夏休みのある日、友人Yと北海道南西部の渓へ。三十余年ぶりである。またこの渓へ続く林道はおそらく二十年以上、車両通行止めになっている。流域の森林を管理している役所に問い合わせると、車両は進入できないために現況の把握はしておらず、徒歩で入林する場合は特に手続きは不要とのこと。
朝6時半、入口ゲートから林道に入る。目的地は地図上では9kmほど上流に入った源流域。私もYも、釣り具だけでなく、雨具や食料、熊・蜂対策用品を真面目に背負って歩く。
林道を歩いて2kmほどで一部路盤が崩れ、管理車両も入れない状態となっていた。そこからは旧路面に雑草や雑木が茂り、一部は雨水で掘れて川か道路かわからない区間もあった。特に南向き斜面の植物の生い茂り方は、三十余年前の記憶との違いに驚愕する。当時は空から日射しを浴びながらの遡行だったのである。
4kmあたりからは人の入った気配はまったくなく、林道に残る鹿の踏み跡を進む。人工物の橋が奇妙に映るが、ちょうど良い休憩場所だ。ザックには、雨具や行動・非常食、私の青いザックには沢登り用シューズ・ジャージ等も入っている。
Yはルアーとフライ、私はフライ用具だけ持った。途中、Yが試し釣りをしてヤマメを掛ける。
目的地まであと1kmちょっとという約8km地点で、繁茂する植物のためにいよいよ林道跡を進めなくなり、さらに百m以上にわたって路盤が崩壊している所に遭遇。
あきらめてここで釣りをすることにした。時間は午前10時半、林道に入ってからすでに4時間が経過。
Yも私も、懐かしい釣り具を持ってきた。ヤマメは新仔を中心に入れ食い。素早いヤマメに混じって、河川残留型アメマスもしばしば出る。
人が入りづらくなったためだろう、昔より魚が濃くなった印象。
無垢なアメマスを相手に釣りを続けたかったが、入口から4時間かかってたどり着いた場所、しかも小雨が降ってきた。
正午前に、釣りを切り上げ、Yと復路につく。
帰り道は、来る時より時間も早く、楽に感じるものだが、路盤崩壊や植物繁茂のために林道跡を正確にトレースできず、強くなった雨脚に不安を感じたが、午後2時半に林道入口ゲートに戻ってきた。
目的だった源流域には到達できなかったが、満足感は大きかった。源流域まで川を遡行するならば、日帰りは難しいだろう。1泊2日のプランを頭に描きながら、2日間ほどは筋肉痛と闘った。
往復、私を守ってくれた沢登り用シューズ(石井スポーツオリジナル)とトレッキングシューズ(モンベル)、どちらも十年以上経過し、劣化が少し心配だった。帰ってから水洗い。
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