花森えりか My Room

─愛と官能について語る部屋─

ベッドの行動パターン

2014-02-19 13:26:15 | P子の不倫
「若い時はともかく、中年以上になって何十年も人生を結構長く生きてくると、人間の行動パターンは変わらないものと、つくづく思うの」
 と、P子。
「それは言えるかも」
 珍しく真面目な話かと思っていたら、彼女の不倫相手のことだったんです。
「一緒にお酒を飲んだり食事したりして、お喋りが一段落すると、愛する旦那様の不変の行動パターンは、「寝る」って言ってトイレ行ってからベッドに入るの」
「寝るって、どっちの意味? 眠るっていうこと? セックスするっていうこと?」
「仮眠よ。お酒の酔いが回ると眠くなるし、性的パワー高めるために眠りが必要なの。眠った後ってカタチンになるからね」
「身体の疲れが取れるからでしょ」
「睡眠不足もあるのよ。毎日5時間睡眠だから。時々、6時間眠ると、よく寝たなって感じなんだって」
「大半の男性は短時間睡眠じゃない? 女性より体力があるんだもの。仮眠て何分ぐらい?」
「いつもは30分。時々、15分。ところがね、この間、「寝る」って言わないでベッドに入るから、片付け物しながら「寝るんでしょ?」って聞いたら、「寝ない」って言って本当に寝なかったの!」
「それが、どうして、そんなにうれしいの?」
「あら、別にうれしくないわよ。愛する旦那様が仮眠してる間、食器洗ったり、ゲームして遊んでるから退屈しないし。眠ってくれたほうがカタチンになるし」
「それで」
「驚いて、傍へ行って、「どうして寝ないの?」って聞くと、あたしの身体抱き寄せて触りながら、「眠くない」って言うから、「食器洗っちゃうから待ってて」って言ったら、「後で洗えばいいよ」「すぐ洗っちゃうから」そんなやり取りの後、結局、言うこと聞いてベッドに入っちゃうのよね。あたしって恋の奴隷だから」
「恋の奴隷ね」
「それで……くくッ……いつもみたいに眠った後じゃないのに、ちゃんとカタチンになって……」
「その先、省略していいから」
「いつもと違う行動パターンで、2人とも昂奮しちゃったのよ。だからね、恋人であれ夫婦であれ愛人であれ、よく聞くセックスのマンネリ化っていうのは、いつもとほんのちょっと行動パターンを変えるだけで、新鮮で燃えるセックスが実現するってこと。いいこと聞いたでしょう、無料で」
「何が無料よ。そう言えば、最近、その行動パターンで、ショックを受けたわ。知人のツイッター読んで、その人の行動パターンを知ったことで」
「どんな、行動パターン?」
 興味なさそうに、P子がアクビ混じりで聞き返します。
「その日のツイッターに、お菓子の貰い物を使い回した経験が書いてあってね、職場の同僚だか部下だかにあげたんだって」
「貰い物の使い回しなんて、よくあることでしょう。何がショックだったの」
「それ読んだ時、突然、思い出したの。5年前、その知人とバレンタインデーの日に会ったからチョコレートをあげたの」
「ホワイトデーを期待して?」
「ケチケチP子と違うわ。頼み事をしたから、お礼の意味もあったのよ。ホワイトデーどころか、いつか、その知人から高額の物を譲って貰って、代金的には私のほうが20倍以上も得しちゃってるから、あげたことを損したなんて全然思わないけど、そのチョコを使い回して職場の同僚だか部下だかにあげたんだって思ったら、もしかしたら食べてくれるかもってデパ地下で30分近く商品選んで買わなければ良かったって後悔してショックを受けたの。使い回すなら早く言ってよ、って気分だったわ」
「甘い物が苦手とか人にあげるかもとかって、少しも想像しなかったのは浅慮ね」
「チラッと、よぎったわ。その人、貰い物の多い職業柄、食べきれないお菓子は人にあげちゃうのかもって。ほんのチラッと」
「それなら30分もデパ地下でチョコ選んでないで、どうせ知人は食べないんだからって、予算金額だけでパッと買えば1分もかからなかったのにね。あなたって、そういうところが思慮不足というか想像力不足というか」
「そうなの。そのとおりよ。それってP子が言うように不変の行動パターンてことよね。その人、40代後半の中年だし」
「それは単なる習慣でしょう。あたしが言ったのはベッドでの行動パターンを、たまには変えてみると……」
「わかったわよ、何度も言わなくたっていいわよ」
 クックッと思い出し笑いしてるP子の言葉を遮って、言わなきゃよかったと後悔したのでした。