企業システム・レビュー・ネット

企業経営を左右する企業情報システム(経営+ITソリューション)のデータバンク作りを目指す

◇企業システム◇富士通と日本オラクル、UNIXサーバーとDBで協業

2010-03-08 09:34:18 | SI事業

 【SI事業】富士通と日本オラクルは、このたびクラウド・コンピューティングなどの次世代型ITインフラに対応したソリューションを検証・開発する「SPARC Enterprise - Oracle Database ソリューション開発センター」を設立した。両社は、同センターで次世代型ITインフラにおける「SPARC Enterprise」および「Oracle Database」の性能検証、移行検証を行い、普及を推進する。(富士通/日本オラクル:10年3月3日発表)

 【コメント】米オラクルがサン・マイクロシステムズを買収した以後、具体的な作業を行ってきたが、ようやく10年1月に買収作業が完了した。これで、買収が発表当時大きな話題となった案件も一件落着ということになる。もっともこの落着というこは、逆にいうといよいよこれから、いろいろな問題が表面化するということが言えるわけで、合併効果がどれほど発揮できるかは、これからのオラクルの戦略いかんに掛かってくる。

 今回、オラクルが富士通との協業を、この時期に発表したのは、正にサンを買収して新事業に乗り出そうとする、絶好のタイミングであり、オラクルが富士通とのパートナーシップを如何に重視しているかの証でもあろう。逆にいうとオラクルは、サンを買収してはみたものの、激変する業界情勢を一歩でも読み違えると、買収の効果が現れないということを、痛切に感じ始めているかもしれない。つまり、UNIXサーバーは、WindowサーバーやLinuxサーバーに押され、かつてのような活況がないところにIBMやHPなど今後もUNIXサーバー事業を続ける力のあるベンダーがおり、かつてほど、そう簡単にサンのUNIXサーバーを売ることは容易ではない。そこで、富士通との関係を強化することによって、何とか乗り切ろうということがベースにあろう。

 これは、富士通からみてもチャンスと言えるのかもしれない。これを契機にオラクルと全世界規模での協業体制が確立するとなると、今後富士通が描く世界戦略にとって大きな後ろ盾となる。そう考えてみると、今回の両社の協業は、富士通にとっての方が、メリットが多きいとも言えるかもしれない。

 今回、「SPARC Enterprise - Oracle Database ソリューション開発センター 」を両社で設立したが、同センターでの活動を通して、SPARC/Solarisビジネスをさらに推進し、ユーザーシステムを支援することにしている。同センターでは、富士通のプラットフォーム製品の総合検証センター「Platform Solution Center」と、日本オラクルのパートナーソリューションの共同検証センター「Oracle GRID Center」に設置されている「SPARC Enterprise」、「Oracle Exadata」、「Oracle Database 11g」を活用し、次世代型ITインフラのソリューションや移行のための標準技術の開発、性能検証、ユーザーシステムのベンチマークテストを実施していく。


◇企業システム◇NTTデータとNRI、共同で“ITサービス産業の活性化に向けた取り組み”を開始

2009-12-14 09:24:50 | SI事業

 【SI事業】NTTデータと野村総合研究所(NRI)は共同で、ITサービス産業の活性化に向けた取り組みを開始する。その第一弾として、「ITと新社会デザインフォーラム2010」を2010年2月26日に開催する。同フォーラムでは、ITの高度活用による新しい社会像とそれを支えるITサービス産業のあるべき姿を提示し、その実現を担う「IT人材像」について提言する。NTTデータとNRIは同フォーラムの開催をスタートとし、ITサービス産業がより魅力的な産業・業界となっていくために、ITに関する教育・研究や人材育成などの取り組みの推進を検討する。(NTTデータ/野村総合研究所:09年12月8日発表)

 【コメント】わが国のITサービス産業は、既に売上げ高16兆円を超える一大産業に発展しているのはご承知の通りだが、その内容(質)を点検していくと、問題点も数多く散見される。以前から指摘されている通り、元請、下請け、孫請けのピラミッド構造は、相変わらず変わってはいない。そのため産業全体の売上高も、全企業の売上げ高をただ足しているだけに過ぎず、真の実態は分らない。

 それでもこれまでは、日本語という厚い障壁に囲まれて、そう大きな波風も立たずにやってこれたが、これからはそうもいかない。中国やインドの企業が積極的に日本市場にアプローチを試みており、その実績は年々拡大しようとしている。中国企業は、同じ漢字圏という強みを発揮し、また、インドは欧米に近い環境の中でのスキルの高さを武器に、日本国内の業務処理を受注しようと試みている。

 そんな中、わが国のITサービス産業は、90年代中盤から後半にかけての「ネットワーク化とアウトソーシング化の時代」などの変遷を経て、現在は「社会インフラとしてIT浸透の時代」を迎えている。例えば、地球温暖化対策の決め手の一つとして「スマートグリッド」が欠かせない技術としてクローズアップされているが、この中でソフトウエア技術の占める割合は高い。つまり、ソフトウエア技術力はエコ産業の決定的な要因になりつつある。

 最近、発刊された書籍に「クラウド~グーグルの次世代戦略で読み解く 2015年のIT産業地図~」(小池良次著、インプレスR&D刊)があるが、著者の小池良次氏は「マイクロソフトやオラクルのような歴史あるソフトウエアハウスも、グーグルのような新興ソフトウエア企業もない日本は“ソフトウエア産業が死滅した”といってもよい」と一刀両断に切り捨てている。小池氏が単なるジャーナリストなら見過ごすこともできるが、在米経験が長く、早稲田大学IT戦略研究所客員研究員を務め、現在、米国のIT事情に最も長じている一人である人の記述だけに、その意味は重い。日本国内で、新年賀詞交歓会などで、ソフト企業同士が傷をなめ合って、事を済ましている場合でないことだけは明らかだ。

 今回、NTTデータとNRI共同で取り組む“ITサービス産業の活性化に向けた取り組み”が、日本のITサービス産業の根源にある問題点から目をそらさないことを望むばかりだ。「何故日本からマイクロソフトが生まれないのか」「何故日本からオラクルが生まれないのか」「何故日本からグーグルが生まれないのか」・・・2010年こそ、真剣に問い直してみたいものだ。(ESN)


◇企業システム◇日立製作所がレッドハットと提携し、基幹システム用Linuxの強化を図る

2009-11-11 09:42:10 | SI事業

 【SI事業】日立製作所とレッドハットは、このたび、基幹系システムへのLinux適用が進む市場状況に対応し、基幹系Linuxシステム向けのサポートサービス分野での提携を強化することで合意した。今回の合意に基づき、Linux予防保守の負担を軽減し、サポート期間を延長する新サービスを両社が連携して商品化し、日立から提供開始する。これによりLinuxシステムでの保守コスト最適化と長期にわたるシステム安定稼働を図り、基幹系システムへのさらなるLinux適用を支援する。今回の提携強化では、さらなる保守コストの最適化や長期安定稼働を求める市場ニーズに対応して、日立がレッドハットの基幹システム向けLinuxサポートプログラム「Advanced Mission Critical Program」に参画し、このプログラムに基いた基幹システム向けの新たなLinuxサポートサービスを日立から提供する。(日立製作所/レッドハット:09年11月5日発表)

 【コメント】最近のIT界の話題は、クラウドに席巻された感があるが、その陰ではオープンソースソフトウエア(OSS)市場は、着実に前進を見せている。というより、OSS市場を確立されたから、今日のクラウド市場が誕生できたと見ることの方が実態に近いであろう。もし、既存のシステムであるオンプレミスの状態に市場全体が踏みとどまっていたら、クラウドのような自由なシステム空間に到達するには、相当長い時間を要していたに違いない。そういう意味で、仮想化ソフトとともにOSSが企業システムに果たした役割は大きいといえる。

 OSSの代表的なソフトはLinuxであり、これまで基幹システムに耐えうるようにLinuxの改良が加えられてきたが、今回日立製作所はこれをさらに一歩進め、レッドハットと提携し、レッドハットの基幹システム向けLinuxサポートプログラム「Advanced Mission Critical Program」に参画し、①予防保守の作業負担を軽減する「アップデート拡張保守オプション24 for Red Hat Enterprise Linux」②Linuxメジャーバージョンのサポート期間を延長し、長期安定稼働を支援する「バージョン固定保守オプション24 for Red Hat Enterprise Linux」の2つのサービスを提供を開始するところに意義がある。既にノベルとマイクロソフトが提携し、具体的な基幹システム用のLinuxに向けたサービスを提供していることに対抗したともとれる。もっとも、最近仮想化ソフトでマイクロソフトとレッドハットが提携するなど、単純に、敵だ、味方だということだけでは、論じきれない面もあるのも事実だ。ただ、今後大手ITベンダーがレッドハットと提携し、レッドハットの基幹システム向けLinuxサポートプログラム「Advanced Mission Critical Program」に参画するとなると、レッドハットの基幹システムにおける優位性が一層鮮明になるわけで、今後注目する必要があろう。

 最近、独SAPも、OSS市場強化に取り組むことを発表したことが注目される。独SAPは、幅広く採用されている実証済みのオープンソース・テクノロジーへの取り組みを強化し、オープンソース・ソフトウェア・プロジェクト独立財団であるApache Software Foundation(アパッチ・ソフトウェア財団)の多数のプロジェクトに参画すると発表した。SAPは開発者とユーザーからなるApacheコミュニティと協力し、業界内の標準化を推進し開発者が成功するために必要なツールを提供するために、オープンソリューションの開発と活用をさらに支援することを計画している。SAPは、Maven、VXQuery、Tomcat、OpenEJB、ActiveMQなどのプロジェクトにさらに貢献し、これらのテクノロジーを、今後発表されるSAP NetWeaver Application Serverコンポーネントに活用し強化していく考えでいるという。

 IT業界にあっては、ブームが去ってから本格普及が始まると、これまでよく言われてきたが、OSSも正にこのことが当てはまるのではなかろうか。つまりOSSはこれから本格普及期に入るということがいえるかもしれない。そう考えると企業システムを対象としたクラウドは、今がブームの時期で、本格普及は大分後になりそうだ。(ESN)


◇企業システム◇日本IBMとノベルがサンのSolarisユーザーをLinuxへ移行作戦

2009-08-17 09:13:13 | SI事業

 【SI事業】ノベルと日本IBMは、基幹業務にSolarisのユーザーを対象に、「SUSE Linux Enterprise Server」OSを搭載したIBMのスケールアップ型サーバー製品群へ移行し、移行コストと期間を最適化しながら運用・管理コストの削減を支援するための、共同コンサルティング・チームを組織し、移行に関する無償アセスメントから有償移行作業までを含んだ包括的な移行支援プログラム「リナックス搭載スケールアップ型サーバー移行支援プログラム(SUPRI:SUSE Linux Enterprise Server Scale Up Migration Program Running on IBM)」を提供する。ノベルと日本IBMでは、基幹システムの中でも特にデータベース・サーバーの移行が最もコスト削減効果が大きいと考え、今回のプログラムは主にデータベース・サーバーの移行を対象としている。 (日本IBM/ノベル:09年8月6日発表)

 【コメント】サンのSolarisユーザーをターゲットにするプロジェクトは、既に日本HPやレッドハットから相次ぎ発表されているが、今回の日本IBMとノベルによる発表も、サンのSolarisユーザーをLinuxサーバーに移行させようとするプロジェクトである。サンにとっては正に受難の時代が始まったわけである。きっかけとなったのはオラクルによるサンの買収事件だ。まさかサンがオラクルに買収されるなんて誰が考えただろう。IBMがサンを買収したならなるほどと、多くの人も納得せざるを得なかったかと思うのであるが・・・。

 それにしてもビジネスというのは何と非情なことか。ちょっとでも弱みを見せれば、そこを突いてくる。少しはスポーツマンシップでも見習ったらどうなのかとも思ってしまう。しかし、HPやIBMやノベルにしてもいつ何時襲われるかもしれないのだから、仕方がないのか。いずれにしてもIT業界というのは、弱肉強食のジャングルにいるようなもので、すこしでも弱みを見せたら終わりなのかもしれない。

 今回の日本IBMとノベル連合の戦略は、データーベース・サーバーに絞った作戦のようだ。日本IBMの試算では、Solarisで稼働する16台のデータベース・サーバーを、IBMのスケールアップ型サーバー1台へ統合することにより、サーバーの保守料金やソフトウェアの使用料金も含めた5年間の総所有コスト(TCO)を約70%削減し、CO2排出量も約80%削減できると見込んでいるという。コスト削減、CO2排出量削減は、最近の殺し文句なので、これによってSolarisサーバーをLinuxサーバーへの移行を狙っているようだ。

 コスト削減、CO2排出量削減は、最近の機種になればなるほど有利なわけで、この点での移行作戦は特別目新しいものではない。問題は、OSがUNIXからOSS(オープンソースソフトウエア)のLinuxへと移行しつつあることだ。現在、話題の焦点となっているクラウド/SaaSの有力ベンダーであるグーグル、セールスフォース・コム、ネットスイート(先ごろ富士通と提携し、今後セールスフォース・ドットコムの対抗馬になるものとみられる)は、すべてLinuxをベースにビジネスを展開している。さらに、スパコン分野でもLinuxをOSとする機種が主流となり始めている。

 調査会社の予測によると、今後のOSの勢力分野はWindowsがトップを走り、その後をLinuxが追い、UNIXは頭打ちか微減ーというストーリーが示されている。しかし、今後クラウド/SaaSの存在感がIT市場で大きくなっていくと、急速にLinuxの比重が増してくるかもしれない。これはOSSという考え方が背景にあるからである。クラウド/SaaSというのは、これまでの最先端のITの成果を、思う存分取り入れて初めて成り立つビジネスである。そのときオープンでないITは邪魔者そのものになってくる。そうなるとOSSをベースとしたLinuxが最後の勝者になるという結論に達するのであるが・・・。(ESN)


◇企業システム◇富士通が米国の有力SaaSベンダー「ネットスイート」と提携

2009-08-12 09:17:04 | SI事業

 【SI事業】富士通および富士通ビジネスシステム(FJB)はこのほど、中堅中小企業向けSaaS型統合業務アプリケーションのリーディング企業であるネットスイート(本社:東京都港区、代表取締役社長:田村 元)と、同社のSaaS型のERPアプリケーション「NetSuite (ネットスイート)」およびCRMアプリケーション「NetSuite CRM+(ネットスイート シーアールエム プラス)」について販売契約を締結した。富士通とFJBは、SaaS型アプリケーション「NetSuite」と「NetSuite CRM+」、導入時のインテグレーション、コンサルティング、サポートサービスを中堅中小企業向けに提供する。富士通グループにおいては、FJBが07年から「NetSuite」を、幅広い業種で販売している。主なターゲット市場は年商100億円以下の中堅中小企業だが、大手・準大手企業の事業部門においても、国内外の販売拠点や代理店の販売・出荷実績などをリアルタイムに把握したい、という強いニーズがあり、今回、富士通からの提供も可能にし、グループとしてラインナップを強化したもの。(富士通/富士通ビジネスシステム:09年8月5発表)

 【コメント】SaaS市場は、米国においては既に多くのベンダーが参入しユーザーへの提供を開始している。例えばCRM分野では、アプリコー、ネットスイート、ライトナウテクノロジー、セールスフォース・コム、シュガーCRMなの、またERP分野では、オールベース、ビースカラー、インタクト、ネットスイートなのである。既にセールスフォース・コムは日本へも進出し販売実績も多く知名度も高い。

 このほか既に日本へ進出しているSaaSベンダーとしては、ネットスイートがあるが、これまで独自な販売活動を地道に展開してきたが、知名度という点からはセールスホース・ドットコムに一歩及ばなかった。今回大手の富士通と販売提携したことにより、一挙にその存在感が表面化することが予想され、今後はSaaS専業ベンダーとしては、セールスホース・ドットコム vs ネットスイートという構図が描かれる可能性が高くなってきた。

 セールスフォース・ドットコムは、CRMに特化したSaaSベンダーであるが、ネットスイートはCRMに加え、ERPとeコマース分野もカバーする点が強みだ。両社がターゲットとする中堅中小企業あるいは大手企業の事業部門は、今後ERPやeコマースは必須の機能となることが予想され、その意味ではネットスイートが将来セールスフォース・ドットコムと互角以上の戦いを展開することも不可能ではなくなる。その意味で、今回FJBに加え富士通がネットスイートと提携した意義は大きいものと見られる。

 富士通とFJBは、これまで培ってきたERP分野の業務知識や、パッケージビジネスで整備した業種ごとの各種テンプレート、ビジネスノウハウを活用して、次のサービスを提供する。また、両社は、「NetSuite」の開発フレームワーク上で設定・開発したプログラムをテンプレート化できる機能「SuiteBundler(スイート バンドラー)」を活用した、IT業界向けテンプレートなどの各業種向けテンプレートを約10種整備し、短期間かつ効果的なサービス導入を実現することにしている。①ERP SaaSアプリケーション「NetSuite」、CRM SaaSアプリケーション「NetSuite CRM+」の提供 ②導入時の設定やデータの取り込み・保存などのインテグレーションサービス ③導入時のコンサルティングサービス ④追加機能の開発サービス ⑤導入後のサポートサービス。このほか、FJBが07年より展開している、米国ネットスイート社のノウハウを活用した「Web」と「コールセンターシステム」を組み合わせた「ハイブリッド営業モデル」をいっそう強化し、今後3社でユーザーに最適なサービスを提供していくことにしている。

 いよいよ今後本格的SaaS時代が本格到来することになるが、今後、ネットスイートが富士通と提携したことが市場にどのようなインパクトを与えていくことになるか、その動向を注意深く見守る必要があろう。(ESN)


◇企業システム◇マイクロソフトとノベルのWindowsとLinux連携事業が倍増ペース

2009-06-17 09:16:04 | SI事業

 【SI企業】米マイクロソフト と米ノベルは、両社が提携し取り組んでいるソリューションを採用する企業が増加していることを明らかにした。これはビジネス、法的、そして、技術的な提携に基づくWindowsとLinuxの相互運用性および知的財産権に関するリスクからの保護を提供するソリューション。過去6ヶ月だけを見ても、両社はおよそ100社以上の新規顧客と契約を結んでいる。これは両社が提携してから最初の2年間と比較して2倍のペースとなる。06年11月の提携の時点から、両社は300社以上のユーザーに対して2億ドル以上に相当するNovell SUSE Linux Enterprise Server のサポートと保守の利用証書を販売している。過去6ヶ月における最新のユーザーには、Boise Inc.、Idaho Power Company、 Honeywell Aerospace、La Poste、Procter and Gamble (P&G)、SC Johnson、Sony Pictures Entertainment、Sky TV、St. Jude Medical Center.などの様々な業種と地域の企業が含まれている。 (マイクロソフト/ノベル:09年6月12日発表)

 【コメント】マイクロソフトとノベルの電撃的提携から2年以上の歳月が経ち、その経過発表が今回の内容である。結果はというと「WindowsとLinuxの連携作業は順調に進み、現在ユーザーが倍増のペースで拡大中」という勝利宣言となっている。もともとマイクロソフトは、OSS(オープンソースソフトウエア)のLinuxに対しては敵対視していたわけであるが、それが一転しWindowsとLinuxの連携ソフトを提供し、Linuxユーザーを自社ユーザーとして取り込む作戦に変更することによって、ノベルと提携することになったもの。

 今回の発表の背景には、実はLinuxユーザーの予想以上の拡大という事実があることを見逃すわけには行くまい。もし、Linuxユーザーが増加していなかったのなら、WindowsとLinuxの連携市場などというものは存在しないわけで、今回の勝利宣言の裏には、Linux市場の拡大というマイクロソフトにとっては、あまり歓迎しない状況が生まれるつつあることも事実であろう。

 今回の100年に一度の世界同時不況はOSSの存在意義を再認識させたようである。コスト的に優位に立てるOSSは、今回のような不況時にこそユーザーから熱い視線が送られることはない。以前、OSSはトータルコストでは高くつくといったことが言われていたが、最近ではこの議論はあまり注目されていない。それは、毎年OSSに対するサポート環境が改善され、あまり議論しても意味がなくなってきたことが挙げられよう。むしろ最近ではクラウドシステムなどにユーザーの関心が高まっている。今後OSSにおける問題が起きるとすれば、ユーザーが気がつかないうちに著作権問題に巻き込まれる可能性のある著作権の問題であろう。

 マイクロソフトのLinuxに対する対応は、ノベルとの連携により明確になったが、今後焦点となってくるのがオフィスソフトの対応である。今後、マイクロソフトはビスタの後継OSとして「7」を市場に投入することになるが、一時代前とは異なりOSが市場動向を揺さぶる時代は過去のものになりつつある。インターネットによる処理が拡大するにつれ、OSというよりはブラウザーが前面に立つケースが多くなってきたからだ。また、これまでマイクロソフトのオフィスソフトが市場を独占してきたが、今後はロータス・ノーツやオープンオフィスの市場での普及も見込まれている。ユーザーとしては今後の市場動向を慎重に見守っていかねばなるまい。(ESN)


◇企業システム◇北海道IT推進協会がIT産業の売上高が7年連続の増加と発表

2008-12-29 12:11:53 | SI事業

 【SI企業】 (社)北海道IT推進協会は、「北海道ITレポート2008」を発行した。これによると平成19年度の北海道IT産業の売上高は、4152億円と7年連続の増加。対前年度8.6%もの大幅な伸びを示した。増加要因は「受注量の増加」「新規顧客の開拓」を挙げる事業所が多く、道外向け売上高が32.4%から37.2%へと増加している。道内4位のパルプ・紙・紙加工品製造業に次ぐ位置にある。平成20年度の売上高見込み額は4161億円で、平成19年度とほぼ同額。平成19年度のIT産業従業員数は1万9053人で、製造業第1位の食料品製造業に次ぐ位置にある。プログラマー、SEの技術者を「不足」とする事業所が半数以上に達している。 (08年12月17日発表)

 【コメント】北海道は従来からIT産業の育成に取り組んできた。“オープンソースアイランド”宣言など、斬新な取り組みを展開する中、1996年から順調に売上げを伸ばし、07年には過去最高の4157億円の売上げを上げることができたわけである。注目すべきはIT産業従業員数が1万9053人で、製造業第1位の食料品製造業に次ぐ位置にあることで、さらにプログラマー、SE不足とするソフトウエア企業が半数以上に達しており、まだまだ、従業員数の増加が見込めることだ。企業の存在意義の一つは、どれほどの雇用能力があるかということが挙げられる。今回の世界同時不況で、トヨタやキヤノンなど日本を代表する企業がいとも簡単に契約社員を解雇しているが、そんな経営なら誰でもできる。少し前まで史上最高益などど浮かれていたことを思い出してほしい。企業は利益を出しているときに、来るべき不況に備えなければならない。不況が来たときに従業員を解雇して乗り切るなどという、安易な手段しか取れない経営者などは経営者ではない。不況期でも社員の首を切らなかった松下幸之助のつめの垢でも煎じて飲まねばなるまい。

 ところで、ソフトウエア産業はもともと派遣社員を下支えとして成り立ってきた産業である。元請け、下請け、孫請け体質の改善が叫ばれてきたのにも関わらず、わが国のソフトウエア産業は長年にわたりこの形態をとり続けてきた。しかし、この体質のままで、今後伸び続けられるかというとはなはだ疑問だ。プログラマー、SEは専門職で一匹狼が多く、むしろ派遣業を好む体質にあった。そのため、派遣業の持つ脆弱性に目を瞑りがちになる。このことが、元請け、下請け、孫請け体質を温存し続けてしまう。今回の世界同時不況の波は、ともかくもこれまでは繁栄を謳歌してきたわが国のソフトウエア産業の行く末に警鐘を鳴らし始めている。このことは経済産業省が発表した10月の特定サービス産業動態統計を見ると歴然となる。わが国の情報サービス業の10月の売上高は前年同月比2%減と2カ月連続のマイナスとなった。もうはっきりと下降線が見えてきた。このまま行くと、わが国のソフトウエア産業は未曾有の不況に見舞われるかもしれない。

 どうすればいいのか。ピンチはチャンスと捉え、従来の元請け、下請け、孫請け体質から脱却するしかない。この不況をじっと耐えさえすれば、また、前と同じになるさと高を括っていると取り返しのないことになりかねない。大手IT企業はまずグループ企業の存続を第一に考える。このため独立系のソフト企業は食い扶持を失う羽目になる。対策の一つは地域密着型ソフトウエア企業を目指すこと。そして、ユーザーから直接受注することに踏み切るべきだろう。そのため、自社の営業力を高めると同時に同じ目的を持ったソフトウエア企業同士が共同し、事業展開しなければ大手の軍門に下るのは日の目を見るより明らかだ。(ESN)


◇企業システム◇マイクロソフトとノベルが提携2周年で成果強調

2008-12-01 10:40:46 | SI事業

 【SI企業】米マイクロソフトとノベルは、両社の提携によりWindowsとSUSE Linux Enterprise Serverの技術協業が2周年を迎えたことと、相互運用性を向上させつつユーザーをを知的財産権に係わるリスクから保護するというビジネスモデルと戦略がユーザーから大きな支持を受けていることを明らかにした。同時に技術協業の結果、WindowsとSUSEの一元的運用管理ツールなど2つの新たな成果およびノベルが新たに提供する新サブスクリプション(定額で一定期間の使用権を持つソフトウエアのライセンス形態)/サポートプログラムがマイクロソフトが販売するサポート付き利用証明書を通しても利用可能であることが強調された。 (08年11月21日発表)

 【コメント】マイクロソフトとノベルが電撃的提携を発表して2年が経過した。この間、ITを取り巻く環境は激しい変遷の道を辿ってきており、これからもクラウドコンピューティングなど新たな技術の登場が様相を一変させることも大いにあり得る。つまりいかに大手IT企業といえども、安閑としてはいられない状況にあるといって過言ではあるまい。げんに日本IBMは08年7-9月期は前年同期比5%の減収で前期より業績が悪化している。このため同社では年内をメドに1000人規模の人員削減を実施する計画でいるという。ところでマイクロソフトとノベルが何故提携したのかというと、両社の思惑がみごと一致したことに他ならない。今、サーバー用OSの市場規模を金額で見ると①Windows②Linux③メインフレーム④UNIXの順序となるが、WindowsとLinuxが増えているのに対しメインフレームとUNIXは減少傾向にある。つまり、メインフレームとUNIXの市場をWindosが奪うか、あるいはLinuxがとるか、今後市場では激しい争いが展開されることになるのは必死だ。

 マイクロソフトは、当初LinuxをはじめとしたOSS(オープンソースソフトウエア)は敵と見なし、大キャンペーンを張ったが思ったほどの効果は得られなかった。この結果、マイクロソフトの首脳陣は一転しinux陣営の一部、すなわちノベルと提携し、Linux市場を取り込む“逆転の発想”の新戦略を編み出したのである。この背景には昔インターネットが普及を見せ始めたとき、当初マイクロソフトは独自ネットワークを全世界に構築しようと試みたが、インターネットのあまりにも凄まじい普及を見て、急遽独自のネットを取り下げてインターネットを取り込み、危ういところで危機を回避したという経験を持つ。何故独自ネットに拘ったかというと、インターネットはもともとUNIXをベースに普及したもので、マイクロソフトからすると“敵性ネット”であったわけである。もしあのときマイクロソフトが独自ネットに固執したならば、今頃はどうなっていたであろうか。いずれにしても、マイクロソフトとノベルの提携は、変遷の激しいIT業界の表れの一つにほかならない。

 現在のコンピューターセンターは、異機種混在環境の中で多数のサーバーが複雑に接続されており、これが今様々な問題を引き起こしている。一番の問題はコストの増大ということだろう。このためユーザーは現在必死になって仮想化によるサーバーの統合化に取り組んでいる。こんな中、WindowsとLinuxが一元管理できればユーザーにとってこんな有難いことはない。マイクロソフトは今回の発表の中で「ノベルの新しいExpanded Supportプログラムが利用できるサポート付き利用証明書の販売によって、Red Hat Enterprise Linuxを運用しているユーザーを含む、さらに広範なユーザーが、当社とノベルとの提携がもたらすメリットを受けられるようになる」と述べている。つまり、マイクロソフトとノベル狙いは、共通の“天敵”であるレッドハットの牙城をいかに切り崩すかであることが、ここから読んで取れる。

 これに対し、レッドハットはどうかというと、このほどシステム運用管理で富士通と提携し、企業の基幹システム市場に本格的に取り組む意向を明らかにした。ここで注目されるのは、レッドハットと富士通の提携が世界市場をターゲットにしていることだ。日本のIT企業は、日本の市場で米国企業と提携することは多いが、世界市場を対象にしたケースはあまりない。それだけに、今回のレッドハットと富士通の提携は、マイクロソフトとノベルの提携とともに、その成否が今後どうなるか、大いに注目されるところである。(ESN)


◇企業システム◇富士通と米レッドハットがLinuxで提携し世界戦略推進

2008-11-26 16:50:03 | SI事業

 【SI企業】富士通と米レッドハットは、ミッションクリティカル領域でのLinuxサポートサービスにおけるグローバルな提携関係を強化した。具体的には、これまで富士通が培ってきたメインフレームの保守サポートのノウハウを基に、サポート期間の拡大やスピードアップを図った基幹業務システム向けの新たなLinuxサポートサービスを両社共同で開発し、富士通を通じ日本国内から販売を開始し、順次グローバルに展開していく。 (08年11月18日発表)

 【コメント】NECに続き富士通がLinuxのミッションクリティカル分野の強化に乗り出した。しかも、今回の強化は米レッドハットと提携し、世界市場を視野に入れての展開を図るものだけに、その位置づけはNEC以上に注目される。具体的にはサポート期間の延長で、これによりユーザーは長期間の利用年数を必要とするミッションクリティカル分野でのLinux利用が可能となる。今回の2社の提携の背景には富士通がメインフレームでの豊富なノウハウを有していることが挙げられる。メインフレームのリーダー役を担っているのはIBMであることは今も昔も変わらないが、昔は複数のIBM互換機メーカーが米国内および日本に存在していたが、徐々に淘汰され、最後はIBM、ユニバック(現ユニシス)、富士通、日立、NECの5社に絞られてしまい、現在に至っている。この中で米ユニシスは経営的危機に陥ったこともあり、実質はIBMに日本の3社が残ったことになる。IBMはメインフレームにLinuxを搭載させ延命策を図っており、レッドハットにとってIBMは、ミッションクリティカル分野では協業よりも競合するといった側面を持つ。そこで残ったのは富士通と日立であるが、現在、富士通は社運をかけて海外市場進出を成功させようとしており、レッドハットとしても組みやすい相手となったのではないか。

 今後、ミッションクリティカル分野においては、Linuxが大きく市場を拡大して行くことになろう。富士通はメインフレームについては、今後長い時間をかけLinuxサーバーにソフトランディングさせていく腹をくくったのではなかろうか。問題はIBMである。IBMはメインフレームにLinuxを搭載させて延命策を図り、これがまんまと成功して一息ついた。さらにIBMは、事業自体のグローバル化に取り組み、全世界を対象にして得意分野をごとに各国のIBMを再編し、これも今のところうまくいっているようだ。そしてロシアなどまだまだメインフレームが売れる国はたくさん残っているので、当分の間、左団扇の状態にある見ていいであろう。問題はメインフレームの市場が飽和したときIBMはどうするかである。多分Linuxサーバー市場を目指すであろう。ということは富士通は今がLinuxサーバーを全世界に売る絶好の機会だとは言えまいか。鬼の居ぬ間の洗濯ではないが、IBMがメインフレーム市場を諦める前に全世界でLinuxサーバーを売り、ユーザーを獲得することが急務となる。

 このことは富士通一社のことではなく、日本の次世代の産業の牽引役を情報産業が担わねばならない運命にあるからだ。これまで日本の産業を牽引してきた自動車産業は今後厳しい状況になる。また航空機・宇宙産業も中国、ロシア、インドなどの台頭でそう簡単には伸びられそうもない。家電産業も韓国のサムスンなどのような巨大な競業メーカーが今後現れれてくる可能性がある。こうした消去法で考えると残るのが部品産業と情報産業である。昔日本のメインフレームメーカーの生き残りをかけ通産省と各メーカーがスクラムを組み、うまく乗り越えることができたという実績がある。今回の富士通と米レッドハットの提携は、単に2社だけの提携に終わらせず、他のメーカーおよび経産省を含めた国家プロジェクトに格上げする必要があるのではないか。Linuxサーバーを日本が世界に普及させるには今しかないのだからだ。

 ところで日本IBMの業績がはかばかしくない。これは一日本IBMのことだけでないように思われてならない。というのは既に国内の情報産業は飽和状態で、今後伸び続けるのは非常に難しい局面に入りつつあるからだ。日本IBMは打開策としてこれまで比較的手薄であった中堅・中小市場を開拓する方針を打ち出しているが、これまでのIBMの文化で中堅・中小市場を開拓するのは難しいのではないか。このことは国産の大手ITメーカーにも言えることだ。ただ、国産の大手ITメーカーには世界市場という“逃げ道”が残されている。しかし、この“逃げ道”はそう簡単には前に進めない
道であることだけは確かなことだ。(ESN)


◇企業システム◇マイクロソフトが旭川市と協力しWebデザイン事業を推進

2008-10-22 16:25:18 | SI事業

 【SI企業】北海道・旭川市、旭川ICT協議会(AICT)およびマイクロソフトは、「Webデザインの街・旭川」構想の実現および地域産業活性化に向け連携していくことで合意した。旭川地区では「国際家具デザインフェア旭川(IFDA)」や「旭川デザインマンス」などデザイン分野では先進的な取り組みを進めてきている。このように旭川の強みとするデザインと、ITを融合させた「Webデザイン」の分野で、「Webデザインの街・旭川」の実現に向けて、IT人材を育成し、Webデザインビジネスの集積を行い、その結果、地域産業の活性化を図ることになったもの。マイクロソフトは、旭川産業高度化センターが新たに設置する「旭川ITジョイントセンター」に、「マイクロソフト イノベーション センター」を設置し、同センターを拠点にAICTを中心としたIT人材育成活動を支援していく。 (08年10月14日)

 【コメント】マイクロソフトは日本国内で地道に地方自治体とのコラボレーション事業を推し進めているが、今回は旭川市とのコラボレーション事業の発表を行った。旭川市は人口では札幌市に次ぎ道内第2位の人口を擁するが、産業規模では道内の他の都市よりも低位にあるのが実態。そこで、旭川市では家具産地である特徴を生かし、デザインでの町おこしを考え、デザインに関する国際的展示会などの実績を積み重ねてきている。今回はこのデザインでの実績にWeb技術を取り入れ、新たな発展を図ろうという狙いがあるもので、これにマイクロソフトが参加したことによって、その成果が大いに期待される。

 旭川市には全国的に有名になった旭山動物園がある。この旭山動物園は新しい発想で従来の動物園のあり方を根本から変え、今では全国から多くの来場者で賑わっている。この旭山動物園の新しい発想法はこれからわが国のIT産業を発展させる上で、多くのヒントを我々に与えてくれる。旭山動物園ではそれまで檻の奥にあった動物の食事場を、檻の前の方に移動させることによって、来園者に動物が食事をするところを見せるようにした。また、透明な樹脂の中を動物が入るようにして、身近に動物の行動を観察できるようにした・・・などなど、その工夫は数限りなくある。我々は過去の“常識”に縛られるあまり、ことの本質を見誤ることが多い。長崎県では、システム構築の発注に際して、オープンシステムによることと、分割発注方式を取り入れることにより、地場ソフト産業を育成しようと、長期戦の構えで取り組んでいる。これなどは、従来の“常識”にとらわれないで、新しい発想で問題解決に取り組んでいる一つの事例だ。

 今回の旭川市の「Webデザインの街・旭川」構想実現に向けた取り組みも、新しい発想で問題の解決に当たろうとする一つの事例として成果が期待される。問題は北海道という地理的制約をどう克服するかである。この点に関して、北海道はあまりにも国からの補助金に頼りすぎて、自らの力で発展を勝ち取るという視点が希薄になってはいまいか。今九州は「アジアに対しての日本の玄関口」という発想で九州の産業の発展に必死に取り組んでいる。北海道も発想の転換を図って「北海道は北欧に対しての日本の玄関口」といった新しい発想には立てないものであろうか。これまで日本はアメリカ一辺倒できた。この結果産業の発展は加速されたかもしれないが、外国=アメリカという偏った“常識”に陥っている。これからの若者はもっともっとヨーロッパのことを知らなくてはいけない。北海道は飛行機では距離的に北欧に近いし、気候も似ている。日本の若者がヨーロッパの文化を吸収するため北海道に移住するといった改革を北海道全体を挙げて取り組むことはできないものであろうか。

 北海道はIT産業には打って付けの環境にある。気温が高くあまりIT産業には適さない台湾や沖縄があれだけIT産業で頑張っている。北海道はもっとIT産業育成で新しいアイデアを出すべきではないか。今回のマイクロソフトを巻き込んだWebデザイン推進事業は非常に理にかなったアイデアだと思う。まだまだ北海道にはIT産業育成の未開拓の可能性がたくさん残されている。(ESN)