浮世絵師 菱川師宣の生誕地 鋸南町の公民館で行われた「浮世絵版画刷り体験」に参加してきました。
版木に紙を置く際に起点となる角や線を「見当けんとう」と言うそうで、そこから「見当をつける」「見当違い」などの言葉が生まれたそうで、今日はまさしく見当をつける作業ができてうれしかったです。
浮世絵の版木には、家具工房つなぎの家具でも使っている山桜の木が伝統的に使われていることもあり、以前より実際にその版木を見たり彫り師にお話も伺ってみたいと思っていました。
実際に彫られた版木はとても精緻で本当に美しかったです。
版木については、やはり山桜の木が堅さや粘りなど一番良く、特に印刷のようにたくさん刷らなければいけない場合は耐久力などの点で山桜に代わるものはないそうです。
一方で、少量しか刷らない場合やグレードなどにも関係するかと思いますが、他の木、たとえば朴の木などを使うこともあるそうです。柔らかくて癖がない木は彫りやすいですものね。
ただ山桜の木も年々色合いが薄くなってきたり、木によっては粘りが少なかったりで、昔はやはり材が潤沢で選んでいい木を使えていたのではないかと考えています。
それを象徴するように最近は合板に山桜の無垢板を貼り合わせた版木もあるそうです。(一般的には反りにくいというメリットもあるかもしれません)
彫る面は木表、木裏はそれほど関係なく(でも最初に刷る全体像の細い線などの版木は木表だとか)、両面ともに彫ることもあるそうです。
それから自分で家具の木を製材しているのでわかるのですが、機械加工では厳密には板の表面は平らになりません。回転する機械の刃物の跡がどうしても残っているのです。なので鉋をかけたりする必要があるのですが、そのあたりも疑問に思ったのでお聞きしたところ、本来は版木を作る専門の板師という職があったそうなのですが、現在は東京近郊では依頼できず地方にわずかにいらっしゃる職人にわざわざお願いする方法をとっているとのことです。あとは必要に応じてサンダー仕上げが可能な場合もあるとのこと。
デジタル技術の発達やAI生成画像などで、簡単に浮世絵風の絵を作ることは簡単にできる時代になりましたが、
今日の満員の参加者が示すとおり、やはり木を彫り色をのせバテンで刷るというアナログ作業に多くの人々が魅力を感じ、唯一無二の価値が版画にあることがわかりました。