドサービスが発表されているが、その中の一社が日商エレクトロニクスだ。同社は、企業のプライベートクラウド構築を支援するために、日本HP、マイクロソフト のテクノロジーを活用した新製品として、「プライベートクラウド スタートアップキット」の販売を開始した。これは、プライベートクラウドに最適な拡張性と俊敏性を備えた日本HPのiSCSIストレージ「HP LeftHand P4000SAN」に、システムのサービス継続性を実現するマイクロソフトのWindows Server 2008 R2の「Hyper-V 2.0」と「System Center Virtual Machine Manager 2008 R2」とを搭載したもの。これにより、プライベートクラウド導入までの煩雑な選定時間を短縮するとともに、初めてでも簡単にコストパフォーマンスに優れたプライベートクラウドを構築することが可能となるという。2010年は、クラウドサービスを提供するベンダーにとって勝負の年となりそうだ。(ESN)


◇企業システム◇アシスト、ガイア、TDI、“見える化”の提供で協業 

2009-12-16 09:19:05 | システム開発

 【システム開発】アシスト、ガイア、情報技術開発(TDI)は、上場企業向けの経営見える化ソリューション「経営羅針盤」の提供で協業を開始した。経営の意思決定に必要な情報を迅速に収集し分析したいという顧客ニーズの高まりに加え、上場企業において早ければ2015年より新会計基準(国際会計基準:IFRS)に適用した情報開示が求められる中、ガイアが開発したERP「J-GAIA」の経営管理情報データベース機能とアシスト販売のBIツール「QlikView」の組み合わせに、ガイアが経営分析に要とされるレポートのテンプレートを用意し「経営羅針盤」として提供開始。販売は「J-GAIA」の販売会社であるTDIを含む3社が行い、2010年末までの販売目標として20社への導入を見込んでいる。(アシスト/ガイア/情報技術開発:09年12月8日発表)

 【コメント】企業システムを“見える化”することへの関心がたかまりつつある。これは、企業システムが年々複雑化することによって、システムの全体像を把握することが困難になりつつあることへの一つの解決策になるからだ。特に、証券システムの障害事故に代表されるように、一部の担当者のみがシステムを理解していても、より広範囲に関わる社員がシステムを理解できていないと大きな事故に繋がる。この対策としては“見える化”によってシステムへの理解が欠かせない要因となる。一方、経営サイドからすると、企業システムに蓄積された最新のデータに基づき意思決定したいというニーズが高まっている。つまりBI(ビジネス・インテリジェンス)によりデータを分析し、その結果を“見える化”によって、経営層に分りやすく表示させることが、これからは欠かせない要件となる。

 今回の3社による共同発表は、そんなニーズに応えるソリューションの提供である。経営見える化ソリューション「経営羅針盤」の特徴を挙げると次のようになる。①QlikView にJ-GAIAを組み合わせたことにより、既存のシステムを変更することなく、既存の各種ERP、会計パッケージ、販売管理システムなどからデータを収集し、経営管理情報DBを自動構築する②連結グループ会社で勘定科目体系が異なる場合も個別のカスタマイズを行うことなく会社およびグループの分析が可能となる③工数のかかるDB設計や経営分析レポートの作成が不要となる④経営分析に必要なDBやレポートはテンプレートとして提供する⑤IFRSへの柔軟な対応と迅速な経営管理情報の提供が可能となる、などである。経営分析テンプレートの例としては、効率性指標、収益性指標、営業コスト指標、安全性指標、成長性指標、財務ハイライト、分析管理軸別指標(管理軸:グループ全体、サブグループ、会社、部門、プロジェクト、事業、地域、製品、顧客、社員)、管理会計テンプレート などをあげることができる。

 “見える化”のユーザー導入の最近の事例の一つとして、ロッテが日本IBMと共同して構築した狭山工場の設備管理システムが挙げられる。ロッテは、「さらなる食の安全」「事業継続」「設備管理一元化によるコスト削減」を目的に、設備管理を強化し整備状況の“見える化”を行うため、日本IBM協力のもと、09年5月より「設備管理システム」の構築を開始し、11月から稼働を開始した。この「設備管理システム」では、企業内のあらゆる資産や設備をWebベースで管理し、保全作業管理を効率化するIBMのソフトウェア製品「IBM Maximo Asset Management」製品群が採用さた。「IBM Maximo Asset Management」は、あらゆる資産や設備における、計画から運用、メンテナンス、廃棄までのプロセスを可視化し、ユーザーの現場業務から経営層への情報のシームレスな伝達を支援する機能を持つ。

 このように、“見える化”ソリューションは現在、企業ユーザーにじわじわと導入されつつあり、これが今後の企業経営の格差を生じさせる要因になるかもしれない。つまり、いち早く問題点を発見し、早急に手を打つことが、“見える化”によって可能になるからだ。(ESN)


◇企業システム◇NRIなど4社が「BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)推進研究会」設立

2009-12-07 09:16:42 | システム開発

 【アウトソーシング】野村総合研究所(NRI)、NTTコミュニケーションズ(NTT Com)、ワンビシアーカイブズおよびインフォデリバは、日本におけるBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)活用の普及・発展を目指す「BPO推進研究会」を設立した。BPOとは、企業などが自社の業務の一部を、外部の専門業者に企画・設計・運営まで一括して委託すること。戦略的業務への集中、 事務コストの削減・変動費化、業務品質・生産性の改善などといったメリットから、BPOは金融業・通信業を中心に世界的に普及しつつある。(野村総合研究所、NTTコミュニケーションズ、ワンビシアーカイブズ、インフォデリバ:09年12月2日発表)

 【コメント】以前、アウトソーシングというと、あまりいいイメージに捉えられなかった。つまり、自社で処理できる人材やスペースがないため、止むを得ずアウトソーシングに出すというふうに捉えられていたからである。ところが時代が進むに従い、このような考え方は徐々に影を潜めっていった。これは、防災ということが大きかったのではないかと思う。特に、地震対策は急務であり、自社ビルの地盤が軟弱なら、ホスト機をアウトソーシングせざるを得ない。また、都心の一等地の高価なスペースをメインフレームに占拠されるのは、企業経営上問題がある。

 そんなことで現在では、一流の大手企業であっても積極的にアウトソーシングに取り組んでいる。さらに、将来、クラウドコンピューティング時代ともなると、今以上にアウトソーシング化が進み、企業に置いてあるものといえば、シンクライアントの端末だけという時代が来るかもしれない。話は脱線するが、クラウドサービスが本格化すると、現在企業にある情報システム部門はどうなるか?現在、ベンダーは商売上「いくらクラウド時代となったも情報システム部門はなくならないし、ますます重要になる」と言っている。まあ、これはこれなりに、根拠のある話ではあるのであるが、私は楽観できないと思っている。それは、一般社員が自分達で端末機からシステムを構築するのが当たり前の時代が、近い将来、到来することが十分に考えられるからだ。そのとき、情報システム部門に残された仕事は、全社の標準化ぐらいしか残ってない。

 ところでBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)は、業務とシステムとを一括して外部に委託することを指すが、IBMなどは、以前からこのBPOに積極的に取り組んでいる。総務の仕事を標準化することにより、外部に総務部門を人ごとアウトソーシングすることだって可能となる。これまで日本人はシステムのアウトソーシングまでのアレルギーはなくしてきたが、業務そのものをアウトソーシングしたり、人材をアウトソーシングすることには抵抗感がある。しかし、近い将来日本においてもBPOが当たり前の時代が来るかもしれないのだ。

 既にNRIは、金融業のバックオフィス業務やサービス業の本社業務のBPOサービスを提供し、ユーザーの経営革新を支援している。09年4月には、オフショア人材活用の拡大を目指し、インフォデリバとの共同事業会社、NRI・BPOサービスを設立した。NRIグループとして、ITソリューションとBPOが一体となった業務支援サービスや、業務オペレーション、印刷、配送、保管等さまざまなBPOサービス機能を組み合わせたワンストップ・インテグレーション・サービスを提供している。また、インフォデリバでは、中国BPOのリーディングベンダーとして、主に中国・大連センターから1,400人超の日本語オペレーターにより、金融・流通・製造・公共など 90社超の日本国内大手企業向けに、経理・人事などの事務処理から大量データ処理までの日本企業向けBPOサービスを提供している。これから企業は、BPOを導入することにより、その企業経営のあり方の、根本からの変革を求められている。(ESN)


◇企業システム◇独SAPがSOA対応ERPの導入ユーザー数が1200社を突破したことを公表

2009-12-02 09:17:30 | システム開発

 【システム開発】独SAPは、SAP Business Suiteソフトウェアのコアコンポーネントであるサービス指向アーキテャ(SOA)対応のERPを核としたビジネスプロセス・プラットフォームの導入事例を1,200社以上有するが、近年、バズワード(流行語)と囁かれている「SOA」が、ビジネスプロセス・プラットフォーム(3,000以上の業務部品、あらゆるプロセスを支えるプラットフォームなど)として提供されることにより、ユーザーにとっての真のビジネスバリューをもたらすものである事を証明している。(独SAP:09年 10月13日発表)

 【コメント】昔から現在に至るまで、IT業界ほどバズワード(流行語)が行き交う業界も滅多にないであろう。次から次えと新語が生まれては消えていく。一時期は、“3文字言葉にご用心”という警句が飛び交った程で、怪しげな用語には、あまり飛びつかないことが一つの見識にもなるほどだ。しかし、すべての新語が怪しげかというとそうも言えないから難しいのだ。クラウドコンピューティングも出始めた頃は、「クラウドはバズワードに過ぎない」という専門書も出版されたほどで、怪しげな雰囲気であったが、現在はというと、クラウドは、次世代の企業システムに欠かせない重要技術といった位置づけに変わりつつある。つまり、バズワードから脱したのだ。

 SOA(サービス指向アーキテクチャー)も、用語が出始めたときは、どこまで効果がある手法かは、俄かには判断できないような雰囲気を醸し出していたのも事実である。つまり、当初はバズワードぽかったのである。これには、ある程度根拠があるのである。ある人に言わせると、ソフトの部品化によるソフト開発の効率化は数年置きに出現しては、消滅するというのである。この伝でいけばSOAも同じ運命かとも思われた。しかし、IBMがSOAは次世代の重要技術と認定した頃から、バズワードを脱し、SAPがSOAによりパッケージソフトの壁を突破する試みに挑戦し始めることにより、ますます本物のソフト技術である可能性が出てきた。

 そして、今回、SAPがわざわざ「SOAは本物の技術だ」という発表を行った裏には、SOA対応のERPの導入実績が1200社を突破したという、事実に基づいた自信があるからだろう。現在、SAP Business Suiteを使用しているユーザーはは、2,800を超える企業サービスを手軽に利用でき、これらのサービスから、一貫し、安定したビジネスプロセスを作成することができるため、ITの異機種混合環境および同機環境の両方で「独自のプラクティス」を導入する際のプロジェクトコストを削減できると、SAPは強調する。ユーザーは、オープンプロトコルのインターフェイスを備えているため、どんなビジネスコンテンツでもSAPのSOA対応アプリケーションを増強でき、さらに、ユーザーは、さまざまな業務内容が反映されたビジネスコンテンツを利用および再利用でき、ビジネスプロセスをより短期間に刷新できるようになると、同社は言う。

 377社に上るSAPのユーザーのSOA関連のプロジェクトを分析したところ、主に次の4つのSOA活用事例が顕在していることが分かったという。すなわち、53%が主にプロセス刷新のためにSOAを採用し、29%はユーザビリティに焦点を当てている。また、14%はビジネスネットワークの強化、4%は技術の実装を目的としている。これにより、SAPのユーザーが(1)柔軟性がありモジュール化が可能であること、(2)容易に活用できること、(3)より高レベルなビジネスの俊敏性とサステイナビリティなどの明確な成果が得られること、の3点をITソリューションに求めていることがわかったという。

 これからの企業システムのトレンドは、クラウドコンピューティングに向かうことはまず間違いないことであるが、これをささえる技術としては、仮想化、OSS(オープンソースソフトウエア)、ブレードサーバーなどに加え、SOAもその一角を占める技術とい得そうだ。(ESN)


◇企業システム◇野村総合研究所が自社のOSSと「IBM Lotus Notes Domino」を連携

2009-09-28 10:27:49 | システム開発

 【システム開発】野村総合研究所(NRI)は、オープンソース・ワンストップサービス「OpenStandia/Portal(オープンスタンディア・ポータル)」と「IBM Lotus Notes Domino」を連携させることで、Notesで稼働しているシステムについて、既存システムを活かしたまま、最新のオープンソースを活用してポータル機能を追加し、他の既存システムとの連携を実現するソリューション「OpenStandiaソリューション/Notesエクステンション」の提供を開始した。情報共有のためのグループウェアとしてNotesを利用して構築されたシステムが多いなか、ブログ機能やWiki機能など最新のWeb技術を取り込めない、他のWebアプリケーションと連携できない、基幹データベースからの情報の検索や閲覧がスムーズに行えないなどの課題が、Notesシステムには存在する。また、Notesのデータやシステムを他のシステムに移行しようとしても、コストが高額になるという課題もある。こうした課題を解決するために、NRIは最新のオープンソースを活用し、Notesで稼働しているシステムに、最新のWeb技術によるポータル機能を追加し、他のシステムとの連携を低コストで実現するソリューション「OpenStandiaソリューション/Notesエクステンション」を提供するもの。(野村総合研究所:09年9月17日発表)

 【コメント】今はもうIBMブランドとして定着しているロータスソフトウエアは、もともとは1982年設立の独立系のソフト企業であるロータス・デベロップメント社をIBMが1995年に買収し、獲得したものであった。IBM・PC用の表計算ソフト「Lotus 1-2-3」は、当時一世を風靡した今で言うオフィスソフトの先駆けとなるパッケージソフトであった。さらにロータス社は1989年にはグループウエア「Lotus Notes/Domino」を発売し、それ以前のメインフレームにダムターミナルを接続したインフラ環境を一変させるもので、大手ユーザーを中心に広く普及をみせた。

 このように、ロータスソフトウエアはWeb時代が到来する前の花形ソフトウエアであったわけである。ところがWeb時代に突入すると、Webをベースとしたグループウエア製品が各社から提供が開始され、さしものロータスも次第に時代とのギャップも目立ち始めてきた。今回野村総合研究所が発表した「OpenStandiaソリューション/Notesエクステンション」は、オープンソースソフトウエア(OSS)という時代の最先端を行くソフトウエアで「Lotus Notes/Domino」を蘇らせようとする試みの一つだ。

 実は、IBMは08年5月に「ロータス・シンフォニー」をリリースし、Web/OSS時代に相応しいソフトとしてロータスソフトウエアの復活を図っている。このロータス・シンフォニーはOSSのオフィスソフトである「オープンオフィス」をベースに商品化されたもので、IBMが戦略的に市場に投入したものだ。ご存知の通りオフィスソフト市場は、これまでマイクロソフトのマイクロソフトオフィスが席巻してきたわけで、IBMもこの流れを黙認するしかなかった。しかし、時代は確実にオープンの方向に向かいだし、オフィスソフトもOSSのオープンオフィスが次第に脚光を浴び始めてきている。特に世界同時不況を味わった世界中の企業は、少しでも情報化投資を切り詰めようとOSSに対する期待は大きい。

 こんな時代を背景に、米IBMでは思い切った手を打ち始めたようだ。IBM社員に対し、マイクロソフトオフィスの使用を中止させ、代わりに自社のロータス・シンフォニーを使用するように通達を出したというのだ。現在36万人のIBM社員のうち、33万人の従業員が既にロータス・シンフォニーへの乗換えを完了しているのだという。今後IBMの社員がマイクロソフトオフィスを使用するには承認が必要になるという。もうこうなるとマイクロソフトに対して宣戦布告をしたのに等しかろう。グーグルも既に自社の無料のオフィスソフトを提供することで、マイクロスフトオフィスの市場の切り崩しを図っている。仁義なき戦いの火蓋は切って落とされた形勢にある。(ESN)