企業システム・レビュー・ネット

企業経営を左右する企業情報システム(経営+ITソリューション)のデータバンク作りを目指す

◇企業システム◇日本IBM が大量並列処理を可能にするソフトを提供開始

2010-03-31 09:46:27 | システム開発

 【システム開発】日本IBMは、株価や売り上げ、計測機器からなど、刻々と変化する複数の情報を並行して瞬時かつ複合的に分析することにより、最新の状況に即した的確な意思決定を支援するソフトウェア新製品「IBM InfoSphere Streams V1.2.0(インフォスフィア・ストリームス)」を提供開始した。「InfoSphere Streams」は、Eclipse 3.4 ベースでストリーム・アプリケーションを開発するための統合開発環境「InfoSphere Streams Studio」と、高度なスケーラビリティーを提供する「InfoSphere Streams Runtime」、ツールキットおよびアダプターで構成。 新製品は、最大125ノードまで柔軟にハードウェアを拡張でき、また変動するあらゆるデータのイベントを同時処理し、1秒間に160万件の情報を処理できた例もある。(日本IBM:10年3月26日発表)

 【コメント】これまでコンピューターシステムは、高速高速処理の歴史を辿ってきた。これによって膨大なデータを一括処理するという、長年の夢を現実のものとしてきた。しかし、一方では、複数の要因によって並列的にデータが刻々と変化するような処理には、これまで有効な手段が、一般的には現実化されてこなかった。

 今回、IBMは長年の懸案だったこれらの並列的大量一括処理の解決の道をつけることを可能にした「ストリーム・コンピューティング」の新しい技術の開発に成功したのである。この「InfoSphere Streams」は、ストリーム・コンピューティングを実現するミドルウェアで、約100人のIBM研究員が7年間に渡り、200を超えるIBMの特許を基に開発してきたもの。「InfoSphere Streams」を使用すると、例えば、山火事が発生する地域で、煙のパターンや天候予測データ、衛星写真などのデータを瞬時に分析することで、警察や消防機関が市民の避難通告などに関し、より的確に判断することを支援する。また、遠隔地の患者の心拍数、血圧、不整脈などの変動するあらゆるデータを瞬時に分析し、患者の状態に応じて、適切な処置を指示することが可能になる。

 IBMは、地球がより賢く進化していくことを示す「Smarter Planet」というビジョンの下、新しい情報活用の考え方である「New Intelligence(ニュー・インテリジェンス)」を提唱している。「New Intelligence」は、「状況を察知して対応する」から「起こるであろうことを予測して意思決定を行う」という新しい情報活用で、次に何がくるかを予測することで、ユーザーは先を見通し、より賢明な意思決定を行うことができるようになる。この新製品は、ユーザーが「New Intelligence」を実現する上で、重要な製品のひとつとなるもの。

 「InfoSphere Streams」がカバーする領域は、どちらかというと、これまでベテランの勘に頼ってきたような分野だ。これらの分野をコンピューターシステムに置き換えが可能となるということは、新しい役割を企業システムに盛り込ませることが可能となってくる。山火事の煙の予測や医療データの大量・高速伝送が可能ということは、消費者の購買予測や新商品開発の際のシュミレーション開発にも十分適応可能という感じを抱かせる。企業システムは、これまでのように業務システムのルーチンワークの処理が中心であった時代から、今後はビジネス戦略のツールとしてコンピューターシステムを駆使する時代へと、その役割が変わりつつあるようだ。(ESN)


◇企業システム◇イベント/セミナー

2010-03-30 09:24:10 | イベント/セミナー情報

 

               <イベント/セミナー情報>


テーマ:日本電子出版協会 EPUB説明会<申し込み>

会場:日本教育会館 9階 飛鳥の間(東京都千代田区一ツ橋2-6-2)

日時:10年4月7日(水) 午後4時(講演)/午後6時(懇親会)

料金:無料

主催:日本電子出版協会 

内容:Google、Apple、Adobe、SONY、B&Nなどが採用した、文書フォーマット
EPUBについて、その概要と日本語拡張案の説明。


◇企業システム◇日本生命が盗難されても遠隔操作でデータを消去できる富士通製PC導入

2010-03-29 09:27:25 | セキュリティ

 【ユーザー】日本生命は、営業職員用新携帯端末として、遠隔操作によりデータを消去する「CLEARSURE(クリアシュア)」機能を搭載した富士通製コンバーチブル型ノートPC約5万台の導入を決定し、12年1月より順次配備する予定。富士通の紛失・盗難対策ソリューション「CLEARSURE」は、PCに内蔵された専用通信モジュールにより、PHSネットワークを利用した遠隔操作でPC内蔵のハードディスク内にあるデータをすべて消去することが可能となる。万が一、端末が盗難にあった場合や紛失した場合でも遠隔操作でデータ消去が可能であるため、高い確率で情報の漏えいを防止することができる。営業職員用携帯端末への「CLEARSURE」機能の搭載は、業界初の取り組み。(富士通:10年3月25日発表)

 【コメント】セキュリティ対策は、考えれば考えるほど難問が潜んでいる。これまで、企業システムは、アウトソーシング化の動きが強く行われ、この結果、各企業ユーザーは自社のホスト機やサーバー類を外部のセンターに委託するわけだが、ユーザーは自社に近いセンターを選択する。この理由は、何かトラブルが発生した場合に直ぐに駆けつけられるためという。ところが、今後クラウドが普及すると、世界のどの国のサーバーで自社のデータが保管されているのか分らないのが普通。直ぐに駆けつけられるセンターどころの話ではなくなるから恐ろしい。

 最近の事例では、グーグルの中国市場からの撤退が世間の耳目を集めた。グーグルのサーバーが中国人のハッカーのために攻撃を受けたり、中国政府から検閲を受けたりの行為に、グーグルが中国撤退を決断したのだ。もともとインターネットは、研究機関同士の相互ネットから生まれた技術で、分散化が基本だ。一カ所の物理的破壊行為には強いが、その分、ネット内に入り込みやすい体質を生まれながらに持っている。だから、インターネット上でのデータのやりとりなどは、公道上で大きな声で話しているのと同じで、それを立ち聞きした方が悪いとは、一概に言えないという人もいるほどだ。

 今回、日本生命が導入した富士通の紛失・盗難対策ソリューション「CLEARSURE」は、従来のセキュリティ対策製品とは一味も二味も違うところが注目される。特長として挙げられるのは次の3つ。1.PHSネットワークを利用した遠隔操作で、盗難や紛失にあったPCのデータを消去 2.電源オフの状態でもデータ消去が可能(世界初)であり、PCがどこにあっても高い確率で情報漏えいを未然に防止 3.PCのデータを消去した時点で、結果レポート(消去実行内容、位置情報、最終利用日時など)を自動的に発行。

 「データをすべて消去する」とは、次のようなことを意味する。「CLEARSURE」における「データ消去」機能とは、暗号化機能付HDDにおいて、暗号化されたデータを復号するための暗号鍵を消去することにより、当該HDDに保存されたデータを復元できなくするもの。ノートPCのバッテリーが残っている状態およびPHS電波の届く場所(圏内)であれば、PCの電源状態に関わらず遠隔操作による消去コマンドの受信が可能となる。最近、データを社外に持ち出し、紛失するケースが多発しているが、パソコンが戻ってこなくてもデータを消去できれば最悪の事態は回避できるのだ!(ESN)


◇企業システム◇イベント/セミナー情報

2010-03-26 09:28:03 | イベント/セミナー情報

 

               <イベント/セミナー情報>


テーマ:IT資産の見える化・イブニングセミナー<申し込み>
      ~「成長に向けての変革」 今だからこそ取り組む 「IT資産の見える化」~

会場:エクサ 本社 東館 13F(神奈川県川崎市幸区堀川町580 ソリッドスクエア東館<総合受付 13階>)

日時:10年4月15日(木) 午後3時―7時

定員:20人

料金:無料

主催:エクサ

内容:昨今の急激な経済環境のなか、企業は柔軟かつスピーディーな対応が求められており、経営の中核となっているITは変革が急務な状況となっている。システムの統廃合、システムの再構築、システムの最適化など、経営課題に取り組んでいる企業は少なくない。ところが、複雑化したシステムにより、現状はどうなっているのか、どこから、どのように手をつけたら良いかわからないのが実情。ITの変革を先導するためには、まずはIT資産の「見える化」が必要となる。同セミナーでは、アプリケーション資源にフォーカスし、「アプリケーション資源の見える化」と「データベースの見える化」を紹介する。


◇企業システム◇イベント/セミナー情報

2010-03-25 09:29:30 | イベント/セミナー情報

 

                <イベント/セミナー情報>


テーマ:~JISA グローバルビジネス・シンポジウム~<申し込み>
        「日本のITサービス産業の国際展開-日本の強みは何か」

会場: 経団連会館 4階 ダイアモンドルーム(北)(東京都千代田区大手町1-3-2)

日時:10年4月26日(月) 午後1時15分―6時

定員:150人

料金:会員一人   3,000円/一般一人 10,000円

主催:情報サービス産業協会(JISA)(後援:日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)/コンピュータソフトウェア協会(CSAJ))

内容:同シンポジウムでは、グローバル化の重要性を再認識し、日系グローバル・ユーザーの情報化ニーズの一端を紹介するほか、すでに国際展開を行っているベンダーの多様なアプローチについてパネルディスカッションを行う。日本のITサービス企業の経営者が、グローバル市場における自社の強みは何かを考え、自社に最適なグローバル化対応について検討するための参考とする。


◇企業システム◇旅行業のトップツアー、グーグルのクラウド・サービス「Google Apps」を採用

2010-03-24 09:26:57 | ユーザー

 【ユーザー】トップツアー(本社:東京都目黒区、社長:石川邦大)は、このほど伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)を通じ、CTCが提供するクラウド・ソリューションを導入し、社内営業システムを一新する。トップツアーはすでに社内に、メール・グループウエアを含む営業管理システムを構築し運用しているが、業務の主力である渉外営業の機動性、効率性をさらに高め、顧客サービスの向上をはかるため、システムの一新を図ることとし、さまざまなメール、グループウェアシステムを検討してきた。その結果、既存のデータを移行し、機能を拡張する事が容易で、コスト削減がはかれ、営業担当者が携帯電話や携帯端末からアクセスできるなど柔軟に対応が可能な、グーグルが提供するクラウド・サービス「Google Apps」の採用を決定した。これにあたり、クラウド・サービスの実績豊富なCTCがシステムの導入を担当した。(伊藤忠システムソリューションズ:10年3月16日発表)

 【コメント】企業がクラウドを導入することは、最近ではそう珍しいことではなくなったが、いざ具体的にクラウドを導入しようとすると、どこから手を付けていいか、皆目分らないユーザーも少なくないはずだ。果たして、セキュリティは大丈夫か?などと次々に疑問が生じてきてしまう。この解決方法は、「できるところから手を付ける」ということにつきよう。ここで最も手っ取り早く、成果も現れやすいのが、グーグルが提供するクラウド・サービス「Google Apps」の採用である。これなら、セキュリティもそう気にせず、導入効果も測定しやすい。

 今回、トップツアーは、この方法を採用し、パートナーとしてCTCを選択した。CTCはグーグルが提供するクラウド・サービス「Google Apps」についてはプロであり、「Google Apps」のノウハウがない企業ユーザーの選択としては正解だろう。今回同社が導入したシステムは次の通り。①営業の作業効率と機動性を高め、顧客へのサービスを向上=営業担当者は、社外から携帯端末を使用してメール・スケジュールなどが確認でき、作業効率が大きく向上②全営業担当者がスマートフォンを活用=「Google Apps」で構築した社内専用サイト内の必要な情報をスピーディに検索できたり、既存システムのデータ照会を社外から可能にする③拡張性の向上とコスト削減=クラウド・サービスの導入により、最新の機能をいち早く導入することが可能となる。このため今後既存の機能に加え、動画共有、ドキュメントなどの新機能も順次導入していく予定。

 トップツアーでは、今回クラウドとして「Google Apps」を導入したが、同時にスマートフォンを導入したことにも注目したい。スマートフォンは、携帯電話とは異なり、基本的にはパソコン機能をベースとしているもので、より高度な情報の提供や検索には威力を発揮できるはず。これからの企業システム構築には、最新の情報システムをいかにビジネスに取り込むかが、課題となろう。ブログなども単なる日記の公開手段と決め付けるのではなく、社員同士の最新データのやり取りに使うことで、一味違うシステムが構築できよう。今話題のツイッターもやりようによってはビジネスでも使えるのではないだろうか?

 ところで、クラウド時代が到来すると、各企業の情報システム部門のあり方が根本的に見直されることが十分に考えられる。もう、従来の情報システム部門の考え方では、通用しない面も少なからず発生してくる。その一つは、国際化であろう。クラウドではサーバーがどこにあっても一向に構わない。そうなると、海外のサーバーでデータを処理することが出てくる。これからの企業システムの構築の基本はクラウドで、どうしてもクラウドで処理できないものだけを自社サーバーで、という時代が直ぐそこまで近づいてきているのかもしれない。(ESN)


◇企業システム◇イベント/セミナー情報

2010-03-23 09:32:55 | イベント/セミナー情報

 

               <イベント/セミナー情報>


テーマ:クラウド・サービスで実現する新ビジネス・スタイル事例セミナー<申し込み>
      ~Googleエンタープライズサービスの有効活用で効率化とコスト削減を実現!!~

会場:日本ヒューレット・パッカード 本社(東京都千代田区五番町7番地)

日時:10年4月22日(木) 午後1時30分―5時30分

定員:80人

料金:無料

主催:伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)(協賛:グーグル、日本ヒューレット・パッカード)

内容:CTCは現在、クラウドのリーダーであるGoogleが提供するクラウド・サービスと、日本HPが提供するシン・クライアント・ソリューション、そしてCTCが提供するクラウド・インテグレーション・サービスにより、ユーザーのニーズに柔軟に対応している。Googleが提供するクラウド・サービスには、メールやグループウェアなどの機能を提供するGoogle Appsや、企業向け地図情報サービスのGoogle Mapsなどがある。今回提案するソリューションとサービスは、クラウドを活用することによるTCOの削減だけではなく、企業における新しいビジネス・スタイルをご提案し、また、CTCの最新ユーザー導入事例も含めて紹介する。


◇企業システム◇イベント/セミナー情報

2010-03-18 10:44:18 | イベント/セミナー情報

 

                <イベント/セミナー情報>

テーマ:クラウドコンピューティングと企業システムの最適解!<申し込み>
       ~失敗しないセールスフォースの導入・構築事例のご紹介~

会場:パナソニック電工インフォメーションシステムズ 八重洲オフィス セミナールーム (東京都中央区京橋1丁目6番1号 三井住友海上テプコビル4階)

日時:10年4月21日(水) 午後3時―4時55分

定員:30人

料金:無料

主催:パナソニック電工インフォメーションシステムズ(共催:ケイズコーポレーション〔セールスフォース・ドットコム認定 インプリメンテーション(コンサルティング)パートナー〕)

内容: 実際にクラウド・コンピューティングの導入に踏み切るには、まだまだ心配という企業も多いのではないでしょうか?同セミナーではクラウドの代表格となっている SalesForceCRMの導入に失敗しないポイントと構築事例&デモ、ESBによるシステム連携デモを交えながら、企業が景気低迷を勝ち抜くために必要な企業システムの最適解についてご紹介する。


◇企業システム◇イベント/セミナー情報

2010-03-18 09:35:22 | イベント/セミナー情報

 

               <イベント/セミナー情報>


テーマ:~万全の情報漏洩対策とコンプライアンス実現の切り札!~
       シンクライアント&仮想環境ログ管理セミナー<申し込み>


会場:アキバプラザ 7F プレゼンルーム(東京都千代田区神田練塀町3富士ソフト秋葉原ビル)

日時:10年4月13日(火) 午後2時-4時50分

定員:50人

料金:無料

共催:アイベクス/シトリックス・システムズ・ジャパン/エム・ピー・テクノロジーズ

内容:他社よりも一歩先に万全の情報漏洩対策を講じ、しっかりとしたリスクマネージメントを行うことは、将来を見据えた上で、経営上、大きな優位性となりうる。今回のセミナーでは、「情報漏洩対策とコンプライアンス実現という課題を解決するデスクトップ仮想化とログ管理」を大きなテーマに、その最先端技術や、導入事例、スムーズな導入のヒントなどを詳説する。


◇企業システム◇静岡大学が学内情報基盤システムを全面クラウド化

2010-03-17 09:29:04 | ユーザー

 【ユーザー】静岡大学は、学生及び教職員 約13,000名が使用する学内情報基盤システムを全面的にクラウド化し、運用を開始した。これは、大学内に存在するサーバ約850台、業務用端末約7,000台をクラウド化する国公立大学としては初めての例となる。学内情報システムを全面的にクラウドコンピューティングに移行することで、従来のシステムと比較して13年度までに消費電力90%以上、IT投資コスト80%以上の削減が可能になる。NTT西日本静岡支店と伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)が同システムの構築を担当。(静岡大学/伊藤忠テクノソリューションズ:10年3月15日発表)

 【コメント】クラウド・コンピューティングの波が本格普及に向け、さらに速度を上げているように感じられる。あたかも今話題の津波のようでもある。今回のチリ地震による津波は、日本にも押しかけてきたのはご存知の通り。実際の体験者の話では、津波は通常の波とはぜんぜん違い、何か底深くから押し寄せる感覚で、大変恐ろしいものだという。IT界にあって、これまでいくつものブームが到来し、その都度ユーザーは右往左往させられてきた、苦い経験をお持ちだと思う。しかし、今回のクラウド化は、従来のブームとは異なり、何かもっと深いところから押し寄せてくる、新しいうねりみたいなものに感ぜられる。やはり、クラウド化は通常の波でなく、既存の概念を覆す津波のようなものかもしれないのだ。

 例えば、全国の自治体においてもクラウド化への関心が高い。総務省は、平成21年度から自治体クラウド開発実証事業開始を発表した。同事業は、地方公共団体の情報システムをデータセンターに集約し、市町村がこれを共同利用することにより、情報システムの効率的な構築と運用を実現するための実証実験である。これは、地方公共団体において、クラウドコンピューティングをはじめとする昨今のICTの活用や、情報システムの一層の共同利用の推進について関心が高まっていることを受け、総務省においてもポータルサイトを開設することとしたもの。 今後は、開発実証事業の進捗状況をはじめ、自治体クラウドに関係する情報を発信していく予定となっている。

 このようにクラウド化の流れは、官公庁や一般企業のほか、各教育機関にも押し寄せようとしている。この代表的な事例が静岡大学だ。静岡大学では07年より、グリーンIT、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)、BCP対応、ITコンプライアンス、コストの最小化、J-SOX対応など様々な課題に対応したシステムの刷新を検討してきた。09年までの3年間に環境負荷及び投資コストについての詳細な調査を行ったところ、大学内ネットワークに接続されている情報機器は、パソコン約7,000台、Webサーバ552台、研究開発用サーバが300台以上存在し、サーバや端末は組織ごとに調達しているためリソースがうまく活用できていないこと、また、IT機器がキャンパス内に分散設置されていたため、大容量空調設備や大規模受電設備、多数の無停電電源装置などが存在し、運用環境においても効率化できることが判明、IT機器全体では全学の15%に相当する、年間233万kWhの電力が消費され、885トンのCO2が排出されていることが推定できた。

 この対策として同学では次のようなクラウド化を採用することとした。①プライベートクラウドコンピューティングセンター(PRCC)の設置=キャンパス外のデータセンターに静岡大学専用のPRCCを構築し、キャンパスとは10Gbpsの大容量光ケーブルで接続②パブリッククラウドコンピューティングセンター(PBCC)の設置=ホームページやSNS、ブログ、研究用サーバなどについては一般向けサービスを行う PBCCを想定し、処理能力や情報セキュリティなど多くの項目について調査・検証を行った結果、Amazon EC2など世界中の数十種類のクラウドサービスから最適なものを選択して使用する形態に変更③パソコンのクラウド化=学内にある7,000台のパソコンのうち、1,100台をシンクライアントに置き換えるとともに、使用時間以外はシンクライアントを完全に電源オフにする装置を設計、運用も確立し年間総合電力を低減するように工夫した④ストレージのクラウド化=教職員全員のパソコンデータのハードディスク内のデータを全て移行できるクラウドストレージを整備。現状では1人あたり20GBを割り当てているが、13年までに80GBまで拡張する。(ESN)