=118 ~木の因数分解~(家具工房つなぎブログ)

南房総でサクラの家具を作っています。ショールーム&カフェに遊びにおいでください。

裏石林

2020年05月24日 | 【海外出張】パキスタン編
「10日間アートチャレンジ vol.9」

再び中国へ「裏石林」


その村の名前を知らない。
私がどうしてその村を知ったのか、
なぜ向かうことになったのか、
正直さだかではない。

その村は観光客がごった返す世界遺産「石林」から少し足を延ばしたところにあったが、
なにぶん普通の村なので、観光バスなどなく住民が日々の交通に使っている乗合タクシーで向かう他手段がなかった。
名前も知らないその村は、
石林よりはいくぶん控えめだが同様の奇岩が連なり、
麓に広がる湖を初めて目にしたとき、私はとても神々しさを覚え「仙人が住んでいるのではないか」と衝撃を受けたことを覚えている。
まるで自分が何か重大な発見でもしたかのように。
そしてこの地を日帰りで離れることはできないと決意し、
興味のままに散策し日没までこの村を堪能した。

ただ決して考えていなかったわけではないのだが、
日が落ちた村に乗合タクシーはやってこない。
観光地でもなんでもない村には宿もない。
あるのは小さな商店が一軒のみ。

電灯もろくにない村が暗くなるにつれ、私は少々、いやかなり心細くなった。
野宿をするのにはさすがに危険を感じ、
考えられる手段は、村に一軒の商店に宿を頼むしかない。
見ず知らずの人と一夜をともにするのはそれなりに緊張したが、
それは宿主も同様であったであろう、感謝しかない。

翌朝一番の乗合タクシーで私はこの村を去ったが、
本物の石林よりも自分の心に感銘を残してくれたことは間違いなく、
自分だけの秘密の「裏石林」と勝手に名前をつけていた。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする