花森えりか My Room

─愛と官能について語る部屋─

秘めごとの醍醐味

2013-10-02 13:55:56 | P子の不倫
「セックスって、変態の要素があるからこそ、楽しさ倍増、快楽も深まるのよね」
 P子が、そう言うんです。
「変態ね……」
 ほかの女性の言葉ならギョッとするけれど、彼女なら言いそうなことなので、驚きません。
「前戯して挿入して腰揺すってイクだけなんて、性欲発散か生殖手段の行為にすぎないわ」
「で、変態って、どんな?」
「そうね、たとえば、あたし、愛する旦那様がトイレに行くと、一緒にトイレ入っておしっこするとこ見たいのよ。それって一般的には変態に思われるでしょ」
「男が排尿する姿を見たいなんて、確かに変態」
「でも、あたしにとっては自然反応、ううん、本能みたいなもの。男性がトイレに行こうとするのを見ただけで、反射的に体の奥が熱くなっちゃうのよ。その男性が右手か左手で、ズボンと下着の股間からペニスを取り出して……って空想が、一瞬にして浮かんじゃうの」
「P子らしいわ」
「愛する旦那様だと、よけい我慢できないわ。もう見たくて見たくて。だけど、それって愛する旦那様に刺激されたっていうか教えられたのよね。愛するひとの放尿の姿を見る歓びを」
「彼もそれが好きってわけね。変態同士で結構なこと」
「あたしがトイレ行く時、おしっこするのを見せてくれって言うんだもの。最初は驚いたわ」
「それで」
「恥ずかしかったけど見せたわよ。あたしの秘部を覗き込んで愛する旦那様は満足。それで、あたしも、お返しに見せてもらったの」
「誰も見てるわけじゃないから、いいんじゃない?」
「見るだけじゃなく、ペニスを指でつまんで、おしっこしてもらったの。『そんなに強くつまんだら出ないよ』『こうお?』『うん』『あ、出た! 可愛い!』『バカ、何が可愛い』なんてやり取り。カタチンじゃなくフニャチンのペニスが可愛くて、いとしくて、イヤラシくて。もう最高に楽しいわ。ベッドに戻ったら性的昂奮状態で、前戯みたいになっちゃって。これこそ男と女の秘めごとの醍醐味よ」
「秘めごとの醍醐味ね」
「最近は、時々だけどね。一時期、よくやったわ」
「それは、しょっちゅうやってれば飽きるでしょう」
「でもね、この間、愛する旦那様が、『さっき、おれ、トイレ行ったか』なんて聞くから、一瞬、ギクリとしたわ。30分前に行ったばかりだから」
「ある程度、おトシになれば、考え事なんかしてると、少し前の行動を忘れることってあるけどね」
「そうだと思うけど。それで、あたし……」
 P子と不倫相手の彼、以下のようなやり取りしたらしいんです。
「仮眠する時ベッドに入る前に行ったわよ。また行きたいの?」
「うん」
「じゃ、早く行って、早く。オシッコ我慢してると健康に良くないわ」
「前立腺肥大かな」
 自問するみたいに呟きながらトイレへ行く彼。一緒にトイレに行こうとしたら、メール着信。スマホを手に操作しながら、
「それ、病気じゃないんでしょう? 前立腺肥大って」
 トイレへ向かう彼に、そう聞くと、
「病気じゃないよ」
 歩きながら廊下から答えて、やがてトイレから戻って来ると、
「男はトシ取ると、みんな前立腺肥大になるんだって」
 そう言ったらしいんです。
「ビール飲んだ後でもあるしね。男性は加齢による自然現象で前立腺肥大になると尿道が圧迫されて、おしっこが近くなるっていう知識があったから、心配してないの」
「前立腺は病気になってもリスクは高くないって言うしね」
「それより赤い玉が出ちゃったらどうしようって心配だわ」
「赤い玉? ああ、男性の精液がこれでおしまいっていう最終通告ね」
「中折れになったって持続力イマイチだって、男らしくお立ちになって、あたしを100%じゃなくても満足させてくれて、お果てになってくれれば、あたしはそれで幸せなの。それなのに、いつか、つい、ひどいこと言っちゃったの」
「何て?」
「立たないペニスなんて、ペニスって言わないわ! って」
「それは、彼、傷ついたでしょう」
「サラリと、こう返してきたわ。じゃ、何て言うんだい、って」
「ふふふ、それで」
「おしっこホース! って言ったの」
「お、おしっこホース?!」
「ホースっていうほど長くないけどね。愛する旦那様、おかしそうにケタケタケタケタと笑って、あたしを抱き締めて、
『おしっこホースにならないように頑張るよ』
 って言うから、そのやさしさに、胸が熱くなって後悔してゴメンナサイって謝ったの。その夜は就寝前に、神様に懺悔したわ」
 真顔でそう言うP子に、噴き出してしまいました。