企業システム・レビュー・ネット

企業経営を左右する企業情報システム(経営+ITソリューション)のデータバンク作りを目指す

◇企業システム◇アシスト、山形県にOpenOffice.orgの評価検証支援サービス提供

2010-04-28 09:28:19 | ユーザー

 【ユーザー】アシストは、山形県に、OpenOffice.orgの評価検証支援サービスの提供を開始する。山形県は09年度より次期オフィス・ソフトの選定を始め、他の自治体で採用が進み、Microsoft Officeと互換性があり、かつ高機能および無償で利用できるオフィス・ソフトOpenOffice.orgの一部導入に向けて検証を行っている。(アシスト:10年4月20日発表)

 【コメント】OSS(オープン・ソース・ソフトウエア)のオフィスソフト「OpenOffice.org」は、徐々にではあるが導入ユーザー数が増加している。これは、アシストがユーザーの導入のサポートサービスを製品化して、ユーザーがOpenOffice.orgを導入しやすい体制を作り出していることも貢献している。アシストでは、07年6月よりOpenOffice.org支援サービスとしてヘルプデスク・サービス、集合研修、eラーニング・コンテンツを約70の企業や団体に提供している。また10年2月よりコンサルティングの拡張ヘルプデスク・サービスもリリース。

 アシストの各種サービスにより、住友電気工業、トーホーグループ、会津若松市、四国中央市などが、これまでOpenOffice.orgの導入を成功させてきている。アシストのヘルプデスク・サービスは、 導入検討期のOpenOffice.orgの操作方法の確認や評価検証期の機能等に関する技術的な調査の支援、また導入決定後或いは展開開始期の OpenOffice.orgユーザへのサポートとしてヘルプデスク・サービスをご用意。また、VBAマクロから OpenOffice.org Basicマクロへ移行するにあたっての問合せに対応するマクロ・ヘルプデスク・サービスもご用意。

 今回アシストが山形県に提供するサービスは、山形県が次期オフィス・ソフトとしてOpenOffice.orgを導入することの可否を適正に評価、判断できるよう、文書移行性や業務システムとの連携等、課題と想定される項目に関する検証作業を支援するもの。これらにより、ユーザーがOpenOffice.orgを導入する際に客観的な判断基準を得ることができるので、特に官公庁ユーザーにおいては欠かせない課程となる。

 マイクロソフトのオフィスソフトからOpenOffice.orgへの移行を検討しているユーザーにとって、現在クラウドという新たなテーマが浮上してきていることも見逃せない。グーグルがクラウドサービスによりオフィスソフトを無料で提供し始めたことなどを、今後ユーザー側がどう判断するのかが問われることになる。文書管理は機密性の高いものも含まれるので、果たしてクラウド対応が適切かどうかも問われよう。一方では社員や職員が文書をUSBメモリーに入れて持ち運ぶ方が、クラウドよりもっと危険という説もあり、ユーザーは今後慎重な判断が求められる。(ESN)


◇企業システム◇国内最大手のメガネ専門店チェーン三城がメインフレームからオープンシステムへリプレース

2010-04-21 09:31:17 | ユーザー

 【ユーザー】NECは、このたび国内最大手のメガネ専門店チェーンである三城(東京都品川区)のシステム刷新を支援した。三城の協力のもと、基幹システムを従来のメインフレームから、同社の「Express5800/スケーラブルHAサーバ」と高可用Linuxの組み合わせによるオープン・システムへ移行した。同時に、受発注・集配信システムを従来の商用ミドルウェアからOSS(オープン・ソース・ソフトウェア)を使用したものに変更するとともに、同社共通IT基盤サービス「RIACUBE(リアキューブ)」を利用したシステムに移行した。これにより、ユーザーの課題であったシステム運用コストを従来比、約30%削減した。なお、新システムは、本年2月より全面的に稼動を開始している。(NEC:10年4月14日発表)

 【コメント】メインフレームは、最近の話題からは遠ざかってはいるが、まだまだメインフレームを使い続けているユーザーは少なくない。それは、メインフレーム上で開発したアプリケーションソフトを使わざるを得ないからである。ハードウエアは意外に簡単にリプレース可能であるが、ソフトをつくり直す作業は容易ではないのである。すなわち、“ハードはソフト(容易にリプレース可能)で、ソフトはハード(再開発は容易ではない)”ということになる。それでも、時代はオープン化へと突き進んでおり、一部の分野を除き、メインフレームのリプレースの動きは今後加速していくことになる。

 今回、国内最大手のメガネ専門店チェーンの三城のシステム刷新をNECが支援し、メインフレームを高信頼のLinuxシステムへの移行させ、さらに共通IT基盤サービス「RIACUBE」の活用することにより、運用コストを30%削減させたケースは、メインフレームをオープンシステムへリプレースさせることにより、ユーザー企業に成果をもたらす、典型的な事例である。メインフレームユーザーは、メインフレームの持つ高信頼性の維持を、オープンシステムへのリプレースの第一条件に挙げる場合が多い。つまり、ただオープンシステム化すればいいというものでもない。さらに、ソフト・サービス面での効率的取り組みも重要性を増す。今回採用された共通IT基盤サービス「RIACUBE」は、ユーザーの「IT基盤の運用等はベンダに委託し、コアである業務アプリケーションの開発・運用等に注力したい」というニーズに対応したソリューション。 ハードウェア、OS、ミドルウェア等のIT基盤と標準化・共通化し運用保守まで含めサービスレベルを明確にした高品質なサービス商品なのである。

 今回の事例ではOSSの積極活用も見逃せない。サーバーのOSとしてLinuxを採用した以外にもJ2EEアプリケーションサーバ「JBoss」を採用した。オープンソースであるにもかかわらずサポートを受けることができ、しかも動作が他のJ2EEアプリケーションサーバに比べて軽快であることから人気を博している。06年、商用LinuxベンダであるRed HatがJBoss Inc.を買収したことにより、現在はRed HatがJBoss Inc.の業務を引き継ぐ形でJBossプロジェクトの運営を行っている。08年2月には レッドハットから JBoss Enterprise SOA Platform として史上初のオープンソースによる本格的SOA製品群が提供され始めた。08年2月からは レッドハットから JBoss Enterprise SOA Platform として史上初のオープンソースによる本格的SOA製品群が提供され始めていることも、今後のアプリケーション開発を考える上からポイントとなろう。

 今回のシステム刷新により、運用の負荷は、メインフレームを使用した場合に比べて大幅に軽減。また、処理スピードも従来比、I/Oモジュールのチューニング等により2~3倍の高速化を実現した。さらに、共通IT基盤サービス「RIACUBE」の活用により運用コストを30%削減できた。このようにメインフレームからオープンシステムへリプレースすることにより、ユーザー側に具体的メリットをもたらすことが何より重要な要件となろう。(ESN) 


◇企業システム◇三洋機工、アシストのサービスを採用しOpenOffice.org導入

2010-04-19 09:34:38 | ユーザー

 【ユーザー】三洋機工(愛知県北名古屋市)は、社内の標準オフィス・ソフトにオープンソースのOpenOffice.orgを導入するにあたり、アシストが支援サービスの一環として提供するヘルプデスク・サービスを採用し、社内展開を行っている。同社は08年2月、OpenOffice.orgの導入を正式に決定した。採用理由は、Microsoft Officeのバージョン・アップに費用が発生すること、そして何よりバージョン・アップの度にファイルやマクロの書き換え作業が発生し、工数がかかっていたこと。今後、Microsoft Officeは原則購入しないため、三洋機工グループ全体でおよそ2,500万円のコスト抑制を見込んでいる。(アシスト:10年4月13日発表)

 【コメント】これまでオフィスソフトというとほぼ100%マイクロソフト・オフィスソフトが使われてきた。しかし、バージョンアップのたびにファイルなどの書き換え作業やバージョンアップ費用がかかるなどの問題がユーザー側に負担となっている。そこで、OSS(オープンソースソフト)のオフィスソフトであるOpenOffice.orgに自然に注目が集まり始めた。OSSはコアの部分は無償で提供されるため、コスト削減には効果がある。しかし、既存のマイクロソフト・オフィスソフトからの移行の問題や、サポート体制を自社で行わなければならないことなどから、これまで、OpenOffice.orgの普及は必ずしも順調とは言えなかった。

 そこで、アシストは企業ユーザーに対しOpenOffice.orgのサポートサービスを開始し、順調にユーザーを拡大させている。その中の1社が今回発表となった三洋機工である。アシストでは、07年6月よりOpenOffice.org支援サービスとしてヘルプデスク・サービス、集合研修、eラーニング・コンテンツを約70の企業や団体に提供している。また10年2月よりコンサルティングの拡張ヘルプデスク・サービスをリリースしている。アシストの各種サービスは住友電気工業、トーホーグループ、会津若松市、四国中央市など、多くの企業や団体で活用されている。

 三洋機工では、08年4月にオープンソース委員会を設け、既存のMicrosoft Officeで作成したファイルの資産の洗い出し、9月には本社PCを対象にOpenOffice.orgをインストールしている。09年からは雛形やテンプレート・ファイルの変換をアシストが提供するヘルプデスク・サービスを活用しながら進めていた。導入課題であったマクロは、自社の「技術」と、アシストからのOpenOffice.orgマクロ・リファレンスを活用し書き換えを進めている。

 今回の三洋機工では、今後、Microsoft Officeは原則購入しないため、三洋機工グループ全体でおよそ2,500万円のコスト抑制を見込んでいるという。OSS導入により、やはりコスト削減効果が顕著に現れていることに注目すべきであろう。OSSは、Linuxサーバーなどの導入が注目されているが、今後オフィスソフトのOSS、つまりOpenOffice.orgについても、ユーザーの注目を集めそうだ。(ESN)


◇企業システム◇旅行業のトップツアー、グーグルのクラウド・サービス「Google Apps」を採用

2010-03-24 09:26:57 | ユーザー

 【ユーザー】トップツアー(本社:東京都目黒区、社長:石川邦大)は、このほど伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)を通じ、CTCが提供するクラウド・ソリューションを導入し、社内営業システムを一新する。トップツアーはすでに社内に、メール・グループウエアを含む営業管理システムを構築し運用しているが、業務の主力である渉外営業の機動性、効率性をさらに高め、顧客サービスの向上をはかるため、システムの一新を図ることとし、さまざまなメール、グループウェアシステムを検討してきた。その結果、既存のデータを移行し、機能を拡張する事が容易で、コスト削減がはかれ、営業担当者が携帯電話や携帯端末からアクセスできるなど柔軟に対応が可能な、グーグルが提供するクラウド・サービス「Google Apps」の採用を決定した。これにあたり、クラウド・サービスの実績豊富なCTCがシステムの導入を担当した。(伊藤忠システムソリューションズ:10年3月16日発表)

 【コメント】企業がクラウドを導入することは、最近ではそう珍しいことではなくなったが、いざ具体的にクラウドを導入しようとすると、どこから手を付けていいか、皆目分らないユーザーも少なくないはずだ。果たして、セキュリティは大丈夫か?などと次々に疑問が生じてきてしまう。この解決方法は、「できるところから手を付ける」ということにつきよう。ここで最も手っ取り早く、成果も現れやすいのが、グーグルが提供するクラウド・サービス「Google Apps」の採用である。これなら、セキュリティもそう気にせず、導入効果も測定しやすい。

 今回、トップツアーは、この方法を採用し、パートナーとしてCTCを選択した。CTCはグーグルが提供するクラウド・サービス「Google Apps」についてはプロであり、「Google Apps」のノウハウがない企業ユーザーの選択としては正解だろう。今回同社が導入したシステムは次の通り。①営業の作業効率と機動性を高め、顧客へのサービスを向上=営業担当者は、社外から携帯端末を使用してメール・スケジュールなどが確認でき、作業効率が大きく向上②全営業担当者がスマートフォンを活用=「Google Apps」で構築した社内専用サイト内の必要な情報をスピーディに検索できたり、既存システムのデータ照会を社外から可能にする③拡張性の向上とコスト削減=クラウド・サービスの導入により、最新の機能をいち早く導入することが可能となる。このため今後既存の機能に加え、動画共有、ドキュメントなどの新機能も順次導入していく予定。

 トップツアーでは、今回クラウドとして「Google Apps」を導入したが、同時にスマートフォンを導入したことにも注目したい。スマートフォンは、携帯電話とは異なり、基本的にはパソコン機能をベースとしているもので、より高度な情報の提供や検索には威力を発揮できるはず。これからの企業システム構築には、最新の情報システムをいかにビジネスに取り込むかが、課題となろう。ブログなども単なる日記の公開手段と決め付けるのではなく、社員同士の最新データのやり取りに使うことで、一味違うシステムが構築できよう。今話題のツイッターもやりようによってはビジネスでも使えるのではないだろうか?

 ところで、クラウド時代が到来すると、各企業の情報システム部門のあり方が根本的に見直されることが十分に考えられる。もう、従来の情報システム部門の考え方では、通用しない面も少なからず発生してくる。その一つは、国際化であろう。クラウドではサーバーがどこにあっても一向に構わない。そうなると、海外のサーバーでデータを処理することが出てくる。これからの企業システムの構築の基本はクラウドで、どうしてもクラウドで処理できないものだけを自社サーバーで、という時代が直ぐそこまで近づいてきているのかもしれない。(ESN)


◇企業システム◇静岡大学が学内情報基盤システムを全面クラウド化

2010-03-17 09:29:04 | ユーザー

 【ユーザー】静岡大学は、学生及び教職員 約13,000名が使用する学内情報基盤システムを全面的にクラウド化し、運用を開始した。これは、大学内に存在するサーバ約850台、業務用端末約7,000台をクラウド化する国公立大学としては初めての例となる。学内情報システムを全面的にクラウドコンピューティングに移行することで、従来のシステムと比較して13年度までに消費電力90%以上、IT投資コスト80%以上の削減が可能になる。NTT西日本静岡支店と伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)が同システムの構築を担当。(静岡大学/伊藤忠テクノソリューションズ:10年3月15日発表)

 【コメント】クラウド・コンピューティングの波が本格普及に向け、さらに速度を上げているように感じられる。あたかも今話題の津波のようでもある。今回のチリ地震による津波は、日本にも押しかけてきたのはご存知の通り。実際の体験者の話では、津波は通常の波とはぜんぜん違い、何か底深くから押し寄せる感覚で、大変恐ろしいものだという。IT界にあって、これまでいくつものブームが到来し、その都度ユーザーは右往左往させられてきた、苦い経験をお持ちだと思う。しかし、今回のクラウド化は、従来のブームとは異なり、何かもっと深いところから押し寄せてくる、新しいうねりみたいなものに感ぜられる。やはり、クラウド化は通常の波でなく、既存の概念を覆す津波のようなものかもしれないのだ。

 例えば、全国の自治体においてもクラウド化への関心が高い。総務省は、平成21年度から自治体クラウド開発実証事業開始を発表した。同事業は、地方公共団体の情報システムをデータセンターに集約し、市町村がこれを共同利用することにより、情報システムの効率的な構築と運用を実現するための実証実験である。これは、地方公共団体において、クラウドコンピューティングをはじめとする昨今のICTの活用や、情報システムの一層の共同利用の推進について関心が高まっていることを受け、総務省においてもポータルサイトを開設することとしたもの。 今後は、開発実証事業の進捗状況をはじめ、自治体クラウドに関係する情報を発信していく予定となっている。

 このようにクラウド化の流れは、官公庁や一般企業のほか、各教育機関にも押し寄せようとしている。この代表的な事例が静岡大学だ。静岡大学では07年より、グリーンIT、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)、BCP対応、ITコンプライアンス、コストの最小化、J-SOX対応など様々な課題に対応したシステムの刷新を検討してきた。09年までの3年間に環境負荷及び投資コストについての詳細な調査を行ったところ、大学内ネットワークに接続されている情報機器は、パソコン約7,000台、Webサーバ552台、研究開発用サーバが300台以上存在し、サーバや端末は組織ごとに調達しているためリソースがうまく活用できていないこと、また、IT機器がキャンパス内に分散設置されていたため、大容量空調設備や大規模受電設備、多数の無停電電源装置などが存在し、運用環境においても効率化できることが判明、IT機器全体では全学の15%に相当する、年間233万kWhの電力が消費され、885トンのCO2が排出されていることが推定できた。

 この対策として同学では次のようなクラウド化を採用することとした。①プライベートクラウドコンピューティングセンター(PRCC)の設置=キャンパス外のデータセンターに静岡大学専用のPRCCを構築し、キャンパスとは10Gbpsの大容量光ケーブルで接続②パブリッククラウドコンピューティングセンター(PBCC)の設置=ホームページやSNS、ブログ、研究用サーバなどについては一般向けサービスを行う PBCCを想定し、処理能力や情報セキュリティなど多くの項目について調査・検証を行った結果、Amazon EC2など世界中の数十種類のクラウドサービスから最適なものを選択して使用する形態に変更③パソコンのクラウド化=学内にある7,000台のパソコンのうち、1,100台をシンクライアントに置き換えるとともに、使用時間以外はシンクライアントを完全に電源オフにする装置を設計、運用も確立し年間総合電力を低減するように工夫した④ストレージのクラウド化=教職員全員のパソコンデータのハードディスク内のデータを全て移行できるクラウドストレージを整備。現状では1人あたり20GBを割り当てているが、13年までに80GBまで拡張する。(ESN)


◇企業システム◇アサヒビール、USB型認証キーシステム導入で、在宅、出張先での業務を可能に

2010-03-15 09:30:00 | ユーザー

 【ユーザー】アサヒビールは、専用のUSB型認証キー(記憶容量0MB SASTIKキー)を使用したリモートアクセスツール「SASTIKサービス」を導入し、社員のワークスタイル多様化に対応するICTインフラの強化とコスト最適化を実現した。「SASTIKサービス」は、ユーザーが自宅や外出先のインターネットに接続できるPCに専用のUSB型認証キー(SASTIKキー)を挿すだけで、日本ユニシスが提供するiDC(Internet Data Center)を経由して、ユーザーの社内ネットワークに接続、社内で利用しているWebアプリケーションを活用できる。またそのSASTIKキーを抜き取ることにより、利用したPCには何の証跡も残さずログオフできる安全対策を備えたリモートアクセス環境を提供。通信はSSL(秘匿)通信であり、高い安全性を保持している。(日本ユニシス:10年2月25日発表)

 【コメント】日本全体が右肩上がりのこれまでの時代は、個人の事情は二の次に回され、「なせばなる」と言うような精神主義が中心となってきたわけである。やる気がすべてであり、「熱が出ても、這ってでも会社に出て来い」といったことも通用した時代であった。それはそれなりに社会に活気があり、“いい時代”でもあったわけである。しかし、リーマンショックからようやく立ち直ろうとしつつある現在の日本の企業が、以前の状態には戻ろうとしても戻れないであろう。中国、韓国、台湾が力を付け、もう日本の独走を許さなくなってきたからだ。

 GDPや売上高など量的見地からだけ見て「日本は中国や韓国に追い抜かれつつある」という論法に、私は与しない。今起きている現象は、質的に見れば一周も二周も遅れている走者に、日本が追い抜かれているだけである。特に中国は現在は人海戦術で成功しているに過ぎない。一方、韓国は日本の弱点(国内での過剰競争や発展途上国への進出不足など)を巧について成功している。ただ、例え現在日本が質的に優位とはいえ、手をこまねいて無策のままでいては、今度は質的でも追い抜かれてしまう。ではどうするか。これからの日本の産業は、人海戦術や精神主義で売上げを上げるのではなく、より高度な技術の開発、IT活用による業務の効率化、社会全体のソフト化/サービス化―などを実現することによって、中国や韓国とは次元の違う、活気のある社会を築ことが肝要となろう。

 今回、アサヒビールが導入した「SASTIKサービス」は、自宅にいても仕事ができる環境を実現できるシステムで、業務の効率化を図る上で重要な意味を持つものだ。どの会社でも総務部長などは「会社に出てこないなんてけしからん」と言うかもしれないが、これからの日本の企業は、精神主義よりも効率を上げて、企業を発展させるべきであろう。これからの会社は「効率が上がるなら会社に出てくる必要はない」と言うくらいの経営者が出てこなければ、今度は本当に中国、韓国に追い抜かれてしまうかもしれない。

  「SASTIKサービス」は、ユーザーが自宅や外出先のインターネットに接続できるPCに専用のUSB型認証キー(SASTIKキー)を挿すだけで、日本ユニシスが提供するiDC(Internet Data Center)を経由して、ユーザーの社内ネットワークに接続、社内で利用しているWebアプリケーションを活用できる。またそのSASTIKキーを抜き取ることにより、利用したPCには何の証跡も残さずログオフできる安全対策を備えたリモートアクセス環境を提供している。つまり、SaaS型リモートアクセスツールである「SASTIKサービス」の導入で、育児休職者、出向者、出張者へ「いつでも」「どこでも」「安全に」リモートオフィス環境を提供することにより、グループ社員の多様なワークスタイルの支援することを可能にした。しかも、ICT運用コストを4分の1に大幅削減できたいう。(ESN)


◇企業システム◇大和證券、業界の先頭を切り来店客向けに電子ペーパーシステム導入

2010-03-10 10:20:41 | ユーザー

 【ユーザー】大和証券は、 NECと共同で、大和証券各店舗の来店客に新商品・キャンペーンなどの情報を配信する電子ペーパーシステムを開発し、3月1日より利用を開始した。第一弾として、本店に計6台の電子ペーパー(プロトタイプ版)を導入した。金融業界において、電子ペーパーを用いた顧客向け情報配信は先進的な例となる。(大和証券/NEC:10年3月4日発表)

 【コメント】IT化、電子化の波は、企業経営に大きな革新をもたらしながら、今後も続けて、押し寄せてくるであろう。例えば、将来デジタルサイネージ(電子看板)が普及し、紙のチラシからの移行も考えられている。店や企業が最新の広告の作成を自社のパソコンで行い、そのデータをデジタルサイネージ側へ伝送し、常時最新の情報を掲示できる。顧客はデジタルサイネージ上をタッチするだけで、希望する広告や詳細データを瞬時に得られる。つまり、これからは紙のチラシを印刷せず、最新データを電子看板上に表示できるので、最新データの表示が必要な業種の広告媒体として大いに期待されている。

 デジタルサイネージと併せ、将来の表示装置として期待されているのが電子ペーパーだ。電子ペーパーは、例えば将来、新聞などの表示などに期待されている。毎日、紙を配布し、読者は読み終わったら紙を捨てるのではなく、読者は毎日伝送される最新ニュースを電子ペーパー上で受信し、読み終わったら、データを消去しさえすればいい。これなら無駄な紙の消費も減ることになる。電子ブックのキンドルなどは、電子ペーパーの尖兵役を果たすものであり、将来は電子ペーパーがあらゆる分野で使われ、市場を大きく広げそうだ。

 今回、大和證券が導入する電子ペーパーシステムは、NECグループが新たに開発したA4サイズ・重さ800gの電子ペーパー上に新商品やキャンペーンなどのプロモーション情報を表示し、来店客が待ち時間等に電子ペーパーを手に取って閲覧することができるもの。導入当初は、電子ペーパー本体に保存した情報をスライドショー形式で自動更新して閲覧する形態とし、今後は、カラー化、軽量化を進めると同時に、サーバからネットワークを介して各店舗独自の情報などきめこまかな情報をリアルタイムに各電子ペーパーに表示する形態のシステムへと発展させる計画という。

 大和証券はこれまで、事務帳票の電子化をはじめ、電子申請システムの導入などにより、社内帳票の大幅なペーパーレス化(事務帳票は05年度比98.7%の削減)を実現した。その一環として、今回顧客向け帳票のペーパーレス化を推進するために、新しいテクノロジーである電子ペーパーに着目したもの。ペーパーレス化などの事務の合理化は、クラウド・コンピューティングなどのような華やかさはないが、ペーパーレス化を推進している企業とそうでない企業の格差は、将来ボディーブローのように企業経営に利いてくるはずだ。高度なIT化という発想も大切だが、従来の事務の合理化、省力化という発想も、決しておろそかにはできない。(ESN)


◇企業システム◇KDDIが仮想化システムを採用し、社内テレワークシステム構築

2010-01-25 09:26:18 | ユーザー

 【ユーザー】シトリックス・システムズ・ジャパンは、KDDIの在宅勤務制度において、シトリックスのデスクトップ仮想化製品「Citrix XenDesktop」と「Citrix XenApp」により、約300人が同時に在宅勤務とリモートアクセスを利用できるテレワークシステムを構築し、09年4月からのKDDIにおける在宅勤務制度導入にあわせ、本格稼動を開始したことを発表した。(シトリックス・システムズ・ジャパン:09年12月21日発表)

 【コメント】在宅勤務は、今後の企業システムにとって、避けて通れない大きな課題の一つだ。きっかけとなったのは、新型ウイルスによるパンデミック対策であるが、従来から模索は続けられてた。しかし、現在に至るまでそう大きな変化がおきているわけではない。ルーチンワークにより店舗回りを行うことなどの、一部の業務については、既に直行・直帰システムによる在宅勤務は実現していたり、ソフト開発などの業務によっては、在宅勤務が既に通常行われている業種もある。
 
 ところが、わが国においては、一般的に在宅勤務が普及しているわけではない。これは、日本の企業は、大部屋での勤務が当たり前なことを見てみれば分るとおり、相手の顔を見て業務を行うことが、必須条件のようなところがある。それに、わが国の住宅事情を見てみると、自宅で集中して仕事を行うことは、一部を除いてなかなか難しい。

 一方、チェック・ポイント・ソフトウェア・テクノロジーズが世界各国の顧客企業を対象に実施した調査結果によると、企業におけるリモート・ワーカーの数は増加の一途を辿っており、自宅や外出先から企業ネットワークに接続するリモート・ユーザが08年から09年にかけて増加したと回答した企業は、全体の40%以上に及んでいるという。また、過半数を大きく超える77%の企業で、全社員の最大25%が日常的にリモート・アクセスを行っていたことが判明。

 このように、世界の流れはリモート・ワーカー(在宅勤務者)が増加を見せており、わが国においても、パンデミック対策でなくとも、今後、在宅勤務の時代が押し寄せようとしている。今回、KDDIが採用したテレワークシステムは、次のような効果をもたらしたという。①在宅勤務、リモートアクセスの統合管理によるシステム運用の簡素化の実現②在宅勤務でも社内と同じデスクトップ環境を利用できる仕組みの実現。社員の業務に応じてデスクトップ環境のひな形を用意、営業向け、Webサイト管理者向けなど複数のひな形の使い分けにより、仮想デスクトップの運用管理を効率化③社内システムとの連携による勤怠管理を可能にし、フレキシブルな就業環境を実現④XenAppの導入による、リモートアクセス環境の利用者数の大幅な増加。特に海外出張での利用が急増⑤すべてのシステムをサーバー上で管理でき、効率的にOSのアップデートやパッチなどの適用を実現⑥旧式クライアントPCの有効活用ーなど。

 在宅勤務の時代はもう、そこまで来ていると見た方がよさそうだ。各企業ともパンデミック対策を期に、在宅勤務システム構築の準備に取り掛かかってはどうであろうか。(ESN)


◇企業システム◇NRI、、「経営戦略におけるITの位置づけに関する実態調査」結果発表

2010-01-20 09:30:47 | ユーザー

 【ユーザー】野村総合研究所(NRI)は、08年に引き続き、09年9月11日から30日にかけて、日本国内に本社を持つ大手企業の経営企画部門を対象に、「経営戦略におけるIT(情報技術)の位置づけに関する実態調査」を実施した。今回の特徴として、産業や業界の構造変化に対する意識の高まりから、経営戦略で構造改革の方向性を示す企業が増加している。経営によるIT投資の選別や評価が厳しくなる一方で、戦略的なIT活用の認識や、SaaSやクラウド等の新しい外部ITサービスへの期待が高くなっている。経営が目指す構造改革を実現するためには、経営とIT部門の連携強化が重要であり、経営のリーダーシップが期待される。(野村総合研究所:10年1月18日発表)

 【コメント】野村総合研究所(NRI)が今回行った「経営戦略におけるIT(情報技術)の位置づけに関する実態調査」は、今後のわが国の企業が国際競争力を付けることができるか、どうかの大変重要なテーマとなっている。古くから、各企業には情報システム(IT)部門が存在し、企業システムの企画、システム構築、システム運用管理を一手に担当してきた。IT部門が主導してきた企業システムは、それなりに各企業にとって欠かせない経営ツールとして機能してきている。

 ところが、これからの企業経営の環境を考えた場合、これまでの常識が果たして通用するかどうかは、断言できない面がある。メインフレーム時代からクライアントサーバーシステム時代へと移り変わり、さらにWebシステム時代に突入し、そして現在、仮想化技術の導入によるサーバーの統合時代へとさしかかってきた。その延長線上にはクラウド時代が到来することは、もはや否定できないことである。こうなると、過去の蓄積は、あまり意味をなさないことになりかねない。丁度、これは真空管から半導体へと変化を遂げた後に、真空管技術をいくら振るかざしたところで、意味を持たないことに似ている。

 こんな中、NRIでは「経営戦略におけるIT(情報技術)の位置づけに関する実態調査」を行い、次のような調査結果を得た。情報システムの設計・開発・運用において、「外部サービスを利用していない」と回答した企業は10.9%にとどまり、約9割の企業が何らかの外部サービスを利用している。これは「ベンダが持つ高度なソリューションや技術力を活用する」や「要員の不足を補う」が主な目的。また、SaaSやクラウ
ド等の新しい外部サービスに対しては、①ライフサイクルコストの削減、②迅速性・柔軟性の確保、③最新・最適な技術の選択などの効果が期待されている。ここから、環境変化に対する自社のIT対応能力を、効率的かつ効果的に高めようという狙いがみてとれる。

 また、今回の調査から、経営戦略とIT戦略を一体的に策定している企業は、前回より約10ポイント減って20%程度に留まった。さらに、約6割の企業が、経営戦略とIT戦略を一体的に策定することが望ましいと考えているにもかかわらず、そのうちの3分の2の企業において、一体的な策定ができていないという問題もある。これらの結果を踏まえると、ITの力も活用して、経営が目指す構造改革を実現させるためには、
これまで以上に経営とIT部門の連携を進めていくことが重要と考えらる。そのためには、IT投資に対して積極的に関与し、リーダーシップを発揮していくことが経営には求められる、と今回の調査では結論付けている。

 経営戦略とIT戦略を一体的に策定している企業が減少しているという事実は、ある意味でショッキングな結果である。これまで幾度となくCIO(情報担当役員)の重要性が指摘されていながら、現実は逆方向へと向かっていたことになる。各企業とも、経営とITの関係を再度点検してみる必要がありそうだ。(ESN)


◇企業システム◇CCCがシスコ製「ユニファイド・コミュニケーション」導入し成果

2010-01-13 09:18:07 | ユーザー

 【ユーザー】シスコシステムズは、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)が、グループ会社10数社の統合・再編にあたり、新しいコミュニケーション基盤として、「シスコ ユニファイド コミュニケーション」を導入したと発表した。 今回導入された主なユニファイド ・コミュニケーション ・ソリューションは、「Cisco Unified Personal
Communicatorによる、チャットと音声、ビデオの統合」と「フォンアプリ Web 電話帳」。今回の導入により、CCCが主体的な行動や、そのために必要な情報共有を目指す横断的な事業間や遠隔地を結ぶ直観的なコミュニケーション環境が実現され、社員のコラボレーションを原動力とする企画立案、意思決定、実行のスピードが向上したという。(シスコシステムズ:09年12月21日発表)

 【コメント】ユニファイド・コミュニケーションは、今年の企業ユーザーの大きなテーマの一つに浮上しつつある。要は、これまで、ばらばらであった通信機能を統合化し、新しい付加価値をもたらそうという取り組みである。これまでも、コールセンターシステムなど特定ののシステムにおいて通信の統合化は、進められてきたわけであるが、これを企業システム全体としての取り組みとして、実現しようとするのがユニファイド・コミュニケーションである。具体的には、電話、メール、テレビ会議、Web会議などの様々なコミュニケーションツールを統合することで、ビジネスの効率化を図ろうという狙いがある。

 現在、世界同時不況の大波は通り過ぎたとはいえ、先行き不透明な時代が続き、いつ二番底が襲うか誰にも予測がつきかねる経済状態に各企業とも巻き込まれている。こうなると、これまでの右肩上がりの経営戦略では、とてもやってはいけない時代へと向かいつつある。このためには、企業システムそのものをユニファイド・コミュニケーション化し、これによりオフィスワーカーの生産性の向上を図ることが、急務となってくるものと思われる。

 そんな時代を受けて、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)では、今回、シスコシステムズ製のユニファイド・コミュニケーション「シスコ ユニファイド コミュニケーション」を取り入れたわけである。これにより、CCCでは次のような成果を挙げたという。PC 画面上に表示された相手の名前を見るだけで、在席情報、利用できる通信方法(ビデオ、インスタント メッセージ、内線、ボイスメール)を把握し、最適なコンタクト手段を瞬時に選択することが可能になった。また、内線電話と同等の使い勝手を携帯電話で実現し、外出中の営業担当者のモバイル環境での迅速な顧客対応能力が強化されたという。

 これにより、社内同士の連絡や情報共有がスムーズになり、意思決定と実行が迅速化している。さらにテレビ会議の機能を会議室で利用することで、拠点間で行われる多人数の会議でも、より緊密なコミュニケーションを図ることができた。さらに、PCの Web ブラウザ、固定 IP フォン、スマートフォンのいずれからも同じデータベースを参照し、場所を問わず最適な手段でコミュニケーションを行うことが可能となり、いつでもどこでも社内外の専門家へアクセスすることが容易になったという。ともすると、各企業の情報システム部門は、新しい製品や技術を単独で導入しがちであるが、今後の企業システムに求められるのは、新しい製品や技術を統合化し、それを基にオフィスワーカーの生産性をいかに向上させるかであろう。クラウド時代ともなればなおさらだ。(ESN)