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企業経営を左右する企業情報システム(経営+ITソリューション)のデータバンク作りを目指す

◇企業システム◇日立GPが「レガシーシステム再生ソリューション」を強化

2008-06-30 12:04:07 | システム開発

 【ニュース】日立公共システムエンジニアリング(日立GP)は「レガシーシステム再生ソリューション」を強化し、①異種言語移行支援サービス」(アセンブラ、NATURAL、Q言語などのメインフレーム用のプログラミング言語で書かれたプログラムを、COBOL2002などのWindows OS上のプログラミング言語に変換)②C/S系言語バージョンアップ支援サービス(Windows OSのバージョンアップに伴い発生するプログラム言語のバージョンアップ)―の2つのサービスを追加し提供を開始した。これにより、様々なプログラム言語を用いて作成されたシステムに対しても、機械変換による正確かつ迅速なシステム移行を実現し、例えば、NATURALからCOBOL2002のマイグレーションにおいて96%の機械変換率により、高い移行品質を可能にしている。また、画面・DBなどを含めた3層アーキテクチャーのプログラムソースに変換し、再利用性・保守性の高いマイグレーションを可能にしている。なお、同社のレガシーシステム移行サービスは、既に12件のプロジェクトで実績を持つ。(08年6月23日発表)

 【コメント】メインフレームあるいはオフコン上で構築したアプリケーションプログラムをいかに、迅速・正確にオープンシステムへ移行するかという問題は“古くて新しい問題”の一つである。メインフレームやオフコンは最近話題に上ることが少なくなったが、まだまだ日本の市場では多く残っている。メインフレームが世界で一番多く残っているのは日本だといわれているほどだ。また、オフコンは日本固有のコンピューターで、中堅以下のユーザーではまだまだ多く使われている。つまり、レガシーシステムのオープンシステムへの移行の問題は、古くから問題となっているたが、現在でも問題であることにはなんら変わりはない。ただ、最近はWeb系の話題がマスコミ上で騒がれて、その陰に隠れて影が薄くなっているだけで、問題が解決したわけではないのである。

 日立GPは「レガシーシステム再生ソリューション」としてこつこつと取り組み、今回の発表した異種言語の機械変換について96%という高い変換効率実現させたことの意義は大きい。同社が手掛けた同ソリューションのユーザーでの実績は12件あるが、明らかにしているユーザー名は東急コミュニティーと専修大学だ。東急コミュニティーではCOBOL約6.5Mステップのシステムの移行を東洋エンジニアリングと手掛けたが、活用資産を約1.2Mステップ規模まで絞込み、システムのオープン化を移行を1年半という短期間で実現したという。専修大学については7月17日、東京国際フォーラムにおいて事例発表が行われることになっている。

 同社のレガシーシステム移行ソリューションのもう一つのポイントは3層アーキテクチャーを採用していることだ。単に言語を変換するだけだけではなく、①プレゼンテーション層(画面表示プログラム)②ファンクション層(業務プログラム)③データ層(DB I/Oプログラム)と3つの階層に分け再構築するため、今後のシステム変更の際にも柔軟な対応を可能とすることができる。ユーザーはレガシーシステムの移行に当たって、同社のようにシステムをトータルにわたってサポートするSI企業を選択することが成功のカギを握っていることを認識した方がいい。(ESN)


◇企業システム◇東京海上日動が四半期決算対応の新会計システムをオラクルのERPで構築

2008-06-27 11:59:33 | ユーザー

 【ユーザー】日本IBMとIBMビジネスコンサルティング(IBCS)は、東京海上日動火災保険の経理システムを、IBMのUNIXサーバー(IBM System p)を中心とするオープン・プラットフォームで構築し、ERPパッケージはOracle E-Business Suiteを採用した。同システムは四半期決算対応機能を持ち、本社経理部門を含む全国約400人の経理担当者が活用し、単体の会計システムとしては業界最大規模となる。全国の各利用部門においては、これまで本社経理部門が月次で配布していた数百種類の帳票類が廃止され、締日翌日から柔軟に会計データの参照・分析が可能になった。同システムは、IBCSがコンサルティング・サービスを提供し、東京海上日動システムと日本IBMの3社で開発した。開発はIBMの中国での開発拠点であるISSC(IBM China Global Delivery Center)と日本の開発拠点が同時進行で行った。(08年6月23日発表)

 【コメント】四半期決算発表は既に定着してきたが、経理システム自体が対応しているかというと、かならずしもそうではない。今回東京海上日動は四半期決算対応の会計システムを開発したが、今後同様な動きはあらゆる業種で出てこよう。四半期決算が契機になり、これまでのメインフレームをオープン系に置き換える傾向も、今後加速しそうだ。オープンサーバーの候補としてはUNIXサーバー、Linuxサーバー、Windowsサーバーが考えられるが、東京海上日動は扱うデータ量が大きく、安定性を重視してUNIXサーバーを選択したものと思われる。

 大手企業の悩みの一つは紙の帳票類のボリュームの大きさだ。今回、全国に配布していた数百種類の帳票類を廃止した意義は大きい。これは個々の企業のコスト削減も大きいが、地球規模の資源保護といった意味からも今後重視すべき点であろう。また、紙を電子化することによって、各種データを自由に分析可能となった点も見逃せない。これからの企業のシステム化の重要テーマの一つはBI(ビジネス・インテリジェンス)であることは間違いない。サーバーに蓄積されたデータを基にいかに早く分析し、企業戦略に生かせるかで企業間格差が生じる時代に入ってきたからだ。

 今回の新システムの開発についても新しい傾向が見られる。それは、IBMの中国での開発拠点であるISSC(IBM China Global Delivery Center)と、日本の開発拠点が同時進行で行ったことだ。今、全世界のIBMは“グローバリー・インテグレイテッド・エンタープライズ”を前面に掲げて事業戦略を推進している。これは、一つの業務を全世界の拠点に分散して処理を行うという戦略を指す。これによって日本IBM は一時の業績低下から脱したと言われている。もし、このIBMの新戦略が軌道に乗ると、日本の大手IT企業は早急な対応を迫られることになろう。(ESN)


◇企業システム◇書籍「IT投資は3年で回収できる」(畠中一浩著、PHP研究所刊)

2008-06-25 09:51:53 | ユーザー

 【ユーザーCDIソリューションズ(東京都港区虎ノ門1-2-8、虎ノ門琴平タワー20階、畠中一浩代表取締役CEO)は、「IT投資は3年で回収できる」(畠中一浩著、PHP研究所刊)の出版を記念して6月12日、東京・虎ノ門の霞山会館において「IT投資の回収」をテーマに経営セミナーを開催した。私はこのセミナー参加したが、このきっかけとなったのは、新聞で「IT投資は3年で回収できる」という単行本の広告を見たことであった。それまでも企業のIT化の評価についてはいろいろ調べてきたが、なかなか納得がいく方法に出会わず、ある人からは「企業のIT化の評価は不可能だからあきらめた方がいい」と忠告を受けていたほどだ。

  そんな時に「IT投資は3年で回収できる」という本に出会い、あっと思った。そうだIT化の評価ではなく、IT投資の評価=回収なのだと。それでも3年で回収できるというのはちょっとオーバーではないか、と思いながらその本を買い読んでみて、その後セミナーにも出席した。結論からいうと、なるほど、このようなアプローチで企業システムの構築/運用管理に取り組めば “3年で回収できる”というのもあながちオーバーともいえない、ということであった。そして、信用していいと思ったのは、システム運用管理についての同社の適切な取り組みである。私は企業システムに関してシステム運用管理が抜け落ちている説には一切耳を傾けないことにしている。その理由は企業システムコストの60-70%がシステム運用管理関係だからである。

  セミナーに参加した後、CDIソリューションズから何か質問はないかとのメールをいただいたので、質問(素朴な質問=愚問?)をさせていただいたところ、畠中代表取締役から丁寧な回答をしていただいた。畠中代表取締役の了解を得て、ここにその質問と回答の全文を掲載する。皆様の何らかのお役に立てばと思う。(ESN)

 質問① 今回のセミナーでは具体的なユーザー事例が2件紹介されましたが、興味深く拝見しました。話を聞くうち、貴社がこれらの2社のCIO(チーム・インフォメーション・オフィサー)的役割を担っている感じがしました。その理由は貴社がコンサルティング会社だから出来るのではないかと思います。日本のような(義理と人情が幅を利かす)企業環境では社内にCIOを育成できるのは大手企業のほんの一握りの企業だけではないかと考えています。貴社のCIOについての見解をお聞きしたい。

 畠中代表取締役 我々がご一緒したクライアントでもシステム投資が成功するにはCIOは不可欠の存在でした。我々はCIOのサポートをしているので、CIOの本業の全てを代役することは難しいと思います。大企業でなくても、社内を探せば、CIOになりうる人材は必ず存在します。システムに詳しくなくてもCIOは成り立ちます。要は、その(優秀な)人材をシステムプロジェクトにアサインできるか否かです。

 
質問② 今IT業界では「見える化」が重大課題になっており、貴社でも取り組んでおられると思います。しかし、果たして「見える化」を実現し皆で話し合えば、業務改善の実現に結びつくものなのでしょか。もし、イチローに「見える化」をしてもらうと、普通の野球の選手が果たして一流になれるのか。私にはどうも「見える化」は建前だけの話にしか見えません。貴社の「見える化」の効果についての見解をお聞きしたい。

 畠中代表取締役 そもそも「見える化」をしなければ、共通の材料での判断がつかないのではないでしょうか?不明瞭な情報で、どうやって適切な判断をしているのか?おそらく、適切な判断ができていないためにトラブルが生じていると思います。我々のツールである「システムマップ」を作ると、経営陣から現場まで共通の材料で議論が可能になっています。そもそも今野球をしているのか、サッカーをしているのか分からない状態のところにベースボールのラインを引くことが見える化です。野球という共通のフィールド、ルールを設定してこそフェアプレーができるのではないでしょうか?

 質問③ 昔から特に大手企業の情報システム部門の要員数は多いと感じています。ITベンダーからすると情報システム部門は自分達の仕事の身代わりになっている頼もしい部門とうつります。また、その企業の他部門から見ると、浮世離れしたソフトを扱う自社の情報システム部門にはあまり近づきたくない。その結果、情報システム部門だけはそんなに人員削減がなされず、現在も多人数を抱えたままでいます。IT-ROI改善のためには情報システム部門の要員数削減が欠かせないのでは考えています。貴社の企業ユーザーの情報システム部門の要員数についての見解をお聞きしたい。
 
 畠中代表取締役 一般的に数が多いかどうかは答えられませんが、数よりもスキルのほうが重要です。どういうスキルがそのシステム部門にいるのか(会社によって異なりますが)を定義し、余分なスキルは削る、足りないスキルは補完すれば、適切な組織になるでしょう。
 
 質問④ 最近注目されているテーマの一つとしてOSS(オープンソースソフトウエア)があります。OSSも最近では安定性も高まり、徐々にサポート体制も出来つつあります。私はIT-ROIを高めるための一手段としてOSSの導入は必須と考えていますが、今回の貴社のセミナーでは取り上げられていなかった。貴社のOSSについての見解をお聞きしたい。
 
  畠中代表取締役 今回のセミナーでは真のIT(システム技術)面への焦点は当てられませんでしたが、OSSも常にシステム開発の中では話題になります。OSSの導入は前向きに考慮すべきと思い、我々も提案をしていますが、システムに関して保守的な国ですので、まだまだ採用の事例は多くありません。結果的には通常のソフトを採用する会社のほうが多いと思います。傾向は徐々に変わりつつあると思います。
 
 

◇企業システム◇NTTデータとDRUMがFelicaのSaaS型ソリューション「SmarP」提供開始

2008-06-23 10:15:16 | アプリケーション

 【ニュース】NTTデータは、電通とリクルートによるFeliCa型ICカード/チップのソリューション企業のDRUMと協業し、SaaS型セールスプロモーションソリューション「SmarP(エスマープ)」を開発し、提供を開始した。同ソリューションの導入企業は①メルマガやクーポンを用いた顧客への「告知機能」②電子マネー決済やポイントの付与・還元といった「決済機能」③統計データから次のアクションを誘導するための「分析機能」―などをネットワークを介して利用できる。この「SmarP」の第1号ユーザーは、ポイントサービス「ポイコ」のITインフラとして採用したリクルートで、08年6月26日からサービスが開始されることになっている。(08年6月16日発表

 【コメント】SaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)についての関心が急速に高まっている。SaaS事業者のサーバー上のソフトをネットワークを介して、ユーザーがいつでも、最新のデータを必要なだけ利用できるという“夢のシステム”だからである。現在パッケージソフトを購入して利用しているユーザーは、バージョンアップの度に買い替えたり、ソフトの修正を余儀なくされている。これらの問題点をSaaSはものの見事に解決してくれるというのだから、ユーザーの関心が高まるのは当たり前だろう。ところがSaaSを導入すれば何事も解決されるのか、というとそうともいえないところに難しさがある。

 一つはセキュリティであろう。これまですべて自社管理してきたデータ類をすべてSaaS企業に提供するのだから、信用できるSaaS企業でないと危険であるということができる。そして、カスタマイズの自由度の問題だ。SaaS企業のカタログ類には必ず「カスタマイズ可能」と載っている。しかし、どこまでカスタマイズ可能なのかは載っていない。SaaS企業側は最小限のカスタマイズということを想定しているだろうし、一方ユーザー側は最大限のカスタマイズを想定しがちで、双方の食い違いが起きる。さらに、SaaSはパッケージソフトのような流通経路がないので、低コストで提供されるかというと、案外そうでもない。というのは、パッケージソフトの販売会社の育成も無視できないソフト企業は、SaaSだからといって極端な価格低下は避けようとするからだ。

 それではSaaSを利用する決め手となるポイントは何か。一つは開発期間の短縮が急務な場合だ。半年後にCRMシステムを稼動させねばならない、といったときにはSaaSが威力を発揮する。また、法改正がしばしば起きる業界では、法改正がされる度に一ユーザーごとにソフト開発していては無駄だ。このような場合、SaaS企業が一括して対応して最新ソフトを提供すれば効率的だ。このようなことは交通システムのソフトでは以前から行われている。さらに、ニッチアプリケーションにおいてSaaSを利用すると効果的だ。ユーザーでは特定のアプリケーション開発のため要員を確保するのは難しく、開発後の運用面も同じだからだ。

 今回、NTTが発表したSaaS型セールスプロモーションソリューションは「SmarP」は、最後に挙げた特定アプリケーションにSaaSが威力を発揮する事例になろう。現在、カードを使ったセールスプロモーションは、あらゆる流通業で最大関心事となっているが、大手は別にして、カードを使ったアプリケーションの開発・運用に専門要員をどのくらいはりつけられるであろうか。なかなか、難しいのではないだろうか。このような場合「SmartP」の導入は威力を発揮しよう。カードビジネスは日進月歩だ。これを自社要員でカバーするとなるとなかなか大変なことになる。現在はメルマガ、ブログなどネットワークを介したセールスプロモーションの重みは日ごとに高まってきているのでなおさらだ。(ESN)


◇企業システム◇レッドハットがアマゾンのクラウドコンピューティングに「JBoss」を提供

2008-06-20 09:41:16 | システム開発

 【ニュース】米レッドハットは、米アマゾンが提供するクラウドコンピューティング・プラットフォーム「Amazon EC2」(Amazon Elastic Compute Cloud=開発者がリスクや障害を最小化しながら演算キャパシティを柔軟に活用できるシンプルなWebサービス)において、Javaアプリケーションサーバー「JBoss Enterprise Application Platform」のベータ版の提供を開始した。クラウドコンピューティング・プラットフォーム「Amazon EC2」により、開発者、エンタープライズおよびスタートアップ企業は、エンタープライズクラスのjavaアプリケーションやサービスをWebコンピューティング基盤上に構築、実装、ホスティングするために、事実上キャパシティの制限なく、使った分だけ支払う課金体系により、容易にオープンソースソフトウエア(OSS)技術を利用できるようになる。 (08年6月19日発表)

 【コメント】米アマゾンは、インターネットによる書籍・雑誌の販売で先駆となる企業として成功を収めたが、設立以来幾多の倒産の危機を乗り越えてきただけに、IT業界における存在価値が大きいことは誰も認めるところだ。そのアマゾンがこれまで構築してきた自社のシステム基盤を広く一般に公開するという野心的な試みが、クラウドコンピューティング・プラットフォーム「Amazon EC2」である。全世界で展開する書籍・雑誌販売ネットワークは、既に一企業の所有というよりも世界的な共通システムプラットフォームと見たほうが適当というのが、アマゾンの首脳陣の考えなのだろう。インターネットによる書籍・雑誌販売で成功を収めたアマゾンが、今後世界共通システムプラットフォームでも成功を収めることが出来るのか、全世界の注目を集めている。

 クラウドコンピューティングという概念は、06年8月にグーグルのエリック・シュミット氏が使ったのが最初とされる。その後07年にIBMがクラウドコンピューティング「Blue Cloud」を発表し、さらにヤフーも支援体制を明らかにするなど、俄かに注目を浴び始めた。ところで、クラウドコンピューティングとは何か。これはコンピューターシステムの利用形態の変遷をからきている新しい概念のことだ。コンピューターシステムの利用形態はメインフレームによる集中処理に始まり、さらに、オープンシステムによる分散処理のクライアントサーバーシステムに変遷を遂げた。そして、現在のインターネットのブラウザーソフトによる新集中処理時代へとなったわけである。

 さらに、次の時代は、サーバーが世界のどこに置かれているかなど意識しないで利用できる環境が来る、これをクラウドコンピューティングと名付けたのである。クラウドとはネットワークの雲とといった意味だ。面白いのは「集中と分散は交互に来る」という法則があるが、今回もこの法則が生きそうだ。メインフレームによる集中処理の後、クライアントサーバーによる分散処理、そしてインターネットのブラウザーによる新集中処理が来て、これからはインターネットのクラウドコンピューティングによる新分散処理が始まろうとしているからだ。

 今回、発表したレッドハットは、OSSのJavaアプリケーションサーバー「JBoss」を買収して以後、「JBoss」の普及に向けた活動を活発に展開しており、今回の発表もこの一環に当たる。これは単なるOSのベンダーからOSSの総合ベンダーへと脱皮を図ってのことだろう。「JBoss」の成否がレッドハットの将来を大きく左右することは間違いないところだ。今世間はマイクロソフトとヤフー、グーグルの動向に釘付けになっているが、レッドハット、アマゾン、グーグルのOSS推進3企業の動向にもっと目を向ける必要があろう。(ESN)


◇企業システム◇富士通がビジネスプロセス管理(BPM)ソフトの最新版を販売開始

2008-06-18 10:49:28 | システム開発

 【ニュース】富士通は、SOAに対応したビジネスプロセス管理(BPM)ソフトウエアの最新版「Interstage Business Process Manager V10」をグローバルに販売を開始した。「Interstage Business Process Manager」は、業務プロセスをフロー化して「見える化」し、現行業務の問題点を明確にするとともに、これまで書類やメール、電話などで行っていた業務プロセスをシステム化することで業務効率を向上させるソフトウエア。今回、業務プロセスの分析・シュミレーション機能を強化し、従来より細かく、正確なプロセスの分析が出来るようにしたもの。 (08年6月16日発表)

 【コメント】今回発表のキーワードである「ビジネスプロセス管理(BPM)」が登場する以前、「ビジネスプロセス・リエンジニアリング(BPR)」が一大ブームとなったことがあった。このときのブームはすさまじく、これからの企業システムはすべからくBPRをベースに考えなければならないといったことが公然と言われ、大手IT企業ではBPR事業部が発足したほどである。BPRは従来の業務を根本から見直し、ITツールによって革新的に業務の流れを変え、これによって競合企業との企業間競争に打ち勝っていくという考えであった。この時よく引き合いに出されたのが、グローバル展開する航空機業界の事例である。BPR化した航空機企業は、顧客にいち早く最短距離の路線を安く提示でき、競合企業に対しビジネス上優位に立てると。ところが、このような事例はあるようでいて、そんなに簡単に見つかるわけではない。あればたちどころに企業間競争なんてなくなってしまう。そんなことで、BPRは一時ほどのの勢いをは失った。

 そして、次に登場したしたのが現在話題の「BPM」である。このBPMはBPRほど志を高く持たずに、地道に現状のシステムを明確にして(見える化)、これを基に業務プロセスの全体最適化を図り、それをITツールを使いシステム構築していこうという発想である。これなら、どのような企業でも取り組め、業務の改善を図ることができそうである。このルーツにある考え方は意外に古く、製造業のMRP(資材所要量計画)からきており、これがERP(企業資源計画)へと発展し、同時にEAI(企業アプリケーション統合)およびSOA(サービス指向アーキテクチャー)などの技術を取り込み、現在のBPRへと発展してきたわけである。このようなことから考えると、「BPMもBPRのときと同じで一過性さ」などと考えない方がよさそうである。

 BPMが一過性でない理由は、BPMがこれまでのIT技術を集大成して形成されたものだからだ。今回の富士通の発表でもSOA、XPDL、WfMCといった用語が見られる。SOAはソフトを一からつくるのではなしに、標準化されたインターフェースの基に既存ソフトを組み合わせてシステムを構築しようという考え。XPDLは、XMLベースのワークフロー、WfMCはワークフロー製品の標準化団体のこと。いずれにせよ、これからの企業システムは、業務の流れ(業務プロセス)とITとが渾然と一体化したBPMが、最大の焦点になってくるのは間違いないところだ。(ESN)


◇企業システム◇富士ソフトがグーグルのオフィスソフトをSaaSで提供

2008-06-16 11:22:45 | アプリケーション

 【ニュース】富士ソフトは、グーグルが企業向けにSaaSで提供しているメール&オフィスソフト「Google Apps Premier Edition」に関する販売代理店契約を締結した。これにより富士ソフトは、Google Enterpriseのパートナーとして「Google Apps Premier Edition」を、富士ソフトが提供する「FSSaaBIS(エフエスサービス)」(10月1日本格稼動)のSaaSアプリケーションとして提供を開始する。音響映像機器等をグローバルに展開するディーアンドエムホールディングスでは、「Google Apps Premier Edition」を、グローバルなビジネス展開に非常に適したIT基盤として導入する計画でいる。(08年6月11日発表)

 【コメント】「Google Apps Premier Edition」は、グーグルがマイクロソフトのOfficeソフトの対抗ソフトとして無償で提供しているワープロ、表計算ソフトに加えGoogleMaileをパッケージにして、企業向けに提供するソフト製品である。同ソフトの背景にはマイクロソフトとグーグルの激しい覇権争いが隠されている。マイクロソフトのワープロおよび表計算ソフトのMicroSoft Officeは既に全世界を席巻し、デファクトスタンダード化していることはご存知のとおり。これに対しグーグルは検索ソフト事業で事業拡大に成功、マイクロソフトを追撃している。さらに、マイクロソフトに追いつき、追い越すには、メール事業とOfficeソフト事業をどうしてもモノにしなくてはならないという喫緊の課題がグーグルにはあった。

 両社の最初の激突は、ワープロの文書標準ファイル形式についてであった。ISO標準のファイル形式「ODF」を押すグーグル、IBM、サン、オラクルに対して、マイクロソフトは自社規格の文書標準ファイル形式「オープンオフィスXML(OOXML)」をISO規格として認めるよう何回も申請し、ようやく承認された。これによって、ODF陣営はISOを錦の御旗とする戦略が事実上取れなくなった。そこで、今度は真正面からマイクロソフトに挑戦状を叩きつけたのが「Google Apps Premier Edition」である。このソフトは、GoogleMail(Gメール)とワープロ、表計算ソフトからなる。Gメールは最近ユーザーが増え、マイクロソフトのhotmailに対抗できる体制づくりに成功しつつある。残るはOfficeソフトだ。メールソフトは進出するのは比較的簡単だが、Officeソフトは過去の膨大なソフト資産を考えるとそうたやすいことではない。

 「Google Apps Premier Edition」のOfficeソフトは、Microsoft Officeと互換性があるという触れ込みなので、今後日本市場でこのことが実際に検証される。残るは価格とサポートとなる。グーグルはオープンソースソフトウエア(OSS)の立場に立っており、原則無料(今回のサービスは月額1アカウント6000円)であるので、マイクロソフトに対して優位に立てることは明白だ。今回、富士ソフトが日本市場においてSaaSによるサポートを行うことを発表したことにより、ようやくサポート体制確立に向けての第一歩を踏み出したことになり、マイクロソフトとの市場でのシェア争いが開始されることになる。(ESN)

 


 


◇企業システム◇米レッドハットが米ソフト企業2社との特許訴訟において和解

2008-06-13 06:51:07 | システム開発

 【発表】レッドハットは、米レッドハットがファイアスターソフトウエアとデータタームとの間の特許訴訟で和解に至ったと発表した。今回の訴訟は06年に開始されたが、レッドハット側は特許侵害の事実は認めず、和解に向けた調整を進めていたもので、今回和解が成立したことによって、特定の訴えを取り下げさせた。これによって、レッドハットのユーザーおよびコミュニティは、類似の訴訟から免れることになり、オープンソースコミュニティの保護の観点から重要な先例として位置づけられる。今回の和解によって保護の対象となった製品はレッドハットブランドとして提供されているすべてのソフトウエアで、過去のバージョンも含まれる。 (08年6月11日発表)

 【コメント】オープンソースソフトウエア(OSS)のLinuxに対する特許侵害訴訟としては、03年3月に、米SCOが自社のUNIX技術を不当にLinuxに転用したとしてIBMを提訴し、10億ドル超の損害賠償要求をしたことが記憶に新しい。同年5月に米SCOは「Linuxの使用にかかわる法的責務はLinuxユーザーにも及ぶ場合がある」と警告し、ユーザーをも巻き込んだ一大騒動に発展しかねない一発触発の状態がしばらく続いた。その後、今度は逆にレッドハットがSCOを提訴するなど、一時はユーザーも巻き込んだ、泥沼の状態が続いた。

 このSCO事件以降、「Linuxを使ってリスクはないのか」というテーマはユーザーを含め常に関係者の脳裏から離れない問題として存在してきた。これは著作権的にグレーなコードが紛れ込むことを、完全に遮断することは極めて難しいことを意味する。このため、レッドハットは、OSSを開発する企業やコミュニティが訴えられた際に、訴訟費用を援助する基金「オープンソース・ナウ・ファンド」を設立した。また、05年11月には日米欧のコンピューター間連5社は、Linuxの特を外部から購入、これを無償で提供する特許管理会社「オープン・インべンション・ネットワーク(OIN)」を設立するなど、保護のための手が打たれてきた。

 今回、米レッドハットがソフトウエア企業2社との間で特許訴訟を和解に漕ぎ着けたことは、Linuxをめぐる特許問題に関して、さらにハードルをクリアしたことを意味する。今後、同様なケースが発生した場合、今回の和解のケースが前例として位置づけられ、深刻な訴訟問題は起こりにくくなったと言えそうだ。(ESN)

 


◇企業システム◇富士通が「GLOVIAsmart会計」をサーバーにプレインストールして発売

2008-06-11 09:11:52 | アプリケーション

 【発表】富士通は、中堅企業向け会計パッケージ「GLOVIAsmart会計」について、サーバーおよび導入サービス、運用フェーズでのシステムサポート・システム改善提案サービスをセットにした、新しい形態のサービス商品「GLOVIAsmartサービス会計」の販売を開始した。同製品により、選任の技術者がいない中堅企業においても、短期間かつ低コストで財務会計の必須機能および分析機能を備えた会計システムの導入が可能となる。同社では、ユーザーの会計システムをライフサイクル全般にわたり継続的にサポートすることにしている。(08年6月5日発表)

 【コメント】同製品は、同社のサーバー「PRIMERGY TX150」に「GLOVIAsmart会計」をインストールし、パラメーター設定・マスター登録、運用テストまで行った状態でユーザーに導入するため、ユーザー側でSEによるシステム構築を行うと約6カ月かかっていたシステム構築期間を約3.5カ月まで短縮できるとともに、システム構築費も約40%削減可能となるという。

 最近になり、ようやく各ベンダーから昔で言うターンキーシステム(ハードとソフトが一体化されて出荷)の発売が相次いでいる。例えば、NECは08年5月20日に、同社のブレードシステム「SIGMABLADE」において、仮想環境の導入を容易とする組込み型仮想化ソフトウエア「VMware ESXi3.5」を、出荷時にあらかじめ搭載したブレードサーバーを製品化して、導入後即時にユーザーが仮想化環境を利用可能にしたと発表した。また、デルとシトリックスは08年5月13日、シトリックスのOSS仮想化ソフト「Citrix XenServer」をプリインストールしたサーバー「Dell PowerEdge」の出荷を開始したと発表した。

 このように、プリインストールした製品を各社が発売し始めている背景には、最近になりシステムがより高度となってきて、ユーザー側の負担が大きくなってきたことが挙げられよう。さらに大手ユーザーでは対応できても中堅以下のユーザでソフトとハードがばらばらでは対応できないといったことも要因としてある。本来、インストール作業はベンダー側が行うべき作業であり、企業ユーザーは自社業務の改善に全力を投入する必要があろう。企業のシステム部門はベンダーの延長線上にある部門ではなく、あくまで自社業務の改善が主目的だ。この意味からソフトとハードが一体化したプレインストール製品が増えることが望まれる。(ESN)


◇企業システム◇日本HPが次世代データセンター(DC)サービスの提供開始

2008-06-09 10:52:04 | システム運用管理

 【発表】日本HPは企業ユーザーにおけるデータセンター(DC)の変革を支援する製品・サービス群「HPデータセンター・トランスフォーメーション・ポートフォリオ(HPDCTポートフォリオ)」の日本での展開を開始した。中核となるサービスは①「HP DCCサービス」(DCの最適なコンソリデーション〈整理統合〉の支援)②「HP DCVサービス」(ITインフラの仮想化の支援)③「HP クリティカル・ファシリティ・サービス」(DCの企画・設計・運用のコンサルティング)の3つ。今回のサービスは、HPが05年から3年間をかけて大規模なDC統合を行った際の経験、技術、手法などのノウハウに基づいたもの。(08年6月2日発表)

 【コメント】HPは、全体最適化されたITインフラストラクチャを備えた次世代データセンターとして「NGDC(Next Generation Data Center)」を掲げている。これはプール化されたリソースを必要に応じて動的に分配できる機能を持ったデータセンターを指し、このNGDCを具体化するサービスとして発表されたのが今回の「HP DCTポートフォリオ」である。

 これまで、企業のデータセンターに求められてきたのは、いかに正確に速く計算処理を行うか、ということであった。このためメインフレームに処理を集中化させ、正確性と速さを確保してきたわけである。しかし、ここで問題となってきたのが、空調設備や電力消費量である。今は空冷が中心だが昔は水冷が多く、DCは水との戦いの場でもあった。それでもDCに求められる機能が正確さや速さだけならそれで済んだ。ところが、現在のDCに求められているのはBPM(ビジネス・プロセス・マネジメント)なのである。BPMとは何か。BPMとは「環境変化に合わせてビジネスプロセスを設計変更し、それに応じてアプリケーションの内容や連携を最適に組み換える」(日沖博道著「BPMがビジネスを変える」日経BP企画刊)ことである。企業システムが日々の企業活動と密着したものでなければ、その存在価値を年々低下せざるを得ない。つまり、DCに求められる機能は従来の正確性、スピードに加え、柔軟性と安全性がが重要な課題になりつつある。

 さらに、従来は“コンピューターは金食い虫”と揶揄されながらも、容認されてきたという事実があった。つまり、金がいくらかかっても必要悪といった感じで、情報化投資はしぶしぶ企業の中で認められてきた。しかし、経営者のIT投資に対する見方は年々厳しさを増している。それらは「『経営課題との整合性が担保されていない』『効果が現実化しない』『効果の測定結果が信用できない』『効果がフォローされていない』」(畠中一浩著「IT投資は3年で回収できる」PHP刊)などである。昔ながらのDCであっては、これらの経営者の厳しい評価を変えることは到底不可能であることは明白だ。

 これからの企業のDCに求められるのは、ビジネスプロセスの変化に柔軟に対応可能なシステムを、いかに低コストでしかも安全性を確保して実現できるかにかかっていると言っていいだろう。それにはどうすればいいか。ひとつは仮想化への取り組みでであろうし、さらにシステムコストの低減、中でもグリーンITに対する挑戦はベンダー側ばかりか、ユーザー側にとっても必須の要件となる。そして、これらの背景には“事業継続”という重い課題があることも忘れてはなるまい。この意味で今回の日本HPが提供を開始した「HP DCT ポートフォリオ」は、これからの企業システム構築にとって検討すべき要件が備わっていると言えそうだ。(ESN)