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企業経営を左右する企業情報システム(経営+ITソリューション)のデータバンク作りを目指す

◇企業システム◇NECと独SAPが「グローバルパートナー契約」締結

2008-04-27 15:06:05 | ERP
 NECは独SAPと「グローバルテクノロジーパートナー契約」を締結し、「SAPグローバルコンピテンスセンター」を独SAP本社内に開設した。NECは同センター内において、SAPプラットフォームソリューションの開発・検証ならびにSOAに基づく新ソリューションの開発推進などを行う。NECは同センターをグローバルビジネスの中核拠点と位置づけ、同センターに要員約10人を常駐し、順次規模を拡大していくことにしている。これによりNECグループとしてのSAP関連ビジネスを、2011年には1000億円を目指す。(08年4月18日発表)

 【コメント】NECは07年から08年にかけて、SAPのERP事業について次のような一連の発表を行ってきた。

 07年3月にNECとSAPジャパンは、ERP分野における協業を強化するため、戦略パートナーとして共同事業計画に関する契約を締結した。NECではこの契約締結を機に、中国・東南アジア圏に進出する現地日本企業向けのSAP導入や運用サポート体制を増強し、販売強化を行う。中国でSAP事業を推進しているNECITマネジメント(中国)などアジア地域の4社の要員数を今後2年間で、現在の200人から500人にする。

 また、07年11月にはNECとSAPジャパンは、製造業向けソリューション領域において協業の強化の発表を行った。これは①「SAP NetWeaver」に精通したSAPコンサルタントの育成を行う「製造業eSOAソリューションセンタ」を20人体制で発足させる②「SAP NetWeaver」を活用し、「SAP ERP」と統合可能なソフトウエアを拡充した製造業向けソリューションを08年4月から提供開始する③RFIDと「SAP ERP」の相互活用ソリューションの開発の推進―からなる。

 そして、08年3月にはSAPの中堅・中小企業向けERPパッケージ「SAP Business One」を短期間、低コストで導入できる「業種別導入支援パック」に建築/工事業および繊維業を加え、全部で7業種と充実させた。このほか、06年6月にNEC製ソフト「Obbligato Ⅱ」と「mySAP ERP」の連携、06年12月にNEC、NEC情報システムズ、SAPジャパンの3社が、製造ラインの「見える化」で協業関係を発表している。

 NECとSAPジャパンは、このような協業関係を頻繁に行い、その上に立って今回のNECと独SAPとの提携関係が結ばれたことがよく分かる。もともとNECは独自ERP製品などで、製造業において多くのERPユーザー持っている。SAPとの一連の事業提携はこれらのノウハウの上に築かれたものだけに、その意味づけは他社との間に比べ、SAPにとって一層重いものになる。

 いま日本の大手IT企業の大きなテーマに一つに、いかにグローバル化を推進していくかが挙げられている。これまで日本の大手IT企業は国内需要一辺倒であり、内弁慶の最たるものだった。日本の自動車産業はいち早くグローバル化を実現したのに、日本のIT産業はグローバル化にからきし弱かった。この汚名を返上するには、「SAP ERP」事業でグローバル化を図るのが最善の方法だ。その意味で今後NECが「SAP ERP」事業でグローバル化をものにして、日本のIT企業もグローバル化できることを証明してほしいものだ。(ESN)

◇企業システム◇NTTデータなど6社が「非機能要求グレード検討会」発足

2008-04-20 16:14:52 | システム開発
 NTTデータ、富士通、NEC、日立製作所、三菱電機インフォメーションシステムズ、OKIの6社は、非機能要求(情報システムの応答速度などの性能や障害時の耐性など、システムの強度や品質に関するもの)の見える化と確認方法を共同研究するために「システム基盤の発注者要求を見える化する非機能要求グレード検討会(非機能要求グレード検討会)」を発足させた。同検討会において、非機能要求について、ユーザー(発注者)と開発ベンダー(受注者)の両者で共通の認識を持てるようにする方法を検討し、広く利用されることを目指す。09年4月をメドに標準案を策定して公開することにしている。(08/04/14発表)

 【コメント】情報システムを開発する際には機能要求と非機能要求を明確にし、ユーザーと開発ベンダーの間で確認しながら、開発を進めていく。ここでいう機能要求とは、業務フローや業務データとその処理方法のこと。また、非機能要求とは、業務データ処理量、応答速度、同時処理件数、さらに障害耐性などのことで、いわゆるシステム基盤のことだと思えばいい。特に非機能要求について、不十分な認識に基づいて開発した場合は、想定外の方法で運用しなければならなかったり、稼働後に問題が発覚した場合には、修正のためのコスト負担が増大する。機能要求については9社による「実践的アプローチに基づく要求仕様の発注者ビュー検討会」が、08/03/18に「発注者ビューガイドライン」を完成させ発表している。

 今回の「非機能要求グレード検討会」の発足の背景には、最近、特に金融機関で多発しているシステムダウンなどの問題があるといえる。東証の例のように、想定外のアクセスの急増によってシステムが動かなくなったりすることがある。これはユーザーと開発ベンダーとの間の意思疎通が十分に行われないために発生する。このようなことを回避するには、業界全体で標準化された基準を設け、これに基づいてシステム開発を行えばいいという結論になる。

 この意味からすると今回の同検討会の発足は、問題解決の第一歩が踏み出されたということはできる。しかし、問題点も内在している。その1つは“見える化”である。最近、猫も杓子も見える化を頻発するが、見える化=問題解決という図式に必ずしもならないケースもある点に注意すべきだ。システムが複雑になればなるほど見える化も複雑になり、この結果結局は見えないことに終わりかねない。要は何が重要で何が副次的要素かをまず仕分けてから、見える化に取り組むことが肝要だ。

 もう1つは現場との遊離に注意しなければならない点。現場はあすの仕事をこなさねばならない宿命を常に背負っている。そのため従来からの慣習を踏襲しがちだ。そんな中、業界標準を作ったから使えと頭から命令しても普及しない。大体、今回の検討会に参加している6社は、業界標準化案が作成された暁には、自社のシステム開発業務に本当に取り入れていくのかを確認してから作業に当たってほしいものだ。既に9社により発表済みの機能要求に対応した業界標準仕様「発注者ビューガイドライン」を、作業を行った9社が本当に自社業務に取り入れていくのか注目したい。(ESN)

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A6%81%E6%B1%82%E4%BB%95%E6%A7%98

◇企業システム◇マイクロソフトのOpen XMLがISO/IECで国際標準規格として承認受ける

2008-04-13 18:31:43 | アプリケーション
 マイクロソフトは、米マイクロソフトが推進してきたEcma Office XML文書フォーマットがISO(国際標準化機構)/IEC(国際電気標準会議)標準として承認されたことを明らかにした。これは14カ月以上にわたり集中審議を経て、Ecma Internationalが提出したOpen XML(Office Open XML)が全体の86%賛成により承認されたもの。これにより、Open XMLはHTML、PDF、ODFと並んでISO/IECによって認められたオープンな文書フォーマット規格となる。(08/04/02発表)

 【コメント】マイクロソフトのOfficeソフトがいよいよOpen XMLとして国際標準規格として承認された。これにより今後の世界のソフト産業に与える影響は計り知れない。これまでオープンソースソフトのODFが国際標準化され、マイクロソフトのOfficeソフトは国際標準化されていなかった。このため、特に各国の政府機関を中心として、ODFを採用して、マイクロソフトのOfficeソフトを不採用とするケースが目立ち始めてきていた。このことに危機感を募らせたマイクロソフトは、ジュネーブに本部があるヨーロッパ各国による国際標準化団体Ecma Internationalに働きかけ、Ecma Office XMLとしてEcmaすなわちヨーロッパ各国を中心とした国際標準化規格として認められルことに成功。しかし、世界全体としての標準化規格はどうしてもISO/IECにおいて認められなければ本物という認識が得られない。そこでマイクロソフトは、Ecma Office XML文書フォーマットをISO/IECに提出したが、これまでは承認を得られるまでには至らなかった。

 今回もOpen XMLが承認される可能性は五分五分と見られ、その結果が注目されていたが、マイクロソフトはようやく承認に漕ぎ着けることに成功した。これによって、マイクロソフトのOfficeソフトが国際標準規格でないという理由で不採用にされるケースはなくなる。なくなるどころか、お墨付きを貰ったマイクロソフトのOfficeソフトは、OSS系のODFに対し圧倒的に優位に立つことになる。それはOSSのOpen Officeはまだユーザーが少なく、これから唯一の国際標準規格のOfficeソフトとして普及を図ろうとしていた矢先のことであったからだ。唯一の国際標準規格のOfficeソフトという錦の御旗が使えなくなったOSS陣営が大打撃を被ることは確実だ。これにより、マイクロソフトのOfficeソフトが、半永久的に全世界の市場に君臨することになる。

 しかし、国際標準規格という言葉は一件疑う余地がないことのように思われるが、厳密に製品に反映されるとは、必ずしも断言できない。さらにデファクトスタンダード(事実上の標準)という言葉があるように、圧倒的なシェアを持つ製品は、それだけで国際標準と認められがちだ。すなわち国際標準と独自標準の境目があいまいになってくる。昔、UNIXの仕様がばらばらなので国際標準化の必要性が高まり、2つの陣営に別れ激しい標準仕様の戦いがあり、結局はUNIXの国際標準仕様化の目論みはもろくも崩れ去ってしまった。その1つの理由は、ある有力ベンダーが「いろいろあるUNIXの仕様をすべて包含した仕様を当社は採用したので、当社のUNIXが国際標準仕様そのもの」と主張し始めたことにある。ことほどさように国際標準規格というものは一筋縄では収まらない、複雑な事柄を内包している。その意味ではOSS陣営は、今回のマイクロソフトのOpen XMLの国際標準化にがっかりせずに、ODFこそが真の国際標準規格だというキャンペーンでも展開すれば、道は開けるかもしれない。(ESN)

http://ja.wikipedia.org/wiki/Office_Open_XML

http://ja.wikipedia.org/wiki/OpenDocument


◇企業システム◇サンがオープンソースDBソフト「MySQL」を発売

2008-04-11 19:21:24 | システム開発
 MySQLとサン・マイクロシステムズは、オープンソースDBソフト「MySQL」製品について日本語による技術解説の提供とサポートを開始した。これにより、世界で最も普及しているオープンソースDB「MySQL」の日本語環境を大幅に強化し、企業レベルでの利用を積極的に促進することにしている。また、現在のMySQLの販売チャンネルに加え、5月上旬からサンの販売チャンネルでもMySQLの販売を開始する。(08/04/09発表)

 【コメント】MySQLはこれまで1億以上のダウンロードの実績があり、PostgreSQLと並び世界で最も普及しているオープンソースDBソフトである。このスウェーデンのMySQL社を08年2月にサンが買収し業界を驚かせた。サンは独自OSのSolarisをオープンソース化するなど、OSSに対してはことのほか熱心であり、MySQL買収はサンから言わせると特別なことではないということになるのだろう。

 しかし、OSSサイドから言わせると大いに問題がある。一つはオープンソースソフトが1ベンダーの傘下に入って中立性が保てるかという問題。さらに、もう一つは、やはりOSS事業は経済的基盤が脆弱で、レッドハットなどを除き企業として維持できないのではないか、という問題だ。この2つの問題に対しての回答はもう暫く様子を見ないと分からない。しかし、日本ではOSS専門を鳴り物入りでスタートさせたソフト企業が買収されたり、会社更生法を適応されるなど、ベンチャー系のOSS企業の前途は必ずしも明るいとは言えない。これはOSSが普及するに従って大手が参入してきてベンチャー系が市場から締め出しを食らわされたためだ。

 一方、サンがMySQを買収した前向きの回答は、経済的基盤が確立できたことと、サンのこれまで開拓した販路を一挙に手に入れることができたことであろう。これにより、MySQLはPostgreSQLを抜き一挙にオープンソースDBの頂点に君臨できる可能性が出て来た。そこで、最後の決戦となるのはORACLEとの対決だ。サンはオラクル対策としてMySQLを買収したはずだ。基幹DBソフトについいてはこれまでORACLEが市場を独占してきた。独占というのは得てして弊害を伴う。IBMがメインフレームを独占した結果どうなったか。ユーザーが囲い込み戦略を嫌ってオープン化に走り、メインフレームは衰退してしまった。同じことがDBソフトにも当てはまるかもしれない。いずれにしてもこれからのユーザーはORACLEとMySQL(あるいはPostgreSQL)の優劣をしっかりと見極めて導入することが欠かせまい。そのことがユーザー、ベンダー双方にメリットをもたらすからだ。(ESN)

http://ja.wikipedia.org/wiki/MySQL

◇企業システム◇NTTデータなど9社が「発注者ビューガイドライン」完成

2008-04-06 20:12:43 | システム開発
 NTTデータなど9社は、「実践的アプローチに基づく要求仕様の発注者ビュー検討会(発注者ビュー検討会)」により検討し07年9月18日に公開した「発注者ビューガイドライン(画面編)」に続き、「発注者ビューガイドライン(システム振る舞い編)」「同(データモデル編)」を策定し、08年3月18日から「発注者ビュー検討会」公式ホームページで公開した。検討会各社は今後、同ガイドラインを積極的に活用することで顧客との認識の齟齬を減らし、コミュニケーションの円滑化を図ることにしている。なお、06年4月以降はその活動の中心を9社から「情報処理推進機構ソフトウエア・エンジニアリング・センター(IPA SEC)」に移行し、さらなる普及・改善を図ることにしている。(08/03/18発表)

 【コメント】最近のSI業界の大きな話題の一つに挙げられるのが、SI企業とユーザーとの相互の意思疎通の不十分さが引き起こすシステム構築にまつわるトラブルである。例えば最近の例としてはスルガ銀行が日本IBMに対して行った111億700万円に上る損害賠償請求訴訟事件が挙げられる。スルガ銀行側では「04年9月に『新経営システム構築プロジェクト』を開始し、システム開発を日本IBMに委託したが、日本IBMの債務不履行により経営システムの開発を中止せざるを得なくなったことに対して、当社が被った損害の賠償を求めたもの」としている。ことの真実は今後裁判で明らかにされようが、SI企業(日本IBM)とユーザー(スルガ銀行)の間の意思疎通が上手く行ってなかったことが原因と思われる。このほか最近の事例としては東京証券取引所の株式売買システムの一時売買停止事件があった。これは必ずしもとSI企業(富士通)とユーザー(東証)の意思疎通の問題とは違うかも知れないが、株式売買という業務を富士通側が十分に把握していたかどうか、疑問が残る。

 このように、SI企業とユーザーの意思疎通を取ることは非常に難しい問題だ。この背景にはSI企業側では、多少業務内容が不明確でも、今期中の売上げ達成のために受注契約を最優先して、詳細のシステムの詰めは後からということに走りがちだ。一方、ユーザー側ではSI企業側が自分達の業務を十分に把握しているとはやとちりして、後でSI企業側の不認識を知ることが往々にある。このような行き違いをなくそうとNTTデータ、富士通、NEC、日立製作所、構造計画研究所、東芝ソリューション、日本ユニシス、OKI、TISの9社が集まりガイドライン作りをしてきたのが「発注者ビュー検討会」である。この検討会の趣旨は誠に正しく、是非ガイドラインの実施に向けて動き出してもらいたいものだが、そうは簡単に話は終わりそうもない。東京都が中小企業への銀行の貸し渋り対策として新銀行東京を設立した問題と似てくる。つまり、趣旨は正しいのだが、本当に実現できるのかという問題だ。

 よく、国際標準化案に準拠しているといいながら、実は自社製品では独自仕様を提供しているということが往々にしてある。今回のガイドラインも、今後ガイドラインに沿ってSI事業を展開したいといいながら、自社のシステム構築では従来と変わっていなければガイドラインを作った意味がない。建築業界も姉歯事件が表面化する前までは、制度ができているので問題が生じることはないと思っていた。何事も制度を作ってもそれを実行しなくては、制度を作らないのと同じだ。果たして今回ガイドラインを作った9社は、自社のシステム構築事業に今後、今回のガイドラインを全面採用していくのか。その意味からすると、今回ガイドラインを作った9社の社会的責任は決して小さくないと思うのだが。(ESN)

◇企業システム◇NECがSaaSプラットフォーム提供事業を発表

2008-04-02 20:01:51 | システム開発
 NECは今年9月末から、SaaSを中心としたサービスプラットフォーム提供事業を開始する。同事業は①アプリケーションサービス領域②プラットフォームマネージドサービス領域―の2つの領域でのサービスを提供するもの。アプリケーションサービス領域では業種・業際に特化したパッケージソフトウエアのSaaS化を実施する。また、プラットフォームマネージドサービス領域では、アプリケーションの開発から運用までのサービスのライフサイクルを支援するトータルサービスとして提供する。このほか、今回パートナー支援の新制度「SaaSビジネスイノベーションプログラム」をスタートさせる。同プログラムは、パートナーに対するサポートのみならず、アプリケーションベンダーによるSaaS事業化への移行支援も行うことにしている。(08/03/31発表)

 【コメント】SaaSは、OSS、仮想化に続き出て来た新技術だ。今は何かというとSaaSが話題に上るが、その実態はというと、はなはだ心もとない。もともとASPがあり、以前からソフトウエアのオンラインによる提供はあったわけであり、OSSや仮想化ほどの目新しさはないといってもいいほどだ。もし、違いがあるとすれば、①シングルシステム・マルチテナント②マッシュアップの2点を挙げる人がいる。シングルシステム・マルチテナントは昔のTSSみたいなもの。そしてマッシュアップは複数のソフトを組み合わせ1つのソフトのように扱えるもので、現在スイートと呼ばれているような一連のソフト製品のこと。問題は、ASPがカスタマイズできないのに対して、SaaSはできるとする主張だ。果たして事実なのか。一つのシステムを複数のユーザ^が共有して、しかも自由にカスタマイズ可能というのは、ちょっと無理があるように思える。

 SaaSが威力を持つのは、例えば法令の改正がしばしな行われ、1ユーザーごとに対応するのが大変な場合などだ。また、鉄道路線や運賃など日本に1つ作っておいて、それを皆が利用すれば、相互に有益なシステムが構築可能となる。つまり、SaaSは、有効なアプリケーションとそうでないアプリケーションが明確となる。ところが現在のSaaSブームは、それらをごっちゃにして論じられるから、実態が見えてこない。ハンディターミナルは運輸業とか製薬業、生命保険、コンビニ・スーパーなどでは必須のツールとして定着しているが、いわゆる、モバイル端末とは一線を画している。それと同じように、一般のパッケージソフトとSaaSはやはり違う。SaaSはハンディターミナルように特定のアプリケーションには必須のツールとなりうる可能性を秘めているが、一般のパッケージソフトとは置き換わらないのではないか。

 この根拠となる点はいくつかある。一つは前に触れたカスタマイズの限界が挙げられる。1ユーザーごとに特化したカスタマイズがどこまで可能か未知数だ。また、回線がダウンしたらどうなるのか。このことを考えると基幹システムへのSaaS適用は慎重にならざるを得ない。もう1つは価格の点だ。これまでパッケージソフトとの価格の差はどうなるのかが、現時点では見えてこない。SaaSの価格が安くなると、これまでパッケージ販売をしてきたディーラーは黙ってはいまい。そうなるとSaaSの価格が安いという保証はどこにもない。ここまで考えると、今のSaaSブームをもっと覚めた目で見る必要性が出て来よう。(ESN)