花森えりか My Room

─愛と官能について語る部屋─

男と女の欲望

2017-06-03 16:45:09 | 男と女
 人間は一体、何歳まで性の欲望があるのかというテーマは、とっても興味深いもの。
 このあいだ、友達のP子は、後期高齢者知人男性から、温泉旅行に誘われたらしいんです。
 久しぶりに会って、話が弾んでる時、その男性が、「温泉行こう」と言ったので、
(また、そのセリフ)
 彼女は内心、うんざりしたらしいんです。
 というのは、温泉旅行に誘われたのは初めてじゃなく、電話やメールで何度かあったかららしいんです。
 最初のころは電話でのお喋りの時、
「ああら、いいじゃない、温泉なんて」
 社交辞令のつもりで答えてたらしいんです。
 男と女って、アルコールが入ったりすると、「今度、一緒に温泉行こう」なんて男が言い、「うふ、いいわね」なんて女も適当に相槌打つことって、よくありますよね。半分、というか、半分以上、社交辞令みたいなセリフのやり取りです。
 グループで、とか、家族や肉親と、とか、友達同士とか、そんな関係の人たちが行く温泉旅行は、純粋に、普通の温泉旅行。
 男と女が2人で行く温泉旅行は、ホテルのベッド・インと同じようなもの。ホテルと違うのは、景色も良く、温泉に入ったり、浴衣に丹前姿で、部屋に運ばれた懐石料理や名物料理を食べて、ムードが盛り上がってベッドでも盛り上がって……というふうになるかどうかは別として、一種の口説き文句みたいなもの。
 彼女いわく。
「別々に部屋を取ってくれたら、行ってもいいわ」
 ニコッと笑顔で答えたら、
「男と女が温泉に行くのに、別々の部屋ってことないだろう」
 興醒めみたいな顔で、言ったらしいんです。
「それで?」
「内心、こっちこそ興醒めな気分だったわ。久しぶりに会ってなつかしいおしゃべりして、じゃ、元気でね、またね、って気分良く別れると予想してたのに、もう、延々と誘うのよね。温泉のお湯って熱いから入れないって言うと、部屋風呂もちゃんと温泉が出る、なんて言うし、あたし、お刺身嫌い、温泉旅館の料理って必ずお刺身いっぱいつくのよね、って言えば、食べなければいい、別の料理を注文すればいい、って言うし、彼氏いるのか、彼氏いるんだろう、ってしつこいから、あたし、男と女のことって卒業しちゃったの、ってニッコリして言ったら、えっ、卒業しちゃった? ぼくなんかまだ欲望あるよ、ちゃんと可能になるし、とか言うから、若いわねえ、ほんと▽▽さんて若いわあ、って、ベッドの中じゃないけど、いい気分にさせてあげたわ」
「ふうん、個人差があるとは言え、後期高齢者っていうのは……75歳以上、の男性に口説かれたわけね」
「昔は長身で体格が良かったから、確かにルックス上はそんなに老人という感じでもないけど、もう、そんなこと言わない年齢だとばかり思い込んでたから、ちょっと油断しちゃったのよね」
「油断て……?」
「ううん、油断てこともないけど、帰り道はそれに近い気分だったわ」
 その知人男性と会うのは最後に決めたって彼女は言うんですけど、男女関係もその欲望も衰えない後期高齢男性がいても不思議ではないかも、って思ったんです。逃亡先でタイ人青年に貢いでた60代女性もいるし、男性も女性も、個人差があるとは言え、男と女の欲望はなかなか薄れないようです。P子も「ベッドで愛する旦那様の sustainability(持続可能性)がね」なんて、最近、口癖のように言うし。私自身のことは秘密ですけど。うふ。