企業システム・レビュー・ネット

企業経営を左右する企業情報システム(経営+ITソリューション)のデータバンク作りを目指す

◇企業システム◇日本ユニシスと三井物産が次世代物流情報プラットフォームを開発

2008-07-31 11:51:11 | アプリケーション

 【アプリケーション】日本ユニシスと三井物産は、両社で開発した次世代物流情報プラットフォーム・サービス「UNITRA」の運用を開始した。この「UNITRA」は物流現場において「モノ」にふられた固体識別番号をICタグやバーコードなどの自動認識技術を利用して識別し、インターネットを介して「モノ」の移動情報を収集・蓄積するサービス。利用者がインターネットを通じて、どこからでも移動履歴確認や分析ができるプラットフォームをSaaS型のサービスとして提供する。提供機能の第一弾として、パレットやカゴ車、プラスチックコンテナーなどの環境利用型の搬送器具を管理する「RTIマネージャ」を開始した。同サービスは、従量制による課金体系とし、月額40万円(税別)からの利用が可能で、システム導入に比べ1/5程度のコスト削減を実現する。最終的にはICタグと「UNITRA」につながったネットワークを用いて、世界中のあらゆる「モノ」の動きを共有できる社会的なインフラを目指すことにしている。 (08年7月30日発表)

 【コメント】今回両社が共同で開発した「UNITRA」は、SaaSおよびインターネットの機能を最大限生かし、ITの将来動向を見据えたシステムとして注目される。物流業界では従来からリアルタイムで「モノ」の動きを追跡するシステムは開発されてきたが、「UNITRA」はインターネットを使いワールドワイドに対応したことに意義がある。言語も日本語、英語の2か国語を将来拡大させる計画となっている。現在、中国やインドのソフト企業の台頭が目覚しいが、この原因はワールドワイドでの対応が行えるからだ。この点、日本のソフト企業は国内市場に集中しており、このままでは世界から置いてきぼりを食いかねない。ワールドワイドの市場ではインターネットの活用技術がポイントとなる。つまり、最近言われ出し始めてきた“クラウド・コンピューティング”がカギを握ってくる。このほど、米国のHP、ヤフー、インテルの3社はクラウド・コンピューティングの研究のため共同でセンターを構築することを明らかにした。今回の「UNITRA」はクラウド・コンピューティング力が試される絶好の機会ともいえる。

 「UNUTRA」はSaaSで提供されることでも注目される。SaaSはようやく日本でも注目され始めたが、まだまだ実際のユーザーは少ない。かつて日本ではメインフレームを自社内に設置することが一種のステータスシンボルとなり、なかなかアウトソーシングが普及しなかった。ところが現在ではメインフレームのアウトソーシングは当たり前に行われるようになってきた。SaaSでも同じことがいえるであろう。現在は、サーバーぐらいは自社に置きたいという企業が多いが、将来はパソコンだけを社内においてSaaSを利用するのが当たり前のようになろう。そうすることによって、自社にIT要員を確保しなくても済み、いつでも最新のIT機能を使うことができる。問題はコストだ。SaaSは初期コストは自社導入より安いが、3年目、4年目になるとどうしても自社導入より高くなる。しかし、TI要員の人件費やハード、ソフトのレベルアップ費用などを総合的に考えると必ずしも高いとはいえない。将来はSaaS+クラウド・コンピューティング利用が当たり前になり、システムの自社導入が珍しい存在になるかもしれない。(ESN)


◇企業システム◇SAPジャパン、住生コン、ブレアコンサルの3社がCRMソフトの新機能で協業

2008-07-30 15:28:36 | CRM

 【CRM】SAPジャパン、住生コンピューターサービス、ブレアコンサルティングの3社は、SAP CRMをベースに従来の「商談フェーズ管理(ビジネスプロセス進捗度)」だけでなく、“理(=自社、自分をどれだけ認めてもらっているか)”と“情(=どれだけ親密な関係か”の進化を示す「ASKの進捗度(顧客ニーズや顧客状況の把握)」という指標を追加し、評価、管理することで、商談フェーズの進捗管理を、より日本のビジネスに即したソリューションを開発し、販売を開始した。これにより導入企業は、営業スキルの共有や課題の把握、さらには新入社員などの短期育成や商談成立後のフォローアップなど、人間的部分に依存する情報を形式知化させることが可能となり、結果として企業全体の営業力を高めることができるようになる。 (08年7月28日発表)

 【コメント】CRMソフトはコールセンターなどでは欠かせないツールとして市場に定着している。これらのCRMソフトは売り上げ見込みや請求時期、過去の取引などの商談フェーズを業務的に管理する機能を有しており、これらのデータを基にコールセンターでオペレーターが顧客との対応に当たり、売上げ向上を実現させている。今回3社から発表されたCRMソフトは、これらに加えセールスマンが自社製品を販売するのに当たり、顧客とどれほど親密になっているか、顧客からの認知度がどのくらいかなど、これまで数値化されてこなかった点を数値化しようとする試みがなされている。

 既に似たような試みは行われている。バランススコアカードやナレッジマネジメントなどでは、これまで数値化が不可能な領域までも踏み込んで数値化し始めている。今回のCRMソフトは、SAPのCRMソフトをベースに、ブレアコンサルティングが長年にわたって蓄積した営業力向上ノウハウを盛り込んで、企業ユーザーに販売しようとするもの。このようなソリューションが提供され始めたの背景には、現在CRMソフト自体に差別化が求められていることを意味する。SaaS型のCRMソフトとしてセールスフォース・ドットコムやネットスイートなどに企業ユーザーの関心が集まっているが、これらのSaaS型CRMソフトはWeb機能について、パッケージ型CRMソフトの一歩先を行っている。このような状況下、パッケージ型CRMソフトとしては新たな付加価値機能をアピールする必要が出てきている。今後、CRMソフトの機能競争が激化しそうだ。(ESN)

 


◇企業システム◇ウルシステムズと富士ソフトDISが次世代のXML‐EDI「流通BMS」で提携

2008-07-29 16:20:36 | アプリケーション

 【アプリケーション】ウルシステムズと富士ソフトDISは、流通ビジネスメッセージ標準(流通BMS)分野で協業し、小売業向け「流通BMS対応サービス」の提供を開始する。ウルシステムズは流通BMS対応EDIソフトウエア「UMLaut/J-XML」導入数が100社以上の実績がある。一方、富士ソフトDISは流通業界における実績とノウハウが豊富。サービス内容は①流通BMSシステム構築サービス(富士ソフトDISが提供)②流通BMS ASPサービス(富士ソフトDISがウルシステムズの「UMLaut/J-XML」を用いて提供)③流通BMS導入コンサルティングサービス(ウルシステムズが提供)―の3つ。 (08年7月25日発表)

 【コメント】流通業界におけるEDIは、これまで1980年に制定されたJCA手順によって、小売りから卸・メーカーへ注文の発注作業を推進してきた。この30年ほど前に制定された従来型EDIのJCA手順は、通信速度が遅い、漢字が使えない、海外では受け入れられないなど多くの問題点を抱えている。この解決策としてこれまでJCA-手順、JEDICOS、JEDICOS-XMLなどが提案されてきたが、根本的な解決には至らなかった。

 このため経済産業省は03年から流通業界の次世代EDIであるXML-EDI「流通BMS」の検討を開始した。BMSとは流通システムの国際標準化団体であるGSIが策定した「ビジネスメッセージ標準」であり、流通BMSはこれをベースに日本の習慣を取り入れて開発された。流通BMSは①EDIメッセージ(取引業務プロセス〈メッセージ種〉、データ項目、コード〈GTIN、GLN〉、データ表現形式〈XML〉)②通信インフラ(通信手順〈ebXML MS、AS2、JX手順〉、通信基盤〈インターネット、TCP/IP〉)からなっている。通商産業省は06年度にグローサリー、07年度にはアパレルと生鮮の共同実証を行い、現在これらの本番化と普及を図っているところ。08年度は「新たEDI標準への移行の促進」および「標準維持管理に向けた体制の確立」を重点課題としている。

 ウルシステムズの「UMLaut(ウムラウト)/X-XML」はインターネットを活用した流通BMS対応ソフトウエアで、企業間取引を導入コスト・期間とも約1/3で実現することが可能。同ソフトにより、取引先との単なるデータ交換の仕組みを構築することができるだけでなく、BPM(ビジネスプロセス管理)を行うことができ、質の高い業務を効率的に実現できるようになる。

 次世代EDIであるXML-EDI「流通BMS」は今後JCA手順にとって代わることは明らかだが、さりといって手をこまねいていては普及の速度は速まらない。日本は先進国の中で最も労働生産性が低い国と名指しされている。今回産業通産省が先頭に立って普及させようとしている流通BMSを、流通業界が一体化して取り組むことが強く求められている理由の一つがここにある。(ESN)


◇企業システム◇SAPジャパンが中堅企業向けERP「All-in‐One」の下位バージョン発売

2008-07-28 10:24:47 | ERP

 【ERP】SAPジャパンは08年8月から、中堅企業向けERPの短期間・低コスト導入プログラム「SAP Business All‐in‐One FAST-START PROGRAM」を開始する。同プログラムは「SAP Business All-in‐One」(年商500億円未満の中堅企業を対象)のさらに小規模の企業を対象に、サービス、商社・卸、組立製造に対象業種を絞って提供する。「SAP Business All-in‐One」に比べて半分以下の期間で導入でき、会計、販売、購買、その他の機能を統合的にサポートするSAP ERPを3000万円からという低価格(ソフトウエアライセンス、ハードウエア、導入サービス込み)で提供可能にした。 (08年7月23日発表)

 【コメント】ERP市場は大手企業の市場が飽和し、それに伴い中堅市場の開拓の切り札として、SAPは「All-in‐One」を投入した。今回、発表した「All-in‐One FAST-START PROGRAM」はさらにその下の規模のユーザーを狙ったもの。ソフトウエアライセンス、ハードウエア、導入サービス料込みで3000万円からという価格設定が、どうユーザー企業にアピールすることができるかが、成否を左右しよう。

 中堅・中小企業向けERP製品は、昔のオフコン時代からの伝統ある市場で、日本のITベンダーの牙城となっている。ここに今回SAPが参入しようとするわけで、SAPといえどもそう簡単に市場参入ができるとも考えていないだろう。このとき狙い目となるのは、海外と取引が多い企業だ。もう、日本の多くの企業が海外市場を抜きに事業展開が不可能になっている。こうなるとERPのバージョンアップの際、国産ERPソフトから、SAP ERPに切り替える企業も出てこよう。(ESN)


◇企業システム◇NK情報システムのオープンソースERP「HOOP」

2008-07-26 10:06:15 | ERP

  【ERP】現在、オープンソースソフトウエア(OSS)によるソフトウエア開発が注目を集めているが、このほど国産のオープンソースERP「HOOP」がNK情報システム(広島市南区稲荷町2-16、中村一孝社長)により開発され、“広島発のGlocalなオープンソースERPシステム”としてスタートした。この「HOOP」開発プロジェクトの一部はIPAの「06年度オープンソフトウエア活用基盤整備事業」の支援を受け、KN情報システム、オープンテクノロジーズ、SRA西日本の3社により開発されたもの。「HOOP」は5つの基本管理業務システムをベースに管理業務システムを組み合わせることにより、ERPシステムを短時間での導入が可能となる。今、OSSをベースに、地域のソフト企業が水平に分散してソフト開発をし、大手企業の下請け構造から脱却しようとする動きがあるが、「HOOP」はこの流れに乗ったERP製品で、互いに追加開発を行った製品の共有やマンパワーの過不足のカバーなどにより、今後地域活性化に貢献するものと期待が高まっている。ここでは「HOOP」サイト運営事務局に質問を行い、次のような回答を得たので掲載する。

 質問① オープンソース型ERPソフト「HOOP」は、どのようなユーザー(企業規 模、業種など)を想定していますか。また、利用に際しては、ユーザー企業自身 が独自にダウンロードし、カスタマイズし、メンテナンスまで行うことを前提と したものですか。

 HOOPサイト運営事務局 ERPを導入し、経営効率が上がると思われる、従業員数50人以上、売上高10億円以上の企業を想定しています。業種はあらゆる業種を想定しています。利用に関しては、自社でダウンロード、カスタマイズ、運用時の障害対応等が困難な場合は、弊社での有償サポート対応が可能です。

 質問② 現在各社から発売されている「HOOP」と同類のパッケージ型ERPソフト製品に比べて、価格以外の優位性はどこにありますか。

 HOOPサイト運営事務局 同類のパッケージ型ERPソフト製品について具体的に分からないと比較が困難ですが、弊社の製品は価格が安いことと、将来の拡張性が高いこと、またソースコードが公開されているため、ユーザーが自らカスタマイズや機能拡張を行えることが特徴として挙げられます。

 質問③ 「HOOP」を普及させるために、コンソーシアムなどを組織化する計画は ありますか。 

 HOOPサイト運営事務局 現在、弊社の拠点である広島に「ひろしまオープンソフトウェアコンソーシアム」というNPO法人があり、弊社も加入しております。

 質問④ 「HOOP」がオープンソース機能を使い今後発展するとなると、どのよう な将来像が考えられますか。

 HOOPサイト運営事務局 まず、地域のオープンソース団体と連携を深め、「HOOP」をコアとして様々な業種向けの追加開発を行った製品をお互いが共有することによって、安くて早いシステム構築が可能となります。また製品の共有だけでなくマンパワーの過不足をお互いが補うことによって、地域ソフト会社間の連携が可能となり、地域活性化にも役立つと思われます。

 

 


◇企業システム◇日新製鋼が約半日以内に全事業所システムを復旧させる災害対策システム構築

2008-07-25 15:16:04 | システム開発

 【事業継続】日新製鋼は日本IBMの協力の下、自然災害などでホストコンピューターが被災し停止した場合でも、安定して製品の生産・供給を継続させる災害対策システムを構築し、運用を開始した。同社のホスト機は堺製造所(大阪府堺市)に集中設置しているため、同機が停止した場合、全事業所に大きな支障が出る懸念があった。このため、呉製鉄所(広島県呉市)のバックアップコンピューターに常時12秒間隔で基幹業務データを送信、約半日以内に全事業所のシステムを復旧させることが可能になった。初期投資額は26億円。 (08年7月22日発表)

 【コメント】最近大地震が多発している。専門家によると日本中どこに大地震が起きても不思議はないという。こうなると、企業がシステムのバックアップ体制を確立させることは必須の要件となる。つまり、遠隔地にバックアップマシンを設置し、バックアップデータを取ることは当たり前の時代になってきてはいるが、問題は復旧までに要する時間をいかに短縮できるかという点になってくる。

 今回、日新製鋼では被災していない事業所の生産を継続させながら約半日以内に全事業所のシステムを復旧させることに成功した。これは、IBMの災害対策ソリューション「GDPS(広域分散並列シスプレックス)/グローバル・ミラー」を採用したことによって実現させたもの。

 最近の企業での災害に対する取り組みは、事業継続計画(BCP)として、いかに事前に十分な準備が行われているかが問われている。つまり災害対策システムをいくら構築したとしても、どのような手順で、誰が、如何に行うのかを、事前にマニュアルでドキュメント化されていなければ、絵に書いた餅に終わってしまう。今後、事業継続計画(BCP)に基づいた事業継続管理(BCM)の整備が、地震大国である日本の企業には強く求められる。(ESN)


 


◇企業システム◇NTTデータの金融業界向けXBRLサービスを3銀行が採用

2008-07-23 12:05:12 | アプリケーション

 【アプリケーション】NTTデータは、金融業界向けXMLであるXBRL(イクステンシブル・ビジネス・レポーティング・ランゲージ)をベースにした財務情報流通ゲートウェイサービス「Zaimon(ザイモン)」の第1弾のASP対応サービス「Zaimon e‐Taxデータ受付サービス」のファーストユーザーである三井住友銀行に続き、このほど、みずほ銀行、埼玉りそな銀行で採用されたことを明らかにした。同サービスは、国税電子申告・納税システム「e‐Tax」に提出された電子データ(XBRL)を企業から受け取り、銀行業務に活用することができるもの。今回のような複数のステークホルダー(利害関係者)間におけるXBRLデータの2次利用の仕組みは、まだ世界的に見ても例がなく、XBRLデータの本格的流通を実現する初めてのサービスとなる。 (08年7月22日発表)

 【コメント】世界は今XMLの本格普及に向け動き出している。HTML(ハイパー・テキスト・マークアップ・ランゲージ)が文書の電子化に限定されていたのに対し、XMLを使うことにより、インターネットを介して複数のコンピューター同士が自動的にアプリケーションを稼働させ、データを交換することが可能になる。これはインターネットの世界が新しい世代へと突入したこと意味している。ただ、XMLを本格的に使いこなそうとすると、業種ごとに特化させたXMLが必要となり、現在これらの普及が焦点となっている。汎用の企業間電子商取引向けのebXMLに対して、例えば電子・電気業界向けは「ロゼッタネット」、マスコミ業界向けでは「NewsML」、旅行業界向けでは「TravelXML」、地理関係向けでは「G-XML」、そして財務関係向けが「XBRL」というわけである。

 このような世界的な大きな変革の時代に当たり、日本政府はこれまでの財務データの電子化での遅れを一挙に取り戻し、さらに財務データの電子化で世界の先頭を走る手段としてXBRLに着目、国税電子申告・納税システム「e‐Tax」の決算書部分にXBRLを採用した。「e‐Tax」は平成19年度末現在で利用率が16%(約51万件の法人税申告)を超えており、この結果、現在世界的に見ても例を見ない大量のXBRLデータが利用されてるという。日本政府の狙いは的中したといえそうだ。しかし、各国もXBRL化は急務と見ており、今後日本は追いつかれる立場になる。現在、XBRLは金融庁の「EDINET」や東京証券取引所の適時情報開示システム「TDnet」でも使われ、財務データの標準としての地位を確立しつつある。

 NTTデータは、このような国家プロジェクト的なXBRLに対して、企業と利用者の間の財務情報のやり取りを、XBRLを用いてワンストップでセキュアかつ利便性多角サポートするASPサービスとして「Zaimon」を提供しているもので、今後、大手ITベンダー間ではXBRLシステムをめぐり激しい攻防が繰り広げられることになろう。(ESN)

 


◇企業システム◇日本オラクル、日本IBM、アシストの3社が仮想化アライアンスを結成

2008-07-21 17:20:41 | 仮想化

 【仮想化】アシスト、日本IBM、日本オラクルの3社は、オラクルのサーバー仮想化製品「Oracle VM」を活用した仮想化およびITインフラ領域において協業する。IBMのサーバー製品「IBM System x」「IBM BladeCenter」やストレージ製品「IBM System Storage」と、オラクルの仮想化製品「Oracle VM」を組み合わせ、機能検証や推奨構成を作成して、検証結果を、ベストプラクティスとして活用できるようにまとめ、ユーザーへのシステム提案活動において活用する。また、オラクル製品とIBM製品とを活用した仮想化技術およびITインフラ導入の普及・促進を目的としたコンソーシアム「アシスト・IBM・オラクル仮想化アライアンス」を7月10日に設立した。年内50社程度に参加企業を拡大させていく。 (08年7月10日発表)

 【コメント】仮想化技術は日を経るごとに注目が高まり、これから加速度的に導入ユーザーが増えることが予想されている。今回のアシスト、日本IBM、日本オラクルの3社によるコンソーシアムの結成は、このような背景を基に結成されたもの。3社の中、カギを握っているのは日本オラクルだ。これは仮想化ソフトとして、オラクルの「VM」を採用していることがこのことを物語っている。IBMも独自の仮想化ソフトを持っている。もともと仮想化技術はIBMのメインフレーム上で開発されたもので、IBMこそが仮想化ソフトの本家といえる。今回、このことをかなぐり捨ててでも、オラクルの仮想化ソフトを市場に広めようとしている日本IBMの真意はどこにあるのか。

 これは、OSの問題に当てはめてみると分かりやすいかもしれない。PC分野はクライアント、サーバーともにWindowsが市場を独占して、さしものIBMも身動きが取れない状況へ追い込まれたのはご存知のとおり。そこに降って沸いてきたのが、LinuxOSの登場だ。Lnuxは今急速に企業のサーバー用OSとして浸透を見せ始めている。長年Windowsの独占を指を咥えてみてきたIBMとしてはLinuxの登場はWindows反攻のまたとないチャンスとなった。現在に至るまでIBMはLinuxに力を入れ、このことはこれからも変わらないはずだ。一方、仮想化ソフト市場を見てみると現在ストレージ大手EMC傘下に入り経営基盤が強化されたヴイエムウェアがトップシェアを握っているほか、オープンソースのXenをシトリックスが買収し本格普及に乗り出している。マイクロソフトは独自の仮想化ソフトを持っているが、実はシトリックスはマイクロソフトの別働隊としての色合いが濃いソフト企業で、2社は共同してそれぞれの仮想化ソフトの普及を図りつつある。それに加えオラクルが他社を圧倒するDBユーザーをベースに仮想化ソフトを広げようとしている。

 このような現在の仮想化ソフト市場動向の中で、さしものIBMも自社の仮想化ソフトを独自に普及させようとしても、ヴイエムウェアを追撃できないか、下手をするとマイクロソフト・シトリックス連合に敗れ去る恐れも現実味を帯びてくる。このようなことから日本IBMは日本オラクルと手を組むことによって、劣勢を一挙に巻き返そうとしたことが、今回のコンソーシアム結成に至った背景といえるのではないか。今回「アシスト・IBM・オラクル仮想化アライアンス」とアライアンス名に社名を入れた。このようなケースはあまり前例がなく、何か、マイクロソフト・シトリックス連合への挑戦状のようにすら感じられる。(ESN)


◇企業システム◇セブン‐イレブン・ジャパンがウインドウズ・ビスタを大量一括導入に踏み切る

2008-07-18 11:09:48 | ユーザー

 【ユーザー】セブン-イレブン・ジャパンは、社内システムにおける約5000台のPCに対して、マイクロソフトのOS「Microsoft Windows Vista Enterprise」および「Microsoft Office Professional Plus 2007」の導入を開始したと発表した。同社ではマイクロソフトの協力の下、野村総合研究所が08年1月から導入検証を開始し、現行環境からの改良、約250の業務アプリケーションの移行を経て、7月から社内展開、運用を開始している。これにより同社では、コストおよび管理工数削減、さらによりセキュアで、高い生産性を生み出す社内システム環境の構築を目指すことにしている。 (08年7月16日発表)

 【コメント】セブン‐イレブン・ジャパンが筆頭株主のインターネット銀行「セブン銀行」において、08年1月にそれまでメインフレーム上で稼働していた勘定系システムを、ウインドウズサーバーに移行させたという“事件”があった。金融機関の勘定系は安定性の問題などからメインフレームが使われてきた。しかし、メインフレームはコストが高く、セブン銀行でもコストの安いオープン系への移行を行うことにし、あまり前例のない勘定系システムのメインフレームからウインドウズサーバーへの移行を成功させた。このようにセブン‐イレブン・ジャパンのグループ企業が、ウインドウズに対するノウハウを十分に蓄積してきたという背景がある。

 今回のセブン‐イレブン・ジャパンの社内へのビスタの大量一括導入もセブン銀行と似た面を持つ。というのはビスタを現時点で大量一括導入する大手企業はまだまだ少ないからだ。これは長年使い慣れたウインドウズXPを今の時点で全面的にビスタに切り替えることを大手ユーザーがためらっているためだ。今回、セブン‐イレブン・ジャパンがビスタを導入した理由として挙げている点は、①コスト削減②管理工数削減③セキュリティ④高い生産性―などである。つまり、使い慣れしたXPを今後も使い続けるか、または特にセキュリティになどで高い評価を得ているビスタを今導入するか、この回答の一つがセブン‐イレブン・ジャパンであったわけで、今後、各企業もどちらにするのかの判断が迫られることになる。(ESN)


◇企業システム◇国民一人当たりのGDPでアジア第1位から滑り落ちた日本と「IT経営協議会」

2008-07-16 10:20:18 | 視点

 【視点】経済産業省や日本経団連などはこのほど「IT経営協議会」を発足させ、「IT経営憲章」を制定した。これは、各企業がCIO(最高情報責任者)を育成することを支援し、米国などに比べ遅れている企業のIT活用を推進させることにより、国内産業の国際競争力を高めることにその狙いがある。今回策定された「IT経営憲章」を見る限り優れたものだし、同協議発足に至る現状分析のデータ類も説得力を持っている。しかし、これらの施策によって本当に日本の企業の国際競争力が付くのであろうか。

 まず、今回設置が決まった「IT経営協議会」は今後、どのような影響力をわが国のが産業界に与えようとしているのであろうか。既にCIOに関しては大手企業ユーザーからなる組織として日本情報システム・ユーザー協議会(JUAS)があるし、ITベンダーごとのユーザー会もある。また、経営情報学会、国際CIO学会などの学会もある。このような状況下で経済産業省が直接乗り出してくる意図はどこにあるのであろうか。屋上屋を重ねることにはならないであろうか。今政府が行わなければならないのは小さな政府づくりであり、行革である。そして、今政府が取り組まねばならないのはエネルギー政策である。こんなとき、新たに組織をつくるのではなく、既存の組織を支援し、育成することの方が重要ではないのであろうか。

 各企業で情報システムに携わったことのある人なら分かるであろうが、産業育成の延長線上でユーザー問題を捉えては必ず失敗する。各企業の情報システムは、現場との複雑な関係の上に築かれており、なかなか外部の人間が首をつこっめない状況が多い。それと、企業の情報システムが一概に言えないのは、業種の違いがあることだ。製造業では当たり前でも流通業では当たり前でないシステムなどそれこそ掃いて捨てるほどある。例えば、金融業で大手銀行や証券取引所などがたびたびトラブルを起こして、その度に政府が苦言を呈し、CIOを任命しても一向に改善改善される兆しはない。つまり、その業種独特の問題が大きく立ちはだかり、いくら優秀なCIOを置いてもなかなかきれいごとが成り立たない世界なのだ。

 仮に、CIO育成学校をつくったとしても、そこを卒業した人材がわが国の国際競争力を高められるかというとなかなか難しいと思う。わが国の生産性が欧米の企業に比べ低いのは必ずしもIT化の格差だけではない。生産性が低いといっても、日本のブルーカラーは昔から現在に至るまで世界的に見て高い水準にあることに変わりはない。中小企業はそもそも生産性が低ければ生き残れない。このように考えていくと日本の労働生産性を高めるには、官公庁や大手企業のホワイトカラーなどの生産性を高めることが急務であることに行き着く。

 最近、IMFが発表したデータによると、国民一人当たりのGDPで日本はついにマレーシアに抜かれアジア第2位に転落した。この調子では国民一人当たりのGDPで韓国、台湾に追い抜かれることだって考えられないことではない。また、GDPの絶対値でも近いうちに日本は中国に追い抜かれることは間違いない。つまり、GDPの国民一人当たりでも、絶対値でも日本はアジア第1位の地位から滑り落ちて2位に甘んずることになる。この原因の一つにIT化の問題があるであろうし、だから、CIOの育成が急務だという考えも存在しよう。しかし、今回国民一人当たりのGDPでアジアトップの座をマレーシアに明け渡した日本の企業の国際競争力弱体化の問題は、単にIT化の促進やCIOの育成ではかたずけられない、もっと別な要素が絡み合った結果ではないであろうか。(ESN)