企業システム・レビュー・ネット

企業経営を左右する企業情報システム(経営+ITソリューション)のデータバンク作りを目指す

◇企業システム◇EMC、シスコ、ヴイエムウェアの3社、仮想化パッケージ戦略発表

2010-02-17 09:29:23 | 仮想化

 【仮想化】EMCジャパンとシスコシステムズならびにヴイエムウェアは、09年11月に発表した「Virtual Computing Environment(バーチャル コンピューティング エンバイロメント:仮想コンピューティング環境=VCE連合)」の日本における市場開拓と販売戦略を発表した。EMC、シスコ、およびヴイエムウェアは、日本のシステムインテグレータ、サービスプロバイダー、チャネルパートナーがVblock Infrastructure Packageを再販することで、ユーザーによるVblock Infrastructure Packageの採用を拡大する。Vblock Infrastructure Packageは、完全に統合、試験、検証済みで、すぐに利用・拡大可能な基盤パッケージ。EMC、シスコ、ヴイエムウェアによる最高の仮想化、ネットワーク、コンピューティング、ストレージ、セキュリティ、管理技術を結集し、エンドツーエンドのベンダーアカウンタビリティーを実現する。(EMCジャパン/シスコシステムズ/ヴイエムウェア:10年2月9日発表)

 【コメント】企業システムを仮想化する動きは、ますます本格化してきているが、具体的着手に踏み切れないユーザーも少なくない。こんなユーザーに対し、EMC、シスコシステムズ、ヴイエムウェアの米国のベンダー3社は「VCE連合」を結成し、VMwareを中核とした仮想化のパッケージを製品化し、米国で同事業をスタートさせた。今回の発表はこの日本市場版である。VMwareは全世界的に見ても仮想化ソフトのシェアNo1の製品であり、ストレージのトップベンダーのEMCがヴイエムウエアを傘下に収めることで、経営基盤も安定したものとなり、今後も台風の目的な存在であり続けることが予想される。

 しかし、これまでも同様な仮想化システムのパッケージ製品は大手ベンダーから提供されてきている。例えば、日本IBM「クラウドバースト」、日本HP「ブレードシステム マトリックス」、NEC「クラウド・プラットフォーム・スイート」といった製品群である。このほかSI企業から数多くのパッケージ製品が提供され始めてきている。大手ベンダーは、自社ユーザーという市場を持っているため、比較的ユーザー獲得は容易であるが、VCE連合は、代理店の販売網に頼った戦略しか道はない。これをどうVCE連合が克服していけるかが、日本市場での成否を握っている。今回の発表で賛同を表明したパートナーとしては、アクセンチュア、伊藤忠テクノソリューションズ、新日鉄ソリューションズ、東芝ソリューション、日本ビジネスシステムズ、ネットマークス、ネットワンシステムズ、ユニアデックスなどが挙げられる。これらのパートナー企業は、豊富な経験と技術力、それに多くのユーザーを有しているので、フル稼働したら大手ベンダーの前に強力なライバルとして立ちはだかることになる。要は、VCE連合のパートナー戦略「Vblockパートナー エコシステム」が功を奏するかどうかが、「Vblock Infrastructure Package」の成否を握っているといえるであろう。

 また、ここに来てマイクロソフトは、自社運用(オンプレミス)ソフトウェアとクラウドベースのサービスの長所を組み合わせる「ソフトウェア+サービス」の考え方に基づく、IT アーキテクチャ策定と計画立案コンサルティング「ITAP for S+S (IT Architecture & Planning for Software Plus Services) 」の提供を、10年3月1日より開始すると発表した。「ITAP for S+S」は、マイクロソフトが提供するクラウドコンピューティング向けプラットフォームであるMicrosoft Windows Azure Platformや、企業向けオンラインサービスMicrosoft Business Productivity Online Suite(BPOS) を含むクラウドサービス環境の構築、運用ノウハウや全世界の導入事例等を基に、日本市場向けにサービスメニュー化した、企業向けのクラウド導入計画策定支援コンサルティングサービスである。同サービスにより、企業は、自社のビジネス特性とセキュリティ要件に沿ったIT環境をオンプレミスとクラウドの長所を組み合わせることで柔軟に構築することが可能になる。

 このように、今回、マイクロソフトが仮想化+クラウドビジネスに本腰入れ、ユーザーへのコンサルティング事業に本格的に乗り出すことを表明したことにより、市場でのシェア争いは、今後さらに一層苛烈なものになろうとしている。(ESN)


◇企業システム◇日本オラクル、日立製作所、日立システムがSMB市場向け仮想化ソリューションで提携

2009-10-28 09:19:22 | 仮想化

 【仮想化】日本オラクル、日立製作所、日立システムアンドサービスの3社は、このたび、中堅・中小企業市場(Small and Medium Business市場/SMB市場)向けに、日本オラクルのサーバー仮想化ソフトウェアと日立のローエンドディスクアレイなどを活用したサーバーの仮想化ソリューションの提供に向けて協業していくことで合意した。今回の合意により、日本オラクルは、サーバー仮想化ソフトウェアの「Oracle VM」や「Oracle Database」を、また日立は、ローエンドディスクアレイ「Hitachi Simple Modular Storage 100(日立SMS100)」を日立システムに提供する。日本オラクルと日立との共同での互換性、ならびに相互接続検証のもと、日立システムは、ソリューションを強化していく。(日本オラクル、日立製作所、日立システムアンドサービス:09年10月21日発表)

 【コメント】 企業ユーザーは、仮想化技術を導入することにより、サーバー台数の削減やシンクライアントシステムを導入することによって、コストの削減をはじめ、情報漏えいを防ぐことが可能になるなど、メリットを受けることが可能となる。最近では、大手企業ユーザーを中心に、仮想化技術を導入してプライベートクラウドを構築し、いち早く最新の企業システムの導入に成功しているケースも出始めている。

 しかし、中堅・中小企業ユーザーは、技術者不足や情報化投資の原資を得ることが困難なケースが多く、大手企業ユーザーのように仮想化やクラウド導入は、そう活発化してないのが現状である。しかし、クラウドのようなシステムは、むしろ中堅・中小企業の方が受ける恩恵は多いはずである。基本的には、クラウドは究極のアウトソーシングであり、IT要員不足、情報化投資不足の中堅・中小企業こそが恩恵をうけるべきなのである。

 今回、日本オラクル、日立製作所、日立システムアンドサービスの三社は、このような現状を踏まえ、中堅・中小企業をターゲットに仮想化ソリューションの提供に踏み切ったわけだが、中核をなすのが、オラクルの仮想化ソフト「Oracle VM」である。「Oracle VM」は、オープンソースの仮想化ソフトであるXenをハイパーバイザに採用したサーバー仮想化ソフトウェアで、エンタープライズ向けにオラクル独自の機能拡張を行い、高いパフォーマンスが最大の特長。

 このオラクルのサーバー仮想化ソフト「Oracle VM」を導入することで、中堅・中小企業ユーザーはどのようなメリットが得られるのであろうか。仮想化の導入により、サーバー導入やリプレイスに伴う、環境構築、システム開発・改訂や運用管理に必要なIT投資の最適化も実現できる。また、「Oracle VM」が提供するテンプレート機能は、構築したシステム環境をテンプレートとして保存しておき、新たに環境を構築したい場合、保存されたテンプレートを配布するだけという、極めて簡単な操作で対応でき、環境構築に伴う導入コストを大幅に削減するという。

 さらに、グリッド技術の「Oracle Real Application Clusters」構成と組み合わせることで、サーバー仮想化による集約環境でのリソースの柔軟かつ有効活用だけではなく、システムの拡張性やハードウェア障害などによるシステム停止のリスクを低減する。このほか、「Automatic Storage Management(ASM)」の採用により、ディスクI/Oのボトルネックを解消し、効率的なデータベース用途のストレージ管理を実現することができる。今後、各ベンダーは、自社の得意分を持ち寄り、共同してユーザーの課題解決へと向かうことが考えられるが、今回の3社の提携は、この典型的な事例である。これにより大手企業と中堅・中小企業間にある情報格差解消を目指し、是非とも成功してもらいものだ。(ESN)


◇企業システム◇マイクロソフトとレッドハット、仮想化ソフトで提携

2009-10-19 09:25:24 | 仮想化

 【仮想化】米レッドハットは、Microsoft Windows ServerとRed Hat Enterprise Linuxを組み合わせた仮想化環境が、フルサポートで利用可能になったと発表した。IT環境における相互運用性に関するユーザーからの要望に応えて、レッドハットとマイクロソフトは、サーバ仮想化を利用する両社のユーザーに共通のテストと検証を完了もの。認定が完了したソリューションは、以下のとおり。 ①Red Hat Enterprise Linux 5.4ハイパーバイザにおけるWindows Server 2003、2008、およびWindows Server 2008 R2ゲストの認定 ②Windows Server 2008 Hyper-V、Microsoft Hyper-V Server 2008、Windows Server 2008 R2 Hyper-V、およびMicrosoft Hyper-V Server 2008 R2ホストにおけるRed Hat Enterprise Linux 5.2、5.3、および5.4ゲストでの認定 。(米レッドハット:09年10月7日<現地時間>発表)

 【コメント】レッドハットとマイクロソフトは、犬猿の仲と思っていたら、今回仮想化環境で協調サポートの発表を突如行った。マイクロソフトとしては、自社の地盤を侵食し始めたレッドハットは、“敵”であり、絶対に認めることのできない存在だったはずである。かつてマイクロソフトは、レッドハットのLinux攻勢に対し、「初期導入コストが低いからといって、トータルコストではWindowsの方がずっと安く済む」と反論、さらOSS(オープンソースソフトウエア)は、ソフトウエアの著作権侵害の疑いがあると主張するなど、両社の関係は、一発触発の危機にさらされていた。

 その後、マイクロソフトがヨーロッパで独占禁止法違反の採決があるなどして、それまで順風満帆の勢いを堅持してきた“マイクロソフト神話”にも陰りが見え始めてきた。一方では、マイクロソフトは、ドル箱の「マイクロソフト・オフィス」の国際標準化を何とか実現させようと尽力し、08年4月にマイクロソフトが推す電子文書フォーマット「オープンオフィスXML(OOXML)」が、ISOとIECから国際標準のお墨付きをえることに成功。この頃からマイクロソフトの政策に微妙な変化が見え始めた。つまり、国際標準を標榜するからには、オープン化に対しても柔軟な姿勢を打ち出さざるを得なくなってきたのである。

 そして、マイクロソフトはレッドハットの仇敵であるノベルとの間に電撃的な提携を発表し、逆にLinux市場へ参入を開始した。ユーザーとしては、WindowsとLinuxとの間の親和性が低ければ、どちらかを選択しなければならなくなる。これはマイクロソフトにとっては、結果的に自社のユーザーの一部をLinux陣営に奪われることを意味する。それを防ぐ意味でもノベルとの提携は、重要な意味があったのである。さらに、既にLinuxに奪われた市場を奪還できるチャンスが生まれるかもしれない。このほか、マイクロソフトは、関係の深いシトリックス・システムズがOSSの仮想化ソフト「Xen」を買収したことによって、間接的に仮想化市場に参入し、さらにに自社開発の仮想化ソフト「Hyper-V」を持つことによって、Linux市場には「Xen」を、Windows市場には「Hyper-V」を提供できる仮想化環境体制を完成させた。

 そして、現在に至るわけであるが、仮想化環境の先に大きく広がるのがクラウドコンピューティングの世界であることは論を待たない。マイクロソフトは、先行するグーグル、アマゾンを追って11月から独自のクラウドサービス「ウインドウズ・アジュール」をスタートさせる。今度はマイクロソフトがグーグル、アマゾンを追撃しなければならない立場に逆転したのである。そこに今回のレッドハットとの「仮想化環境の協調サポート体制」発表があったわけである。つまり、マイクロソフトとしては、グーグル、アマゾンに追いつくには、強力なパートナーを必要としたが、まさかIBMとは組めない。その結果、レッドハットとの提携が浮上したのではないか。レッドハットとしても、このままマイクロソフト・ノベル連合を見過ごすわけにはいかない事情もあろう。

 とにかく、今回のマイクロソフトとレッドハットの提携の背景には、今後のIT業界を左右するクラウドコンピューティング市場の覇権争いが存在することだけは確かなようだ。(ESN)


◇企業システム◇CTCの子会社CTCSPがストラタスと提携し、可用性仮想化ソフトの提供開始

2009-09-16 09:13:24 | 仮想化

 【仮想化】伊藤忠テクノソリューションズのグループ会社であるシーティーシー・エスピー(CTCSP)と日本ストラタステクノロジーは、世界の無停止型サーバ市場を牽引するストラタステクノロジーの連続可用性仮想化ソリューション「Stratus Avanceソフトウェア」の販売代理店契約を国内で初めて締結し、CTCSPは、販売を開始した。販売価格は初年度の保守サポート料を含めて98万円。Avanceは、仮想化された統合サーバの障害を事前に自動検知し、システムを止めずに連続稼働(99.99%以上)する業界初のソフトウェアソリューション。従来の高信頼性仮想化インフラの半分以下のコストで導入でき、ソフトウェアのインストールも15分で完了。高度な運用スキルを必要としないため、中堅・中小企業の高信頼性仮想化インフラ構築に大きく貢献する。(伊藤忠テクノソリューションズ:09年9月14日発表)

 【コメント】仮想化は多くのユーザーの注目を集めているが、中小ユーザーでは技術的な問題をクリアすることがなかなか難しく、直ぐには踏み出せないユーザーも多い。このため、最近では仮想化システムの構築を一括したソリューションとして受託するベンダーも増え始めている。特に、最近話題のクラウドコンピューティングの入り口としても仮想化は避けられないテーマであるだけに、今後各種のサービスの出現が期待されている。

 今回、CTCSPが発表した「Stratus Avanceソフトウエア」もその一つのサービスである。Avanceは、シトリックスのXenServerをベースにし、無停止型サーバで培った高信頼性技術を実装することで、強固な仮想化環境を提供する。2台の物理サーバを1つのリソースとして、その上で仮想マシンを複数稼働することができる。通常のHAソフトウェアよりも連続可用性を実現できるよう設計されており、仮想化技術を使ったシステム構築のノウハウを適用できるため、連続可用性の仮想化基盤を容易に構築できる。

 ストラタスは、これまで無停止型サーバーのトップベンダーとして多くのユーザーを持っているが、仮想化、クラウド化への移行が顕著な現在、仮想化サーバーに無停止機能を持たせるという新しいチャレンジに挑戦したもの。特に注目されるのは、Avanceが外部ディスクを必要としないこと。2台の物理サーバをプライベートリンクで接続することでローカルディスクのミラーリングを標準で行う。これにより、SANなどの高価な外部ストレージや別途ミラーリング・ソフトウェアを不要とし、標準的で低価格のIAサーバ2台で運用できという。これによって低コストで仮想化サーバーの無停止機能を実現できる。

 実は、これと同じように仮想化サーバーの二重化を図り、システムの安定稼働を実現しようという製品は、マラソンテクノロジーズが住商情報システムと提携し、日本市場で既に提供を開始している。これはマラソンテクノロジーズのソフトウエア製品「Marathon everRun VM」である。この「Marathon everRun VM」は、仮想環境上で稼働するWindows仮想マシンに対して必要なレベルの可用性を提供できるソフトウエアで、「Stratus Avanceソフトウエア」同様、OSS(オープンソースソフトウエア)の仮想化ソフト「XenServer」上で稼働する。

 今後、仮想化システムに対応する各種のソフトウエアが提供されることになろうが、その中で仮想化ソフトはこれまでVMwareがトップシェアを誇っていたが、今後XenServerがOSSである優位さを最大限生かして、仮想化市場でのシェアを拡大していくかも知れない。(ESN)


◇企業システム◇日立情報が仮想化+クラウドの新しいサービスの提供を開始

2009-03-18 11:26:55 | 仮想化

 【仮想化】日立情報システムズは、仮想化関連の商品・サービスを「VSolution」として整備し、品揃えを強化するとともに、パートナーシップ制度として「VPartner」を立ち上げ、仮想化ビジネスを展開するSIベンダーの支援プログラムを開始する。また、「VSolution」を体験、導入相談、検証できる専用施設「Cloud & Virtualization Clinic Center(CVC)」を4月1日から本社内に開設する。CVCでは、日立情報のデータセンタに用意した仮想化基盤「リソースオンデマンド」との接続により、仮想化システムの体験、導入相談、さらに仮想化環境によるクラウドコンピューティングの体験・検証を行うことができる。 (日立情報システム:09年3月3日発表)

 【コメント】仮想化は、09年の企業システムの課題の中でもとりわけ注目すべきテーマになることは間違いないところだ。日立情報では仮想化ビジネスを立ち上げるには今が絶好のチャンスとばかりに今回「VSolution」「VPartner」の提供を開始した。当然仮想化ビジネスが立ち上がれば、SI企業は仮想化技術の提供をユーザーから求められることになるが、今現在、仮想化技術を身に付けているSI企業はというとはなはだ心もとないというのが現実の姿であろう。このような場合、SI企業は、日立情報と「VPartner」契約を結び、「VSolution」をユーザーに提供すればよいというのが筋書きである。問題は日立情報の仮想化技術の実力はということになるが、同社は08年10月に米ヴイエムウエア社が認定する販売パートナー向けの最上位資格である「VMwareプレミアパートナー」の1社に認定されているのであるから問題はないとみていいだろう。

 今回の発表で注目されるのは、単に仮想化ビジネスに特化させるのではなく、クラウドコンピューティングも体験、導入相談、検証できる「Cloud & Virtualization Clinic Center(CVC)」を開設したことだ。仮想化だけに限定して考えると、システム運用管理上の問題に限られてしまい、サーバー数の削減やシステム運用管理の向上だけとなり、ある意味では情報システム部門内部の問題に矮小化されてしまう。これをクラウドコンピューティングと絡めて提案することにより、俄然企業全体の経営に直結する問題としてクローズアップされてくる。SI企業がユーザーに提案する仮想化システムに、日立情報の提供するMSPサービスを付加することもでき、容易にクラウドコンピューティングを構築することができる。

 今、米国で人気なのは、アマゾンの提供するクラウドコンピューティング「EC2」なのだそうだ。これはアマゾンの子会社アマゾン・ウェブ・サービスが、アマゾンのCPU処理能力を開発者が利用できるようにしたサービスで「Elastic Compute Cloud(EC2)」と呼ばれており、アマゾンのその他のサービスとも連携できるようになっている。米国では現在このEC2を使って開発されたシステムを多くの中小企業が導入しているという。簡単にいうと計算センターのWeb版といったところであろう。日本でも経済産業省がこのほどJ-SaaSをスタートさせ、中小企業への普及を見込んでいる。計算センターというと日本でも変長い歴史を有しているが、Webという新しい衣をまとったクラウドコンピューティングが時代の寵児になることもそう遠いことでもないかもしれない。(ESN)


◇企業システム◇大塚商会、サイオス、ノベル、マイクロソフトが仮想化ソフトで協業

2009-03-16 11:00:49 | 仮想化

 【仮想化】大塚商会、サイオステクノロジー、ノベル、およびマイクロソフトは、中堅企業向けにWindowsとLinuxの混在環境を仮想化で統合するソリューション「OS統合ソリューション(仮名)」の提供で協業した。4社は協力して、Hyper-VとHyper-V仮想化ゲストOSとしてSUSE Linux Enterprise Serverの正式サポートとパフォーマンスの最適化を行い、Microsoft System Centerファミリー製品による混在仮想化環境の一括管理などを可能にした。これにより、WindowsとLinux双方を利用する企業のITシステムにおいて、仮想化によるハードウエア、サーバーOS統合をサポートを含め提供し、導入運用コストの約3割削減を目指すことにしている。 (大塚商会:09年3月5日発表)

 【コメント】マイクロソフトとノベルは、かねてから米国において提携し、WindowsとSUSE Linuxの統合環境の構築に向けた作業を進めている。これらの成果は米国において定期的に発表され、日本法人のマイクロソフトおよびノベルを通じ、発表文の公表という形で成果は明らかにされてきたが、具体的なソリューションの提供という面からは、なかなか見えずらかったのは否定できない。今回の発表は、これまでベールに包まれていた成果を、具体的な形として日本の企業ユーザーに対し明らかにしたインパクトは大きいものと思われる。

 マイクロソフトとノベルの連合体に、今回大塚商会およびサイオステクノロジーが参加した意義はかなり大きな意味づけを持つ。マイクロソフトはネット事業での劣勢を挽回すべくノルウエーの検索大手ソフト企業を買収したものの、本命であるヤフーの買収については頓挫したままで、打開策が見つかれないままの状態で、グーグル追撃作戦の先行きは楽観を許さない状況に陥っている。このような中、ノベルとの協業によるLinux取り込み作戦の方は、仮想化ソフトの市場投入により一挙に具体的動きを促す効果が発揮できる状況へと好転しつつある。

 マイクロソフトは自社の仮想化ソフトHyper-Vについてかなり戦略的意味づけを持たせようとしているようである。既に宿敵レッドハットと仮想化ソフトでは提携にこぎつけている。そして今回日本市場において大塚商会を仮想化ソフト事業という分野で取り込んだことは、グーグルやIBMが最近盛んに打ち上げているクラウドコンピューティングに対する牽制球的役割を演ずることになるかもしれない。グーグルやIBMは
ユーザー側にサーバーを置かないクラウドコンピューティングを次世代型システムと位置づけ、今後普及を図ろうと躍起だ。これは対マイクロソフト戦略としても有効だと信じているように見える。ユーザー側にサーバーが必要なくなれば、ユーザー側のWindowsも必要なくなる。IBMはサーバーをセンターに販売すればサーバー事業の維持は可能だ。こんな動きに対し、マイクロソフトは仮想化ソフトを軸にWinndowsとLinuxを統合させて、サーバーすなわちWindowsのさらなる発展を画策している。

 今後、企業ユーザーはWebやメールサーバーにLinuxを使い、基幹業務システムでWindowsとLinuxの混在環境を選択するケースが増えてくるものと考えられるが、今回の4社の協業はこれらのニーズに対しいち早く対応しようとする取り組みと考えられる。(ESN)


◇企業システム◇マイクロソフトとレッドハットが仮想化技術で提携

2009-02-23 14:29:21 | 仮想化

 【仮想化】米レッドハットは、マイクロソフトとの間で両社の仮想化プラットフォームの相互運用性拡大に関して合意したと発表した。両社はそれぞれの仮想化検証/認定プログラムに参加し、お互いのサーバー仮想化ユーザーに協調的な技術サポートを提供する。現在、仮想化環境と非仮想化環境とが混在しているが、Red Hat Enterprise LinuxとWindowsServerの混在環境を含めてユーザーの仮想化環境への展開を図る。これによりユーザーは、Red Hat Enterprise仮想化上に仮想化されたWindows Server OSの実行と、Windows Server Hyper-VおよびMicrosoft Hyper-
V Server上に仮想化されたRed Hat Enterprise Linuxの実行について、協調的な技術サポートを受けることができるようになる。提供は09年後半予定となっている。 (レッドハット:09年2月18日発表)

 【コメント】今回マイクロソフトとレッドハットとが、仮想化という技術に限定されているとはいえ、提携したことは画期的なことと言ってもよいだろう。一時期マイクロソフトは、オープンソースソフトウエア(OSS)に対して敵意をあらわにした時代もあった。マイクロソフトがOSSを認めることは、自社の牙城の一部にしろOSS陣営、具体的にはレッドハットに明け渡すことを自ら認めてしまうからだ。このためマイクロソフトは「ウインドウズとLinuxではどちらの方がコストが安く済むか」という一大キャンペーンを張り、OSS陣営、なかんずくレッドハットに対し徹底抗戦の構えを見せた。その後マイクロソフトは、方針を180度転換させ、OSS 容認の方針に改めてノベルと提携などすることにより、逆にOSSの推進者としての立場を強調し現在に至っている。この辺は以前、マイクロソフトは当初インターネットを無視し独自のネットの構築を目指したが、インターネットの普及を目のあたりにした結果、インターネット推進の方針に全面的に切り替えたときと酷似している。

 現在、企業ユーザーが導入しているハイパーバイザー上のx86OSは、WindowsとRed Hat Enterprise Linuxが全体の80%を占めるとみられている。マイクロソフトは現在ノベルとLinux事業で提携をし、Linux市場へのWindowsの参入、またWindows市場へのLinuxの取り込みを進めているが、いかんせんノベルのLinuxOSであるSUSEは市場での認知度は高くはない。こうなるとマイクロソフトといえどもユーザーの声、すなわちWindowsとRed Hat Enterprise Serverの連携の要望を無視するわけにはいかなくなり、今回の提携に至ったものと推測される。

 現在マイクロソフトとしては、自社の仮想化ソフトHyper-Vを早く市場に普及させなければという喫緊の課題を背負っている。また、OSSの仮想化ソフトは、マイクロソフトとは親しい関係にあるシトリックスがZenを買収し普及に努めており、マイクロソフトとしてはOSSの仮想化ソフトは今後Windowsの普及を図る上からも重要な存在になってくる。一方、レッドハットとしてはマイクロソフトと敵対関係あっては自社LinuxOSを普及させることは不可能であり、今回仮想化技術に限定してでもマイクロソフトとの提携は大いにプラスに働くと判断したのであろう。

 問題はマイクロソフトとレッドハットが、仮想化技術に限定した提携関係をもっと別な分野にも拡大するかどうかであろう。もし、今後別な分野での提携に拡大するとなると、IT市場はマイクロソフトとレッドハット連合軍が大きな力を持つことは避けられない。マイクロソフトがグーグルの躍進を食い止める策としてレッドハットとの提携を考えるとするなら、必ずしも絵空事とは言い切れまい。もしそうなった場合、IT界のドンを自他ともに任じているIBMの存在が微妙になってくる。現在日本IBMが大苦戦を強いられているが、これは何も日本市場だけの特殊な事情だけでは済まされない問題を抱えているのだ。IBMはメインフレームで成長を遂げた企業であるが、メインフレームが終焉しつつある現在、次のIBMの切り札は何かという問題に突き当たる。マイクロソフトとレッドハットの提携を固唾を呑んで見ているのは本当はIBMなのかもしれない。(ESN)


◇企業システム◇マツダが国内最大級のサーバー仮想化システムを構築し台数40%削減

2008-12-10 10:38:39 | 仮想化

 【ユーザー】NECおよびヴイエムウェアは、マツダのサーバー仮想化を、NECのサーバー「Express5800/120RJ-Ⅱ」、SAN対応ストレージ「iStorage DB」、ヴイエムウェアの仮想化ソフト「VMware Infrastructure 3」などにより構築した。これによりWeb/アプリケーション/データベースなどのサーバー台数について2010年をメドに約40%程度削減する計画でいる。また、今回の仮想化と集約化によって、物理サーバー導入と比較して約25%の省電力化が見込めるとともに、保守切れに伴う大量のサーバー更新において、その更新コスト(ハード費用/ソフト費用/人件費)の最小化と更新作業の短期化を実現できることになる。国内企業の基幹系システムにおける仮想化導入事例としては最大級。 (08年12月4日発表)

 【コメント】ついにサーバー仮想化構築の国内最大級のユーザー事例が登場した。サーバー仮想化はユーザーの抱えている課題の中でも緊急性が最も高いものであるが、複雑化した社内システムをどう仮想化するかということには、そう簡単な回答はない。そこでこれまで各ユーザーでは仮想化について勉強を行ってきたわけであるが、ようやくここにきて、具体的なユーザー事例が登場し始めている。これからはこれらの成功事例がセミナーなどで発表されるケースが多くなるので、これから構築されるユーザーは、これらの成功事例を参考に自社の仮想化への取り組みを前進させることができるようになる。

 また、今後グリーンシステムへの取り組みが各ユーザーにも求められて来るが、仮想化はその際の有力な手段となろう。手っ取り早いのが消費電力の削減である。
サーバーやデスクトップは待機時にも定格の70-80%の電力を消費しているが、ヴイエムウェアでは「VMware Infrastructure 3」を導入することにより、これを25%以上削減できるとしている。コンピューターシステムは多量の電力を消費することは事実で、ベンダー、ユーザー一丸となった取り組みを早急に開始しないと、社会から批判を浴びないとも限らない。このためにも仮想化への取り組はますます重要課題になっている。(ESN)


◇企業システム◇米マイクロソフトと米ノベル、共同開発した仮想化ソリューションの提供開始

2008-09-22 15:46:51 | 仮想化

 【仮想化】米マイクロソフトと米ノベルは、ミクストソース環境を運用するユーザー向けに最適化された、両社の共同開発による、Windows環境とLinux環境の連携用機能を持つ仮想化ソリューションの提供を開始した。同ソリューションには、マイクロソフトの仮想化ソフト「Hyper-V」の仮想化機能を備えたマイクロソフトのサーバーOS「Windows Server 2008」上で稼働するゲストOSとして構成され、ノベルのSUSE Linux Enterprise Serverが含まれる。両社が設立した「インターオペラビリティラボ」において、両社のチャネルパートナーが同ソリューションのテストや検証を実施し、かつ全面的なサポートを提供する。 (08年9月17日発表)

 【コメント】06年11月にマイクロソフトとノベルは電撃的な提携を行い、業界に大きな衝撃を与えた。それは、ちょうどマイクロソフトとLinux陣営とが激しく対立していたときことで、この提携によりWindowsとLinuxの対立の構図というものが、一瞬のうちに消滅したかのような印象を与えてしまうことになった。リナックス陣営の盟主はなんといってもレッドハットで、マイクロソフトも真の敵はレッドハットと認識している。マイクロソフトとしてはレッドハットと正面衝突したのではマイナス面が多すぎる。そこで“敵の敵は味方”の論理に従い、ノベルを取り込むことことによって、マイクロソフトは正面ではなく側面あるいは背面からレッドハットと対決しようとした。

 マイクロソフトはノベルと提携したことにより、労せずにLinuxのノウハウを手に入れられるばかりでなく、LinuxユーザーにWindows関連ソフトを広められる可能性が出てきた。一方、ノベルはこのままいけばLinuxでレッドハットに完全に牛耳られ、将来日の目を見ることはなくなる。そこで、マイクロソフトと手を結ぶことによって、劣勢を一挙に逆転する戦術に出た。つまり「WindowsとLinuxの混在環境のソリューションはノベルが一番」とアピールすることができるからだ。マイクロソフトとノベルは、06年11月に「仮想化」「システム管理の標準化」「識別情報の統合」「文書フォーマットの互換性確保」の4つのテーマで提携し、その後両社は「Moonlightマルチメディアフレームワーク」「アクセシビリティ技術」「Microsoft System Center向けのSUSE Linux Enterprise Server管理パックの新規提供」の3つのテーマを追加している。

 今回両社が仮想化ソリューションを発表した意義は大きいものがある。つまり、今後の100%Windows、あるいは100%Linuxという企業ユーザーは少なくなり、混在環境のユーザーが多数を占めると思われるからだ。この際、Windows環境とLinux環境の統合機能を持つ仮想化ソリューションは大いに威力を発揮するものと思われるからだ。これに対してレッドハットがどのような対抗策を打ち出すのかも興味深い。さらに、既にマイクロソフトが打ち出している「Server Virtualization Validation Program」がどのように拡大していくのかもLinux陣営とのシェア争い上から興味深い。(ESN)


◇企業システム◇マイクロソフト、仮想化ソフトで日本HP、CTCと提携

2008-09-01 16:38:41 | 仮想化

 【仮想化】マイクロソフト、日本HP、伊藤忠ソリューションズ(CTC)の3社は、マイクロソフトのサーバー仮想化技術「Hyper-V」およびサーバー仮想化の管理製品「Virtual Machine Manager 2008」と日本HPのx86サーバー「ProLiant」およびストレージ「StorageWorks」を組み合わせ、ソリューションの検証を共同で実証する。同ソリューションは、CTCが有するサーバー仮想化の設計・構築ノウハウに基づいて検証をした後に、仮想化ソリューションとしてユーザーに提供する。CTCは同検証で確立したシステム構築手法により構築したサーバー統合ソリューションを、仮想化ソリューションのラインアップとして08年秋より提供するとともに、同ソリューションの共同プロモーションを3社で実施することにしている。 (08年8月27日発表)

 【コメント】仮想化技術を使ったサーバーの統合への関心がますます高まってきている。これは石油高騰による不況の影が色濃くなるにつれて、各企業ともよりコスト削減の意識が高まり、10台あるサーバーを1台に集約させることによりコスト削減を実現させたいとするユーザー側の意向が強く反映されていることが背景にあろう。マイクロソフトは絶好のタイミングで仮想化ソフト「Hyper-V」を市場に提供してきたが、同社は「仮想化ソフトはコストがかかるが、ウインドウズサーバー2008には最初から仮想化機能が標準で入っており、改めてシフトのライセンス料を払う必要はない」ことを強調している。さらに、同社は「VMBus」技術によって仮想化によるパフォーマンス低下を食い止め、サーバーの性能を有効活用できる点などをアピール。
 
 今回、マイクロソフトの仮想化ソフト「Hyper-V」を中心に、HPのサーバー/ストレージ、それにCTCのSI技術を組み合わせたソリューションの発表が行われたわけであるが、既に日本HPはVMwareと自社ののサーバー/ストレージを組み合わせたソリューションを提供済みである。仮想化ソフト市場はVMwareのシェアが高く、それを各社が追っかけているのが現状。特に最近になり仮想化ソフト製品を一新させ、新規参入同然のマイクロソフトとしては、VMWareの壁を切り崩さねば成功は覚束ない。マイクロソフトとしてみれば、サーバー/ストレージベンダーとしてIBMとは組めない。そうなるとHPを取り込むことが勝利への一番近い道ということがいえる。

 一方、日本HPにとっては仮想化や自動化、省電力・冷却化をテーマに市場に投入したブレードサーバー「BLADE3.0」を市場に定着させ、IBM、デル、サンをいかに引き離すかは喫緊の課題だ。それを実現させるには膨大なマイクロソフトの市場を抑えるのが一番手っ取り早い。マイクロソフトとしては既に「Hyper-V」で富士通と提携しており、今回日本HP、CTCと組んだことにより、対VMware対策は磐石なものになりつつある。今後のわが国の仮想化ソフト市場は、VMWareを軸として、マイクロソフト+日本HP+CTC+富士通+シトリックス、それに日本オラクル+日本IBM+アシスト+NTTデータの三つ巴の戦いの様相が濃くなってきた。(ESN)