花森えりか My Room

─愛と官能について語る部屋─

愛の初体験のセリフ

2009-07-20 10:31:19 | 告白手記
 私が痛みをうったえたからといって、愛の交わりを始めようとした男性が中断なんてするわけはないと、普通だったら考えることでしょう。男性の欲望というのは、そんなものではないと。やめるにやめられないのがセックスであり、性的欲望というものではないかと。
 でも、彼は本当に、そんな男性だったんです。何がなんでも、自分の欲望を遂げる、とか、男の欲望を抑制できない、自制できない、というタイプではなかったんです。
 その意味では、性的にわりと淡泊だったと言えるかもしれません。
 その、性的に淡泊なところに、私は惹かれたのかもしれません。安心感、というか、肉親愛に近いものを、その初体験の時、彼に感じていたのは間違いないのですから。
 もともと、あまり<男性>を感じさせる男性って、苦手だったんです。それは現在も同じで、たとえば、筋肉隆々とした体型の男性とか、おヒゲとか胸毛とか、野太い声とか、そういう男性は客観的に見たら男らしくセクシーということになるでしょうけど、私はちょっと苦手なんです。
 それで……。私の初体験の相手は、12歳年上で、そのくらいの年齢差はそう珍しくないかもしれませんけど、私にとっては、絶えず、その意識があったんです。
 だからこそ、普通だったら、やめるにやめられない愛の交わりの始めに、「痛い? やめようか?」なんて反射的に、やや声をうわずらせてですけど口走ったりするような彼を愛したのでしょう。
 たとえば、この時、彼が、「痛くても我慢してね、すぐ終わるから」とか、「これが男と女が愛し合うってことなんだよ」とか、「好きだよ、愛してるよ、永遠にぼくのものだ、一生離さない!」なんて言ったら、どうだったでしょう。この3つのうち、
 ──好きだよ、愛してるよ、永遠にぼくのものだ、一生離さない!──
 このセリフが最高ですね。でも、こんなセリフを口にできる男性は、あまりいないかもしれません。
 けれど、私にとっては、「痛い? やめようか?」のセリフが、
「痛い? 愛してる○子に、痛い思いなんかさせたくないから、やめようか? 永遠にぼくのものなんだから」
 を縮(ちぢ)めた言葉に思えて、結構、満足してるんです。
 

愛の行為の瞬間

2009-07-13 10:12:04 | 告白手記
 とうとう、愛の初体験の、忘れ難いその瞬間がおとずれて──。
 予想以上の激痛に、思わず小さな悲鳴に似た叫び声を発してしまったんです。
 そうしたら、彼は、「痛い? やめようか」って、少しうわずったような声で言ったんです。
 またしても、「やめようか」です。
 2度目のそれは、かなり切迫感のあるような、もう、本当にその行為をやめようと決断したみたいな口調だったんです。それはそうです。本当に痛そうな声で「痛いっ!」って小さな叫びをあげたのですから、彼が反射的に本能的に行為を中断するのが自然な心理であり成り行きというものでしょう。
 けれど私も反射的に本能的というか衝動的に、
「イヤ、やめないで!」
 そう口走って、またしても彼にしがみついていったんです。
 思い出すと、おかしくなります。
 彼はよほど、やめたかったのでしょう。
 私は、心と肉体の葛藤の一瞬後、どうしてもやめないで欲しかったのでしょう。

心と肉体の葛藤

2009-07-06 10:34:45 | 告白手記
 どんなことでも初体験というのはワクワクするし、好奇心に満ちみちています。
 でも、ベッドの上で男性と2人きりで経験する、初めての愛の行為は、女性にとって好奇心の他に不安とかすかな恐怖感があるのは無理もないことでしょう。その行為に、苦痛が伴うということを知識としてわかっているのですから。
 その苦痛が、激痛なのか、小さな痛みなのか……。
 どちらにしても痛いのは嫌です。
 その嫌なことを、したいという欲求。
 愛する人のために、その痛くて嫌なことを耐える──と言えば、男性は狂喜するでしょう。
 でも、本当にそうでしょうか。もちろん、そういう女性もいるでしょう。
 私の場合は──。好奇心。期待。大人の女になりたい。経験のための経験。女としての価値を高める。女の魅力への憧れ。それら以上に、もっと彼を愛したい、もっと彼から愛されたい、という欲求からでした。
 プラトニックのままだったら、愛は中途半端です。
 それにも拘わらず──。
 彼が肉体をひとつにする行為を始めようとすると、かすかな怖さから、拒絶しそうになってしまい……。でも、それは、肉体がそうなるのです。心はその行為を求めているのです。
 その行為を、やめて欲しいのか、やめて欲しくないのか、心と肉体の葛藤と言ったらオーバーですけど、そう言いたくなる瞬間です。
 心と肉体の葛藤はその最初の時だけでなく、それ以降、ずっと続くことになるのが女の宿命──と、そんな気がします。