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企業経営を左右する企業情報システム(経営+ITソリューション)のデータバンク作りを目指す

◇企業システム◇大塚商会が仮想化環境の検証の業界標準化に乗り出すに

2009-09-30 09:42:28 | システム運用管理

 【システム運用管理】大塚商会は、ソフトメーカー16社と協業し、基幹系、情報系アプリケーションの仮想環境における動作確認を実施した。各分野のソフトメーカーが一同に参加しての動作確認は業界初となる。動作確認のとれたアプリケーションは、大塚商会が提供する仮想化サーバ「1台2役サーバパック」と組み合わせて提供することで、導入企業の負荷軽減とともに、選択肢を増やし、仮想環境の導入を促進する。(大塚商会:09年9月28日発表)

 【コメント】仮想化システムに対する企業ユーザーの関心が高まってきているが、自社で実際のアプリケーションが問題なく稼働する環境をつくり上げるのは難しい。また、ユーザー企業が独自に仮想化環境の実証テストをいちいちしていては、日常の業務を推進することの方が難しくなってしまう。そこで、アプリケーションパッケージソフト企業が事前に検証テストを実施しておけば、企業ユーザーの手間隙は大幅に削減できる。

 今回、大塚商会は、同社の「仮想化オープンラボ」をソフト会社に提供し、仮想化ソフトにマイクロソフトの「Hyper-V」、サーバーにNECのExpress5800を採用した同社の仮想化サーバー「1台2役サーバパック」を仮想化環境の検証の共通プラットフォームにして、業界横断の標準化に自ら名乗り出たわけである。

 今回の大塚商会の試みは、問題を解決する手段としてはかなり有効なものになるのではないか。学者を入れて、業界全体の標準化を図るケースも必要ではあるが、問題解決に時間がかかるし、必ずしも業界の実態に即した解決策にならない場合もしばしば見受けられる。それに対して今回の大塚商会方式は、即問題解決に繋がるし、実情に即した解決策が提示できる。その成果に期待が集まる。

 ちなみに今回動作確認をした企業は次の通り。

 アマノ、NIコンサルティング、エムオーテックス、OSK、オービックビジネスコンサルタント、クオリティ、サイボウズ、シトリックス・システムズ・ジャパン、シマンテック、Sky、デジタルアーツ、トレンドマイクロ、日本アイ・ビー・エム、日本CA、バックボーン・ソフトウエア、ピー・シー・エー。

 また、今回動作確認をしたアプリケーションは次の通り。
 
 <基幹系>アマノ「TimePro-XG」、NIコンサルティング「顧客創造日報シリーズ」、OSK「SMILE BS」、オービックビジネスコンサルタント「奉行V ERP」、ピー・シー・エー「PCA Dream21」

 <ITインフラ管理>エムオーテックス「Lan Scope Cat6」、クオリティ「QAW/QND Plus」、Sky「SKY SEA Client View」

 <情報系>OSK「eValue NS」、サイボウズ「サイボウズOffice8」、シトリックス・システムズ・ジャパン「Citrix XenApp」、日本アイ・ビー・エム「IBM Lotus Notes/Domino 8」

 <セキュリティ>シマンテック「Symantec Endpoint Protection 11.0」、デジタルアーツ「i-FILTER」「m-FILTER」、トレンドマイクロ「Trendmicro Client/Server Suite Premium」

 <仮想環境のバックアップ>シマンテック「Symantec Backup Exec」、日本CA「CA ARCserve Backup」、バックボーン・ソフトウエア「NetVault Backup」


◇企業システム◇マイクロソフトがパートナー64社と提携し“ITでコスト削減フェア”推進

2009-03-04 10:34:56 | システム運用管理

 【システム運用管理】マイクロソフトは、現在展開中の「Save Money. ~苦境をのりきる、攻めのITを~」キャンペーンにおいて、コスト削減と生産性向上の両立を支援するITソリューションを提供する業界各社64社からなる「Save Money. ソリューション推進パートナー」と提携して、“ITでコスト削減フェア”を展開する。運用管理、電力、出張・通信、間接などの各種コストを削減しながら、業務の効率化や社員の生産性向上を支援する。 (マイクロソフト:09年2月24日発表)

 【コメント】 マイクロソフトが推進する「Save Money」キャンペーンの具体的中身は、次の6つのテーマである。①仮想化テクノロジー②コミュニケーション基盤の統合化③複数サーバーの統合化④デスクトップ環境のより効率的な管理⑤プロジェクト管理による業務の標準化と効率化⑥ボリュームライセンスによるソフトウエアの効率的な購入。要はこれまで企業システムにおいて導入されてきたハードを中心としたシステムを、マイクロシフトが提供するソフトウエア製品により標準化/統合化しトータルコストの削減を実現させようとする試みである。

 世界同時不況の中、今回マイクロソフトとしては絶妙なタイミングで「Save Money」を打ち出したもので、ユーザーに対するインパクトは予想以上に大きいのではないであろうか。通常ITベンダー側からはコスト削減ということはなかなか打ち出せないものであるが、それを逆手に取った今回の「Save Money」キャンペーンはそれなりの意義はあろう。問題は企業ユーザー側が常日頃からコスト意識を持ってITベンダー側の提案をチェックしているかどうかだ。

 IT分野は技術の進展が早く、なかなか先を見通すことは困難だ。だからといってユーザーがベンダーの提案を鵜呑みにすることだけは避けるべきである。その際にユーザーとして持っておくべき基準は何か。それは先進ITの導入ではなく、現場の業務の改善が図れるかどうかということであろう。ベンダー側の提案をそのまま受け入れ、多くのサーバーを導入してしまった結果、今度は仮想化技術によってサーバーの削減を図るーというようなことは、今後はなるべく避けるべきだ。(ESN)


◇企業システム◇米CAが「グリーンITの未来」に関する調査結果を発表

2009-02-18 14:35:18 | システム運用管理

 【システム運用管理】米CAは、「グリーンITの未来」に関する調査結果を発表した。同調査は、ランダムに選ばれた米国および英国の大企業に対し合計252回のインタビューを実施し、的確性を保つために米国では年商5億ドル以上、英国の場合は2億5000万ポンド以上の企業のITに関する意思決定者250人以上を対象にした。これによると、回答者の多くが、環境保護や資源の有効活用につながるIT利用を推進するために、エネルギー効率の良いハード/ソフト・ソリューションやシステム自動化ツールの実装を施策の中に盛り込んでいる、と回答した。また、グリーンIT導入の最大の障壁はコストであるとしている。さらに、多くの企業がハードウエアや電力システムに注目していたが、今回の調査によってエネルギー効率の管理を支援するソフトウエアが極めて重要な役割を果たすということが明らかにされた。 (日本CA:09年2月6日発表)

 【コメント】グリーンエネルギー政策は、米オバマ政権の最大のテーマだけに全世界の注目を集めているわけであるが、中でもグリーンITは緊急課題として早急な解決策を求められることは論を待たない。データセンターにおけるサーバーの消費電力は無視できないほどの消費量に達しており、また、PCも非稼働時における消費電力の抑制は、今後あらゆるところで求められてくるのは必死だ。データセンターはサーバーの消費電力に加え発熱を抑える空調設備による消費電力が加わることによって、二重の意味での省エネルギー化が求められることになる。企業にあってコンピューターシステムの責任部署である情報システム部門がいかにグリーンITに取り組むかは、企業内外から注目されることは避けられない。
 
 このような状況下において米CAは、米国および英国の大手企業のIT担当者にグリーンITの取り組みの現状を把握するためのアンケート調査を行い公表し、次のような点を明らかにした。①米国の回答企業の約60%は、エネルギー効率を管理するためにデータセンターやサーバーにソフトウエアを適用②米国の回答企業の半数以上が、エネルギー効率を管理するためのソフトウエアをメインフレームに導入して効率を管理③現在米国では、ネットワーク管理ソフトウエアと仮想マシン・ソフトウエアを使用する企業の比率が英国より高い④米国では90%、英国では80%の企業において、IT予算にエネルギー効率を考慮したソフトウエア・ソリューションの導入費が盛り込まれているーなどである。

 今回の調査は米国と英国の2国だけを対象に調査されたため、日本との比較は不明であるが、日本のグリーンITの現状は米英に比べ、多くの点で遅れているのは間違いないところではあるまいか。わずか、ネットワーク管理ソフトや仮想化ソフトの意識の点では、そう隔たりはないのかもしれない。しかし、IT予算の中にエネルギー効率を考慮したソフトウエアの導入の比率などは、多分、米英に対して日本の現状は高いとはいえまい。いずれにしても、今後IT予算の中にエネルギー削減対応を盛り込むことが、各企業の情報システム部門に求められてくることは確かなことである。(ESN)


◇企業システム◇米CAがSOA構築後のシステム運用管理について調査結果発表

2009-02-02 11:10:09 | システム運用管理

 【システム運用管理】米CAは、SOA導入状況および複雑なWebベース・サービスを成功させる上で、アプリケーション性能管理が果たす重要な役割に関して行われた、独立系調査会社「TechWeb」の調査結果を発表した。同調査結果によって、カスタマ・サービス・レベル、顧客関係、ITやLOB(Line of Business)オペレーションのパフォーマンスの問題について、多くの企業が懸念と課題を抱えていることが判明した。同調査は米CAが委託し、SOAベースのアプリケーションを既に導入または導入を予定している米国、英国、フランス、ドイツおよびオーストラリアの企業組織に対して行われ、回答者はCIOからIT管理スタッフまで合計615人の技術専門家から得た。 (日本CA:09年1月16日発表)

 【コメント】今回の調査発表のタイトルには「低品質なSOAアプリケーション・パフォーマンスは、顧客サービス、ITおよびLOBオペレーションの生産性、収益に悪影響をもたらす」とあるが、これが今回の調査結果のすべてを表しているといえるであろう。同調査結果では、適正な測定の欠如が企業組織に多くの障害をもたらしているとし、次のような実態を明らかにしている。①回答者の54%が、問題の解決が困難であるため、ITや個々のLOBオペレーションの生産性が低下したと報告②回答者の48%が、アプリケーションのダウンタイムは顧客関係に悪影響を与えていると報告③回答者の46%が低いと収益が減少すると報告。

 SOAはこれからのアプリケーション開発には欠かせない新しい技術として、現在多くのユーザーによってトライアルされている。今後ますます迅速性と柔軟性が要求されるビジネスアプリケーション開発には、SOAの考え方を取り入れて取り組まねばならないことは、ユーザー自身が身に沁みて感じていることだ。このためSOAをベンダーから提示されれば、当然のごとく飛びつく。しかし、よく考えると最近のシステム障害の多くは、システム自体が複雑で巨大化した結果引き起こされたもので、システムのシンプルさも同時に実現しなければならないというジレンマに陥っている。これについて米CAでは「SOAアプリケーションの導入を実施する企業組織の多くは、SOAと従来のソフトウエアシステムの差異を認識することができておらず、特に、SOAのモニタリングと管理の要件に関してその傾向がみられる」と述べている。

 システム開発の新たな手法は今後さらにいろいろなものが提案されてこよう。それらは現実に有効な手法もあろうが、問題はシステムを構築したあとのシステム運用管理がきちっと行われるかどうかだ。往々にしてシステム運用管理は後手後手にまわり、トラブルが発生してから慌てて手を打つ場合が多い。一時期システム構築の際の開発会社とユーザーの認識の違いをどう克服するかとか、システム構築の際のプロジェクト管理をどうミスなく進めかに関心が集中したが、システム構築した後のシステム運用管理については、古い問題なのだがあまり注目されてこない。SOAでシステム構築することを既に決定したユーザーは、開発前からSOAのシステム運用管理をどうするかを、ベンダー側と詰めなければなるまい。(ESN)


◇企業システム◇NTTデータがグリーンITを実現する空調システムの提供を開始

2009-01-05 13:07:05 | システム運用管理

 【システム運用管理】NTTデータは、データセンターの環境改善を実現する空調システム「免震装置一体型アイルキャッピング」を09年1月から提供を開始する。これは既存のデータセンターが抱える問題(サーバー機器の高密度化による発熱の増加に対し、非効率な冷却がもたらす大きな環境負荷/地震発生時のサーバーラックへの影響など)を一挙に解決し、空調の効率化やBCP(事業継続)を推進することができる。アイルキャッピングは日東工業、免震装置はエーエスにおいて製造する。アイルキャッピングは、ラック列間の通路を壁や屋根で区画し、IT装置の給気(低温)とIT装置からの排気(高温)を物理的に分離して効率的な空調環境を実現する気流制御技術で、NTTファシルティーズが商標登録中。 (08年12月18日発表)

 【コメント】グリーンITは09年の焦点の一つになることは間違いあるまい。これは世界同時不況の波を日本のほとんどの企業が被っている現状で、コスト削減が喫緊の課題となっているからだ。株価は今年の春、遅くても夏には底を打つことが予測されているが、その後直ぐに上昇に反転するかというとなかなかそうは言えず、世界同時不況はかなりの期間、世界の経済環境を低迷させることが予想されている。こうなると各企業ともコスト削減が大きな課題として浮上する。中でもIT関連は多くの電力を食うことから、真っ先に槍玉に挙げられることは避けられない。また、米国のオバマ新政権の切り札は、グリーン・ニューディール政策と言われており、この流れは必ず日本にも押し寄せてくることから、グリーンITにどう取り組むかで評価が下される傾向が急速に高まろう。

 こんな中、NTTデータは「免震装置一体型アイルキャッピング」の発売に踏み切った。これは、サーバーラックと屋根、扉を一体製品として構築し、サーバー列間の通路を区画することで冷却された空気とIT機器からの排気を物理的に隔離する。この区画されたサーバーラック間の通路内部の気密性を高め、サーバー群が必要とする風量に合わせた適正風量で空調機を制御することができ、サーバーラックをむらなく冷やすことができる。また、地震の入力加速度を1/8-1/10程度に低減できる。これらにより必要最小限の電力で空調を行い、コスト削減を実現させることができる。さらに耐震性を高めることで事業継続性も実現することができる。

 今回NTTは、「免震装置一体型アイルキャッピング」は単に外部に販売するだけでなく、自社のセンターに導入することにしている。これにより、その有効性を身をもって体験するわけで、ユーザーにとっては信頼度が高まる。さらにNTTデータのユーザーの1社である小田急電鉄のデータセンターの一部に同製品を導入し、共同で導入効果の検証を行うことにしている。この検証結果は一般に公表してほしいものだ。(ESN)


◇企業システム◇NECと京都産業大学がユーザビリティ向上のチェックリスト評価法を開発

2008-11-19 16:34:10 | システム運用管理

 【システム運用管理】NECはこのほど、システムの使いやすさ(ユーザビリティ)を客観的かつ定量的に評価できるチェックリスト評価法を構築した。同評価法は、京都産業大学と連携して構築したもので、ユーザビリティの項目ごとに評価手順や判定基準を詳細化したチェックリストと、用語定義集および事例集から構成されている。さらに、項目ごとに「学習しやすさ」「エラーの少なさ」「記憶しやすさ」「効率性」の4つの観点によるウエイトを設定している。これにより、評価者の知見や裁量によることなく、システムのユーザビリティを評価することができるようになる。 (08年11月6日発表)

 【コメント】システムのユーザビリティの問題は、古くて新しい問題であるのだが、将来も永遠に続く問題でもある。今回NECと京都産業大学が連携して開発したシステムのユーザビリティに関するチェックリスト評価法は属人性をなるべく排除し、客観性を高めたところに意義がある。そもそもシステムの使いやすさが何故損なわれるのか。原因はほとんどがつくる側の論理が幅を利かせ、利用者サイドに立っていないところにあるのは確かなことだ。今は知らないが、昔スーパーやコンビニのレジ台は東芝テック製が圧倒的なシェアを占めていた。不思議に思って聞いてみると、現場のレジ係が東芝テック製のレジ台が一番使い勝手がいいという評価を下すからなのだそうであった。これでは競業他社は歯が立たない。ユーザビリティを高めるには、つくる側の論理を引っ込め使う側、特に最前線で使うユーザーの立場に立つことだ。

 システムのユーザビリティに関していえば、マニュアルのお粗末さにはあきれ返るものがある。ほとんどのマニュアルは使う側に立っていない。それは、使い方をマスターした後でマニュアルを見ると良く分かることが何よりの証拠だ。マニュアルはシステムが分からないユーザーが見て、分かるものでなければ意味がない。何故このようなことが起きるのかというと、つくる側は「こんなことは当たり前である」と思って文章化しないからである。“当たり前”を文章化して初めてマニュアルの存在意義がある。ところが、「そうかそれならばすべて記事化してやる」とばかりマニュアルをつくると、それこそ「キータッチとは手をキーに置き押すこと」といった意味のない説明が延々と続き、この結果分厚いマニュアルが出来上がってしまい、誰も読まなくなる。マニュアルをつくる際には、素人がよく陥るミスのケースを調べ上げ、それを文章化することが肝要だ。

 ユーザビリティが難しのは、これなら使いやすくなるだろうと考えてつくっても、必ずしも成功しないことが多いからだ。大分前から画面上で本のページをめくるようにしてスクロールする方式が開発され、専門家は将来これが主流になるだろうとと見ていたが、残念ながら普及しなかった。何故だめなのかは分からないが、ユーザーは本の代替をPC画面に求めてはいないということであろう。要するに画面が変わることが大事なことであって、ユーザーは本の感触をPCには求めてはいないということだ。先日テレビを見ていたら、動物園のチンパンジーに、塔のような高い柱とロープを設置してやったら喜んで遊んだという。つまり、森にいるチンパンジーにとっては木と枝が大切なもので、葉っぱは副次的な存在なのだ。システムのユーザビリティを高めるには、人間でも動物でも同じで、ユーザーが本当は何を望んでいるのかを引っ張り出してやることこそが大切なのだ。(ESN)


◇企業システム◇米IBMが「新クラウド・サービス」を発表

2008-10-27 16:29:55 | システム運用管理

 【システム運用管理】米IBMは、すべての規模の企業が、より簡単にクラウド・コンピューティングを導入し、データ管理の改善、運用コストの削減、連携を容易に実現する「新クラウド・サービス」の提供を開始すると発表した。これにより、13のクラウド・コンピューティングセンターや、40のIBMイノベーションセンターなど、IBMの世界中に広がるネットワークを通じて、ユーザー企業は多数のクラウド・サービスの専門家にアクセスすることができ、クラウド・コンピューティング・モデルを通じて、アプリケーションをテストすることができるようになる。さらに今回、SI企業が、クラウド・コンピューティングにより、新アプリケーションを短時間で開発可能なサービスも同時に発表された。 (08年10月15日発表)

 【コメント】クラウド・コンピューティングの定義はなかなか正確にできないのが現状だ。それだけ技術の進歩のスピードが早く、次々に新技術が付加されているとうことだけははっきりとしている。一般的にいってクラウド・コンピューティングとは、パッケージソフトを個々のユーザーが購入し、サーバーやPCに搭載して利用する従来の方式ではなく、あらかじめインターネットに接続されたサーバー上に搭載されたソフトを、従量制でユーザーがオンライン共同使用する方式を指す。既にグーグルなどにより、オフィスソフトなどがこの方式で提供されており、今後、徐々にユーザーは増えていきそうな気配だ。問題は企業システムにクラウド・コンピューティングが普及するのかという問題だ。SaaSで一挙にCRMソフトユーザーを広げることに成功したセールスフォース・ドットコムは、企業システムへのクラウド・コンピューティングの成功事例の代表的なものとなった。そうなると企業システムへのクラウド・コンピューティングの浸透は時間の問題のようにも考えられる。ところが企業システムへのクラウド・コンピューティング普及には、今後たくさんのハードルを超えねばならない。

 その一つはセキュリティの問題だ。実はコンピューターの共同利用の歴史は古く、TSSを経て現在まで幾多の試練を経験してきた。いかに顧客データを守るかは古くて新しい問題だ。それはサーバーを物理的に共同利用させる技術だけに限定される問題だけでなく、人間の介在する場合のセキュリティ管理をどう実現させるかにある。既に米国ではセールスフォース・ドットコムの顧客データの漏洩問題が発生している。つまり、SaaSにより自社の顧客データを管理するということは、リスクをはらんでいることを、十分に承知しておかねばならない。そうなると、クラウド・コンピューティングが企業システムで爆発的に増えるということが、必ずしも言えなくなってくる。それに、各企業独自の戦略システムと、企業システムの共同利用をどう折り合いをつけるかも微妙な問題として挙げられる。ある一社が提供するクラウド・コンピューティングを利用するユーザーのアプリケーションが皆同じでは、企業システムの優劣で競い合う時代においてはあまり歓迎されまい。さらに、使用した分だけ払う従量制なのでコストを抑えられるという点も、初期投資の低減は事実としても、使用年数が経過した後でも一定額の料金を払い続けることを、ユーザーが果たして納得するのかも問題だ。

 とはいえ、時代の流れは確実に企業システムもクラウド・コンピューティングへ向かっていることも事実であろう。仮想化システム、SOA、OSS、グリッド・コンピューティング、SaaS、PaaSなどは、企業システムがクラウド・コンピューティングを導入するする際の露払いになるという見方が有力だ。今回、米IBMが発表した新クラウド・サービスは、こんな情勢を先取りした施策として注目される。ロータスやラショナルなどIBMにとって虎の子のソフトウエアをすべて投入して、クラウド・コンピューティング市場を抑えようとするIBMの姿勢がありありと読み取れる。その裏にはクライアントシステム市場でマイクロソフトに完全に牛耳られた、苦い経験が脳裏にあるのだろう。今回のクラウド・コンピューティングは、サーバーシステムが主役を演じる市場であり、ここでは絶対に負けるわけにはいかない、とIBMは考えているに違いない。(ESN)


◇企業システム◇サンがコンテナ型仮想化データーセンター08年10月から出荷開始

2008-09-19 16:15:10 | システム運用管理

 【システム運用管理】サン・マイクロシステムズは、コンテナ型仮想化データセンター「Sun Modular Datacenter(Sun MD)」の国内販売を、08年10月から開始する。「Sun MD」はデーターセンターそのものをモジュール化(ユニット化)することで、データセンターを建造物から切り離し、データーセンターそのものを仮想化することで可搬性を実現し、より早く、低コストでデーターセンターを提供することができる。本体の国内販売標準価格は9865万8000円からで、受注から納期は標準で約10週間ほど。 (08年9月17日発表)

 【コメント】現在のデーターセンターは1台のサーバーごとに1つのアプリケーションが搭載され、平均サーバー利用率は5-15%といわれる。また、ストレージやPCはシステムごとに分断され、この結果サーバー/ストレージ管理が複雑になっている。これに対し、データセンター自体が仮想化されると①新アプリケーションの追加が容易②消費電力当たり性能に優れたサーバーの導入③統合化されたストレージ資源の最適化④デバイスに依存しない環境の提供⑤ビジネス変化に対応できる資源の追加―などが実現可能となる。この結果、システム資源の最適化が図られ、消費電力を考慮したデータセンターの実現が可能となる。「Sun MD」の仮想化は、サーバーの仮想化、ストレージの仮想化、デスクトップの仮想化の3つからなっている。

 「Sun MD」S20は、高密度、高エネルギー効率のデーターセンターを機能拡張した20フィート輸送用コンテナに組み込み迅速で容易な展開を可能にしたモジュラー化データセンター。スレッドレベルでの並列化によりCPUリソースをフルに使い切ることができる。従来のデーターセンターと比べ1/8のスペースで4倍の高密度を実現している。8ラックを標準搭載し、最大60A/200V2系統/ラックの電力供給で、独自の閉ループの水冷システムにより消費電力は0.38W(通常は0.67-0.65W)で済む。フェーズ1では①サーバー数約半分、能力450%以上向上②ストレージ機器数約1/3、容量は240%以上増加③60%以上のエネルギーコスト削減④データーセンター面積を88%削減⑤年間3227トンの炭酸ガス放出量を削減―できる。またフェーズ2では①年間光熱費をさらに30%削減②炭酸ガスをさらに年間876トン削減―することにしている。

 地球温暖化対策が叫ばれる中、データーセンターの省エネルギー化が今後強く求められることになろう。既にベンダー各社は省エネ型サーバー類を開発し、販売を強化し始めている。勿論サーバー単体でも省エネは実現で得きるが、サンの発想はサーバー単体だけではなく、仮想化技術を駆使することによりデーターセンター全体を省エネ化するという、これまでの発想とはまったく違うところがポイントだ。地球温暖化対策と事業継続の2つのニーズにより、データーセンター自体のあり方が、根本的に変わろうとしている。(ESN)


◇企業システム◇日本CIO連絡協議会が「グリーンITについて」のアンケート結果発表

2008-09-12 17:14:36 | システム運用管理

 【システム運用管理】地球温暖化対策として二酸化炭素排出量規制の動きに注目が集まっている。06年度の二酸化炭素排出量を部門別に1990年度と比較すると、工場部門が4.6%減少したのに対し、情報システム部門を含むオフィスなど業務部門は39.6%増加という結果が出ている。つまり、IT機器が増加・高機能するに従い、エネルギー使用量や二酸化炭素排出量が増加するわけである。一方、日本政府は温暖化ガス削減目標の達成に向け、ITを活用した省エネ活動を推進するため、環境対応を優先した「グリーンIT」への取り組みを行っている。このように、IT機器は地球温暖化対策にとって密接なかかわりを持っていることが分かる。このようなことから今回、日本CIO連絡協議会では各企業の情報システム部門に対し「グリーンITについて」のアンケート調査を行い、その結果を公表した。 (08年8月19日発表)

 【コメント】地球温暖化対策=二酸化炭素削減が大きな課題として浮上してきている。テーマがあまりにも大きなものだから具体的にどう行動すればよいのかが分からない。ノーネクタイで室内温度を28度にしてどのくらいの二酸化炭素削減効果があるのか、あまり成果は聞いたことがない。悪く見れば省エネ対策はしていますよというポーズに過ぎないなどと考えてしまう。このような状況で各企業の情報システム部門にとっても二酸化炭素削減対策はそう簡単なことではない。IT機器であるサーバーやPCが多くの電力を食うことは論を待たない。今後、情報システム部門に対し電力の削減要求が高まってくることは目に見えている。

 今回、日本CIO連絡協議会が「グリーンITについて」のアンケート調査を情報システム部門に対し行ったことは、正にタイムリーであった。IBMをはじめ多くのベンダーがグリーンITに対して取り組みを強化し始めているが、本質的にベンダーはIT機器を大量に使ってほしいというのが本音である。つまり、グリーンITを本当に推進するにはユーザー、もっと具体的に言えば各企業の情報システム部門が最もふさわしい。ところがこれまでベンダー側のグリーンITについての対応は聞けても、ユーザー側はというと沈黙を守ってきた。今回のアンケート調査の結果からユーザー側の実情が多少なりとも窺えたのは意義があろう。

 「二酸化炭素削減のマネジメントは」の質問の回答が「計画なし」が49%、「実施済み」が31%であった。計画なしが約半数もあるとは驚きだ。「情報システム部門の温暖化対策は」の質問の回答が「サーバーの電力削減」「外部記憶装置の電力削減」について計画中と回答した企業が多かったのには頷ける。二酸化酸素削減はまず電力の削減が一番手っ取り早い。「PCは必要以外はスリープ状態にする」「サーバーの統合を行う」については実施中の回答が多かった。PCをスリープ状態にさせることは直ぐに効果を引き出せるし、サーバーの統合は、現在仮想化に対するニーズが高いことからも裏付けられる。「温暖化対策予算を独立で計上しているか」の質問に対し、イエスがゼロであったことは対策の本格的な取り組みはこれからということだろう。(ESN)


◇企業システム◇米IBM がエネルギーと水の削減に関してコンサルサービスを開始

2008-09-05 16:58:21 | システム運用管理

 【システム運用管理】米IBMはユーザーの業務全般のエネルギー・水使用の削減を実現する“リーン・シックス・シグマ原理”を適用した「Green Sigmaコンサルティング・サービス」の提供を開始すると発表した。同コンサルティング・サービスにより①二酸化炭素の排出、水の非効率的使用の管理・削減②エネルギーと水の使用、そして、それにかかわる経費の削減③先進分析技術を用い、継続的なカーボン・フットプリント(二酸化炭素排出状況)、水の使用管理などの徹底④排出権取引などの活動を通じて収益を増加させる―ことなどを実現させることにしている。 (08年8月26日発表)

 【コメント】ユーザー、ベンダーを問わず喫緊の課題として浮上してきたのがCO2やエネルギー削減問題である。特にIT分野はサーバーの24時間稼働で莫大な電力を消費しており、このことが世界的に大きな問題になりつつある。つまり、IT関連企業は回りから白い目で見られ始めている。今回米IBMが発表した「Green Sigmaコンサルティングサービス」は、そんな世間の見方を逆手にとって、IBMこそがこれまでCO2やエネルギーの削減に努めてきた企業であり、そのノウハウをベースとして一般の企業に対しコンサルタントを行いますよと宣言したわけである。今回のコンサルティング・サービスは、エネルギーと水にターゲット絞っている。特に水というところに、今後地球規模で水の問題が大きくなることを先取りした形だ。

 1990年以降、独自に環境保護に努めてきたことをIBMは強調する。それらは、消費電力では46キロワット時/3億1000万ドルを節約、二酸化炭素排出では300万トン以上の削減、さらにガソリンでは社員の自宅勤務により年間約800万ガロンの節約―と具体的な数字を掲げている。最近、各社から省エネをうたったサーバー類が発売され始めた。ユーザーもこれらの省エネ機器を導入して、導入しなかった場合と比較して「何割エネルギー削減を実現できた」と外部に公表してはどうであろうか。(ESN)