=118 ~木の因数分解~(家具工房つなぎブログ)

南房総でサクラの家具を作っています。ショールーム&カフェに遊びにおいでください。

和箪笥(時代箪笥)の分類

2009年09月20日 | 【書籍】
私の自主制作の第一弾は、「田舎箪笥」です。

「田舎箪笥」とは勝手に名づけました。
私のお気に入りの産直市場グリーンファームの骨董コーナーで見かけた古い箪笥がベースです。
大きく言えば「和家具」です。
赤っぽい色に塗られ、金具があしらわれた衣装箪笥といえば、和家具をイメージしていただけますでしょうか?

でも、私が製作したいものは、そこまで頑丈でなく、そこまで豪勢でない、もう少し質素でやわらかい感じの、農家にもあるような、悪く言えば野暮ったい、普段使いのしやすい箪笥を目指し、「田舎箪笥」と名づけました。
(骨董屋で見かけた箪笥をめんどくさいので2000円で買ってきました↓)


そして、そのような家具を作るためには、和家具の全体像も勉強しなければなりません。
船箪笥や階段箪笥、仙台箪笥など、いろいろと見たり聞いたりしたことはあるものの、それらの関係がわからなかったのです。

それらを大まかに理解した内容を書きますね。

少し勉強してみると、
和箪笥、時代箪笥といわれているものは、
「形態/用途」と「産地」に分けることができます。

前述の船箪笥や階段箪笥、仙台箪笥でいえば、

船箪笥や階段箪笥→「形態/用途」
仙台箪笥    →「産地」

ですね。

もちろん、これらの「形態/用途」と「産地」はダブっていて、仙台箪笥の中の階段箪笥ということになりますし、船箪笥といえば佐渡箪笥という具合です。

でも、ネット上ではこれらが入り乱れているところがありますので、まずは「形態/用途」と「産地」に分類して理解してみたほうが早そうです。

■分類一覧
◎は伝統工芸品指定

<形態/用途>・・・・・・・・・・・・・・・・・・
○帳場箪笥
○船箪笥
○車箪笥
○衣装箪笥
○水屋箪笥
○階段箪笥
○薬箪笥
○茶箪笥
○刀箪笥

<産地>・・・・・・・・・・・・・・・・・・
○佐渡箪笥
○庄内箪笥
○米沢箪笥
○三国箪笥
◎岩屋堂箪笥
○仙台箪笥
○二本松箪笥
○近江箪笥
◎松本家具

-桐箪笥系―
◎春日部箪笥
◎加茂箪笥
◎泉州箪笥
◎紀州箪笥

―指物系―
◎江戸指物
◎京指物
◎大阪唐木指物



少々説明を加えますね。

■「形態/用途」別の箪笥の種類

○帳場箪笥
商家の看板として、また金庫として使われたため、非常に豪勢かつ強固なつくりになっていてバリエーションも多い。

○船箪笥
北前舟などの航路が確立された時代、長い船旅の間貴重品を守るために、金具がふんだんに使われ強固かつ豪華なつくりな船箪笥が出現。

○車箪笥
衣装箪笥や帳場箪笥の下に車がついたもので、火災の際に運び出す利便性が考えられている。

○衣装箪笥
最も多く使われた一般的な箪笥です。嫁入り箪笥としても作られる。

○水屋箪笥
水屋とは本来は茶室の隅にある茶器等を洗ったり、置いたりする場所のことですが、そこから台所に置かれ食器を入れたり、食べ物を入れておく箪笥のことを水屋箪笥というようになったらしい。扉はすのこや金網等をつけて風通しをよくした。


○階段箪笥
狭い町屋などで愛用される。それぞれに合わせて作られているのでいろいろなサイズがある。

○薬箪笥
薬店で使われていて、多くの薬を収納できる小さな抽斗がたくさんついている。数が少なく貴重。

○茶箪笥 本来は茶道具を入れる小型の箪笥。

○刀箪笥 刀を入れておくための箪笥。



■「産地」別の分類

以下は、船箪笥が源流と思われる産地・・・・・・・・・・・・・・・・・・

○佐渡箪笥
船箪笥の最大の産地であり、豪華な船箪笥が中心だった。

○庄内箪笥
船箪笥を中心に、黒漆塗りと欅の衣装箪笥のふたつが有名。

○米沢箪笥
庄内箪笥の影響も受けていますが、金具にはアゲハ蝶か桜など可愛らしいがデザインが多い。

○三国箪笥
福島県の三国は、船航路にあたるために船箪笥の製作が盛んだった。


以下は、商売や生活の箪笥が源流と思われる箪笥・・・・・・・・・・・・・・・・

◎岩屋堂箪笥
栄華を極めた奥州藤原文化という下地があり、漆工、良質な欅材を使った木工、金工の技から素晴らしい箪笥が生まれる。

○仙台箪笥
金具などには龍などが多く、豪華なものが多く使われる。

○二本松箪笥
衣装箪笥などが中心。

○近江箪笥
水屋箪笥が有名。

○松本家具
東北地方とは異なる趣の箪笥が発展。



以下は、今まで説明してきた主に欅を使い赤っぽく金具がついた箪笥類とは異なる「桐箪笥」の産地・・・

◎春日部箪笥
◎加茂箪笥
◎泉州箪笥
◎紀州箪笥




以下は、和箪笥とは少々異なる指物の産地・・・・・・・・・・・・

◎江戸指物
◎京指物
◎大阪唐木指物


※以上は、私見に基づく分類です。
※参考図書「木工指物」、「岩谷堂箪笥」
※参考HP「和骨董 伊吹」 
大変参考になりました。ありがとうございます。写真も掲載されているので見やすいですよ。



■まとめ「箪笥は新しい」

箪笥って実は新しいんです。作り始められたのは意外にも江戸時代以降で、江戸時代中期あたりから浸透しはじめ、各地に産地ができたようです。

じゃあ、それまでの人々は一体、衣服をはじめ日用品をどうしていたかって?

答えは、
「それほど余分なものがなかったので、しまうスペースも要らなかった」
らしいです。
貴族や武士の上流階級はいざしらず、一般の人は毎日着るための服だけあればいいし、食器もお椀があれば事足りたのかもしれませんね。

それでも江戸時代も徐々に庶民の生活レベルも上がり、箪笥などが必要になってきたというこです。

現代人の個人所有物はさらに増え、箪笥をはじめさまざまな収納が必要になっています。
引越しが多い私も、引越しの度に、歳をとるたびに物が増え、「物をもたない人生を送りたい。持つものは人の縁と信頼だけがいいなぁ」なんて思いますが、なかなかそうはいかないんですよね。


◆参考図書



岩谷堂箪笥 (伝統的工芸品シリーズ)
成田 寿一郎
理工学社

このアイテムの詳細を見る



木工指物 (木工諸職双書)
成田 寿一郎
理工学社

このアイテムの詳細を見る
コメント (2)
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実験くん

2009年09月20日 | 【授業】伊那技術専門校木工科
塗装の授業は、あれやこれやを混ぜてまるで実験くんです。

しかも相当年季の入った全身サランラップ巻きの秤が唯一の頼み。

目盛りが10グラム単位なのに、5グラムとか、場合によっては3グラムとか計ってるし、かなり適当です。

それゆえ、各班「チェリー色」という同じ色を作っても全然同じになりません・・・・
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