The Phantom of the Opera / Gaston Leroux

ガストン・ルルー原作「オペラ座の怪人」

悪魔バアル神

2013年01月17日 | Weblog

マックス・ヴェーバーの「古代ユダヤ教」読んでます。

覚書です。

 

 

ヤハウェと競争するもっとも重要な神、地域共同体の土着のバアルは、パレスチナの諸都市が平和的にせよ暴力的にせよイスラエルに編入された時でも、これらの都市のバアルはそのままそれぞれその都市とその聖所との所有者としてとどまった。

そのことは偉大な連合戦争神ヤハウェになんら損害を与えはしなかった。ヤハウェが日常の需要のための永続的礼拝所をもたなかったばあいにはいつでも、バアルたちは、依然として活気づいた礼拝の主人公であった。他方、ヤハウェは、単純にバアルの神々と同一視されたか、礼拝するときになんらかの仕方でバアルと結合された。

 捕囚後の時代にいたるまでヤハウェは、まったく異質的な神々とさえ一緒に、非常に無邪気にユダヤ人によって同一の神殿のなかで拝まれていたのである。ヤハウェは地域神バアルとなんらかの結合をとげていたので、当然のことながら平和的繁栄のときにはむしろバアルが、大きな戦争の危急の時にはむしろヤハウェが、この混合神格のなかで(あるいは結合された崇拝のなかで)前面に押し出されてこないわけにはいかなかった。(中巻389~390p)

具体的には紀元前1200年ごろ、だそうです。ウエーバーは、この時代の信仰形態をヤハウェ・バアル混合礼拝と規定し(402p)、この時代にはまだバアル信仰に対するヤハウェの側からの排斥は始まっておらず、むしろ逆に、積極的な一体化が進んでいたと見ています。

ウエーバーの史観によれば、一神教のヤハウェ信仰は捕囚期(紀元前6世紀)以後に成立した極めて新しい現象であって、それ以前のイスラエルは、ヤハウェをも包摂するような多神教の土壌を生きていた、らしいです。

 

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熾烈な一神教かと覆われるユダヤ教のヤハウェ神も、比較的平穏な時には恐ろしい「妬みの神」な側面は和らいでいたのですね。

しかしヤハウェ神至上主義が確立すると、他の神々は物凄く唾棄され、卑しめられ、悪魔扱いされていったようです。例えば預言者エリヤは450人のバアル神の預言者達の皆殺しにしたりと、豊穣のバアル神への憎しみは溢れんばかりです。昔は仲良い子だったのに。
「まことの神に戻る」「神の正義の実現」「絶対神への忠誠」の前には人の命など軽いもののようですね✩

 


バアル神と神官たち

バアル神は牛にも関連するらしく、悪魔が山羊みたいな草食獣の形なのも何か関係があるのかもしれません。

 


先日読んだ旧約聖書成立に関する本(「旧約聖書を推理する」フリードマン、海青社)の記述とも一致するようです。

 

紀元前587年に南王国ユダが新バビロニア帝国に敗れ、エルサレム神殿が徹底的に破壊され、その当時の指導者層の人々がバビロニアに連行された(これをバビロニア捕囚という)。規模は、数千人 - 数万人と言われている。圧倒的なバビロニアの神々の宗教(主神マルドゥク)に囲まれ、今までの神ヤハウェ信仰が危機の状態に陥り、民族が自信を失っていた。この様な状況の下で祭司職人(現在祭司記者と呼んでいる)の中から、バビロニアの神話に対抗する形で、自分たちの信仰書(≒いわいる旧約聖書を作り出し)(創造信仰)、この危機状況から再び生きる力を生み出していった。

バビロニアの創造物語は紀元前1500年頃に作られたと言われており、この祭司記者たちはその内容を知っていて、それを否定し乗り越えるかたちで神ヤハウェを受け止め直して信仰を記述している。

例えば、その神話では、新バビロニアでは極端な階層社会であり、その頂点に立つ王だけが神・神の子であり政治支配の正当化を強めているが、『創世記』では人間は全て神から神の似姿として作り出され平等(みな神の子である)であることが主張され信仰告白されている。

このように『創世記』は、素朴な伝承・神話などではなく、当時の知識階層が執筆した宗教書(表現形態は物語ではあるが神学書)である点が世界の他の天地創造物語とは異なる。

 

もともと信仰していたヤハウェ神への神学を体系化していく過程で、バビロニアの創造神話を取り入れたりといった編集作業が神官達によって行われ、我々の知る一神教的なユダヤ教になっていった、ということでしょうか?

参考サイト(先日も書きましたが、とても優れたサイトで、私も勉強させていただいています)
http://www.geocities.jp/todo_1091/bible/jesus/old-testament.htm

 

 


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