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◇企業システム◇米IBM、BPM/インテグレーションソフト事業の新製品と業績を発表

2010-05-12 09:30:44 | BPM

 【BPM】米IBMは、企業ユーザーがビジネス・プロセスを最適化し、ビジネスの俊敏性を実現することによって効率性を高めコストを削減し、ビジネスを成長させる手段を見つけ出す支援を目的とした、新しいオファリングを発表した。新しいソフトウェアは、ビジネス・プロセス・マネージメント(BPM)市場におけるIBMのリーダーシップを拡大する。IBMは、10年第1四半期に、BPMとインテグレーション・ソフトウェアのポートフォリオにおいて、2桁台の収益増加を達成した。業務を自動化し統合する必要性をより多くの企業が感じていることを認識し、IBMは20,000人以上の担当者を置き、過去18ヶ月間において、戦略的買収と研究開発に年間10億ドル以上を投資している。(日本IBM:10年5月10日発表)

 【コメント】BPM(ビジネス・プロセス・マネジメント)は、企業を取り巻く環境が早急に変化する現在、必要の度合いがますます高まっている。例えば、企業合併などで、全く新しい条件下で、業務の効率化を向上させる最適解を見つけ、それに基づく新システムを迅速に構築しなければならなくなってくる。このような時に威力を発揮するのがBPRソフトウエアおよびイングレーション・ソフトウエアであるが、米IBMは、同市場に対しこれまで積極的に取り組んできたが、今後、さらに力を入れることを、今回、改めて明らかにしたものである。

 IBMはBPM/インテグレーションソフトの意義について「ビジネス・プロセスをより効果的に管理することによって企業は、アドホックな管理と、時間のかかるタスクの自動化が可能になり、価値の高い仕事のために社員を解放し、一貫性と再現性に優れたより効率的な成果をもたらす」と述べている。導入事例としては次のユーザーのケースを挙げる。IBMはGlobe Telecom社にIBM Business Process Management Suiteを基盤にしたソリューションを導入し、同社のビジネス・オペレーションの統合を支援した。その結果Globe Telecom社は、新製品を市場に投入するまでの期間を6ヶ月から40日間に短縮することができた。さらに同社では、製品開発コストを最大90%削減することによって利益幅を上げ、新製品開発にかかわる経済的リスクを大幅に低減した。さらなる情報共有、洞察、共同作業を実現することによって、Globe Telecom社はより対象を絞ったオファリングの潜在顧客の認識が可能になったという。

 今回IBMは、ユーザーがより俊敏性と高いビジネス・パフォーマンスを実現することを支援するために、ソフトウェア事業とグローバル・ビジネス・サービスの共同によるCenter of Excellenceの拡張を発表した。拡張機能は、銀行、保険、医療、通信業界のユーザーを支援するための業界別テンプレートを提供する、新しい業界別ソリューション・アクセラレーター、そしてBPMプロジェクトを加速させる業界別プロダクト・ライフサイクル管理の機能を提供する。このオファリングは業界標準に基づいており、個々のユーザーの持つ特有なビジネス・ニーズを満たすため、カスタマイズすることができる。

 またIBMは、BPM関連事業の業績も今回明らかにした。それによると、10年の第1四半期、IBM WebSphereは13%成長し、そのうちインテグレーション・ソフトウェアは20%以上の成長を達成、さらにビジネス・ルール管理機能の提供によって、IBMのSmarter Planet推進の重要な役割を担うILOGは、30%以上の成長を実現したという。IBMの取り組みは、常に時代の先端を走っている。その結果、企業システムではBPM/インテグレーション事業、社会システムではスマートグリット事業など“Smarter Planet”に軸足を動かし始めた。今回の発表は、その成果の公開という意味合いがあろう。国産大手ITベンダー企業も、この新しいIBMの取り組みをしっかりと視野に入れておく必要があろう。(ESN)


◇企業システム◇日立情報、PPCと提携し独社製BPM提供開始

2010-04-14 09:32:14 | BPM

 【システム開発】日立情報システムズとパワード プロセス コンサルティング( PPC)は、PPCが国内に提供しているBPM製品「jCOM1」(ジェイコムワン)を活用したBPMサービス事業において、戦略的パートナーシップ契約を締結した。日立情報では、同契約に先立ち「jCOM1」を自社で導入し、その経験とノウハウを活かして同製品を活用したBPMコンサルティングサービス(BPMサービス)を開始する。日立情報ではこれまでの取り組みを通じて、BPMサービスのさらなる拡大を図るにはコンサルティングの効率性向上が重要であると考え、そのためには、簡単なモデリングで業務プロセスを実行環境に即時変換できるBPM製品が有効であり、これを実現する製品として「jCOM1」を選択したもの。(日立情報システムズ:10年3月31日発表)

 【コメント】これからの企業は自社システムを構築しようと思えば、BPM(ビジネス・プロセス・マネジメント)は必須の要件となろう。BPMとは、ビジネスプロセスのマネジメントサイクルに対し、継続的な業務改善を遂行しようとする経営・業務改善のコンセプトのことを指す。要するに業務改善を図る際に、一案件づつの対応でなく、企業システム全体としての整合性を持った最適解のシステムを構築しようとする継続的な取り組みのことを言う。

 これまで各企業の情報システム部門は、個々のエンドユーザー部門と話し合い、一システムづつ構築してきたわけであるが、グローバル化や企業統合が当たり前のように行われる現在においては、このような手法では、企業全体から見ると統一の欠いた、整合性のないシステムを構築してしまう。日立情報システムズでは、これまでQuickWin手法で実現するBPMコンサルティングサービスを提供してきた。BPMコンサルティングサービスフェーズ1では、インタビューによる”現状業務プロセス”の可視化を10日間で実施し、レポートとして提出、経営方針/経営目標とのフィットアンドギャップから改善すべき課題を提示する。また、フェーズ2では、 フェーズ1の改善課題を受け、”新業務プロセス”の可視化を20日間で実施し、実現可能なあるべき姿を提示し、ユーザーの業務改革やシステムの導入への足がかりを提供する。

 今回、日立情報システムズは、BPM事業で新たにPPCと提携した。PPCは、独jCOM1(ジェイコムワ
ン)社の国内総販売代理店として、09年2月より同製品を国内に提供している。「jCOM1」は、業務ユーザ間のコミュニケーションフローを中心に据えた、人や組織を基点にプロセスを描く手法である「サブジェクト指向」のBPM(S-BPM:Subject-oriented BPM)製品。業務ユーザ自らがプロセスモデル作成と最適化を行うことが可能であり、モデリングからビジネスプロセスの実行まで、技術部門やIT部門とシームレスに統合することが可能。これは、作成したプロセスモデルと実業務との乖離や、高額な外部コンサルティング料金がしばしば課題となる従来型BPMと一線を画すアプローチといえるもの。

 さらに、jCOM1は、企業のIFRS(国際会計基準)対応を支援することが注目される。IFRSが導入されると、業務が変わり、経営が変わる。これに伴い、企業は会計を取り巻く急速で大幅な環境の変化に追随できる体制を作らなければない。そのためには、会計システムやレポーティング機能の改修だけでは不十分となる。jCOM1は、IFRSで求められる経理や営業などの業務プロセスの変更に迅速に対応し、継続的に改善管理するBPM製品として、必要な機能を提供する。このように今後のBPMはIFRS対応が絡んでくる製品であることから、企業ユーザーは、クラウドの動向と同じくらいに、今後BPM製品のウオッチが欠かせない。(ESN)