花森えりか My Room

─愛と官能について語る部屋─

別れの理由

2010-05-16 10:51:56 | 告白手記
 何故、別れたいのか、彼にはあまり理解できなかったらしいんです。
 いい奥さんになる自信がなくなったから、という理由では。
 最初から、いい奥さんになれなくても、少しずつ覚えて慣れていけばいいと、彼は言ったんです。
 彼を嫌いになったわけではないし、喧嘩したわけでもないから無理もないことと言えるかもしれません。
 彼への愛が消えていないこと。
 彼に抱かれたい欲求も消えていないこと。
 それらは、ちゃんと伝えました。
 言えなかったのは、他に愛する男性がいて、抱かれてしまったこと。
 2人の男性から同じ時期に抱かれることに抵抗感みたいな気持ちがあったんです。みたいな気持ちというのは、心だけでなく、身体の感覚もという意味なんです。
 セックスは1人の男性とだけ行うもの、という考え方をしていて、ちょっと話が飛躍しますけど、そのころ読んでいた翻訳小説や映画の字幕で、娼婦、という文字を眼にすると、ドキンとするほど衝撃を受けたんです。
 不特定多数の男性に抱かれるその目的はお金とわかっています。その行為を、嫌悪するとか反発するとか不潔感を覚えるとかいうのとは違って、何故、そういうことができるのかという不思議さです。悪い事には思えないんです。だからといって経験してみたいとは思いません。生きて行けなくなるほど食べ物を買うお金がなくなったら、その行為も無理はないと私には思えるんです。他に仕事がなければですけど。
 不特定多数の男性との行為、というより、多くの男性に抱かれること。それは想像もつかない、と言ったらオーバーかもしれないし、想像力欠如人間みたいですけど、想像はできても現実味のない想像ということになってしまうんです。
 身体の交じわりは1人の男性とだけ行うのが自然、という考え方をする私には、多数どころか、2人の男性とする、ということさえ抵抗感みたいな気持ちと感覚があったんです。
 そんなところが、私って、純粋というか純情というか真面目人間と言えるかもしれないと自己分析したりするんですけど。
 もちろん、読んだり書いたりする小説の世界は別です。不倫小説。裏切りセックス。復讐セックス。快楽追求セックス。官能小説。愛欲小説。小説はすべてフィクションですから。現実ではないのですから。
 もちろん、私にとっては、ということであって、他の女性たちは違うかもしれません。たとえば歴史上の人物だって、同じ時期に1人の男性とだけ身体の交じわりをしたのではない女性もいるようですし──。

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