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◇企業システム◇鹿島建設の連結子会社でソフトウエアの架空取引発覚

2008-09-10 17:11:19 | SI事業

 【SI企業】鹿島建設は08年9月5日、同社連結子会社の大興物産において「ソフトウエア売買で不適切な取引が行われていた」ことを明らかにした。大興物産ではソフトウエア売買取引にかかわる売掛債権の代金回収に遅延が生じ、調査した結果、元常務執行役員によって「複数の会社との間で架空循環取引と疑われる取引が行われていた」ことが判明し、08年8月21日に鹿島建設に報告した。これを受けて鹿島建設では調査委員会を設置し、内容の解明に取り組み調査し、今回発表したもの。詳細については明らかになり次第速やかに公表するとしている。被害額は70億円と見られている。 (08年9月5日発表)

 【コメント】ソフトウエアの架空取引やソフト企業の粉飾決算が後を絶たない。今回も鹿島建設の連結子会社の大興物産でソフトウエアの架空取引が発覚した。詳細は分かり次第発表されることになっているので、現時点で具体的には把握できないが、損害額は70億円と決して小さくない金額だ。鹿島建設の子会社がソフトウエア事業を大規模に行っていたとは知らなかった。ということはソフトウエアの架空取引は何もソフト会社でなくとも起きることを知らせてくれたケースとなった。

 ソフトウエアの架空取引は、これまでデジタルデザイン、IXI、メディア・リンクスなど中小のソフト企業が、IBM、CTCなど大手IT企業を巻き込んで行われてきた。ソフトウエアは目に見えない商品だけに架空取引が起こりやすい。大手IT企業を巻き込むことによって、ソフト商品の信頼性を増し、実態がない取引が横行してしまう。今回の大興物産のケースも、鹿島建設という信頼の上で行われた架空取引であったのであろう。

 今回の鹿島建設の子会社をはじめとしたソフトウエアの架空取引事件は、現在のソフトウエア業界のあり方そのものに問題の根源があるといってもいいであろう。架空取引が発覚したのは、氷山の頭が水面から出ている部分であり、水面下がどうなっているのかを知る手立てはない。ユーザーもこれはソフト業界のことと高みの見物をきめるのは危険だ。結局コスト高になった分はユーザー企業が払うことになるからだ。(ESN)

 


◇企業システム◇総合ロックメーカーのアルファがSAP ERPを採用し基幹システムの全面刷新実現へ

2008-09-09 16:44:37 | ユーザー

 【ユーザー】総合ロックメーカーのアルファ(横浜市)は、このほど基幹業務ソフトウエアとしてSAP ERPの採用を決定した。09年4月に国内、2010年中にはすべての海外拠点で本格稼動し、会計や生産管理などすべての業務管理をグローバルレベルで統合する予定となっている。新システム構築に当たっては、SAPのテンプレートに自社の業務管理を合わせるという手法で社内の業務改革にも取り組む。これにより、全社的に作業時間とコストの削減などを目指すことにしている。 (08年8月25日発表)

 【コメント】総合ロックメーカーでグローバル企業のアルファがSAP ERPを採用し、新基幹システムを構築する背景には、現在各企業が抱えている多くの問題が隠されている。まず、グローバル対応である。これからの日本の企業は国内市場だけに頼っていては生き残れないことは、最近頻繁に起こっている食の安全の問題をみれば歴然だ。国内市場だけで安定した利益を上げるには、法令違反をしなければやっていけない状況に陥っているのである。このためこれからの企業にはグローバル化が求められるが、そのノウハウをどうするか。今回、アルファはアジア諸外国の言語や通貨、そして法規制にも対応できることから、SAP ERPを選択した。これからのシステムは処理速度やボリュームより、アプリケーション内容によって選択しないと経営上の導入効果は得られない。

 次に必要なのはBPM(ビジネスプロセスマネジメント)すなわち業務改革だ。アルファではSAPのテンプレートに自社の業務管理を合わせるという手法を選択した。これも賢明な選択だと思う。業務の見直しは部分部分をつぎはぎしたのでは、経営上の効果は得られにくい。社内会議をいくら開いても各部門ごとに意見が異なり、それらをまとめても妥協案しか決まらない。そうであれば全面的にSAPのテンプレートによった方がよっぽど効果が出る。

 アルファはSAP ERPを導入して次のような効果を期待しているという。①全社的な作業時間とコストの削減②予実差異分析③適正な在庫管理とリードタイム短縮④生産管理、会計のさらなる精度向上⑤予算の早期化⑥内部統制・コンプライアンスの強化。これらはすべて経営上の課題であって、ITは表面には出てこない。これこそ、これからの企業システム構築のあり方である。企業システムを構築する時に陥りがちなのはIT用語を知っている社員だけが発言し、その結果、出来上がったシステムはどんな効果を経営に与えるのか明確でない場合が多い。これからの企業システム構築は、まず経営上の課題の解決を第一義的に置き、それを支えるものとしてITを検討する、といった配慮が欠かせまい。この逆を行うと、出来上がったシステムが単なる金食い虫になってしまう。(ESN)


◇企業システム◇各ベンダーが相次ぎSOAコンサルティングサービスの提供を開始

2008-09-08 15:45:14 | 視点

 【視点】SOA(サービス指向アーキテクチャー)の考え方が紹介されて数年が経過した。この間、各ベンダーはSOAソリューションの提供や標準化に取り組み一定の成果を挙げつつある。一方、ユーザーはSOAのセミナーへの参加などで、SOAの概念の把握やどのようなスキルが必要なのかについてのノウハウの蓄積に努めてきた。つまり、SOAを実際の企業システムに取り組むための準備は大分整ったと見てもよいであろう。ところが実際にどこから手をつけて、どのようなロードマップに沿ってシステム構築をすればよいのかとなると、もう一歩具体的な動きに欠けるきらいがある。

 SOAとはシステムをサービスの塊と捉えるところに特徴がある。サービスとはビジネスプロセスの中で反復可能なタスクのことを指しており、ビジネスプロセスはサービスの複合体ということができる。つまり、サービス指向とは、互いにリンクした一連のサービスを、一つのビジネスプロセスとして統合する方法論である。では何故このSOAに関心が高まっているかというと、最近BPM(ビジネスプロセスマネジメント)の優劣が企業間格差につながるケースが出始めているからだ。従来十年一昔という言葉があったが、今はもう死語で、現在は1年どころか半年もすると業界環境は激変する。こんなスピーディーな時代では一からシステムを作り直していてはついていけない。すなわち、SOAを導入してシステム構築のスピードアップを図らねばならない。

 しかし、SOAのスキルを持ったユーザー企業はまだまだ少ないのが現状だ。そこでベンダー各社は最近SOAコンサルティングサービスの提供に一斉に走り出している。ユーザー企業にSOAについての理解を深めてもらい、SOAのノウハウを持った人材をユーザー側に育成して、具体的にSOAに取り組んでもらおうという作戦である。果して、ベンダー側の思惑通りSOA導入に踏み切るユーザーが本当に増えるのか、結果が分かるにはもう暫く時間を必要としよう。ここでは最近、SOAコンサルサービス事業を発表した日本オラクル、レッドハット、SAPジャパンの3社について見てみる。
 
 日本オラクルは、SOA導入のための新コンサルティングサービス「SOA Insight」の提供を開始した。同コンサルサービスは論議形式の会議(ワークショップ)を中心に、約2-4週間かけて簡潔かつ実践的なSOA導入の進め方をガイドするコンサルティングサービス。参加企業は目的や現在と目標の成熟度レベルに応じて特定した部分からSOA導入を開始、ロードマップに沿って容易にSOA構築を進めることが可能となる。

 レッドハットは、SOA導入初期段階に必要となるコンサルテーションサービスと、ユーザーの状況に合わせて独自に設計する技術者向けのトレーニングをセットにしたSOA導入支援の新サービス「RedHatSOAソリューションスターターキット」の販売を開始した。同スターターキットは、レッドハットのオープンソースSOAプラットフォーム「JBoss Enterprise SOA Platform」の購入者を対象にしたサービスで、コンサルテーションとトレーニングを合わせて合計6日間で提供する。SOA導入初期段階において必要となる基本事項の解決策を低価格で提供し、SOAプロジェクトの早期立ち上げを支援する。

 SAPジャパンは、SOA実装に必須である業務横断的な知識を持ち、ビジネスプロセスの視点でシステム設計ができるコンサルタントを育成するトレーニングを開始した。これに加え同社では、エンタープライズSOAにの必要なノウハウを包括的に網羅した方法論、およびエンタープライズSOA適用の導入方法の知識をまとめた方法論も提供することにしている。(ESN)


◇企業システム◇米IBM がエネルギーと水の削減に関してコンサルサービスを開始

2008-09-05 16:58:21 | システム運用管理

 【システム運用管理】米IBMはユーザーの業務全般のエネルギー・水使用の削減を実現する“リーン・シックス・シグマ原理”を適用した「Green Sigmaコンサルティング・サービス」の提供を開始すると発表した。同コンサルティング・サービスにより①二酸化炭素の排出、水の非効率的使用の管理・削減②エネルギーと水の使用、そして、それにかかわる経費の削減③先進分析技術を用い、継続的なカーボン・フットプリント(二酸化炭素排出状況)、水の使用管理などの徹底④排出権取引などの活動を通じて収益を増加させる―ことなどを実現させることにしている。 (08年8月26日発表)

 【コメント】ユーザー、ベンダーを問わず喫緊の課題として浮上してきたのがCO2やエネルギー削減問題である。特にIT分野はサーバーの24時間稼働で莫大な電力を消費しており、このことが世界的に大きな問題になりつつある。つまり、IT関連企業は回りから白い目で見られ始めている。今回米IBMが発表した「Green Sigmaコンサルティングサービス」は、そんな世間の見方を逆手にとって、IBMこそがこれまでCO2やエネルギーの削減に努めてきた企業であり、そのノウハウをベースとして一般の企業に対しコンサルタントを行いますよと宣言したわけである。今回のコンサルティング・サービスは、エネルギーと水にターゲット絞っている。特に水というところに、今後地球規模で水の問題が大きくなることを先取りした形だ。

 1990年以降、独自に環境保護に努めてきたことをIBMは強調する。それらは、消費電力では46キロワット時/3億1000万ドルを節約、二酸化炭素排出では300万トン以上の削減、さらにガソリンでは社員の自宅勤務により年間約800万ガロンの節約―と具体的な数字を掲げている。最近、各社から省エネをうたったサーバー類が発売され始めた。ユーザーもこれらの省エネ機器を導入して、導入しなかった場合と比較して「何割エネルギー削減を実現できた」と外部に公表してはどうであろうか。(ESN)


◇企業システム◇大林組がEMCのストレージでリアルタイム情報共有システム構築

2008-09-04 16:05:47 | ユーザー

 【ユーザー】大林組はEMCジャパンのストレージ・ソリューションを導入し、建設業界では初めて、工事に関するデータをリアルタイムで工事事務所と協力会社間で共有、保全できるシステムを構築した。新システムは、データ・レプリケーション・ソフトウエア「EMC RepliStor」を導入することにより、工事に関するデータを自動でアップロードし、保存する機能も持つ。 (08年9月2日発表)

 【コメント】これまで大林組では、作成した工事記録などをユーザー自身がアップロードしていたが、新システムでは自動アップロード機能を持たせたことによって、処理速度の向上、情報共有の迅速化、さらにユーザーの負担軽減を実現させ、生産性の向上を実現させている。同時に東京ー大阪間のデータ・レプリケーションも構築し、災害時の事業継続・復旧のためのシステムとしての役割も担っている。

 ストレージシステムを構築することは、一般に地味なテーマと思われがちだが、企業システムの根幹を成す重大な問題だ。データ・レプリケーション(データの複製)がうまく機能すれば、今話題の事業継続も実現できる。全社データの共有化も、自動アップロード機能がうまく機能することによって、より威力を発揮することができる。最近ではストレージの仮想化という課題も浮上してきた。

 これからの企業に欠かせない内部統制もストレージシステムの出来いかんにかかってくる。また最近、企業システムの重要課題の一つにBI(ビジネス・インテリジェンス)があるが、これもストレージに蓄積されたデータが基本となる。このように考えると、今後企業システムは、ストレージシステムの充実を最優先課題にすべきであろう。(ESN)


◇企業システム◇月桂冠がメインフレームをSAP ERP6.0により全面刷新

2008-09-03 15:58:29 | ユーザー

 【ユーザー】SAPジャパンとテクノスジャパンは、このほど月桂冠(京都市)がSAPの基幹業務ソフトウエア「SAP ERP6.0」およびBIソフトウエア「SAP NetWeaver Business Intelligence(SAP NetWeaver BI)」を採用したと発表した。今回の導入は、財務会計、管理会計、生産管理、在庫/購買管理、データウエアハウスまで含めたビックバン(一括)導入となる。新システムは、08年9月から構築を開始し、2010年4月に稼働を開始する予定となっている。 (08年8月27日発表)

 【コメント】こまで月桂冠はメインフレームを使用していたが、今回、SAP ERPによりアプリケーションを一括リプレースすることになった。つまり、今回の同社のリプレースは“全体最適化プロジェクト”の取り組みがポイントとなる。このため月桂冠では約30人のプロジェクトチームを結成し、業務プロセスの改革、すなわち“BPR”を行うことにしている。これからの企業システムはシステム構築が中心ではなく、BPRを中心に据えないと十分な投資対効果を得ることができない。これまでの企業システム構築においては、膨大な費用を投入した割には、企業経営から見てみると成果を挙げられないケースが多かった。このようなことを避けるには徹底してBPRに取り組まなければならない。情報技術(IT)中心の考え方を捨て、業務改革(BPR)中心に立つことである。その際の武器になるのがBI(ビジネス・インテリジェンス)ソフトで、今回月桂冠は「SAP NetWeaver BI」を採用した。今後の企業システムの優劣はBIの活用の仕方のにかかっていると言っても過言でない。(ESN)


◇企業システム◇今話題のSaaSに死角はないのか

2008-09-02 16:30:21 | 視点

 【視点】最近、各社からSaaSに関する発表が相次いでいる。それらを挙げると、日本ユニシスがSaaS型サービス基盤「SASTIKサービス」の提供開始/富士通中部システムズがSaaS型統合CRMアプリケーションサービス「CRMate(シーアールメイト)」を中小規模から大規模までラインアップ強化して提供/NECネクサソリューションズとソフトブレーンがSaaS型営業支援システムを販売開始/アライドテレシスがオラクルのSaaS型CRMソフト「Oracle CRM On Demand」を導入し顧客管理システム刷新―などである。SaaSは“ソフトウエア・アズ・ア・サービス”の頭文字をとったもので、ソフトウエアをインターネット回線を介して送り、ユーザーは必要なときに、必要なだけ利用できる従量制料金体系になっている。また、ユーザーのデータはSaaSベンダー側に記録され、ユーザーのシステム負担は自社導入に比べ大幅に抑制することができる。つまりSaaSを導入することにより、ユーザーは初期投資コストを大幅に削減できることになる。

 米国でのSaaSベンダーでの成功事例としてはセールスフォース・ドットコムが挙げられるが、このほか既に日本に進出している米国のSaaSベンダーとしてネットスイートなどを挙げることができる。セールスフォースはCRM、ネットスイートはCRM以外にERP、Webシステムなども提供している。SaaSが威力を発揮するのは、自社でシステム構築するより大幅に開発期間を短縮できることが挙げられる。また、頻繁に変わる制度を一ユーザーが変化のたびにシステムを変更するのは大変なことであり、SaaSベンダーが一括して行えば効率的だ。このようなことからセールスフォースやネットスイートなどの成功事例も現れ始めており、大手ITベンダーでも相次ぎSaaSプラットフォームを開発し、独立系ソフト企業に提供しつつあり、これが現在、冒頭に挙げた各社からの発表の数に表れている。

 しかし、SaaSの前途はすべてがばら色かというと、まだまだ乗り越えないとならない課題も多い。まず、コストの点である。初期導入コストは、自社開発した場合に比べ確かに安く済み、立ち上げまでの時間も短い。利用コストもも従量制なので使った分だけ払えばいいので合理的だ。しかし、1年経ち、2年経ち、利用が長くなっても一定の料金を払い続けなければならないという問題が出てくる。また、貴重な顧客データをSaaSベンダーに渡すわけであるが、最近強く求められるようになった内部統制の強化の観点からすると不安要素が付きまとう。さらに、SaaSベンダーが倒産したらユーザーは窮地に立たされる(これについては最近公的機関のお墨付きをSaaSベンダーに与え、ユーザーの不安を取り除く制度がスタートした)。このほか、パッケージソフトベンダーがSaaSによってユーザーに直接ソフトを提供するとなると、従来からあるディーラーの存在はどうなるのかなど、SaaSの前には乗り越えなければならない課題も少なくない。

 ただ、これからの企業システムのあり方として、ユーザーが自らシステムを保有しないという方向に向かうのは確実で、その意味からするとSaaSベンダーは一歩先を行っているということが言えよう。最近グーグルやアマゾン、それにIBMは盛んにクラウドコンピューティングということをいっている。これは企業システムのすべての処理をネット介して行い、ユーザー側には巨大なシステムは置かないことを念頭に置いたシステムとなっており、言わSaaS型といえよう。クラウドコンピューティングは、パッケージソフトで成功を収めてきたマイクロソフトに対する牽制球といった意味合いが強いが、いずれにせよ、企業システムはSaaS型に徐々に移行し始めていることだけは確かだ。(ESN)


◇企業システム◇マイクロソフト、仮想化ソフトで日本HP、CTCと提携

2008-09-01 16:38:41 | 仮想化

 【仮想化】マイクロソフト、日本HP、伊藤忠ソリューションズ(CTC)の3社は、マイクロソフトのサーバー仮想化技術「Hyper-V」およびサーバー仮想化の管理製品「Virtual Machine Manager 2008」と日本HPのx86サーバー「ProLiant」およびストレージ「StorageWorks」を組み合わせ、ソリューションの検証を共同で実証する。同ソリューションは、CTCが有するサーバー仮想化の設計・構築ノウハウに基づいて検証をした後に、仮想化ソリューションとしてユーザーに提供する。CTCは同検証で確立したシステム構築手法により構築したサーバー統合ソリューションを、仮想化ソリューションのラインアップとして08年秋より提供するとともに、同ソリューションの共同プロモーションを3社で実施することにしている。 (08年8月27日発表)

 【コメント】仮想化技術を使ったサーバーの統合への関心がますます高まってきている。これは石油高騰による不況の影が色濃くなるにつれて、各企業ともよりコスト削減の意識が高まり、10台あるサーバーを1台に集約させることによりコスト削減を実現させたいとするユーザー側の意向が強く反映されていることが背景にあろう。マイクロソフトは絶好のタイミングで仮想化ソフト「Hyper-V」を市場に提供してきたが、同社は「仮想化ソフトはコストがかかるが、ウインドウズサーバー2008には最初から仮想化機能が標準で入っており、改めてシフトのライセンス料を払う必要はない」ことを強調している。さらに、同社は「VMBus」技術によって仮想化によるパフォーマンス低下を食い止め、サーバーの性能を有効活用できる点などをアピール。
 
 今回、マイクロソフトの仮想化ソフト「Hyper-V」を中心に、HPのサーバー/ストレージ、それにCTCのSI技術を組み合わせたソリューションの発表が行われたわけであるが、既に日本HPはVMwareと自社ののサーバー/ストレージを組み合わせたソリューションを提供済みである。仮想化ソフト市場はVMwareのシェアが高く、それを各社が追っかけているのが現状。特に最近になり仮想化ソフト製品を一新させ、新規参入同然のマイクロソフトとしては、VMWareの壁を切り崩さねば成功は覚束ない。マイクロソフトとしてみれば、サーバー/ストレージベンダーとしてIBMとは組めない。そうなるとHPを取り込むことが勝利への一番近い道ということがいえる。

 一方、日本HPにとっては仮想化や自動化、省電力・冷却化をテーマに市場に投入したブレードサーバー「BLADE3.0」を市場に定着させ、IBM、デル、サンをいかに引き離すかは喫緊の課題だ。それを実現させるには膨大なマイクロソフトの市場を抑えるのが一番手っ取り早い。マイクロソフトとしては既に「Hyper-V」で富士通と提携しており、今回日本HP、CTCと組んだことにより、対VMware対策は磐石なものになりつつある。今後のわが国の仮想化ソフト市場は、VMWareを軸として、マイクロソフト+日本HP+CTC+富士通+シトリックス、それに日本オラクル+日本IBM+アシスト+NTTデータの三つ巴の戦いの様相が濃くなってきた。(ESN)