花森えりか My Room

─愛と官能について語る部屋─

ラブ・ピクチャー

2013-01-24 15:19:52 | P子の不倫
「最近、あたしが夢中になってるのはね……うふ」
 ワインを注いだばかりのグラスを手にして、P子が思い出し笑いします。
 もちろん思い出してるのは彼女の不倫相手の男性のことなんです。
「うふッ、うふふッ、ふふふふふッ」
 思い出し笑いの内容を想像させるような笑い方に、私もグラスにワインを注ぎながら、呆れた口調で言ったんです。
「何をもったいぶってるの。どうせSMごっことか、ナースと患者ごっこ遊びとかなんでしょ」
 ベッドの上でいろいろなプレイを楽しんでいるのを、P子からさんざん聞かされている私です。
「自分たち撮りよ、うふ」
「自分撮りじゃなく自分たち撮りね。そんなの男女のカップルなら、みんなやってるでしょう。携帯の待受にしたりして」
「ベッドの上でのよ」
「ええッ、自分たちの全裸を待受にしてるの?」
「まさか。良識あるあたしが、そんなことできるわけないでしょう」
「ま。自分では良識あるって思ってるのね。P子って非常識の塊みたいな女って思ってたわ」
「どう思われてもいいの、同性になんか」
「ベッドの上で全裸の自分たち撮りして楽しんでるってわけね。そんなこともたいていの男女のカップルはやってるでしょう? 自分たちだけと思ってたわけ?」
「昔はポラロイド、10年ぐらい前からはデジカメで撮ってたんだけど、撮ったのを静止画像で見ても動画で見ても、きゃッ、恥ずかしいッ、いやらしいッって、今までずっと、羞恥のほうが強かったの。あたしって恥ずかしがり屋だから」
「ベッドの上の裸を撮らせて、どこが恥ずかしがり屋なのよ」
「つまり性的昂奮ていうことで言えば、視覚的刺激に弱い男である旦那様のほうが昂奮するでしょ。撮影するのも、画像を見るのも」
「女は視覚より触覚的刺激に弱いからね。それはそうでしょう」
「ところが最近になって、あたし、見ると昂奮しちゃうのよ。これって間違いなく視覚的刺激って思える昂奮みたいなの。たとえば旦那様に愛撫されてる姿とか、あたしが旦那様のアレをお口で愛撫してる姿とか、一番興奮するのはね、あたしの肉体と旦那様の肉体がひとつになっている姿なの。特に結合部の写真と動画。それを見るとあたし、恥ずかしさより、頭が痺れそうに熱くなってアソコがひくついて思わず手を乳房か股間に押しつけたくなっちゃうの」
「羞恥心が薄れてきたんじゃない?」
「ネット接続できない古いパソコンのラブ・ピクチャー・フォルダにデジカメからデータを移してあるんだけど、15インチ画面で見るの。もう、本当に衝撃的なんだから、昂奮しちゃうんだから、刺激されちゃうんだから」
「ふうん、それが刺激剤でベッドで燃えるってわけね」
「そうなの! 視覚より触覚の刺激に弱いはずの女であるあたしがね。これって新発見、ううん大発見、人生って本当にいろんな発見に満ちみちてるわ!」
「さぞかし彼は、お喜びでしょうよ」
「大喜びよ! 一緒に見て自分だって昂奮してるのに、こんないやらしいの見て昂奮するなんて淫乱女めって、あたしのお尻を打つの。悲鳴をあげて旦那様にしがみついちゃうわ。もっと打って、打って、打ってって。くくくくッ、経験の浅いあなたにわかるかしら、あの歓び! あの幸せ! ああ!」
「わからなくて結構よ。P子ってM女だったのね、彼はSなんでしょ」
「SとかMとか、そ~んな単純じゃないのよ、もっともっと奥が深~い世界なのよ。その深い性の深淵を、愛し合う旦那様とあたしは知ってしまったのよ」
 うっとりした顔つきで呟くP子でした。