花森えりか My Room

─愛と官能について語る部屋─

不倫は恋と男性研究

2013-06-28 14:00:09 | P子の不倫
「あたしと愛する旦那様の不倫が長く続いているのはね、今でも恋愛感情があることとセックスの合性がいいことだけじゃないの。もう1つ、あるの」
 友達のP子が、ワイン・グラスを手にしたまま、そう言ったんです。
「安らぎとか癒しってことでしょ。いつかも言ってたじゃないの」
「安らぎや癒しは、恋とセックスがあるからこそで、その結果として生まれるものだわ。男女の関係で、恋とセックスのない安らぎなんて、相手が誰でもいいようなものでしょう」
「じゃ、セックスレスの夫婦が一緒に暮らしているのは……」
「若い日に愛し合って結婚したという事実、ただそれだけにしがみついている虚しい同居人と言えるかも。たとえば子供のころのトラウマのせいで、親から愛されなかったとか、友達が1人もいなかった、そんな孤独な記憶が消せないトラウマがあったら、配偶者は夫という男性ではなく妻という女性でもなく、ようやく長年求めて得られた母親であり友達であるその安らぎを得ているということもあるかもしれない。でも、セックスレス夫婦の可哀想なところは、世間に対しては仲良し夫婦を演じて欺かなければならない、それ以上に自分自身を欺かなければならない。必然的に家庭に本物の安らぎが生まれようがなく、ストレスが蓄積されて体調不良や病気になる。すると今度は夫婦の絆ごっこでの看病やいたわりで世間も自己も欺き続けなければならない。そんな欺瞞のスパイラルに陥り、夫婦どちらかが体調不良や病気になると、相手もたいてい体調不良や病気になる。実は看病疲れでもないし、献身というきれいごとではないかも。ストレスが蓄積され続け欺瞞のスパイラルに陥ってることに死ぬまで気づかず自覚もできないところが一番可哀想。周囲の夫婦を見るとつくづくそう思うわ」
「ふうん。それで、P子の長い不倫関係には恋とセックスのほかに何があるの?」
「不倫関係じゃなく、不倫愛と言って欲しいわ」
「はいはい、不倫愛」
「それはね、愛する旦那様を通して男性という生き物を観察して研究しているってことなの。あたし、女と違う男という生き物に、限りなく興味があるのよ」
「観察と研究ね。何だか、あまり色っぽくないわね」
「安らぎと同じように、恋とセックスがあるからこそ、その結果として生まれる、男という生き物への興味と観察と研究ってこと」
「つまり、何年、彼氏と付き合っていても、まだ謎があるってことなの?」
「付き合う、じゃなく、愛し合う、と言って欲しいわ。そのとおりよ。男性という生き物は、あたしにとって限りなく興味深く、永遠に理解できない謎なのよ」
「たとえば、どんな?」
「それはもう、数えきれないほどあるわ」
「具体的に。最近のことでも」
「そうね、たとえば、最近、ベッドの上で……」
「やっぱり話がそこにいくのね。ふふ」
「めったにないことだけど、中折れ現象になる時があるでしょ、男性だから」
「男性だから? 正確には、おトシ……いえ、熟年男性だからでしょう?」
「ま、そうだけど。その中折れになった時、愛する旦那様があたしに1人エッチしろって言ったのよ」
「そんなの別に謎でも何でもないでしょう。大半の男性って女性の1人エッチ・シーンを見ると興奮するんでしょう」
「知ってるわよ、そんなこと」
「怒らないで話を続けて」
「愛の奴隷のあたし、素直にハイって答えると、愛する旦那様はベッドに起き上がって股間のものを握り締めてて……」
「くくくく、想像すると、おかしいッ」
「あたしはパンティはいて1人エッチを始める」
「全裸じゃなく、わざわざ下着つけるの?」
「パンティの中に入れた手を動かす、その動きが刺激的だと思うからよ。途中で、それを脱がせる楽しみが愛する旦那様にあるでしょ」
「それは、そうかも」
「左手で右の乳房を握り締めたり左の乳房を握り締めたりしながら、右手はパンティの中、最初は旦那様の眼を意識して恥ずかしがりながら半ば演技で悶えて、続けるうち次第に本気で快感に包まれてくると、途中で愛する旦那様が、昂奮した! って口走りながら、のしかかってくるの。もちろんアレは、中折れなんか嘘のように熱く硬く漲ってるわ!!」
「うれしそう」
「でもね、女は男性のマスターベーション見たって昂奮しないでしょ。何故、男性は女の1人エッチにそれほど性的刺激を受けるのか、中折れが解消するほど性的興奮に包まれるのか、それが不思議、謎なの」
「男じゃないから感覚的にはわからないわ。観念的には理解できるけど」
「愛する旦那様は、快感を得ているあたしの声に、特に刺激されるらしいの。それと、おっぱい握り締めて太腿の内側をすり合わせて悶える姿に」
「そんなに声出すの?」
「声と言っても、呻き声と喘ぎよ。ポルノビデオみたいにキャーキャー声あげないわ。でも、男は女の1人エッチに性的刺激を受け、女は男のそれに昂奮しない。何故なのか。男と女の違い。その謎に、興味があるし、男性という生き物の研究につながるのよ」
「ふうん。それで中折れ現象が解消するなら結構なことじゃない」
 観察だの研究だのと真顔でP子が何を話すのかと思ったら、そんなことだったので、何だかアホらしくなりました。