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企業経営を左右する企業情報システム(経営+ITソリューション)のデータバンク作りを目指す

◇企業システム◇長崎県がOSSの電子申請システムを県内市町にASP提供

2008-08-29 16:51:48 | システム開発

 【システム開発】長崎県はオープンソースソフトウエア(OSS)で独自に開発した「電子申請システム」を、県内の市町が共同利用(県がASPでサービス提供)する新たな電子自治体共同化案を、県内の市町に提案した。同システムの特徴は①公的個人認証、ID・パスワードの本人確認を有する電子申請システムと本人確認を有しない簡易申請システム(携帯電話による申請)からなる②インターネットにより24時間365日、電子申請・届け出が行える③「ながさきITモデル」に基づきOSSを利用しているため低コストで利用可能④システム開発・運用に当たっては県内IT企業に委託しているため、地域IT産業の振興につながる⑤市町ごとに手続き設定し、様式を作成できる。 (08年8月25日発表)

 【コメント】現在政府は①2010年までにオンラインの利用率を50%以上にする②公的個人認証に対応した電子申請システムを全市町村において2010年度までに整備する―という方針を打ち出している。今回長崎県が開発した「電子申請システム」はこの方針に沿ったもの。同システムは県が開発したシステムを市町がASPにより共同で利用できる点に大きな特徴がある。ASPによる提供は全国の自治体でも初の試みという。そして、OSSで開発したため開発費および運用費が低く抑えられるというメリットを最大限に生かしきったシステムとしても特徴を持つ。さらにOSS採用により地場ソフト企業の育成にも貢献している。

 長崎県は全国の自治体の中でもOSSに熱心に取り組んでいることで知られる。OSSにより「長崎県電子県庁システム」を独自に開発したが、現在そのうち10本のソフトを公開するという実績を持つ。同県ではOSSを採用に当たって「ながさきITモデル」を策定して地場ソフト企業の育成を図っていることが注目される。「ながさきITモデル」とは、OSSを活用し、特定のメーカーに依存しない詳細な仕様書を県が作成することによって、システムを適正な規模に分割、発注してシステムを構築する同県独特な開発手法のことである。OSSによるコスト削減効果は特に年間の運用費用において効果を発揮し、電子申請システムにおいては他県と比べ1/10~1/4で済んでいる。

 最近、OSSのRubyを中心に据えた取り組みを島根県や福岡県がスタートさせ注目を浴びているが、自治体でのOSSの取り組みのパイオニアは長崎県である。OSS採用のメリットはシステム開発費・運用費の低コスト化ということ以外に、地場ソフト産業育成という観点からも重要である。これまで多くの自治体は大手IT企業に対して一括丸投げでシステム開発・運用を委託してきた。この方式であると大手IT系列のソフト企業に仕事が流れ、地場のソフト企業はその下請け、孫請けの立場に甘んじ、いつまで経っても発展できない。これに対しOSSを採用すれば、1ベンダーの技術に偏らず、世界標準の技術でよく、独立系のソフト企業でも立場は大手に対して平等になる。さらに自治体が細かく発注することにより、零細な地場のソフト企業でもソフト開発を受託できるようになる。今後、ソフト開発・運用はOSSなどオープンを基本とするよう各自治体の取り組みが注目される。(ESN)


◇企業システム◇米大手旅行会社がUNIXに代えレッドハットLinuxを採用

2008-08-28 15:51:16 | ユーザー

 【ユーザー】世界的旅行会社の米セーバーホールディング社は、このほど基幹業務をUNIXサーバーからRed Hat Enterprise Linux5を搭載した数千台のHPx86サーバーにリプレースした。これによりコストの削減効果と3倍の性能向上を実現すると同時に、システムの信頼性およびスケーラビリティの向上も実現した。新システムの処理能力は、数百万人のオンライン顧客に対し、最高32000件/秒、週7日24時間利用可能で、稼働率はファイブナイン(99.999%)に達している。 (08年8月20日発表)

 【コメント】これまで大手企業の基幹システムは、長い間メインフレームが中心に構築されてきた。これはシステムの信頼性、流通ソフトの豊富さ、技術者の蓄積などがその背景にあり、そう簡単には他のマシンに切り替わることはなかった。しかし、IBMが独占するメインフレーム市場は競争原理が働かず、コストの面から徐々にユーザー離れが始まった。そして、ユーザーがメインフレームに代わり選択したのがUNIXであった。UNIXはベンダーごとに異なる仕様のOSを生み出してしまったという弱点を持ちながらも、サン、HPなどのIT企業の発展を促し、結果的にはユーザーの選択肢を拡大させるというメリットももたらした。UNIXはもともとメインフレームの使用環境を個人レベルで実現できないかというニーズから生まれたもので、オープンシステムが基本に据えられており、この意味からは大きな前進であった。

 メインフレームをDECのミニコン上で実現したのがUNIXだとすると、UNIXをパソコン上で実現した一つがLinuxである。このときリーナス・トーバルズはインターネットを介して全世界の技術者に共同開発を呼びかけ、今で言うオープンソースという考え方でLinuxを完成させたことが成功のカギとなった。オープンソースのLinuxのカーネル部分は無料である。コストの点でメインフレームからUNIXに移行したユーザーが、今度はUNIXからLinuxへと向かうことは必然な動きである。Linuxは当初企業システムでは末端のシステムで使われてきたが、最近になり都市銀行の勘定系システムなど基幹システムとして十分機能することが実証されつつある。今回、米セーバーホールディング社が基幹システムにUNIXに代えLinuxを選択したのは、この実証例の一つとなるもの。

 メインフレームからUNIX、そしてLinuxへという流れは、最後にWiodowsにたどり着く。ここでユーザーとしてはLinuxを選択すべきか、Windowsを選択すべきか、迷うところとなる。Linuxは低価格で、オープンソースというスピードある技術革新の恩恵を受けやすい。一方、Windowsは一つのポリシーの下、既に確立された安定した基盤を活用できる。これからの企業システムはLinuxが勝ち残るのか、Windowsがクライアント市場と同様にサーバー市場でもイニシアチブを握るのか、大きな岐路に立たされている。(ESN)


◇企業システム◇LPI-JapanのLinux技術者試験の受験者数が延べ10万人突破

2008-08-27 15:45:16 | システム開発

 【システム開発】Linux技術者認定機関のNPO法人「LPI-Japan」は、日本国内におけるLinux技術者認定試験(LPIC)の受験者総数が延べ10万人を突破したと発表した。これは2000年10月の日本語試験開始以来、8年弱で達成したもの。現在LPIC認定者の総数は、レベル1では2万6000人、レベル2では約6000人を上回り、レベル3は約340人となり、認定者の合計は約3万3000人に達している。なお、2012年には受験者総数延べ20万人を見込んでいる。 (08年8月25日発表)

 【コメント】オープンソースソフトウエア(OSS)を代表するOSであるLinuxは、日本市場でも徐々にその市場を広げてきている。これはユーザーがUNIXに比べコストが安いこと、インターネットを取り込みやすいこと、OSSなのでオープン性が高く、最先端の技術成果をいち早く取り入れやすいこと―などの点を評価したためと思われる。今後、サーバー市場はWindowsかLinuxかの二者択一の時代へと入っていくことになろう。IBMのメインフレームにLinuxを搭載した“Linuxメインフレーム”のユーザーは全世界で拡大をみせている。富士通、日立、NECなど大手ITベンダーもLinux専用サーバーの市場への浸透を積極的に取り組み、成果も出始めている。

 このような状況下でLinux技術者増大のニーズは年々高まりをみせている。今回LPI-Japanが発表したLinux技術者認定試験の国内受験者総数が延べ10万人を突破したことの発表は、このことを裏付ける結果となった。このようにLinuxの人気が高い最大の理由は、そのオープン性にある。今、各自治体では地場のソフト企業の育成に取り組み始めている。これまで各自治体のシステムの発注は、一括して大手IT企業に対し行われ、これらの大手IT企業は系列化のSI企業にソフト開発を流し、これらのSI企業は零細ソフト企業を下請けに使う。つまり、ピラミッド構造の中で地場のソフト企業は孫受けとして扱われ、企業としての成長が見込めない状況に陥っている。

 全国の自治体の中にはこの古い体質のソフト産業の構造を改めようと立ち上がるところも出てきた。OSSのRubyを中心に島根県や福岡県が地場ソフト企業の育成に乗り出している。長崎県では古くからOSSの導入に熱心に取り組んでいる。東京都の三鷹市の取り組みも注目される。最近、PCソフトをOSSのオープンオフィスに一本化した会津若松市では今後、情報システムに積極的にOSSを取り込むことを表明している。このように企業システムにLinux/OSSが採用されるケースが急ピッチで拡大をみせようとしている。(ESN)


◇企業システム◇福島県会津若松市がオープンオフィスに全面移行

2008-08-26 15:41:24 | アプリケーション

 【アプリケーション】福島県会津若松市は、オープンソースソフトウエア(OSS)のオフィスソフトである「OpenOffice.org(オープンオフィス)」を全面的に採用することを08年5月に発表したが、08年10月から240台のPCをリプレースする際、原則としてオープンオフィスのみをインストールすることになった。既にオープンオフィスを採用しているの自治体は北海道伊達市、栃木県二宮市、沖縄県浦添市、高知県四万十町、兵庫県洲本市などであるが、同市はこれらに次ぐもので、本格的な全庁運用は福島県内では初のケースとなる。今後全国の自治体にどのような影響を及ぼすのか、注目を集めている。 (08年8月22日発表)

 【コメント】同市では現在使用しているマイクロソフトオフィス(ワード、エクセルなど)は、OSSのオープンソフトに全面的に移行しし、業務上マイクロソフトオフィスが必要な場合については併用とすることにしている。同市ではオープンオフィス導入の理由について、次の4点を挙げている。①導入コストの削減(5年間で約1500万円削減計画)②文書の保存形式を国際標準のODF形式に移行させ、文書の長期保存とその利用に対応する③文書形式をODFに統一することにより利便性が向上し、市民の負担が軽減される④今後市の情報システムにOSSの導入を進め、地元IT企業の参入機会を増やす。

 同市では07年8~10月に、職員が試用できるように庁内全PCにオープンオフィスを導入したのに続き、08年5~8月にオープンオフィスの職員研修を実施。そして、08年10月以降、240台のPCのリプレースに際しては、原則としてオープンオフィスのみをインストールすることにしている。これまで同市で標準的に使用してきたマイクロソフトオフィスについては必要に応じ併用していく方針。また、マイクロソフトオフィスで作成された文書の受付などは、これまで通り取り扱いを継続するという。

 今回、会津若松市がオープンオフィスを導入したことは、正に英断であったといえる。というのはまだ全庁的にオープンオフィスを導入している自治体は栃木県二宮町などごくわずかだからだ。何故オープンオフィスの導入に慎重になるのかというと、会津若松市もそうだが、オープンオフィスと並行して従来からのマイクロソフトオフィスの扱いも継続しなければならず、二重に手間がかかることだ。それでも同市がオープンオフィス導入に踏み切ったのは、やはりコストの問題が大きいのだろう。さらに、これを機に市の情報システムへ積極的にOSSを導入し、地場ソフト企業を育成したいという思いが強いのではなかろうか。現状では大手ITベンダー系列のソフト企業だけにソフト開発の業務が回っていき、地場ソフト企業が育ちずらい環境となっている。

 ただ、文書の保存形式について、08年4月以降はそれ以前と状況が変わった。以前はISOの文書形式としてはODFのみが承認され、唯一の国際標準の文書形式として認められていた。このためOOXMLを文書形式としてきたマイクロソフトオフィスは、自治体の入札では徐々に不利な立場に追い込まれていた。ところが08年4月にOOXMLがISOから国際標準の承認がおりたのである。つまり、文書の保存形式としてはODFでなくてはならないという根拠はなくなった。果してこのことが、今後全国の自治体がオフィスソフト導入に際してどのような影響を及ぼすのか、先行きは不透明になってきている。(ESN)


◇企業システム◇マイクロソフトとノベル、WindowsとLinuxの相互運用で提携強化

2008-08-25 16:49:09 | システム開発

 【システム開発】米マイクロソフトと米ノベルは、06年11月開始されたWindowsとLinuxの相互運用での両社の提携事業について追加投資を実施すると発表した。今回の追加投資はMicrosoft Windows ServerとSUSE Linux Enterprise Server間に相互運用性をもたらせるようなソリューションを必要としているユーザーに、ノベルが実施しているツールやサポート、教育ならびにリソース提供プログラムを強化することに重点が置かれる。また、マイクロソフトは、最大1億ドル相当のサポート付き利用証明書をノベルから購入し、ユーザーに提供する。今回の追加投資は08年11月1日から実施される(08年8月25日発表)

 【コメント】マイクロソフトは当初、OSS(オープンソースソフトウエア)のLinuxに対して、OSSはソフトウエア特許違反の恐れがあるとの立場から、Linux陣営に対し徹底抗戦の構えを見せていた。そして、カーネル部分が無料のLinuxは、アプリケーションやサポートまで含めるとWindowsのほうが安く済むといったコスト比較キャンペーンを張り、この結果マイクロソフトとLinux陣営との間はかなり険悪な状態に陥ってしまっていた。しかし、マイクロソフトがいかにLinuxに対し牽制球を投げようとしても、Linuxを導入するユーザーは増え続け、現在ではWindowsの強力なライバルとして無視できない存在になっている。このような情勢に対し、マイクロソフトはLinuxを敵対するのではなくLinuxをWindowsに取り込む新戦略に大きく方向転換を図った。この背景にはヨーロッパにおけるマイクロソフトの独禁法違反裁判が微妙な影を及ぼしたとも考えられる。

 この結果、マイクロソフトが目を付けたのがLinuxOSのSUSEを扱うノベルであった。現在、Linux市場はレッドハットが一人勝ち状態で他のディストリビューションは、レッドハットとの差が出るばかりといった状態にある。このような状況下でノベルとすれば“敵の敵は味方”という論理でマイクロソフトと組むことで、現状の閉塞状況を何とか打開したいという意向が働いたものとみられる。2社が提携することによって、マイクロソフトはLinuxユーザーにWindows環境を食い込ますことが可能となる。さらに、マイクロソフトは仮想化ソフトでシトリックスと提携したが、このシトリックスはOSSの仮想化ソフトのXenを買収しており、Linuxユーザーに対し仮想化ソフトを容易に提供できる体制作りが既に出来上がっていることも見逃せない。一方ノベルは広大なるWindows市場に対し、SUSEを食い込ます絶好のチャンスが到来したことになる。マイクロスフトは「他の(注=レッドハットを指すものとみられる)Linux環境をSUSE Linux Enterprise Serverに移行するための支援が必要とされているケースも多く含まれている」と指摘しており、マイクロソフト=ノベル連合で、レッドハットに揺さぶりをかけようとする姿勢がありありと読み取れる。

 このような動きに対し、レッドハットは今後どのような対応をするのであろうか。カギはIBMが握っていると考えてよいのではないかと思う。もともとIBMは「OS2」崩壊後、マイクロソフトに対抗するためLinuxに力を入れてきたが、中でもレッドハットとの関係は強い。先頃米IBMは“脱マイクロソフトPC戦略”を打ち出し、IBMのオフィスソフトである「ロータスシンフォニー」の全世界普及を強力に推し進める意向を明らかにしたが、このロータスシンフォニーは、OSSのオフィスソフトである「オープンオフィス」との連携を明らかにしている。この流れの中でレッドハットとIBMがさらにパートナー関係を強化して、マイクロソフト=ノベル連合に対抗するのか、暫くは市場動向から目を離すことはできない。(ESN) 


◇企業システム◇大阪商工会議所が「大商VAN-BMS」にウルシステムズ製のEDIソフトを採用

2008-08-21 14:43:44 | アプリケーション

 【アプリケーション】ウルシステムズ(東京都中央区、漆原茂社長)は、大阪商工会議所(大商)の流通BMSに対応した「大商VAN-BMS」サービスののソフトウエア基盤に、同社のEDIソフト「UMLaut/J-XML」が採用されたと発表した。「UMLaut/J-XML」は既に、全国地域VAN事業者協議会の会員の「ひむか流通ネットワーク」「高知流通情報サービス」にもソフトウエア基盤として全面採用されている。 (08年8月21日発表)

 【コメント】ウルシステムズは08年7月に流通BMS対応サービス分野で富士ソフトDISとの協業を発表したが、今回は「大商VAN-BMS」のソフトウエア基盤に、同社のEDIソフト「UMLaut/J-XML」が採用されたと発表した。流通業界におけるEDIソフトは長い間JCA手順を標準にしてきた。しかし、JCA手順は通信速度が遅く、漢字が使えない、海外では受けいられない―などの問題を抱えていた。そこで経済産業省では国際標準化団体のGSIが策定した「ビジネスメッセージ標準(BMS)」をベースにし、XMLを取り入れた流通業界向けEDIソフト「流通BMS」を策定した。経産省は06年度にグローサリー、07年度はアパレルと生鮮の共同実証を行い、現在これらの本番化と普及を図っている。

 ウルシステムズの流通BMS対応のEDIソフト「UMLaut/J-XML」はインターネットを活用し、企業間取引を導入コスト・期間とも1/3で実現することができる。今回大阪商工会議所の「大商VAN-BMS」に「UMLaut/J-XML」が採用されたことは、流通BMSが本格普及に向けて大きな一歩を踏み出したことになる。(ESN)


◇企業システム◇“メインフレームの終焉”は果してほんとなのか?

2008-08-20 15:56:03 | 視点

 【視点】最近、ユーザーの仮想化ソフトへの関心が高まっている。これは大量に導入したサーバー類を統合化して、コストの削減とシステムの再構築を狙ったものだ。過去、企業のホスト機はメインフレームあるいはオフコンが担ってきた。その後、単体のパソコンを各企業が導入し始め、それらのパソコンはLANで相互にネットワーク化され始め、それらを束ねるためにサーバーが導入された。各企業ともホスト機と並行してクライアントサーバーシステムが稼働し始めていった。そしてこのクライアントサーバーシステムが年々機能を向上させ、遂にはホスト機をリプレースするところまできた。サーバーのOSにはUNIX、WindowsそしてLinuxとオープン系のOSが採用された。これと同時にWebシステムが企業システム取り入られる動きが始まり、現在ではクライアントサーバーシステムに取って代わっているケースが多い。

 Webシステムはサーバー側で集中管理する機能を持っており、ある意味では集中システムといえる。Webシステムに行き着くまでの間、企業の各部門に大量のオープン系サーバー類が導入されたわけである。ある意味では企業システムは無政府状態といった感じに陥ってしまった。そして現在、各企業ではこの企業システムの無政府状態から脱し、仮想化ソフトを導入することによって、統制の取れた企業システム構築へ向かおうとしているのである。ここでは当然サーバーの統合化が図られ、結果としてコスト削減が実現されることになるため、各企業は余計にに力を入れることになる。

 しかし、このサーバーの統合化の流れを追っていくと、最後にはメインフレームあるいはオフコンの再評価を迫られるかもしれない。もともと企業システムは集中処理が原則だ。企業の多くのデータは、最終的には一カ所で集中管理されるのが、もともと原則なのである。内部統制が企業に厳しく問われるようになってきたいま、集中管理が大きな課題になることは避けて通れない。一時期、“メインフレームの終焉”といったことがいわれ、現にメインフレームの出荷額は減少し続けている。しかし、今後、サーバーの統合や内部統制の強化などのニーズがさらに高まると、メインフレームが再評価されないとも限らない。IBMの利益の多くはまだメインフレームに依存しているともいわれるほどで、メインフレームに対する信頼は根強く存在しているのである。

 最近の発表でもメインフレームはちょくちょく登場する。ここでは、日立製作所CAの発表を紹介しておこう。日立製作所はこのほど、日立のストレージシステムとIBM製次世代メインフレームとの互換性および相互接続性検証をIBMと共同で行い、完了したことを発表した。これによってメインフレームユーザーがデータ・マイグレーションやレプリケーションなどのストレージサービスを受けることが可能になるという。一方CAは、IBMのメインフレーム用の管理ソフトウエア類の機能拡張を発表した。同社では「メインフレームは理想的なプラットフォームとして、大きな復活を遂げつつある」とコメントしている。(ESN)


◇企業システム◇競争が激化する仮想化ソフト市場

2008-08-19 15:24:36 | 視点

 【視点】現在、仮想化ソフトベンダー各社の市場での展開が激しくなりつつある。これはユーザーの仮想化ソフトに対する関心が高まるにつれて、早く自社のシェアーを高め、この市場でのイニシアチブを握りたいという各社の思惑が強くなりつつあるためだ。仮想化ソフトの登場の背景には、メインフレームやオフコンに代わり、オープンシステム対応のサーバーを大量に導入した結果、システム自体が複雑化し、サーバーやストレージの運用コストが増加したことが挙げられる。つまり、集中処理システムをオープンシステムによる分散システムにへと切り替えたユーザーが、今度は仮想化ソフトを使い、オープンシステムの分散システムをオープンシステムの統合化へと移行させようとしているのである。

 サーバーの仮想化ソフト市場でデファクトはVMwareである。04年大手ストレージメーカーのEMC傘下に入った時は売上高は1億ドル、従業員数300人程度であったが、07年度の売上高は13億ドル、従業員数は3000人を突破しており、その急成長ぶりがうかがえる。07年にはシスコシステムズも資本参加し、さらに経営基盤を強固にしている。VMwareの強みはベンダーフリーであることだろう。あらゆるハード、ソフトから独立しており、これが同社の強みとして今後とも大きな武器になって行こう。

 トップを走るVMwareに立ちはだかるのは、マイクロソフトとシトリックスグループおよびオラクルである。マイクロソフトは08年8月1日から仮想化ソフト「Hyper-V」の販売を開始したが、これに先立ち08年5月には富士通と「富士通 Hyper-V仮想化センター」を共同で設立した。同センターは富士通のサーバー「PRIMERGY」と「Hyper-V」による仮想化システムの設計・構築を支援し、安定した仮想化システムを迅速にユーザーに提供する機能を有している。Hyper-Vはウインドウズとの連携で他社製品との差異化に強みがあり、今後どこまでこの強みを生かしきることができるかがカギを握る。一方、シトリックスはオープンソースの仮想化ソフト「Xen」を買収し、仮想化ソフト市場に参入したが、同時にマイクロソフトと仮想化ソフト事業で提携を発表している。シトリックスはウインドウズの統合ソフト事業を手掛け、もともとマイクロソフトとは近しい関係にあった。仮想化ソフトのHyper-VとXenは補完関係にあるということで、両社は仮想化ソフト事業での提携に踏み切った。

 もう一つの動きはオラクルの仮想化ソフト「Oracle VM」である。08年8月、日本オラクル、日本IBM、アシストの3社はオラクルの仮想化ソフト「Oracle VM」を中心に据え、IBMのサーバー、アシストのSIを加えて、ユーザーの仮想化システム構築の支援事業を開始することを発表した。また、同じく08年8月、日本オラクルとNTTデータは提携し、NTTデータのシステム基盤ソリューション「PRORIZE」に「Oracle VM」を採用し、今後両者の協力体制でシステム構築事業を推進することにしている。(ESN)


◇企業システム◇SMBC証券が日立電子サービスにバックアップセンター委託

2008-08-18 16:03:48 | ユーザー

 【ユーザー】日立電子サービス(日立電サ)は、SMBCフレンド証券より事業継続計画(BCP)の観点から株式受発注バックアップシステムについて、日立電サ・データセンタへの構築を受託、バックアップシステムは08年2月から稼働を開始している。これによりシステムセンタあるいは本社が万一災害などで被災しても、株式受発注業務を継続できる体制が構築された。今回のバックアップシステム構築に当たってはインパルスのソフトパッケージ「Advance-Web-Trader System」を採用した。 (08年7月29日発表)

 【コメント】BCP(事業継続計画)は、現在ユーザーの最も関心の高いテーマであろう。度重なる全国各地での地震の発生、あるいは台風の被害が大きく報じられる中、誰もが「自社のシステムは大丈夫であろうか」と心配になってくる。BCPは事前に災害時に備えることによって、事業を止めることなく続けさせるための対策だ。ユーザーが陥りやすい点は、バックアップテープを本社内に置いてしまい、本社が被災した場合バックアップ機能が働かなくなってしまうようなことが実際に起こる。また、バックアップセンターも本社に近いところにあった場合は、両方が同時に機能が麻痺してしまう。

 事業継続(BC)については、政府や各自治体、経営者団体などが取り組みを開始しており、各種報告書、セミナーなどが活発に行われるようになってきた。ユーザーはあらゆる手段を使って、日ごろから情報の収集に努めなければならない。ここでは、BCの代表的な団体の一つとして06年6月に設立した「特定非営利活動法人 企業継続推進機構(BCAO)」を紹介しよう。会員数は406人でセミナー、講座の開設やテキストの発行を行っている。また、BCAO認定 事業継続初級管理者試験も行っている。(ESN)

 


◇企業システム◇アライドテレシスがオラクルのSaaS型CRMソフト導入

2008-08-15 15:01:35 | システム開発

 【ユーザー】国内有数のネットワーク機器専業メーカーで世界21カ国で事業を展開するアライドテレシスは、コアスイッチ製品の製品開発と販売体制の強化を目的に、オラクルのSaaS型CRMソフト「Oracle CRM On Demand」を導入し、顧客が自らユーザー情報を登録し、簡単に保守契約の手続きや商談ができる顧客管理システムを構築した。08年6月に稼働を開始し、約300人の社員が活用している。同社では、問い合わせ内容の履歴を記録することにより、サポートサービスの強化、顧客のニーズを理解した製品開発や改良および効率的な営業・サポート体制を実現することにしている。 (08年8月13日発表)

 【コメント】SaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)は、ユーザーがネット経由で必要な機能だけを選択して利用することができ、料金は利用分した分だけ支払えばいい従量制となっている。特に自社内に専門のIT要員を持たない中堅中小の企業に有効と見られているが、大手企業でも、システム構築期間が長く取れない場合、社内の限られたアプリケーションを稼働させる場合、法制度改正など頻度の高い制度改正に対応する場合などに有効と見られている。SaaSの代表的ベンダーはCRMソフトを提供する米セールスフォース・ドットコムである。このほか米ネットスィートも日本市場での本格販売をスタートさせている。このような流れは日本のソフトベンダー各社にも影響を与えており、例えば従来中堅中小向けのパッケージソフトを販売してきたPCAはSaaSの提供を開始しており、現在、国内でSaaSを提供するベンダーは増えている。

 今回、アライドテレシスが採用したのは、オラクルのSaaS型CRMソフト「Oracle CRM On Demand」である。アライドテレシスはグローバル企業であり、グローバル対応が可能な点がオラクル製品導入理由の一つとなっている。また今回、大手企業の一アプリケーションを稼働させるためにSaaS型CRMソフトが採用されたことは注目される点だ。システム部門はその企業の基幹システムの開発・運用に追われ、一部門のアプリケーションにまではなかなか手が回らないのが実情だ。そのような場合、アライドテレシスの例のようにSaaS導入で解決を図ることができる。

 現在、大手ITベンダーが次々とSaaSプラットフォーム事業に参入し始めている。富士通は「館林システムセンター」をSaaS事業の拠点とする方針を打ち出しているほか、KDDI、NTTデータなどが相次いでSaaSプラトフォーム事業を開始した。このような情勢からSaaSのユーザーは当初考えられていた中堅中小企業に加え、大手企業の部門ごとのアプリケーションにまで発展する可能性が出てきたといえる。(ESN)