漢検一級 かけだしリピーターの四方山話

漢検のリピート受検はお休みしていますが、日本語を愛し、奥深い言葉の世界をさまよっています。

古今和歌集 0784

2021-12-22 19:01:04 | 古今和歌集

あまくもの よそにもひとの なりゆくか さすがにめには みゆるものから

天雲の よそにも人の なりゆくか さすがに目には 見ゆるものから

 

紀有常娘

 

 あなたは、空の雲のように私から離れてゆくのですね。とはいえまだ私の目にそのお姿は見えているのですけれど。

 詞書には、在原業平が紀有常の娘のところに通っていたけれど、気に入らないことがあって、しばらくの間、昼は来て夕方は帰るということをしていたので、詠んでおくった、とあります。業平からの返し(0785)とともに、伊勢物語第19段にある歌ですが、設定されている男女の状況はこの詞書とは異なるようです。
 作者の紀有常娘(き の ありつね が むすめ)はその名の通り、0419 の作者紀有常の娘で、業平の妻であった人物。古今集への入集はこの一首のみです。