花森えりか My Room

─愛と官能について語る部屋─

触覚の性的刺激

2014-06-30 10:05:06 | 男と女
 男性の性的欲望は、女のヌードを見るなど視覚で刺激される、って言いますよね。
 女性は、視覚より触覚での刺激に弱い、と言えると思うんです。
 男性の手で、体のどこかを触(さわ)られることで、性的な欲望を刺激される人が多いと思うんです。
 恋人や愛人はもちろん、好きなタイプの男性には、裸でなくても服の上からでも腕とか、その手とかに、つい触りたくなってしまう。それは女性の本能ですよね。
 だからこそ逆に、触覚的な生理的嫌悪感も強いかもしれません。
 もう、時効みたいなものだから、ある経験を告白してしまうと──。
 当時、親しかった知人男性に誘われて、会った夜のことです。その男性は、いろいろなジャンルの本を多く出していて、その中にサラリーマン向けの著書もあるため、ラジオや講演などの依頼もあるらしく、食事を共にしながら、面白いエピソードを聞いてたんです。
 博識で、話も面白おかしく、お店を変えて……。
 アルコールを飲みながら、カウンター席に並んで座っていると、話しながら私のスカートの上から太腿に、手を置いたんです。ポンと置く感じではなく、撫でるような感じで。
 その瞬間、思わず生理的嫌悪感から、邪険に彼の手を引き離して、言ったんです。
「ンもう! あたし、ホステスじゃありませんからねッ」
 冗談混じりの口調で言えば、傷つかないかと思ったんです。
「ごめんごめん、つい、ここにオイシソな太腿が……」
 なんて、いやらしい言い方して、また触(さわ)りそうにするんです。その手首をギュッとつかみ、
「おうちへ帰って奥さんの体触(さわ)ればいいでしょう!」
 妻の存在を思い出したらしく、シラケた顔つきが、私はおかしくてたまりませんでした。
 帰りはタクシーで送ってもらったんですけど、話の途中で突然、抱き寄せられ、キスをされそうになって、彼の唇が私の頬にかすかに触れた瞬間、思わず突きのけるようにしたんです。
 帰宅して、すぐ入浴し、洗顔フォームでしつこく何度も何度も頬を洗い……。
 終わりよければすべて良し、という言葉があるけれど、終わり悪ければすべて悪し。その男性と会ったことを、つくづく後悔して寝付きも悪くなってしまったほど。
 翌日――。何と、左右の腕の半ば、肘から手首までの内側に、パラパラと少しだけど薄ピンクの湿疹ができて、驚愕したんです。好きでもない男性にキスをされそうになっただけで……。そんなことは生まれて初めての経験です。
 言ってみれば、それなりにというか平均的にというか年齢相応に男性経験を経てきた私がと、自分で自分を発見したような気持ちでした。
 何と、4日間、そのパラパラ薄ピンク湿疹は消えませんでした。
 5日目の朝、消えていた時、心からホッとしました。
 その後、その知人男性とは、やり取りしていた年賀状も、ハガキに触るだけで湿疹ができそうで、すぐ捨ててしまいました。
 というふうに――。
 好きなタイプの男性なら、自分から触れたいし、触れられて心身共に歓びを感じるのが女という生き物です。
 好きでもないタイプの場合は、湿疹ができてしまうくらい、触れられることに強い拒絶反応が起こるものなんです。
 そのことを、大半の男性は、全く知らないんです。多分、生涯、知ることはできないでしょう。
 そんなことがあってから、深夜、男性にタクシーで送られるのは、つくづく懲りてしまいました。