花森えりか My Room

─愛と官能について語る部屋─

寝る前の美容法

2010-12-30 13:12:48 | P子の不倫
 夜、眠る前には、楽しいこと、幸せなことを思い浮かべるのが、美容にいいらしいんです。
 だから友達のP子は、毎晩、携帯電話を手にしてベッドに入り、恋人との会話を録音したのを聞くことにしているそうです。
 録音の自分の声は、
(あたしって、こんなに甘ったれた声でしゃべったのかしら)
 と、気恥ずかしくなるらしいんですけど。
 彼の声は、身体の芯が疼くほど、甘く響いてくるって言うんです。彼女にとって、世界で一番セクシーな男性の声です。
 もちろん、それは肉体関係があるから、彼の声を耳にしただけで、ベッドでの行為がよみがえるからでしょう。
 たとえば──。
「ねえ、愛してるって言って」
 甘えるように、彼女がせがみます。
「愛してるよ」
 と、彼の囁くような声。
「うふッ、あたしも。ああ、早く、欲しい」
「何が、欲しいんだ」
「いじわる、わかってるくせに。ねえ、あなたは?」
「やりたい、P子のあそこ……キスしたり……おれのアレ……」
 と、2人だけに通じるエッチな会話の録音を聞きながら、彼女はベッドで肉体を悶々とさせてしまいます。肌という肌が火照って、熱い乳房や秘部をまさぐりたくなってしまうのは無理もないこと。
「録音した彼の声を聞いてると幸せな気分だから、眠る前の美容にはいいと思うけど、彼が欲しくなって寝つけなくて、睡眠不足は美容の敵、っていうことになっちゃうの」
 その美容法をやめるほうがいいか、続けるほうがいいか、彼女は迷ってるらしいんです。

知人男性の質問

2010-12-28 14:43:15 | 夜の会話
 以前、仕事で初めて会った知人男性と、お酒を飲んだんです。
 その前の喫茶店では打ち合わせだから、当然、真面目な話ばかり。私より少し年上の、フェミニストで紳士的で知性と教養あふれる感じの男性です。
 ところが、お酒が入り、アルコールの酔いが回ると……。何となく視線が、悪戯っぽい眼つきになってきて、急に話題が変わって質問されたんです。
「そのトシで独身では、身がもたないでしょう? 彼氏いるの? それとも、アレ使ってるの?」
「ア、アレって……」
 私は思わず、顔が熱くなりました。アレという言葉が何となく淫らな感じで、羞恥に包まれてしまったからです。
「アレですよ、女性が独り寝の夜、身体が悶々とした時に使うアレ」
「何の、ことかしら」
 ブリッコしたわけではないんですけど、わざと、聞き返しました。
「大人のオモチャ屋に売ってる品物ですよ」
 わかってるくせに、と言わんばかりに彼は、含み笑いしたんです。
「お、大人のオモチャ屋なんて、行ったことありません!」
 私は頬をふくらませ、怒って答えました。本当です。通りがかって、看板を眼にしたことぐらいはあるかもしれないけど、店内に入ったことは絶対、ありません。
「店へ行かなくてもサ、通販なんかで買えるよね」
 と、彼はシツコイんです。
「そんなヤラシイ物なんか、買ったことも使ったこともありませんッ」
 すると彼は、ニヤリとして言ったんです。
「やっぱり、オモチャじゃねえ。比べてみると、本物のほうが、ずっといいんでしょう?」
「もちろんだわ!」
 即座に答えてしまい、私は顔に火がついたように熱くなってしまいました。比べてみた経験があると白状してしまったことになるのと同じ答え方と気づいたからです。
「そんな物、絶対絶対、持ってません!!」
 慌てて、そう言ったんですけど、全然、信じてくれないんです。
 酔った時の男性のエッチな質問には、気をつけなくちゃと、つくづく反省しました。

ごっこ遊び

2010-12-25 12:25:32 | P子の不倫
 友達のP子は、彼氏とベッドで『ごっこ遊び』をするらしいんです。上司とOLごっこ、人妻と学生ごっこ、未亡人ごっこなど、OLの彼女とサラリーマンの彼が即席の芝居を作って演じながらエッチするのと言うんです。
「この間は、ナースと患者ごっこして楽しんじゃった。うふッ」
 思い出し笑いして彼女はアルコールを飲みながら、酔いにまかせて告白したんです。彼女の話によると――。
「あたしはナース、あなたは患者ね」
 と、彼をベッドに横たわらせ、検温の演技を始めます。彼は交通事故で入院中という設定。
「看護師さん、耳の後ろが、かゆいんだけど、ぼく、腕を骨折してるから……」
「ここですか?」
「いや、こっち、反対」
「ここ?」
「クク、くすぐったい!」
 と彼が、いきなり彼女の乳房をムギュッと、わしづかみ。
「きゃッ、何するのッ、骨折した腕、治りませんよ!」
「看護師さん、太腿も、かゆいんだけど」
「このへんですか?」
「もちょっと上」
「このへん?」
「も少し左」
「左って、アラッ」
 と、彼の股間の大事な部分に触れ……。
「そ、そこです、かゆいんです」 
「ここ、太腿じゃないでしょ」
「さすが看護師さんてマッサージが上手だ。ああ、いい気持ち」
「お行儀悪い患者さんネ。こうしてあげちゃう」
 と、いけないナースに変身して、患者とのエッチに夢中になる演技に燃えていき……。 
「ちょっと刺激が欲しい時の、この『ごっこ遊び』って、同じパターンを何度やっても燃えちゃうの。こんな私たちって、ヘンタイかしら?」
 そう聞くP子に、私は答えたんです。
「誰にも迷惑かけてないんだから、いいんじゃない」

暖房効果

2010-12-22 10:15:07 | P子の不倫
 一人暮らしの女性P子は、エアコンは肌を乾燥させて美容に悪いので、間接的に効くよう、隣室でつけてドアを開けておき、室内では、夏は扇風機、冬は遠赤外線ストーブをつけるという習慣らしいんです。
 その部屋にいる時にエアコンをつけるのは、来客の時と決めているらしい彼女の話によると――。
 オフィスのエアコンに慣れている恋人が来た時、夏はエアコンの冷房をつけるらしいんです。
 ベッドでエッチして、汗まみれになると冷房なんて効き目ありません。特に最高の歓喜を味わった直後は、肌という肌が燃えるような熱さに包まれ、
「ああ暑い暑い暑いよう」
 と彼女は、さっさと身体を離して冷房を強めてしまいます。愛の行為の後の、甘える言葉もしぐさもなく、素っ気なく味気ない彼女のそんな態度に、彼は憤慨。
「そんなに暑いなら、ヤルな」
「こんな暑い夜に、ヤリたがるのは、どっち?」
「濡らしまくって入れたがるのは誰だ」
「キスを始めたとたん硬くなったくせに」
「はしたなく腰揺すって、よがり声上げて」
「出るとか出すとか、露骨なこと口走っちゃって」
 と、そんな会話は第三者にとっては、呆れてバカバカしくて聞いていられません。
 冬は、全室暖房なんて気のきいたマンションではないから、寝室のドアを開けた廊下やトイレは冷えています。トイレから戻った彼女は、飛び込むようにベッドに入って、
「寒ーい、あっためてエ」
 甘ったるい声で言いながら彼に抱きついていくらしいんです。
「これをすれば、P子の身体は熱くなる。ホラ、あったかいだろ」
 と彼が肉体を結合してきて、彼女の身体はたちまち暖かくなり――。
「冬の暖房は、あれが一番ね!」
 と、ノロケる彼女に、
「何時間も持続するわけではない、限界のある暖房法ってことが、残念ネ」
 私は、そう言って笑ったんです。

男性は大変

2010-12-04 20:32:25 | 夜の会話
 友人と、お酒を飲みながらお喋りしていて、思い出したように彼が言ったんです。
「友達が2人、前立腺ガンになったんだ」
「ええっ、ガン?」
 驚いて私は聞き返しました。現代ではガンは普通の病気と同じという認識みたいですけど、ガンという言葉には、やはり小さなショックを受けたんです。
「友達って、大学時代の?」
 友人は大学時代の友人たちと、60代になっても、よく会っているんです。地方在住の友人が上京したりすると、5~6人の仲間で集まってお酒を飲んだり。高校時代の友人の話も聞くし、女同士の友情と違って、男同士の友情って長続きするものって、つくづく感じます。
「うん。2人が前後して同じぐらいの時期に、前立腺ガンになったんだ」
「そう……」
「ガンと言っても、心配ないんだって。手術は簡単だし、他のガンみたいに転移はないし」
「ふうん。良かったわね。転移しないガンてあるのね」
「だけど手術したら、インポになるんだって」
「ええっ、インポ?!」
 思わず、驚愕の声をあげてしまいました。前立腺は男性の身体にだけあるから、そんな情報を私は読んだことも聞いたこともありません。
「お気の毒~」
 会ったことはないその友人に、深く同情してしまいました。男性にとってインポになるというのは、どんなにショックなことでしょう。
「もう、いいんだって、やらないから」
「やらない?」
「うん」
「2人のうちの1人の人が?」
「2人とも、もう、やってなかったんだって」
「ええっ、60代で、もうセックスしないの?」
「うん。2人とも、そう言ってた」
「本当かしら、信じられない。何が楽しみで生きていくの?」
「楽しみはいろいろあるだろう。ゴルフとか、テニスとか」
「ふうん」
 それから、彼は、
「セックスしてると、前立腺ガンにならないんだって」
 と、仕入れたばかりの健康情報を少し得意そうな口調で言ったんです。
「ええっ、セックスしてると前立腺ガンにならない!! 本当?!」
 そんなこと初めて聞く私は、またしても驚きの声をあげてしまいました。
「そうなんだって」
 さらりと答えたんですけど、微妙な表情が彼の顔に浮かんだような気がしました。自分は前立腺ガンにならないかもと期待するような表情です。
「どうしてセックスしてると、前立腺ガンにならないのかしら」
「さあ、そう言ってたよ」
「前立腺の血液循環が良くなるってことかしら?」
「そうかもしれない」
「それで、○○さんは前立腺ガンにならないためにセックスしてるの?」
「うん!」
 そのとおり! という感じの答え方が、おかしくておかしくて笑ってしまったんです。
 若い時の欲望のままのセックスではなく、中高年になったら前立腺ガン予防のためにもセックスしなくてはならないなんて男性は大変──そう思ってしまいました。