花森えりか My Room

─愛と官能について語る部屋─

別れの迷い

2010-06-28 11:56:18 | 告白手記
 ふと、かすめる別れの迷い。
(やっぱり、別れるのはやめようかしら……)
 別れ話をしながら、別れることに迷いが生じてしまうのは、無理もないこと。
 相手を嫌いになったとか、喧嘩をしたとか、周囲に反対されたとか、愛が消えたとか飽きてしまったとか、そんな理由ではなかったからです。
 彼に抱かれた記憶が、瞬間的に心身を熱くさせるし、そこが喫茶店ではなくベッドの上だったら、いっそう決心が揺らいでしまったかもしれません。
 けれど、抱かれた記憶といっても、
 ──この男性(ひと)は初体験の相手だった──
 という衝撃的な記憶であって、具体的に私の心身によみがえるのは新たな恋人との抱擁とセックスです。
 彼との関係は過去の愛。
 過去の愛に執着しがちな男性と違って、現実の愛に生きるのが女性の本能です。
 すべての男性が過去の愛に執着するというのではありませんけど……。
 現在の愛が満たされている男性は、過去の愛に執着しないんです。現在の愛に満たされていない男性は過去の愛に執着する傾向があると思うんです。
 現在の愛が満たされている幸運な男性は、あまりいないかもしれません。
 精神的な愛と肉体的な愛が満たされ、日常生活に支障が起こるような過度のストレスもなく、人間の3大欲求である食欲と性欲と睡眠欲が満たされ、仕事や人間関係の小さなトラブルも時間が解決し、現代人の多くがかかえると言われるストレス原因の肩こり・腰痛もないくらい健康で──と、そんな男性は私の周囲に多くはいないからです。
 男性と違って、女性は現在の愛に満たされていても満たされていなくても、過去より現在、現在の愛、現実の愛に生きる生き物なんです。
 女性にとっては現実の愛こそ、すべてですから。存在の意義のすべて。生きる世界のすべてです。
 そうではない女性もいるかもしれませんけど。
 それで……。
 喫茶店の隅に向かい合って話しながら、彼の視線は時々、私の胸のふくらみに向けられたりしたんです。
 ──私の服の下の裸身を知っているという眼──
 ──私を抱きたがっている眼──
 ──私の身体を所有しているという眼──
 そんなふうに感じさせられるような彼の眼とまなざしでした。

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