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企業経営を左右する企業情報システム(経営+ITソリューション)のデータバンク作りを目指す

◇企業システム◇富士通、「IFRS適用支援コンサルティング」の販売を開始

2010-02-08 09:29:53 | アプリケーション

 【アプリケーション】富士通は、2010年より任意適用が開始される国際財務報告基準(International Financial Reporting Standards 、IFRS)の適用を検討する企業向けに、「IFRS適用支援コンサルティング」の販売を開始する。「IFRS適用支援コンサルティング」は、IFRS適用において発生するユーザーの会計システムや業務プロセスの改善課題などを洗い出し、対策の立案から実施までを支援するサービスで、IFRSについて、事業会社としての対応に必要な実践的な教育も実施する。(富士通:10年2月2日発表)

 【コメント】これまで日本の会計基準は、いくどか変更されてきて国際会計基準に近づいてきている。ただ、まだ日本の会計基準と国際会計基準は、完全に一致しているわけではないが、07年8月に、日本の企業会計基準委員会は、国際会計基準理事会との間で協議を行い、その結果、2011年6月までに会計基準を全面的に共通化することで合意した。現在、日本の会計基準を適用している企業にとって、このIFRS適用による経営や経理・財務、さらに業務プロセス、ICTシステムなどへのさまざまな影響が指摘されている。しかしながら、個々の影響を予測することは難しく、企業それぞれに、解決すべき多くの課題が生じることになる。

 そこで、各ITベンダーは、顧客のIFRS対応の支援策をいろいろと講じているわけであるが、富士通は、このほどIFRSの「適用支援コンサルティング」業務を開始することを発表したわけである。同社の対応の具体的内容は次のようなものとなる。①ユーザーの適用方針や基準にもとづく社内および監査人との協議、問題解決を行う環境構築・運用、社内教育などに関するコンサルティング②適用にあたっての大きな課題であるICTシステム構築や改善について、経営力強化の視点より最適なソリューション(会計システムテンプレート、プラットフォームなど)を含めた方針の検討を支援③公認会計士、会計システムエンジニア、業務コンサルタントのプロフェッショナルな3者の役割をもった体制により支援。

 長年慣れ親しんできた日本型会計システムが、国際会計基準に変更されることは、日本の社会の国際化という面では大いに歓迎であろうが、実際に情報システムの開発・運用を担当する各企業の情報システム部門にとっては、大問題となってくる。会計システムは基幹システムの中でも、中枢となるシステムだけに、早めに手を打たなければならい。既に具体化に向かって動き出してはいるが、2010年以降も検討する項目としてはは、企業結合時に発生したのれん代の償却廃止、純利益の廃止、連結範囲の見直しなどが挙げられている。

 IFRSは、日本や米国会計基準と異なり、原則主義であるため、全社的に内容の正しい理解がより求められる。このため基準の読み取り方、システムへの影響度の考え方など、富士通では独自テキストと講師による教育をオンサイトで実施することにしている。この教育は、経営幹部のをはじめ、経理部門、営業部門、情報システム部門など、幅広い人を対象としており、会計的観点とビジネス全体の観点からIFRSの理解を深められると、同社ではみている。

 IFRS対応は、セキュリティ対応と共通する面があるようにも思える。企業として避けては通れない問題なのだから。特にIFRS問題は、個々の影響を予測することが難しく、企業個々の対応が求められことであろう。大手ベンダーにとっては、自社のユーザー対応をいかに迅速に正確に行うことができるかで、その真価が問われようとしている。(ESN)


◇企業システム◇米IBMがマイクロソフトの新OS「7」のユーザーへの発言に言及

2009-06-22 09:38:50 | アプリケーション

 【SI事業】米IBMは、企業がコスト効率を追求する中、大手のユーザーがマイクロソフト製品ではなく、Lotusコラボレーション・ソフトウェアを選んでいると発表した。最近の新しいユーザー事例としては、The Coca-Cola Company、HSBC、ABB、BASF、Blue Cross Blue Shield、Fidelity Investments、Hyundai、Liberty Mutual、LindeGroup、Mass Mutual、Nationwide、State Bank of India(SBI)、The Hartfordなどがある。また先ごろロサンゼルスで開催されたMicrosoft Tech・Edコンファレンスの席上で、マイクロソフトの幹部はユーザーに対し、Vistaの評価を止めてWindows7のテストへ移行するよう推奨した。さらに、Exchange 2007に移行していないユーザーに対しても同じ内容が繰り返され、Exchange 2007を購入せずに2010年まで待つように推奨している。これに対し、Lotus Notes/Domino 8は07年8月のの販売開始以降、Lotus Notes/Dominoの過去のどのリリース版よりも今回のリリース版を導入する動きが活発となっており、過去のリリース版と比較して倍以上というスピードとなっている。 (日本IBM:09年6月11日発表)

 【コメント】今回のIBMの発表は、露骨にマイクロソフトの製品政策を批判しているところが注目される。もともとIT業界の王者・IBMは他社のことについて口ばしをはさまないことをモットーにしてきたし、実際他社のことに言及することはこれまでほとんどなかった。ところが、今回の米IBMの発表は、これまでのIBMの良き伝統をかなぐり捨てて、マイクロソフト批判をストレートに行っている。これはIBMが、普通のベンダーになってしまったということなのか、なりふりかまわずライバル攻撃をせざるを得ないのか、あるいはこれまで、マイクロソフトに牛耳られてきたデスクトップ市場での反撃の雄たけびなのか、今ひとつ分からないところがある。

 いずれにしても、マイクロソフトのビスタが市場で歓迎されず、ウインドウズ7を投入して挽回を図る、丁度端境期に当る現在、IBMにとってはマイクロソフト追撃にはまたとないチャンス到来であることには間違いないところだ。もともと、IBMはロータス社を買収し、対マイクロソフト対策の決め手としてきたわけであるが、その成果はいまいちすっきりとしてはいない。IBMのホストユーザーへのロータス浸透はある程度成功はしたが、それ以外の一般市場でのオフィスソフトは、依然としてマイクロソフトの独壇場となっているのはご存知のとおり。

 しかし、ここに来て雲行きが俄かに怪しくなってきている。それはオフィスソフトの今後の動向だ。これまでオフィスソフトはマイクロソフトのオフィスソフトが独占してきたといってもよい状況が続いてきたが、欧州の独禁法違反判決後、オフィスソフトの世界にもオープ化の波が押し寄せ、オープンオフィスソフトへの関心が急速に拡大しつつある。ロータスソフトはオープンオフィスソフトを組み込んでおり、状況としては、誠に動きやすい環境にあるといってよいだろう。そんなおり、マイクロソフトがユーザーに対し「7」出荷まで購入を差し控えてほしいという発言は、またとない“敵失”だととらえたのであろう。

 今後、グループウエアの世界市場は混沌とした状態に入って行くことが考えられる。これまではIBMのロータスとマイクロソフトのエクスチェンジがシェアをとっていたわけだが、これからはクラウドコンピューティング勢が力をつけてくることが予想される。具体的にはグーグルやセールスフォース・ドットコムさらにアマゾンなのである。これらが普及すると必然的にオープンオフィスソフトの比重が高くなり、これまでのオフィスソフトのマイクロソフト独占市場に風穴が開くことになるかもしれない。(ESN)


◇企業システム◇愛媛県四国中央市がOpenOffice.orgを全面採用決定

2009-05-18 09:27:40 | アプリケーション

 【アプリケーション】アシストが提供するOSS(オープンソースソフトウエア)のオフィスソフト「OpenOffice.org」の支援サービスが、愛媛県四国中央市で4月1日から採用された。OpenOffice.orgの本格的な全庁導入への取り組みは愛媛県内では同市が初めてとなる。同市ではOpenOffice.orgを2010年度に庁内標準ソフトに採用する予定。無償で利用できるOSSを利用することにより、5年間で約3300万円のコスト削減を見込んでいる。また、特定のソフトウエアに依存しない標準的文書形式(Open Document Format=ODF)を採用することで、市民が有償のオフィスソフトを購入する負担をなくし、市民サービスの向上にもつながるとしている。 (アシスト:09年5月13日発表)

 【コメント】四国中央市ではOpenOffice.orgの導入目的として次の3点を挙げている。
 ① オフィスソフト導入コストの抑制=初期投資としてはOpenOffice.orgはライセンス料が無償なため、オフィスソフトの調達コストを削減できる。また、運用面としてもバージョンアップやPCリプレースに伴っての費用は発生しないので永続的にオフィスソフトにかかる費用を抑制することが期待できる。

 ②文書ドキュメントの長期保存=OpenOffice.orgは国際標準規格(ISO26300)であるOpen Document Format(ODF)形式を採用している。他の商用オフィスソフトもODF形式に対応しているため、文書の長期保存が可能。また、政府でも標準規格に則ったファイル形式を進めていることから、OpenOffice.orgは信頼ある、将来有望なソフトウェアといえる。

 ③市民の利便性の向上、負担軽減=市民および企業との文書ファイルの交換は、行政運営を円滑に遂行するうえで欠かせない事務となる。しかしながら、これまでの有償ソフトで実現していた機能が無償ソフトで可能となったことや景気悪化に伴い、個人および企業では、無償ソフトであるOpenOffice.orgの利用が急速に進んでいる。これら社会背景の中、行政でのOpenOffice.orgの導入は、市民との文書ファイルの交換において、有償ソフトの購入を強いる必要がなく、結果的に市民サービスの向上に繋がることが期待できる。

 また、導入スケジュールについて同市では、  今後5年間におけるパソコン導入経費を削減するため次のスケジュールで、取り組んでいくことにしている。  
   平成21年3月
   OpenOffice 3.00を全貸与パソコン(約1100台)へのインストール
  平成21年度上半期
   OpenOfficeの試用および実務下での導入基礎調査
  平成21年度下半期
   OpenOfficeの職員研修(e-ラーニングなど)
  平成22年5月
   OpenOfficeの本格運用開始

 なお、小中学校用教育パソコン(約900台)についても順次移行予定となっている。

 アシストが提供するOpenOffice.orgサービスをこれまで導入したユーザーは、住友電気工業、NTTコムウェア、トーホーグループそれに地方自治体では会津若松市などが挙げられ、これにOpenOffice.org導入の口火を切った栃木県二宮町などを加えると、徐々にその数が増えつつあることが分かる。今回地方自治体の四国中央市がOpenOffice.orgを導入したことは、今後一気にユーザーが拡大する可能性が出始めてきたということからも注目される。

 現在、100年に一度の不況に直面している企業および地方自治体などではコスト削減が強く求められてる。商用ソフトのオフィスソフトではバージョンアップのたびにコストがかかり、各ユーザーはいかにこのコストを削減するかが課題となっている。OpenOffice.orgではバージョンアップしてもコストがかからないところから、政府もその導入には支援をしているところ。特に今後全国の地方自治体がOpenOffice.orgを導入するかどうかが注目されていただけに、今回四国中央市が導入を決定したことは、大きな影響を与えるものと考えられよう。
(ESN)


◇企業システム◇経済産業省が中小企業向けワンストップサービス「J-SaaS」提供開始

2009-04-08 09:13:27 | アプリケーション

 【アプリケーション】経済産業省は、09年3月31日から中小企業向けSaaS活用基盤「J-SaaS」の運用をスタートさせた。これは主に中小企業を対象に、財務会計、給与計算、顧客管理、税務申告などの業務を行えるインターネットを活用したソフトウエア提供基盤を提供するもの。J-SaaSを介して提供されるソフトウエアは、①財務会計②経理③給与計算④税務申告⑤グループウエア⑥経営分析⑦販売管理⑧プロジェクト管理⑨インターネットバンキング⑩社会保険等手続きーなど。J-SaaSのサポート体制としては、税理士、ITコーディネータや中小企業診断士などのプロの支援が受けられる。 (経済産業省:09年3月31日発表)

 【コメント】今後の企業システムをクラウドコンピューティングが大きく左右しようとしているが、経済産業省は、国としてのクラウドサービス「J-SaaS」をいち早く打ち出した。同サービスはSaaSということで、使った分を事後的に払う料金体系というより、一定期間の利用料という考え方に立っているようだ。いずれにしても国レベルのサービスが民間のサービスとほぼ同時期に提供されることは珍しい。これは税務申告など電子政府へ向けての一つの試みと見れば、一応の納得がいく。

 経済産業省ではJ-SaaSの特徴を「主に中小企業を対象に、財務会計などバックオフィス業務から電子申告までを一貫して行える、便利なワンストップサービ(SaaS活用型サービス)」としている。提供ソフトウエアを見れば主要業務ソフトが集められ、特別新鮮なものはないが、確かに経済産業省がいうようにワンストップというメリットはあるようだ。中小企業がいちいちこれらの業務ソフトを買い求め、それぞれ外部のサポートを受けようとすると、それだけで一つの業務となってしまい、実現するのは難しい。

 これまで、通産省や中小企業庁が中小企業の情報化に対し、多くの支援を行ってきたが、その成果というと甚だ心もとないのが現実であった。今回のJ-SaaSはどうであろうか。日本の中小企業はその多くが大手企業の下請け、孫受け構造の中でその存続を図っている。そうなると大手企業のシステム化という大きな枠組みの中で、自社のシステム化を図らねば中小企業は生き残れない。これまでの政府の中小企業のシステム化はこの観点が欠落していたため、具体的な解決策にまで至らなかった。J-SaaSはこの点をどう克服するのかを明確にしないと成功はおぼつくまい。ただ、税務申告の電子化が真の目的ならまた話は別になろうが。(ESN)


◇企業システム◇アシストがOSSのオフィスソフト「オープンオフィス」のセミナー開始

2009-04-06 09:43:51 | アプリケーション

 【アプリケーション】アシストは、Microsoft OfficeからOSS(オープンソースソフトウエア)のオフィスソフト「OpenOffice.org」への移行を目指すユーザーを対象にOpenOffice.orgバージョン3.0に対応した研修サービスの提供を開始した。また、同社では自社での導入経験を基に、OpenOffice.orgへの移行に関する課題と対策OpenOffice.orgの概要や同社が提供する支援サービス内容に加え、コスト削減の
ヒントを紹介するセミナーを順次開催する。 (アシスト:09年4月2日発表)

 【コメント】マイクロソフトは今、「ソフト+サービス」をスローガンに大きな変革に取り組んでいる。その一つはOSとブラウザーの分離だ。ウインドウズOSについて2001年発売のXPが市場に定着した結果、マイクロソフトがいくらビスタに移行させようとしても上手くいかず、結局2014年までXPのサポートを続けざる得ない羽目に陥った。こうなるとビスタの存在はというと当初の目論見通りには行かず、何か中途半端な存在にしか見られなくなっているのが現状である。それにXPからビスタに移行しようとすると、パソコンの容量を上げなければならない。XPが300MHz/128MBのPCで済んでいたが、ビスタになると1GHz/1GBのPCでないといけなくなる。

 マイクロソフトが打ち上げている「ソフト+サービス」は、OSはなるべくシンプルにし、その代わりネットサービス「ライブ」を組み合わせて使ってもらおうという新戦略である。そこでマイクロソフトはOSについては、ビスタの次期バージョンである「ウインドウズ7」を切り札とし、新しいブラウザーであるIE8を組み合わせての利用を今後強力にに推し進めていくことになる。しかも独禁法の問題もあり、OSとブラウザーは切り離すことが前提となっている。この新OS「7」は、ビスタと98%の互換性があり、利用環境はビスタと同じ1GHz/1GBのPC上で稼動する。このようにマイクロソフトは2010年発売予定のウインドウズの新しいバージョン「7」以降、ユーザーを新しい世界へと導こうとしている。

 このようなマイクロソフトの戦略とは別に、独自にOSSのオフィスソフトを展開するのが「オープンオフィス」である。「マイクロソフト・オフィス」は、常にマイクロソフトの戦略上の一つの製品としての位置づけで、そのたびにPCを買い換えたりするコストがユーザーにとっては常に負担としてのしかかる。それに対し「オープンオフィス」はカーネル部分は無料で提供され、「マイクロソフト・オフィス」に比べコスト的に安く導入できることが魅力だ。ただ、ユーザーにとっての不安材料は、「マイクロソフト・オフィス」との互換性や使い勝手の問題であろう。つまり、いくらコスト的に有利であるからといって、自社内だけの使用に終わらないのがオフィスソフトの宿命だからだ。

 このオープンオフィスを身をもって自社導入し、その経験を基に外部にオープンオフィスを提供しているのがアシストだ。このアシストが新バージョンの研修会を今回開始することになった。さらに同社が提供する支援サービス内容とコスト削減のヒントを紹介するセミナーも開催する。既に同社がオープンオフィスを導入支援したユーザーは、住友電気工業、NTTコムウエア、トーホーグループそれに会津若松市など徐々にその数が増えている。今後、導入ユーザーが増えれば障壁が低くなり、オープンオフィス導入ユーザーが急速に拡大することも考えられよう。(ESN)


◇企業システム◇NECがアプリケーションOSSおよびクラウドコンピューティング強化

2009-03-25 11:15:01 | アプリケーション

 【アプリケーション】NECはOSS(オープンソースソフトウエア)のSugarCRMを活用しいたCRM(顧客関係管理)ソリューションを体系化し、①構築サービス②SaaSーの2つの形態により販売を開始した。SugerCRMの国内正規取扱店であるオープンソースCRM社がソフトウエアのカスタマイズを担当し、NECがシステム構築、保守・サポートを担当する。既にNECのグループ企業であるNECシステムテクノロジーに対し、SugarCRMをCS向上/営業の生産性革新のツールとして納入、08年12月から稼働している。ApacheなどOSSミドルウエアのスタックを利用し、実働20日間という短期間でシステム構築を成功させている。 (NEC:09年3月4日発表)

 【コメント】NECはこれまでOSSに関してはミドルウエアでの事業を主に展開してきた。これらはApache、PHP、MySQLのような、今では広く普及している製品であり、もうこれらのOSS抜きに企業システムのシステム構築は成り立たないといってもいいような状況になっている。NECとしてはこのような状況においてOSSの次のステップであるアプリケーション分野にターゲットを絞った展開を図ることになり、今回SugarCRMをグループ企業で構築したノウハウを基に、一般ユーザーに提供を開始することになったもの。提供の形態もCRMシステム構築サービスのほかSaaSでの提供を行うことが注目される。これはセールスフォース・ドットコムがこれまで独占してきたCRM/SaaS市場に、どこまで他のソフト製品が食い込めるきるのかの試金石にもなるものとみられる。

 また、NECはセールスフォース・ドットコムにも力を入れており、08年9月にはVARパートナー契約を国内で初めて締結し、セールスフォース・ドットコムの認定セールス資格者を98人育成したのに加え、09年3月待つまでに100人以上に体制を強化すると発表を行った。このようにNECはCRM/SaaS市場でセールスフォース・ドットコムとシュガーCRMの2つの有力なブランドで、日本のアプリケーション市場に打って出ようとしている。NECの狙いは、“持たないIT”として今後の企業システムの重要要素となるであろうSaaS市場を他社に先駆けとらえ、優位に立つことにあるものとみられる。これは世界同時不況に喘ぐわが国の企業にアピールする絶好の機会となる可能性を秘めている。SaaSに加えアプリケーションOSSを品揃えすることによって、低コスト化をいかにユーザーにアピールできるかがカギとなろう。

 さらに、NECは現在自社システムにおいても、新しい時代に対応したシステム構築を目指している。また、自社システムを越えグループ内の関連システムについても、データセンターに統合・集中化し、クラウド指向のサービスとして提供することによって、TOCの大幅な削減を実現するとともに、このノウハウをベースに、クラウド指向の幅広いサービス事業を展開しようとしている。同社ではクラウド指向サービスの提供により2011年度までにTOC(運用費用/原価償却費)を20%以上削減する計画を立てている。このように、NECは今後のターゲットとして、アプリケーションOSSおよびクラウドコンピューティングを他社に先駆け提供することに置いている。(ESN)


◇企業システム◇日本オラクルが電子請求ソフトをSaaS型で提供開始

2009-03-11 15:06:41 | アプリケーション

 【アプリケーション】日本オラクルは、従来サーバー導入型で提供していた電子請求アプリケーションをSaaS型で提供すると発表した。この「Oracle Self-Service E-Billing On Demand」は、登録顧客の情報の管理と閲覧、請求金額の管理、電子請求書の発行や支払い状況の確認と、顧客、サービスなどを軸にした請求と支払いにかかわる分析を行うことができる。また、標準技術を基盤にしているため、既存のCRMシステムや財務会計システムとの柔軟な連携が可能。 (日本オラクル:09年3月11日発表)

 【コメント】各社からSaaS型ソフトの発表が相次いでいる。日本オラクルも09年3月2日にはSaaS型CRMアプリケーションの最新版「Oracle CRM OnDemand Rlease 16」を発表している。従来パッケージ型ソフトで提供していたものをSaaS型に移行すると、ユーザーはどのようなメリットが得られるのか。最大のメリットは、法制度の改正などでアプリケーションソフトを移行しなければならない時であろう。つまり、ベンダー側のサーバーのソフトを変えるだけで、ユーザー側のアプリケーションが即座に最新のものに切り替えることができるようになる。

 ただ、何でもかんでもSaaS型がいいかというと、現時点では疑問点も少なくない。長期的にSaaSを利用するとなると、定額の料金を定期的に納めなければならないのでコストがかさむことが考えられよう。また、セキュリティについても完全に保証されているわけではない。既にセールスフォース・ドットコムでも米国でトラブルが発生したと報じられた。いずれにしてもSaaS型ソフトは、大手企業では基幹系システム以外での利用がまずスタートし、その後基幹系システムにも採用が進むものと考えられる。

 一方、SaaSの普及を図るための組織的な取り組みも着々と進んでいる。ASP・SaaSインダストリ・コンソーシアム(ASPIC)は09年2月26日に「ASP・SaaS データセンター促進協議会」を設立した。これにより、SaaSのセキュリティ上の問題点の対策を業界挙げて取り組もうとする新たな取り組みであり、今後SaaSの普及にとって重要な役割を演じることが期待されている。

 さらに経済産業省が推進しているJ-SaaSが4月からサービスが開始される見込みだ。このJ-SaaSはインターネットを介してサービスするもので、J-SaaS上のポータルサイトを通じて財務会計、給与計算、税務申告など様々なサービスが多額の初期投資を必要せずに活用できる。このため従業員20人以下の中小零細企業でもITを容易に活用できるのが謳い文句だ。既に3月からJ-SaaS運営事務局が主催する「J-SaaS全国キャラバン」がスタートしており、全国10カ所でイベントを開催することにしている。また、3月19日(木)には東京の丸ビルホールにおいて日本経済新聞社主催により「J-SaaSフォーラム」が開催されることになっているなど、サービス開始に向け各種の取り組みが活発化している。(ESN)


◇企業システム◇米IBM、ロータス、マイクロソフト・ウインドウズ、Linux稼働環境提供へ

2009-02-16 16:18:46 | アプリケーション

 【アプリケーション】米IBMは、Lotusphereカンファレンスにおいて、「IBM Lotus Foundation Start1.1」「同Branch Office」を発表した。Lotus Foundationは社員5人ー500人規模の企業に、eーメール、オフィスアプリケーション、ファイル共有、バックアップ、復元などのコラボレーション機能を提供するが、新機能ではIBM Lotus Domino、Windows、Linuxのアプリケーションを使用できる環境を提供する。また、Lotus Foundationとゼロックスのマルチ機能プリンターを統合することも可能。さらに、オープンソースソフトウエア(OSS)であるIBM Lotus Symphonyは、現在までに全世界で300万以上のダウンロードを記録し、Microsoft Officeの代替製品の主流の一つに位置づけられるようになったが、今回、レッドハットはユーザーがマイクロソフト基盤のデスクトップから、Linux基盤のデスクトップへと移行することを支援する、IBMと共同発表した。これは高価格なプラットフォームからRed Hat Enterprise Linuxソリューション上のLotusへとユーザーを支援するのが狙い。 (日本IBM:09年2月2日発表)

 【コメント】IBMはOSSのロータス・シンフォニーを発表以来、企業のオフィス市場に向けて新しいロータスの浸透を図ってきた。そして今回、ロータス・ファウンデーション環境で、マイクロソフト・ウインドウズ、Linux、ロータス・ドミノの3つのソフトが稼働可能な環境の提供を本格的に開始することになった。ご存知のとおり、マイクロソフト・ウインドウズは全世界で圧倒的なシェアを誇っており、その優位性は揺らぎそうもないのが現状であろう。これによりマイクロソフト・オフィスソフトは事実上オフィスソフトの世界標準としての地位を確立してきた。ただ、これまで世界標準ソフトとしての認証を受けていなかったため、今後OSSのOpenOficeに対し不利な立場となるといわれてきたが、これもIEEEの認証を受けたため最大の課題もクリアできた。

 しかし、これでマイクロソフトのオフィスソフトが安泰かというと、最近の100年に一度といわれる世界同時不況の到来で、また、情勢が混沌となってきた。つまり、ユーザーはこれまで以上にコスト削減に取り組もうとしているため、IT資産の総点検に踏み切りつつある。既に、ユーザーの多くはサーバーでは仮想化技術に取り組むことなどにより、コスト削減を実現しようとしている。問題はPCをどうするかといことであるが、これまでマイクロソフト・オフィスに全面的に依存してきたユーザーの多くは、これといったコスト削減策は持っていなかった。ユーザーはマイクロソフトが新しいバージョンを出せばこれを導入するという習慣を長年続けてきたわけである。一方OSSのLinuxは、これまでデスクトップ環境に強いとはいえず、ユーザーが導入するにはかなりの勇気を要する。
 
 そんな状況の中、今回IBMが、ロータス、ウインドウズ、Linuxが同一環境で稼働可能な新しいロータスソフトを提供したユーザーへの影響は小さくない。OSSのロータス・シンフォニーは、このほど全世界で300万以上のダウンロードを記録したといい、ユーザーからの反応は上々のようである。ロータス、ウインドウズ、Linuxの環境が同時に走る環境なら、ユーザーも低価格のデスクトップLinuxへの移行もそう難しいことにはならないのではないか。そういう意味で今回の米IBMの発表は、OSSのリーダーのレッドハットとの協業を含め、今後のオフィスソフトの行方を占う意味から無視できない内容を含んでいるということが言えよう。(ESN)


◇企業システム◇OSSベンダー2社が協業

2008-11-05 16:48:54 | アプリケーション

 【アプリケーション】オープンソースCRMとKSKソリューションズは、OSS(オープンソースソフトウエア)の米ペンタホ社製BI(ビジネス・インテリジェント)ソフト「Pentaho Open BI Suite」を活用したソリューションの販売を開始した。オープンソースCRMは、OSSの米シュガー社製SFA/CRMソフト「Sugar CRM」をベースとしたBIシステムのニーズが高まっていることから、今回、KSKソリューションズと共同で、Sugar CRMとPentaho Open BI Suiteを組み合わせたソリューションの販売を開始したもの。 (08年10月30日発表)

 【コメント】OSSは当初、Linuxに代表されるOSでの普及からスタートし、MySQL、PostgreSQLのようなデーターベースソフト、Apachなどの開発ツール、さらにはSugar CRMソフトなど業務ソフトなどへとその用途を順次拡大させており、ユーザーも拡大の一途をたどっている。OSSの魅力の一つはコスト削減である。通常のパッケージソフトはコストが高く、例え他の要件を満足させる製品でも、ユーザーが導入できない場合も少なくない。また、OSSはソースが公開されていることから、セキュリティ対策などの手をいち早く打つことが可能になる。さらに、OSSの下では大手ソフト企業も中小ソフト企業も、技術力さえあれば大きな格差なく、自由に開発体制を組むことができる。

 OSSはこのような特徴を有するため、今後あらゆるソフトへの普及が見込まれている。今回、Sugar CRMとPentaho Open BI Suiteが組み合わされて提供が開始されたことは、企業システムでの新しいOSSの展開として注目される。つまりOSS同士の組み合わせで業務アプリケーションを組むことによって、従来型のパッケージソフトを組み合わせて使うより、大幅にコストを下げることが可能となってくるからだ。今回の米国のサブプライムローン問題によって日本の経済環境は今後厳しさをさらに増すことが予想される。こうなるといかにコスト削減を実現するかという課題に各企業とも真剣に取り組まねばならない。このためにも企業システムに、いかにOSSを取り込むかが今後の焦点になってこよう。(ESN)


◇企業システム◇福島県会津若松市がオープンオフィスに全面移行

2008-08-26 15:41:24 | アプリケーション

 【アプリケーション】福島県会津若松市は、オープンソースソフトウエア(OSS)のオフィスソフトである「OpenOffice.org(オープンオフィス)」を全面的に採用することを08年5月に発表したが、08年10月から240台のPCをリプレースする際、原則としてオープンオフィスのみをインストールすることになった。既にオープンオフィスを採用しているの自治体は北海道伊達市、栃木県二宮市、沖縄県浦添市、高知県四万十町、兵庫県洲本市などであるが、同市はこれらに次ぐもので、本格的な全庁運用は福島県内では初のケースとなる。今後全国の自治体にどのような影響を及ぼすのか、注目を集めている。 (08年8月22日発表)

 【コメント】同市では現在使用しているマイクロソフトオフィス(ワード、エクセルなど)は、OSSのオープンソフトに全面的に移行しし、業務上マイクロソフトオフィスが必要な場合については併用とすることにしている。同市ではオープンオフィス導入の理由について、次の4点を挙げている。①導入コストの削減(5年間で約1500万円削減計画)②文書の保存形式を国際標準のODF形式に移行させ、文書の長期保存とその利用に対応する③文書形式をODFに統一することにより利便性が向上し、市民の負担が軽減される④今後市の情報システムにOSSの導入を進め、地元IT企業の参入機会を増やす。

 同市では07年8~10月に、職員が試用できるように庁内全PCにオープンオフィスを導入したのに続き、08年5~8月にオープンオフィスの職員研修を実施。そして、08年10月以降、240台のPCのリプレースに際しては、原則としてオープンオフィスのみをインストールすることにしている。これまで同市で標準的に使用してきたマイクロソフトオフィスについては必要に応じ併用していく方針。また、マイクロソフトオフィスで作成された文書の受付などは、これまで通り取り扱いを継続するという。

 今回、会津若松市がオープンオフィスを導入したことは、正に英断であったといえる。というのはまだ全庁的にオープンオフィスを導入している自治体は栃木県二宮町などごくわずかだからだ。何故オープンオフィスの導入に慎重になるのかというと、会津若松市もそうだが、オープンオフィスと並行して従来からのマイクロソフトオフィスの扱いも継続しなければならず、二重に手間がかかることだ。それでも同市がオープンオフィス導入に踏み切ったのは、やはりコストの問題が大きいのだろう。さらに、これを機に市の情報システムへ積極的にOSSを導入し、地場ソフト企業を育成したいという思いが強いのではなかろうか。現状では大手ITベンダー系列のソフト企業だけにソフト開発の業務が回っていき、地場ソフト企業が育ちずらい環境となっている。

 ただ、文書の保存形式について、08年4月以降はそれ以前と状況が変わった。以前はISOの文書形式としてはODFのみが承認され、唯一の国際標準の文書形式として認められていた。このためOOXMLを文書形式としてきたマイクロソフトオフィスは、自治体の入札では徐々に不利な立場に追い込まれていた。ところが08年4月にOOXMLがISOから国際標準の承認がおりたのである。つまり、文書の保存形式としてはODFでなくてはならないという根拠はなくなった。果してこのことが、今後全国の自治体がオフィスソフト導入に際してどのような影響を及ぼすのか、先行きは不透明になってきている。(ESN)