企業システム・レビュー・ネット

企業経営を左右する企業情報システム(経営+ITソリューション)のデータバンク作りを目指す

◇企業システム◇イベント情報

2008-10-31 13:54:41 | イベント/セミナー情報

 

                       <イベント情報>


東芝ソリューションフェア2008

会場:ホテルパシフィック東京1F(品川駅前)

日時:08年11月6日(木)・7日(金) 午前10~午後6時

主催:東芝ソリューション

 今回のテーマは「ソリューションの原点に―たしかな技術、響きあうソリューション」で、同社の“人間力”“技術力”“開発力”を実感してもらう。「ソリューションゾーン」では①モノづくりを支える②街・地域を支える③企業を支える④情報システムを支える―に分けた展示を行う。


◇企業システム◇デルがCIOの課題に関する調査結果を公表

2008-10-29 15:39:04 | ユーザー

 【ユーザー】デルは、IDCに委託し「アジア太平洋および日本のCIOの課題に関する調査」を行いこのほどその結果を発表した。この調査は中国、インド、日本およびオーストラリアの大手企業に属する、約40名のIT担当者を対象にしたもの。調査結果の概要は次の通り。①日々変化するビジネス環境において競争力を維持するためには、ITを最大限に活用することが必要であり、そのためにはシンプルなIT環境が不可欠②企業はIT予算の少なくとも70%を現状のインフラストラクチャーの維持に充当せざるを得ず、将来的なビジネスの発展に利用可能なIT予算は30%に過ぎない③今後の企業の競争力を高めることの分野は「グリーンIT」「データーセンターの変革」「新しいメディアの利用」―の3つ。 (08年10月22日発表)

 【コメント】デルの今回のユーザー調査は、デルが企業システム市場にいかに重点を置いているかの反映の現われと思われる。デルは個人ユーザー市場で拡大してきたが、今後も永続的に発展するためにはどうしても企業システム市場に重点を移すことが必要になってくるわけで、そのためには企業ユーザーの動向把握は必須の要件となる。今回の調査結果は、複雑化したこれまでの企業システムをサーバーの仮想化技術などにより、いかに低コストでシンプルなシステムに移行させるかが最重点課題であることが強調されている。このことはデル自体がユーザーとして取り組んできた結果とも合致する。デルは「仮想化によって自社の2万台のサーバーを518台の物理サーバーと5000台の仮想サーバーに削減し、プロセッサーの利用率を30%を高め、アプリケーション展開に必要な期間を45日から4日に短縮し、2900万ドルの経費削減」に成功したという。つまり仮想化によりシステムの統合化を実現させ、開発期間の短縮とコスト削減が可能であることを自ら模範を示したことになる。

 以前からメンテナンスにかかわる費用が全体の半分を超えるということがいわれてきたが、今回の調査でも70%が費やされていることが明らかになったようだ。つまり、新規開発の費用は全体の30%以下ということになる。これはまったくのところ異常な現象で、何とか新規開発70%、メンテナンスを含んだシステム運用管理30%の比率に逆転が必要となる。この切り札として仮想化が浮上してきているわけである。そのほかの手段としては、SOAやクラウド・コンピューティングなどが挙げられてはいるが、現時点ではどれほどの効果を企業ユーザーにもたらすかは、いまいち分かりにくい部分がある。SOAはいまあらゆるITベンダー、SI企業が取り組みを強化しているが、数年後に企業システムに具体的成果、すなわちコスト削減、開発期間の短縮をどれほど及ぼすものなのかを明言しているところはほとんど見当たらない。つまり、一企業ユーザーごと実践で試さなければ、効果の程は分からないというのが本音ではなかろうか。このことはSaaS、すなわちクラウド・コンピューティングにもいえそうだ。確かに初期投資コストの削減と開発期間の短縮という効果は生み出すが、ランニングコストはどうなるのか。水道やガスなどのレベルまでランニングコストを抑えられれば効果は出ようが、そうでない場合は企業システム全体のコストを上げてしまう。

 今回の調査結果では、今後の企業競争力を高めることができる分野として「グリーンIT」「データセンターの変革」「新しいメディアの利用」の3つが挙げられている。「グリーンIT」は全世界的なCO2削減の流れの中に位置づけられるが、今一番問題視されているのがITのエネルギー消費の大きさである。IBMが今必死に「グリーンIT」に取り組んでいるのは槍玉に挙がらないうちに問題を何とか解決したいという意思表示だ。この流れは将来、企業の情報システム部門にも押し寄せてきそうだ。昔、情報システム部門は“金食い虫”と揶揄されたが、これからは“エネルギー食い虫”といった中傷を受けかねないので、事前に手を打っておいた方がよさそうだ。これと連動するのが「データセンターの変革」である。仮想化などによってサーバーの数を削減することは当然として、クラウド・コンピューティングの導入などによって、自社のデータセンターのスリム化を図らねばならないだろう。「新しいメディアの利用」は明確なイメージがわきにくいが、例えばユーチューブなどのようなものを企業システムに採用してみることも必要になってこよう。(ESN)


◇企業システム◇米IBMが「新クラウド・サービス」を発表

2008-10-27 16:29:55 | システム運用管理

 【システム運用管理】米IBMは、すべての規模の企業が、より簡単にクラウド・コンピューティングを導入し、データ管理の改善、運用コストの削減、連携を容易に実現する「新クラウド・サービス」の提供を開始すると発表した。これにより、13のクラウド・コンピューティングセンターや、40のIBMイノベーションセンターなど、IBMの世界中に広がるネットワークを通じて、ユーザー企業は多数のクラウド・サービスの専門家にアクセスすることができ、クラウド・コンピューティング・モデルを通じて、アプリケーションをテストすることができるようになる。さらに今回、SI企業が、クラウド・コンピューティングにより、新アプリケーションを短時間で開発可能なサービスも同時に発表された。 (08年10月15日発表)

 【コメント】クラウド・コンピューティングの定義はなかなか正確にできないのが現状だ。それだけ技術の進歩のスピードが早く、次々に新技術が付加されているとうことだけははっきりとしている。一般的にいってクラウド・コンピューティングとは、パッケージソフトを個々のユーザーが購入し、サーバーやPCに搭載して利用する従来の方式ではなく、あらかじめインターネットに接続されたサーバー上に搭載されたソフトを、従量制でユーザーがオンライン共同使用する方式を指す。既にグーグルなどにより、オフィスソフトなどがこの方式で提供されており、今後、徐々にユーザーは増えていきそうな気配だ。問題は企業システムにクラウド・コンピューティングが普及するのかという問題だ。SaaSで一挙にCRMソフトユーザーを広げることに成功したセールスフォース・ドットコムは、企業システムへのクラウド・コンピューティングの成功事例の代表的なものとなった。そうなると企業システムへのクラウド・コンピューティングの浸透は時間の問題のようにも考えられる。ところが企業システムへのクラウド・コンピューティング普及には、今後たくさんのハードルを超えねばならない。

 その一つはセキュリティの問題だ。実はコンピューターの共同利用の歴史は古く、TSSを経て現在まで幾多の試練を経験してきた。いかに顧客データを守るかは古くて新しい問題だ。それはサーバーを物理的に共同利用させる技術だけに限定される問題だけでなく、人間の介在する場合のセキュリティ管理をどう実現させるかにある。既に米国ではセールスフォース・ドットコムの顧客データの漏洩問題が発生している。つまり、SaaSにより自社の顧客データを管理するということは、リスクをはらんでいることを、十分に承知しておかねばならない。そうなると、クラウド・コンピューティングが企業システムで爆発的に増えるということが、必ずしも言えなくなってくる。それに、各企業独自の戦略システムと、企業システムの共同利用をどう折り合いをつけるかも微妙な問題として挙げられる。ある一社が提供するクラウド・コンピューティングを利用するユーザーのアプリケーションが皆同じでは、企業システムの優劣で競い合う時代においてはあまり歓迎されまい。さらに、使用した分だけ払う従量制なのでコストを抑えられるという点も、初期投資の低減は事実としても、使用年数が経過した後でも一定額の料金を払い続けることを、ユーザーが果たして納得するのかも問題だ。

 とはいえ、時代の流れは確実に企業システムもクラウド・コンピューティングへ向かっていることも事実であろう。仮想化システム、SOA、OSS、グリッド・コンピューティング、SaaS、PaaSなどは、企業システムがクラウド・コンピューティングを導入するする際の露払いになるという見方が有力だ。今回、米IBMが発表した新クラウド・サービスは、こんな情勢を先取りした施策として注目される。ロータスやラショナルなどIBMにとって虎の子のソフトウエアをすべて投入して、クラウド・コンピューティング市場を抑えようとするIBMの姿勢がありありと読み取れる。その裏にはクライアントシステム市場でマイクロソフトに完全に牛耳られた、苦い経験が脳裏にあるのだろう。今回のクラウド・コンピューティングは、サーバーシステムが主役を演じる市場であり、ここでは絶対に負けるわけにはいかない、とIBMは考えているに違いない。(ESN)


◇企業システム◇イベント情報

2008-10-24 16:07:17 | イベント/セミナー情報

 

                     <イベント情報>


「C&Cユーザーフォーラム&iEXPO2008」

会場:東京国際フォーラム(有楽町)

日時:08年11月11日(火)・12日(水)・13日(木)

主催:NEC/全NEC C&Cシステムユーザー会

 今回の開催コンセプトは「人と地球にやさしい情報社会を目指して」。このコンセプトに基づき、NECグループのIT・ネットワーク融合技術をはじめ、様々なイノベーションおよびユーザーとの共創(コラボレーション)事例をフォーラムと展示で紹介する。C&Cユーザーフォーラムでは企業に求められるイノベーションの方向性やNECの取り組みを紹介するシンポジウムが行われる。また、国内外の第一人者による講演およびユーザーとの共創事例をワークショップにおいて発表することになっている。


◇企業システム◇マイクロソフトが旭川市と協力しWebデザイン事業を推進

2008-10-22 16:25:18 | SI事業

 【SI企業】北海道・旭川市、旭川ICT協議会(AICT)およびマイクロソフトは、「Webデザインの街・旭川」構想の実現および地域産業活性化に向け連携していくことで合意した。旭川地区では「国際家具デザインフェア旭川(IFDA)」や「旭川デザインマンス」などデザイン分野では先進的な取り組みを進めてきている。このように旭川の強みとするデザインと、ITを融合させた「Webデザイン」の分野で、「Webデザインの街・旭川」の実現に向けて、IT人材を育成し、Webデザインビジネスの集積を行い、その結果、地域産業の活性化を図ることになったもの。マイクロソフトは、旭川産業高度化センターが新たに設置する「旭川ITジョイントセンター」に、「マイクロソフト イノベーション センター」を設置し、同センターを拠点にAICTを中心としたIT人材育成活動を支援していく。 (08年10月14日)

 【コメント】マイクロソフトは日本国内で地道に地方自治体とのコラボレーション事業を推し進めているが、今回は旭川市とのコラボレーション事業の発表を行った。旭川市は人口では札幌市に次ぎ道内第2位の人口を擁するが、産業規模では道内の他の都市よりも低位にあるのが実態。そこで、旭川市では家具産地である特徴を生かし、デザインでの町おこしを考え、デザインに関する国際的展示会などの実績を積み重ねてきている。今回はこのデザインでの実績にWeb技術を取り入れ、新たな発展を図ろうという狙いがあるもので、これにマイクロソフトが参加したことによって、その成果が大いに期待される。

 旭川市には全国的に有名になった旭山動物園がある。この旭山動物園は新しい発想で従来の動物園のあり方を根本から変え、今では全国から多くの来場者で賑わっている。この旭山動物園の新しい発想法はこれからわが国のIT産業を発展させる上で、多くのヒントを我々に与えてくれる。旭山動物園ではそれまで檻の奥にあった動物の食事場を、檻の前の方に移動させることによって、来園者に動物が食事をするところを見せるようにした。また、透明な樹脂の中を動物が入るようにして、身近に動物の行動を観察できるようにした・・・などなど、その工夫は数限りなくある。我々は過去の“常識”に縛られるあまり、ことの本質を見誤ることが多い。長崎県では、システム構築の発注に際して、オープンシステムによることと、分割発注方式を取り入れることにより、地場ソフト産業を育成しようと、長期戦の構えで取り組んでいる。これなどは、従来の“常識”にとらわれないで、新しい発想で問題解決に取り組んでいる一つの事例だ。

 今回の旭川市の「Webデザインの街・旭川」構想実現に向けた取り組みも、新しい発想で問題の解決に当たろうとする一つの事例として成果が期待される。問題は北海道という地理的制約をどう克服するかである。この点に関して、北海道はあまりにも国からの補助金に頼りすぎて、自らの力で発展を勝ち取るという視点が希薄になってはいまいか。今九州は「アジアに対しての日本の玄関口」という発想で九州の産業の発展に必死に取り組んでいる。北海道も発想の転換を図って「北海道は北欧に対しての日本の玄関口」といった新しい発想には立てないものであろうか。これまで日本はアメリカ一辺倒できた。この結果産業の発展は加速されたかもしれないが、外国=アメリカという偏った“常識”に陥っている。これからの若者はもっともっとヨーロッパのことを知らなくてはいけない。北海道は飛行機では距離的に北欧に近いし、気候も似ている。日本の若者がヨーロッパの文化を吸収するため北海道に移住するといった改革を北海道全体を挙げて取り組むことはできないものであろうか。

 北海道はIT産業には打って付けの環境にある。気温が高くあまりIT産業には適さない台湾や沖縄があれだけIT産業で頑張っている。北海道はもっとIT産業育成で新しいアイデアを出すべきではないか。今回のマイクロソフトを巻き込んだWebデザイン推進事業は非常に理にかなったアイデアだと思う。まだまだ北海道にはIT産業育成の未開拓の可能性がたくさん残されている。(ESN)


◇企業システム◇JR九州がメインフレームからオープンシステムへの移行に成功

2008-10-20 08:18:35 | ユーザー

 【ユーザー】JR九州は、約2万本のプログラムが動作する大規模メインフレームシステム2台による基幹システムを16台のサーバーのオープンシステムに移行させることに成功した。これは国内最大級のマイグレーションとなるもので、システム構築はJR九州システムソリューションズとNECが担当。これにより、①TOCの最大50%削減②従来比約40%の省電力化③従来比約90%の省スペース化④決算処理の2時間短縮―などを実現させた。 (08年10月14日発表)

 【コメント】これまでメインフレームは大手企業の基幹システムには欠かせないものとして君臨してきた。しかし、Web時代に突入した現在では大鑑巨砲のそしりをまぬかれない。JR九州では約2万本ものプログラムがメインフレームで処理されてきたわけで、これをオープンシステムに移行させるとなると一大プロジェクトとなるが、NECとの協力の下、成功裏に終わらせることに成功した。特に注目されるのはTOCの最大50%削減効果だ。つまりシステムコストが半減したわけで、企業経営から見ると大成果といえよう。通常だとTOC削減はせいぜい20~30%といったところが普通だ。これを半減させたことは、問題がない限りメインフレームシステムはオープンシテムに移行させるべきだという結論になる。現在メインフレームシステムを稼働させているユーザーは、ベンダー側の意見はひとまず置いて、もう一度ゼロベースで考え直すべきであることを、今回のJR九州のマイグレーション事例は教えてくれている。

 JR九州は、今後、駅ビルテナントなどでのICカード乗車券「SUGOCA」を活用したショッピングなどの新サービスを計画している。この際、システム構築で求められるのは柔軟性だ。これまでの企業システムは一回システム開発を行うと、3-5年は新たなシステム構築は行わないといった不文律があった。しかし、現在のように企業システムをめぐる環境が急ピッチに変化するとなると、3-5年のシステムの停滞は許されない。この対策としてはSOAが有効であろう。今回のJR九州はこの辺を読み取って、NECのサービス実行基盤「WebOTX」を採用し、SOA対応を実現させている。新しいシステム構築はゼロからソフトを開発するのではなく、いかに既存のソフトを利用して組み合わせて使うかがポイントとなってくる。こうすれば柔軟なシステム構築が可能になり、最小限の開発期間で済ますこともできるし、コストも削減できる。構築手法もとりあえずシステムを開発し、手直ししながら徐々に完成させるアジャル手法なども考えてみる価値があろう。

 今回のJR九州のマイグレーションで完成したシステム構成図が面白い。メインフレーム全盛の時代は、システム構成図の真ん中にメインフレームが大きく書かれ、その周りに“周辺端末装置類”がぶら下がって小さく書かれていた。これに対して今回完成したマイグレーションシステムのシステム構成図を見ると、一番上にストレージが大きく書かれている。昔のメインフレームは企業のステータス的な位置づけが大きく、企業経営への貢献度はその次といった感じがしていた。しかし、Webシステムを迎えた現在では、コンピューターシステムがいかに企業経営に貢献できるのかが問われている。そうなるとCPUよりもストレージに蓄積されたデータが一番大事という結論になる。システム構成図一つとってもその企業の姿勢が鮮明に反映される。(ESN)


◇企業システム◇イベント情報

2008-10-17 10:36:28 | イベント/セミナー情報

 

                     <イベント情報>


「地方自治情報化推進フェア2008」―ITで変わる地域社会―

会場:東京ビッグサイト 西3ホール

日時:08年10月21日(火)―22日(水) 9:30―17:00

入場料:無料

主催:地方自治情報センター/行政情報システム研究所

内容:電子自治体に向けた先進行政情報システムや住民の利用・活用に
   結びつく最新システムの展示と実演。行政情報化のあり方について特別講演
   を中心とした講演など。


◇企業システム◇阪急と阪神百貨店の経営統合企業がシステム統合に成功

2008-10-16 14:51:35 | ユーザー

 【ユーザー】阪急百貨店と阪神百貨店の経営統合による持ち株会社として07年10月1日設立されたエイチ・ツー・オー リテイリング(H2Oリテイリング)は、5カ年にわたる「システム全体計画」を策定し、新たな顧客サービスの提供や事業拡大などにも柔軟に対応するシステム基盤を構築し、08年4月から稼働させた。「新システム基盤」は①仮想化技術を用いてグループ内で統合・標準化②既設サーバー約130台をブレード筐体2台(ブレードサーバー32台)に統合③事業継続性や内統部制を強化―などを実現している。 (08年10月1日発表)

 【コメント】百貨店業界が苦戦を強いられているようだ。こんな中、阪急百貨店と阪神百貨店は、経営統合して再スタートすると同時にシステム統合も実現させた。ところで、百貨店の苦戦は、流通の多様化に加え、“戦後世代”が少なくなったことが大きいのではないか。戦後世代は中身よりもどの百貨店の包装紙に包まれているのかが、一つのステータスシンボルになっていた。ところがスーパー/コンビ全盛時代に育った今の世代は、包装紙より中身しか関心がない。東京・新宿の三越に行くと店の中に三越の文字があまり掲げられていないことに気付く。旧世代の人間は三越と聞くだけでありがたかったが、今の世代には通用しそうにもない。百貨店業界にかかわらず、時代の変遷とともに企業合併も増え、この結果システムの統合というテーマがクローズアップされるケースが増えている。この意味で今回のH2Oリテーリングの「新システム基盤」の構築は参考になることが多い。

 今回の「新システム基盤」構築の特徴の一つは具体的な数字が明らかにされていること。これらは、①NECのブレードシステム「SIGMABLADE(シグマブレード)」を中核とした構成で、仮想化技術を用いて、サーバーのCPU使率を従来の約20%から50%以上に高め、システム全体の運用効率(稼働効率)を2.5倍に向上させた。また、システム環境変更やメンテナンスの効率化を同時に実現②ストレージの統合によりディスク容量の約55%削減を実現③ストレージの最新技術「SANブート方式」を導入することによって障害に強いシステムを構築③万一のハードウエア障害時の復旧時間を、従来より最大1/10に短縮が可能―など。このほか、①システム管理手法やサービスレベルを標準化することで、運用コストを大幅に低減②サーバーなどのハードウエアはNECのデータセンターで管理し、事業継続性を強化―などの成果を挙げている。

 これからの企業の情報システム部門は、従来以上にコストに敏感でなくてはその存在価値が問われかねない。アウトソーシングがあらゆる場面で導入が進み、ユーザー企業にはPCだけを設置して処理が可能な“クラウドコンピューティング”もじわじわと企業システムを取り囲む形成になってきた。このほか、アウトソーシングそのものともいえるSaaSなども導入企業が増えつつある。うかうかしていると情報システム部門を素通りした企業システムの構築だって考え始めてきており、すでにこれらに関するセミナーも登場している。企業の情報システム部門が今後も存在価値を維持できるとすれば、事業改革(BPM)とコスト削減のリーダーになれるかにかかっているのではなかろうか。その意味から今回のH2Oリテイリングの「新システム基盤」の事例は、はっきりと成果を数字に表しており大いに参考になろう。(ESN)


◇企業システム◇日本IBMがSOA対応の「保険事務処理効率化ソリューション」提供

2008-10-13 06:25:41 | システム開発

 【システム開発】日本IBMは、保険事務処理自動化を実現するSOAベースのプロセス・アプリケーション・フレームワークを含む、保険事務処理効率化ソリューションの提供を開始した。こえまで属人的に処理されていた契約や支払いどの保険事務処理を大幅に自動化することで、サービスの正確性向上とともに、最大で55%程度の処理時間短縮が見込める。これはIBMがグローバルに展開してきた保険オペレーション業務改革のためのソリューション「Insurance Operation of the Future(IOF)」を基に、日本IBMが日本の保険事務自動化に特化したプロセス・アプリケーション・フレームワークを開発したもの。 (08年9月30日発表)

 【コメント】今回の発表は保険業界向けのものだが、この底流にはIBMがこれまで志向してきた企業システムのノウハウが集約され、広く他の業界まで同じ手法でシステム開発していく方向付けがなされ注目される。従来IBMは各国ごとに独自の完結したソリューションを提供してきた。しかし、中国やインドなどの国々が低価格で優れたソフト開発の実績を上げるにつれ、得意な分野をワールドワイドな視点で捉え、グローバルな需要をある特定な国へ開発を特化させることによって、コスト削減とグローバルな標準化を実現るIBMの新戦略「グローバリー・インテグレテッド・エンタープライズ」へと移行を図った。これによる一つの成果が今回発表されたプロセス・アプリケーション・フレームワーク「保険事務処理効率化ソリューション」である。今回の発表では最大55%程度の処理時間短縮が見込めるとしているところが凄い。既に金融システムはシステム化され、処理時間の短縮はそう容易ではないと思われてきたが、実はそうではなかった。このことはベンダー側ばかりでなくユーザー側も大いに従来システムの見直しを行うべきだという教訓になる。

 今回の「保険事務処理効率化ソリューション」の目玉はやはりSOA(サービス・オリエンテッド・アーキテクチャー)だろう。IBMは全世界で既に6500社を超える企業にSOAを提供しており、日本市場においてもトップシェアを持つという。SOAはソフトをサービスという単位で捉え(ソフトの部品化)、ソフトの再利用によりアプリケーション開発の期間短縮とコスト削減効果をユーザーにもたらすといわれている。こうなると一国での対応よりグローバルな展開がより有利になる。IBMはグローバルで特定な業種ごとの取り組みを開始しており、今後、各業種ごとにその成果が明らかにされることになっている。こうなると日本国内を対象にしている国産ベンダーにとっては厳しい状況下に置かれることになろう。日本企業も現在グローバルな体制に移行しており、システム構築も世界各国を跨った形をとらざるを得ない。そうなると日本国内に限定された国産ベンダーよりIBMなどグローバルを対象としたIT企業の方が優位に立つことができる。

 IT企業ばかりでなく、これからの企業ユーザーは、グローバル化に対してどう対応するかを考えておかなければならないだろう。今回の米国の金融機関の再編成は日本の企業も巻き込まれざるを得なくなる。そのため、今後のシステム構築はあらゆる予想される事態を考慮したグローバルなシステムづくりが求められることなってくる。(ESN)


◇企業システム◇日本HPが「メインフレーム移行プログラム(MFA)」の専任組織発足

2008-10-11 08:16:52 | システム開発

 【システム開発】日本HPは、HPの「メインフレーム移行プログラム(MFA)」において、メインフレームからオープンシステムへの移行を支援する専任組織を発足させ、バリューチェーン(プリセールス/コンサルティング・インフラの設計/開発/保守運用サービス)を最適化し、パートナー企業との連携も強化することにより、今までにない付加価値の提供を開始する。同時にオープンシステムの導入効果を可視化する「オープン化評価分析サービス(HP HFA Assessment Package<HP MAP>)」を提供する。「HP MAP」の導入例として日本種類販売では運用コストを30%削減、性能を50%アップという実績を挙げている。 (08年10月7日発表)

 【コメント】メインフレームは日本には数多く残されている。これは世界的に見ても高い数字だという。この理由はいくつか考えられる。最近状況は異なっているが、これまで日本の企業は終身雇用制を敷いてきたため、メインフレームで育った人材を
オープンシステム導入のため、一挙に切り替えることはなかなか難しかった。また、欧米の経営者が自分で直接PCを使いこなすのに対し、これまでは日本の経営者の多くがシステムに直接触れることなく、システムを情報システム部門に丸投げし、このためシステムの抜本的改革になかなか着手できなかった。このほか、日本の企業ユーザーはこれまで、コンピューターを経営にとって守りのツールと考えており、安定した機能を持つメインフレームへの依存度が高かった・・・などなどいろいろ理由が考えられる。

 しかし、急速なグローバル化により、これまでのように企業はのんびりと、日本国内だけで生きていける状況ではなくなってきた。必然的に経営者自らPCを使い経営判断を下す必要性が高まり、さらに、コンピューターを守りのツールから、積極的に攻めのツールへと変えていかなければ、厳しいグローバルでの競争に勝ち残れなくなってきた。しかも、構築する企業システム自体のコストを抑えなければ経営を圧迫しかねない。このような要因が重なり、長年使い慣れたメインフレームをオープンシステムに移行しようとする機運が最近盛り上がっているのが現状だ。

 このような状況に対処するため日本HPでは、これまで社内の個別の組織で取り組んできた体制を今回専任組織に一本化したもの。要員は専任組織を含め60人体制とし、MFA分野の売上げを前年比倍増させる計画。日本HPと日本オフィスシステム(NOS)では日本酒類販売においてMFAを成功させた。これは1年間をかけCOBOLソース約6600本、ジョブ制御言語(JCL)約4300本の基幹システムをオープンシステムに移行させるという、わが国最大級の取り組みとなった。この結果、運用コスト30%削減、性能最大50%アップという成果が得られたたという。

 メインフレームは“悪”、オープンシステムは“善”といった図式は必ずしも正しくない。金融機関などはこれからもメインフレームの方がメリットが大きいということだってありうる。しかし、金融機関でさえ勘定系システムにオープンシステムを導入し始めたところもで始めてきた。要は自社の経営にとってどちらが有利なのか、明確に判断できる経営者がいることと、それを支える優れたCIO(情報担当役員)あるいはCIOに相当する人材が社内に存在するかどうかが、これからの企業経営を大きく左右することは間違いない。(ESN)