今週、冒険家の石川仁さんのお話をお聞きする機会がありました。
仁さんと南房総はご縁があり、すでに何艘も葦船をこの地で仲間と一緒に作ったことがあったり、日本一周の航海もここ南房総から出発した経緯などもあり、今回は太平洋横断を控えその進捗報告をしにきてくださったのです。
葦船とはその名のとおり植物の葦で作った船で、ぱっと見藁の塊のような感じで、自然素材だけでできているので、
数カ月も海の上を航海すると朽ちはじめいずれは自然に戻っていくのだそうです。
そんな古の乗り物に乗り、古の感を頼りに(当時なかったコンパス、海図をはじめGPSなど文明の利器を使わずに)ロスからハワイまでを横断するとはまさしく冒険です。
冒険はその冒険中だけでなくその準備から始まっていて、
葦を刈り取れる場所探しから始まり、仲間との製作作業、試航海と苦労が絶えないエピソードをとても面白くお聞かせいただきとても引き込まれました。
以下、お話を聞いて私が勝手に感じた内容です。誤りや誤解がありましたらごめんなさい。
お話を通して私が一番に感じたのは、仁さんが常に「共有すること」を大切にされていることです。
技術が残る南米の葦船づくりのノウハウを、現在の基地となっている北米のネイティブアメリカンに教えたり、
航海には葦船文化がかつてあった環太平洋各地域からクルーを募集したり、
また航海中の映像やその場で感じる感覚をスターリンク経由で全世界と共有する計画です。
これは仁さんが若いころにサハラ砂漠を放浪し出会った遊牧民たちの暗黙の了解「出会った人には半分の水を与える」に接したことに遡るのではないかと私は思いました。
もちろん人間が他者と共有するという行為は根底には自己の生存率を高めるという打算が一部ないわけではないかもしれませんが、人間が人間たる素晴らしい一点だと思います。
とりわけこんなきな臭い世界となった現在では余計に信じたくなります。
その他、
・人間以外の生き物や無機物ともチャンネルを合わせることができるようになったこと
・葦船には葦にくっつく微生物からいろいろな植物の種子が同船しており、まるでその土地の小さな生態系を新たな土地に運ぶゆりかごとも言え、人間はたんなる確立を上げる動力とも言えるという話も面白かったし、
・冒険中、死に直面するような場面でも「やりたいことをきちんとやっていると自分の生に納得感が高いので、死を正しく恐れることができ、ギリギリの場面でも焦ったり固まったりせずに冷静にやるべきことを行うことができ、結果生き抜く可能性が飛躍的に上昇する」
というお話など、大変興味深く腑に落ちるお話が多くてとても有意義な時間を過ごすことができました。
出航は2025年5月、ぜひ無事に航海を終えた報告会を再び南房総で開いていただきたいと思います。
https://www.expedition-amana.com/