消えてしまった思い出。
2人の愛のアルバムを、燃やしてしまった彼への怒りと哀しみ。
それを知った時の私は愕然となって、彼との12歳の年齢差が消えた! ──と、そう感じたんです。
2人の思い出の写真は燃やされてしまっても仕方のないこと。最後にもう一度だけ見たかったという未練も、すぐ消えてしまうでしょう。
けれど、私だけの思い出の写真まで一緒に燃やしてしまうなんて──。
それは、彼の私に対する嫌がらせとか悪意とか、そんなふうには感じませんでした。
そうしないではいられなかった彼の気持ちが、わかるような気がしたんです。
そして、その時初めて、
(男と女の関係に年齢差なんて、ないんだわ……!)
ということを知ったんです。
12歳年上の大人の男性である彼は、理性も分別もあって、たとえ、どんなことが起きても、どんな状況になっても私を怒らせたり悲しませたりすることなんてしないはず──と、そう思い込んでいた私は甘かったというか、男性という生き物を知らなかったんです。
別れることになったその時から、彼は変身したわけではなく、男女として対等になった……! という言い方もヘンですけど、12歳年上の大人の男性という意識が消え去ってしまったんです。
そのことに、深い衝撃を受けたくらいです。
黒縁のメガネをかけた彼の顔は平静でも、そのメガネの奥に、彼の微妙な感情の眼が光っていたような気がしました。
愛の思い出は写真だけではありません。彼から貰ったプレゼントの数々。自分の家の自分の部屋に、プレゼントされたブローチやネックレスやペンダントや指輪などのアクセサリー、詩集・小説などの本、英和辞書、レコード、オルゴール、ハンカチ、旅行みやげのコケシや飾り物……。
「全部、返します」
そう言ったら、彼は傷つくと思ったので、
「貰ったプレゼント、返したほうがいい?」
と聞いたら、彼は首を横に振って、
「捨ててしまいなさい」
そう言ったんです。
私が返したのは、2人の新居となるはずだった家の合鍵だけ……。
別れの感傷は、いっときのこと。
新たな愛の世界を想い、2番目の恋人に早く逢いたくて逢いたくて抱き締められたくて、身も心も恋い焦がれるような気持ちでした。
2人の愛のアルバムを、燃やしてしまった彼への怒りと哀しみ。
それを知った時の私は愕然となって、彼との12歳の年齢差が消えた! ──と、そう感じたんです。
2人の思い出の写真は燃やされてしまっても仕方のないこと。最後にもう一度だけ見たかったという未練も、すぐ消えてしまうでしょう。
けれど、私だけの思い出の写真まで一緒に燃やしてしまうなんて──。
それは、彼の私に対する嫌がらせとか悪意とか、そんなふうには感じませんでした。
そうしないではいられなかった彼の気持ちが、わかるような気がしたんです。
そして、その時初めて、
(男と女の関係に年齢差なんて、ないんだわ……!)
ということを知ったんです。
12歳年上の大人の男性である彼は、理性も分別もあって、たとえ、どんなことが起きても、どんな状況になっても私を怒らせたり悲しませたりすることなんてしないはず──と、そう思い込んでいた私は甘かったというか、男性という生き物を知らなかったんです。
別れることになったその時から、彼は変身したわけではなく、男女として対等になった……! という言い方もヘンですけど、12歳年上の大人の男性という意識が消え去ってしまったんです。
そのことに、深い衝撃を受けたくらいです。
黒縁のメガネをかけた彼の顔は平静でも、そのメガネの奥に、彼の微妙な感情の眼が光っていたような気がしました。
愛の思い出は写真だけではありません。彼から貰ったプレゼントの数々。自分の家の自分の部屋に、プレゼントされたブローチやネックレスやペンダントや指輪などのアクセサリー、詩集・小説などの本、英和辞書、レコード、オルゴール、ハンカチ、旅行みやげのコケシや飾り物……。
「全部、返します」
そう言ったら、彼は傷つくと思ったので、
「貰ったプレゼント、返したほうがいい?」
と聞いたら、彼は首を横に振って、
「捨ててしまいなさい」
そう言ったんです。
私が返したのは、2人の新居となるはずだった家の合鍵だけ……。
別れの感傷は、いっときのこと。
新たな愛の世界を想い、2番目の恋人に早く逢いたくて逢いたくて抱き締められたくて、身も心も恋い焦がれるような気持ちでした。