【SI事業】デル、インテルとレッドハットは、SPARCベースのSolaris環境からオープンなIAプラットフォームへの移行・普及を推進するため協力し、 デルより移行プログラムを提供する。同移行プログラムはIT予算においてボトルネックになりがちな初期費用に着目し、費用対効果が著しい効果が見込まれるSPARCベースのSolaris環境からRed Hat Enterprise Linux/デルサーバへの移行にフォーカスしている。導入・システム構築におけるサポートをセットにし新たに提供開始することで、顧客の投資を最大化するとともに、 IAプラットフォームをベースとしたオープンな環境への移行ビジネスを加速する。インテル最新のサーバ用プロセッサー、インテルXeonプロセッサー5500番台を採用するデル PowerEdgeサーバは、SPARCベースのSolarisシステムに比べ半分の消費電力と設置面積を実現し、さらに3年間の保有コストも最大11分の1に抑えられ、優れた費用対効果を発揮する。 (デル、インテル、レッドハット:09年6月23日発表)
【コメント】デルは現在、インテルの協力を得て、インテルXeon プロセッサー 5500番台を搭載したデルPowerEdgeサーバの普及を 進めており、移行プログラムにおいても、PowerEdgeサーバをプラットフォームとして提供する。 一方レッドハットは、限られたコストでIT投資を最大限に効率化するため、「Carve Out Costs with Red Hat」キャンペーンをグローバルに展開している。 このキャンペーンはオープンソースソリューションの利用によるコスト削減をテーマに、レッドハットソリューションやサブスクリプションの有効性を立証するためのもので、同移行プログラムはこのキャンペーンとも連動している。
この時期に3社は何故SPARC/Solarisをターゲットにした協業を開始したのかは、ある意味では明白である。それは、サンがオラクルに買収された今こそ、SPARC/Solarisを叩く絶好のチャンスと考えたからだろう。逆にいえばこれまで3社はサンの牙城があまりに強固であったため、SPARC/Solaris城を攻めあぐねていたのである。サンはSPARCの高性能化に取り組んでいたし、富士通などとも協業しサーバーの製造・販売体制の強化を図ってきた。また、UNIX・OSのSolarisについても、レッドハットなどOSS(オープンソースソフトウエア)の波が押し寄せてきたことに対抗して、Solaris自体をOSS化するという荒療法も行ってきた。この結果、これまで大きな変化もなくSPARC/Solarisユーザーは健在であったわけである。
その膠着した状況を一変させたのが、オラクルによるサンの買収という大きな地殻変動だ。サンはこれまでWANGやDECというミニコンメーカーの牙城を撃破して生き残り、世界でも指折りのITベンダーの地位を揺ぎ無いものにしてきた。そのサンがオラクルに買収されるなどということは、まず考えられなかった。サンの息を止めた原因は何か。それはインターネットとOSSだ。サンは“コンピューター イズ ネットワーク”をいち早く掲げたベンダーであったわけであるが、グーグルをはじめとするインターネット専門のベンダーの前には無力に近い存在であった。また、サンは“オープンシステム”を最初に掲げたベンダーであったがLinux陣営の前では、こちらも苦戦を強いられた。つまり、サンは得意分野で完全にお株を奪われて、息の根が止まってしまったのだ。皮肉といえばこれほど皮肉なことはない。
今回3社は買収されたサンのユーザーめがけて攻勢を仕掛けようという戦略なのであろう。まるで野生の猛獣の世界のように弱肉強食の争いが繰り広げられようとしている。これは、サンだけの話ではない。今、HPはメインフレーム市場をターゲットに今回の3社のようにIBMに攻撃を仕掛けようとしている。少し前サンはHPと同じくメインフレームをターゲットにIBMに攻撃を掛けようとしたことがあった。その結果はIBMが軽くかわしてサンは手も足も出なかった。HPはどうであろうか。HPはサンより戦略にかけては数段上であるのでIBMもうかうかしておれないのではないのか。
IT業界はインターネットとOSSの登場により、様相が一変してきたといってもいいのではないだろうか。従来の常識が通らなくなり、新しい価値感が生まれつつある。そして次の波は何かというと、やはりクラウドコンピューティングの大波であろう。これまでの常識であるとアウトソーシングの限界、すなわちセキュリティやコスト問題が立ちふさがり、アウトソーシングは思ったほど進展しなかった。しかし、世界的な不況はこれらの問題を一挙に呑み込もうとしている。クラウドサービスを開始したアマゾンのEC2は、今のところシステムダウンなどの問題を抱え、解決すべき課題も多そうだが、やがてクラウドサービスも今の課題を解決し市場に定着するかもしれないのである。(ESN)